レジリエンス社会の実現に取り組む上場企業は?各社の株主優待・配当推移も

自然災害や感染症、地政学リスクなど、社会を取り巻く不確実性が高まる中、レジリエンスを企業経営に導入する取り組みが進んでいます。レジリエンスとは、困難な状況に対して柔軟に適応し、回復力を持つ能力のことであり、投資する上でも重要な評価ポイントの一つとなっています。

この記事では、レジリエンス社会の実現に取り組む上場企業やその取り組み実績を詳しくご紹介していきます。なお、各社の株主優待・配当情報なども併せて解説しているので、興味のある方は参考にしてみてください。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は2023年3月6日時点の情報をもとに執筆されています。最新の情報については、ご自身でもよくお調べの上、ご利用ください。

目次

  1. レジリエンス社会とは
  2. レジリエンス社会の実現に取り組む企業
    2-1.ソニーグループ株式会社(6758)
    2-2.大成建設株式会社(1801)
    2-3.株式会社資生堂(4911)
    2-4.キリンホールディングス株式会社(2503)
  3. まとめ

1 レジリエンス社会とは

レジリエンス社会とは、自然災害や経済危機などのストレスフルな状況に対して、適切かつ迅速に対応可能な社会のことを指します。最近は、社会インフラなどを支える企業にもレジリエンスが求められており、予測不能なリスクに直面した際、事業継続性を確保するための準備をしておく必要があります。

実際に、コロナ禍においては、外出自粛が要請されたことで出社や対面営業が制限されましたが、Web会議システムによるオンライン営業やリモートワークを迅速に取り入れた企業は、危機を早期に乗り越えることができました。

企業のレジリエンスを高める方法には、災害などの緊急事態が発生した際、損害を最小限に抑え、事業を継続させるためのBCP(事業継続計画)の構築や、災害訓練、ダイバーシティ推進によるイノベーションとレジリエンスに優れた組織の構築、レジリエンスに長けたリーダー育成などがあります。

2 レジリエンス社会の実現に取り組む企業

企業が様々な危機に対応するための準備やその情報開示は、投資家が将来のリスクや企業価値を評価する際の重要な要素です。以下では、レジリエンス社会の実現に取り組む企業とその取組実績を見ていきましょう。

2-1 ソニーグループ株式会社(6758)

ソニーグループ株式会社は、映像・音響機器、家庭用電化製品、スマートフォン、ゲーム機、映画事業、音楽事業、金融事業など幅広い事業をグローバルに展開するコングロマリット企業です。レジリエンス社会の実現に向け、事業の多角化・グローバル化によるリスク分散を行っているため、世界のあらゆる地域・市場の変化などのリスクに、柔軟に対応することが可能になっています。

また、サプライチェーンマネジメントの強化も行っています。ソニーグループの半導体部門の中核企業であるソニーセミコンダクタソリューションズグループでは、自然災害や事故などによる事業中断リスクを低減するため、半導体製造事業所で毎年セルフチェックを行っているほか、ソニーグループ本社からの調査や適合性確認を実施しています。

さらに、情報セキュリティの強化も挙げられます。2014年に発生したソニーグループの映画事業を担うソニー・ピクチャーズ・エンタテインメントへのハッキング攻撃を契機に、情報セキュリティの大幅強化を実施しており、ソニーグループの事業を24時間365日監視し、セキュリティリスクを検知するためのインフラやツール、データ分析の専門チームを設置しています。

なお、ソニーグループは、株主還元も積極的に行っており、ソニーグループの株式を100株以上保有している株主に対し、自社グループオンラインショッピングサイト・自社直営店舗「ソニーストア」・地域店舗(e-ソニーショップVAIO展示店)にて、対象商品を割引価格で購入できるクーポンを発行しています。ソニーグループの株主優待の詳細は以下の通りです。

所有株式数 優待内容
100株以上 1 AV商品15%OFFクーポン(テレビ、カメラ、オーディオなどのAV商品)
(5回まで利用可能)
100株以上 2 VAIO本体5%OFFクーポン(VAIO株式会社製の商品)
(5回まで利用可能)

※Xperiaスマートフォン、プレイステーション、aiboなど一部商品には利用できません。

また、ソニーグループは、年2回の配当も実施しています。

項目 中間配当金 期末配当金 年間配当金
2019年3月期 15円 20円 35円
2020年3月期 20円 25円 45円
2021年3月期 25円 30円 55円
2022年3月期 30円 35円 65円
2023年3月期 35円 (予定)40円 (予定)75円

2-2 大成建設株式会社(1801)

大成建設株式会社は、日本の大手総合建設会社の一つで、超高層ビルや商業施設、大学、スタジアムなどの大規模建築をはじめ、ダム、橋、トンネル、鉄道、空港などのインフラストラクチャーの整備を行っています。

また、建設業界で初めてBCP(事業継続計画)を策定したことでも知られています。大成建設のレジリエンス向上に向けた取り組みは、例えば、「地震に強い生産・物流体制の構築」が挙げられます。大成建設では、サプライチェーン全体でBCP対策に取り組むことで、巨大地震時に事業継続可能な体制を構築しており、生産工場や物流センターを建物ごと免震するなどの地震対策を講じ、生産継続および早期復旧、製品の落下・損傷のリスクを軽減しています。

また、製品の在庫に関しては、複数拠点に分散させることで緊急時の代替出荷が可能になっています。輸送に関しても、複数の輸送ネットワークを確保することで、代替輸送ネットワークを構築しています。

次に、大規模災害対策訓練の実施です。大成建設は、地震やテロに対応するため、毎年大規模災害対策訓練を実施しています。2022年に実施した訓練では、本社および全国の13支店、グループ25社を含む、全役職員約18,000名が参加しています。

このような、レジリエンス向上に向けた取り組みや活動が評価された結果、社会全体のレジリエンスの向上を進めるという観点で国土強靱化に貢献する団体を認証する制度である「レジリエンス認証」を取得しています。

大成建設は、株主還元も積極的に行っており、大成建設の株式を100株以上保有している株主に対し、「軽井沢高原ゴルフ倶楽部」優待クーポン、自社グループ会社工事請負代金・仲介手数料等割引クーポン券を贈呈しています。

所有株式数 優待内容
100株以上 「軽井沢高原ゴルフ倶楽部」優待クーポン(2,000円相当)×2枚、自社グループ会社工事請負代金・仲介手数料等割引クーポン券(10,000円相当)×3枚
1,000株以上 「軽井沢高原ゴルフ倶楽部」優待クーポン(5,000円相当)×2枚、自社グループ会社工事請負代金・仲介手数料等割引クーポン券(30,000円相当)×3枚、簡易地震リスク診断申込書×1枚

また、大成建設は、堅調な業績推移を背景に、年2回の配当も実施しています。

項目 中間配当金 期末配当金 年間配当金
2019年3月期 60円 70円 130円
2020年3月期 65円 65円 130円
2021年3月期 65円 65円 130円
2022年3月期 65円 65円 130円
2023年3月期 65円 (予定)65円 (予定)130円

2-3 株式会社資生堂(4911)

株式会社資生堂は、化粧品の製造・販売を行う企業で、世界約120か国・地域で事業展開するグローバル企業としても知られています。

レジリエンス社会の実現に向けた取り組みとしてBCP(事業継続計画)を策定しており、災害時の被害を最小限にとどめ、早期の事業復旧を図っています。具体的には、災害時の復旧業務・緊急時継続業務と目標復旧時間を定め、時間経過に合わせた情報収集、決定事項、伝達ルートを明確化しています。

また、リスクマネジメント体制の構築にも取り組んでいます。資生堂では、本社直属の「リスクマネジメント部門」を設置することで、リスクの特定、対応策などを審議する体制を構築しています。

さらに、災害時の社員対応、施設対応、情報発信、顧客対応等を束ねる「HQ緊急対策本部」やサプライネットワークの復旧・継続を担当する「商品供給継続本部」、日本地域事業を担当する「SJ緊急対策本部」と連携することで、緊急事態発生時に的確に対応できる体制を構築しています。

このほか、サイバーセキュリティ対策や情報資産保護のための「資生堂グループ 情報セキュリティポリシー」を策定しており、情報セキュリティ意識と知見の向上を目的とした社員教育にも力を入れているほか、情報セキュリティのモニタリングや情報システムの脆弱性診断・改善指示を行っています。

なお、資生堂は、株主還元も積極的に行っており、資生堂の株式を100株以上、1年超保有の株主に対して自社グループ商品を贈呈しています。資生堂の株主優待の詳細は以下の通りです。

所有株式数 優待内容
100株以上
(1年保有)
自社グループ商品1,500円相当または寄付
1,000株以上
(1年保有)
自社グループ商品10,000円相当または寄付

また、資生堂は、年2回の配当を実施しており、2022年12月期は、記念配当による増配を予定しています。

項目 中間配当金 期末配当金 年間配当金
2019年12月期 30円 30円 60円
2020年12月期 20円 20円 40円
2021年12月期 20円 30円 50円
2022年12月期 25円 (予定)75円
(普通配当25円)
(記念配当50円)
(予定)100円

2-4 キリンホールディングス株式会社(2503)

キリンホールディングスは、「キリンビール」や清涼飲料水メーカーの「キリンビバレッジ」などを傘下に持つ企業で、総合飲料をはじめ、医薬品、化学製品などの分野でも事業を展開しています。

レジリエンス向上の取り組みとしては、BCP(事業継続計画)のオールハザード化を行っています。従来型のBCPでは、「被災シナリオ」をもとに、個別のリスク(地震BCP、感染症BCP等)ごとにBCPを作成していましたが、地震、豪雨、感染症、地政学リスク、サイバー攻撃などのリスクでは、シナリオ通りに事象が発生しないケースがありました。

一方、BCPのオールハザード化では、地震、火災、感染症などの「原因」ではなく、故障、停電、操業停止などの「結果」に着目するため、あらゆる種類の災害や事故に対応できるようになっています。

2つ目は、情報セキュリティの強化です。キリンホールディングスでは、グループ各社のセキュリティ対応体制を整え、サイバー攻撃やウイルス、不正アクセスなどの対策強化に取り組んでいます。

具体的には、機械学習機能を備えたセキュリティ対策ツールの導入や情報セキュリティに関する問題の早期発見・早期対応を目的としたセキュリティインシデント報告窓口の設置、情報セキュリティに関する研修の実施を行っています。

なお、キリンホールディングスは、株主還元も積極的に行っており、キリンホールディングスの株式を100株以上保有している株主に対し、関連商品を贈呈しています。キリンホールディングスの株主優待の詳細は以下の通りです。

所有株式数 優待内容
100株以上 自社グループ商品1,000円相当
1,000株以上 自社グループ商品3,000円相当

優待内容は、ギフトビール、ワイン、サプリメント、キリンビバレッジ商品、お食事券、ホームタップ、寄付から選択できます。

また、キリンホールディングスは、年2回の配当を実施しており、上場以降、無減配を記録しています。

項目 中間配当金 期末配当金 年間配当金
2019年12月期 31.5円 32.5円 64円
2020年12月期 32.5円 32.5円 65円
2021年12月期 32.5円 32.5円 65円
2022年12月期 32.5円 36.5円 69円
2023年12月期 (予定)34.5円 (予定)34.5円 (予定)69円

まとめ

最近は、自然災害や感染症、地政学リスクなど、社会やビジネス活動に取り巻く予測不能なリスクが顕在化しており、レジリエンスの重要性が高まっています。加えて、株価や業績などの財務情報だけでは読み取れない企業のレジリエンス(耐久力)を重視する風潮も強くなっているため、投資家にとってもBCP(事業継続計画)などレジリエンスの情報開示がますます重要になってくるでしょう。

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