シリコンバレーバンクの破綻でドル円はどうなる?雇用統計の結果や市場の動向を解説
2023年3月、注目されていたアメリカの雇用統計が発表され、市場は大きく変動しました。
背景として雇用統計だけではなく、シリコンバレーバンクの破綻も焦点となりました。そこで今回は、プロトレーダーの筆者が、雇用統計の結果とシリコンバレーバンクの破綻について解説します。
※本記事は2023年3月15日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
1.雇用統計の結果
最初に雇用統計の結果について解説します。
結果 | 予想 | |
---|---|---|
非農業部門雇用者数 | +31.1万人 | +20.7万人 |
失業率 | 3.6% | 3.4% |
平均時給(対前年比) | 4.6% | 4.7% |
雇用統計の結果ご覧の通り雇用者数は予想以上の増加を見せたものの、失業率が予想以上の悪化となりました。平均時給も予想対比で低下する等、市場では強い数字が出ると予想されていましたが、予想外の弱い数字となり、ドル安、金利低下の動きで反応しました。
雇用者数はレジャー関連、医療、小売や政府機関の項目で伸びが確認されています。求人サイトや求人関連の募集が減少傾向にある中で、雇用者数が強い伸びを見せたことは、まだまだ労働市場がタイトな状況を示していると言えるでしょう。
しかし平均時給は前月比で0.2%増と過去1年で最低の伸びに留まり、失業率は上昇しました。総じて強い数字ではありません。労働需給の改善が引き続き改善され、賃金の伸びが減速するかどうかが今後の焦点となるでしょう。
次に雇用統計よりも相場の変動要因となった、シリコンバレーバンクの破綻について解説します。
2.シリコンバレーバンクの破綻
シリコンバレーバンクの破綻がニュースで飛び出し、市場の話題が雇用統計から銀行破綻に移りました。シリコンバレーバンクは総資産28兆円ほどで全米16位の大きな銀行です。
シリコンバレーバンクの破綻は、2008年9月に破綻したワシントンミューチュアル以来の2番目の規模です。取り付け騒ぎが起きる等混乱が生じています。
シリコンバレーバンクはテック系の企業を中心に融資を行っています。保有している有価証券の割合が、総資産の52%という突出した割合となったことが今回の破綻の大きな要因です。昨年のアメリカの利上げの動きに連れて、評価損が膨れ上がりました。
最初は親会社のSVBフィナンシャルグループが210億ドルもの証券を市場で売却したことが発端です。次に資本増強、財務強化のために22億ドルもの増資を計画していることが明らかになりました。
テック系のスタートアップに融資を行っていたこともあり、昨今のテック企業の落ち込みも資本増強を促す材料にもなっています。金利上昇にリスクのコントロールができなかったことや、セクターに偏った融資等を行っていたことが破綻に繋がったと考えるのが自然でしょう。
3.市場への影響は
次に雇用統計、そしてシリコンバレーバンクの破綻が市場影響を与えた影響を解説します。
雇用統計前に、パウエル議長はタカ派的な発言を行っていたことから、市場はある程度強い数字になってもおかしくないというスタンスに偏っていた可能性があります。指標発表後は金利低下、ドル安、株高の動きで反応しました。
※青:S&P500、オレンジ:米国債2年金利、水色:ドルインデックス
※図はTradingViewより筆者作成
ポジション調整のフローとして捉えられるでしょう。株式市場は一旦反転し、その後上昇する動きを見せました。
タカ派的なスタンスが緩和されるとの見通しや、3月の利上げ見通しで0.5%の確率が低下しているように、引き締め観測が後退したことが背景となっています。しかしその後シリコンバレーバンクの破綻がニュースとなり、再度株式市場は大幅下落、米国債金利は急低下しました。ドル円は一時134円台前半まで急落しました。
ドル円は黒田総裁の会見もあり、1日で2円ほどの下落を見せました。円高に急速に進行したものの、NY時間の引けにかけては買い戻され135円台を回復しています。
4.今後の動きは?
シリコンバレーバンクの破綻は他の金融機関に飛び火しかけています。市場は、金融ショックに繋がるのかという点に注目しています。
実際に他の金融機関の株価も急落している銘柄もあります。今後、他の金融機関に連鎖するかを注視しましょう。
一方で筆者としては、シリコンバレーバンクが破綻した要因に着目しています。
シリコンバレーバンクが破綻した理由
- 総資産に対する有価証券の割合が高かった
- テック系のスタートアップの融資が大きくセクターに偏りがあった
もし状況が似た銀行があれば注意した方がいいものの、主要な銀行でこのようなポートフォリオで有価証券を保有している銀行はありません。FDICの主要74行でも最大の有価証券の割合は42%です。シリコンバレーバンクの割合の大きさは、際立っていました。
一時的にはパニックになる可能性もあるものの、落ち着いたタイミングで、主要な金融銘柄は押し目を拾う動きになるでしょう。
リーマンショックの時も金融銘柄が総じて売られました。しかしその後、財務基盤がしっかりしている銘柄は買い戻しが強まり、株価は回復する動きとなりました。パニック売りはチャンスとも捉えられます。
プロトレーダーの筆者としては、FRBは今回の雇用統計の結果を受け、引き締めスタンスを大きく緩和させないと考えています。あくまで現在のタイト過ぎる労働市場の緩みのヒントが垣間見られただけの印象です。
今後はCPIや、労働市場であれば新規失業保険申請件数、JOLTS等労働市場関連の指標の数字を総合的に見ながらFRBの動きを探るのが適切でしょう。今回の数字だけでのトレードは、時期尚早と言えます。
パウエル議長も3月のデータ次第となるとコメントしています。CPIを中心としたインフレ関連の経済指標が引き続き注目である点は、変わらないでしょう。
5.まとめ
雇用統計の結果と内容、そして市場が大きく動揺したシリコンバレーバンクの破綻について解説しました。
市場は、予想外の事態が起きた時に大きく変動する傾向があります。予想されるリスクに対してはある程度備えられていることから、大幅な変動は発生しにくいものです。
今後シリコンバレーバンクの破綻が連鎖的に広がり、他の銀行も破綻し、信用不安から株式市場は急落すれば、更に値幅が出る可能性があります。
不安定な相場こそリスク管理を徹底してエントリーを分散し、損切りラインを明確にしましょう。どのような相場でも、相場の分析以上にリスク管理は重要です。
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