ESGデータを投資に活用する方法は?市場規模や管理・分析プラットフォーム紹介も
ESGに関連する非財務情報の開示は、企業の方向性を示すファクターの1つであると同時に、投資家が投資先を選定するための重要なソースです。世界的なESG投資の拡大とともに、より質の高いESG情報を求める声が投資家間で高まっている現在、ESGデータの品質向上は多くの企業にとって自社の付加価値を高め、持続的成長を維持する上での重要課題となっています。
このような潮流を受け、開発が加速している分野が、ESGデータの効率的な管理や分析に役立つデジタルツールです。本稿では持続的な成長が期待されている「ESGデータ管理・分析プラットフォーム」市場動向について、注目のスタートアップとともにレポートします。
※本記事は2023年4月16日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- ESGデータの重要性
- ESGデータ市場 51億ドル規模に成長との予測も
- ESG分野で注目のスタートアップ3選
3-1.Apiday (フランス)
3-2.Novata(米国)
3-3.Proof of Impact (米国) - まとめ
1.ESGデータの重要性
国際コンサル企業PwC(プライスウォーターハウスクーパーズ)の予想によると、世界のESG関連の運用資産(AUM)はCAGR(年平均成長率)12.9%のペースで成長し、2026年までにおよそ34兆ドル(約4,629兆1,202億円)に達する見込みです。
参考:PwC「Asset and wealth management revolution 2022: Exponential expectations for ESG 」
一方で、見せかけの環境配慮を装う「グリーンウォッシュ」など、虚像或いは誇張をともなうサステナビリティ活動や一貫性に欠ける情報開示が問題視されています。規制の強化やESG情報開示の国際標準化に向けた取り組みが活発化しています。
ESG投資の信頼性や透明性を高め、長期的な利益に結び付けるためには、情報開示に使用されるESGデータの品質向上が不可欠です。高度なESGデータは企業の持続的成長に大きく貢献するだけではなく、投資家が洞察力を深め、適切な投資先を見極める上でも重要なカギを握っています。
2.ESGデータ市場 51億ドル規模に成長との予測も
品質向上をめぐり、ESG評価は膨大な量の情報収集と分析を必要とします。企業側にとってコストと労力の負担が大きいという課題点も指摘されています。ESGデータ管理・分析ソリューションは、プロセスの効率化及びコスト・労力の軽減を目的とし、対策として開発が加速している分野です。
これらのソリューションは、企業のESGパフォーマンス評価に必要な情報の収集・分析・評価から、目標や分析結果に基づいたアクションプラン(行動計画)及び報告書の作成、専門家によるアドバイスまで、包括的なサポートを提供します。
スイスの大手金融機関であるUBSの予想によると、世界のESGデータ市場のTAM(総獲得可能市場製品やサービスの総市場需要)はCAGR18%のペースで成長し、2025年までに最大51億ドル(約6,943億8,044万円)に達する見込みです。
参考:Environmental Finance「ESG data market ‘to more than double, to $5bn」
3.ESG分野で注目のスタートアップ3選
ESGデータ市場のさらなる成長をリードする存在として、革新的なテクノロジーとアイデアをもつスタートアップへの期待が高まっています。ESGデータ管理・分析ソリューション分野で注目されている、海外のスタートアップの取り組み見てみましょう。
3-1.AI(人工知能)駆動型ESGデータ管理・分析SaaS「Apiday」
2021年にパリで設立されたApiday(アピデー)は、ESGデータの収集やESGレポートの作成、ESG関連認証取得のプロセスなどを自動化できる、ESGデータ管理・分析SaaS(Software as a Service)を提供しています。AI(人工知能)が重要なトピックを特定後、関連情報の抽出や分析を行い、洞察力の高いレポートを短時間で作成するなど、ESG関連のタスクに費やす時間を80%削減できます。
その他、専門コンサルタントなどのサードパーティーと提携し、ESGスコアの改善プランの作成やESG関連認証の取得に必要な書類の事前チェックを行うサービスを提供するなど、サポート体制も万全です。同社のプラットフォームは国際標準化機構(ISO)やカーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(CDP)など、世界300以上の企業や組織が利用しています。
参考:Apiday HP「Apiday」
3-2.プライベート市場に特化「Novata」
プライベート(非公開株)市場のデメリットの1つとして、パブリック(公開株)市場に比べると情報量が限定されており、事業活動などが不透明になる点が挙げられます。ニューヨークを拠点とするNovata(ノヴァタ)は解決策として、プライベート市場向けに構築されたESGデータ管理・分析ソリューションを提供しています。
クライアント(企業)は同社のプラットフォームを介して、自社のESG理念や優先事項に沿ったデータ収集や分析、報告、ESGフレームワークの作成などを、迅速かつ効率的に行うことが可能です。
Novataが競合と一線を画すのは、「ESG IDP(Integrated Disclosure Project/プライベート市場に特化した国際的なESG開示基準の統一化を目指すイニシアティブ)」に準ずるESG要因をフレームワークの作成に採用している点です。Gerenal Partners(ゼネラル・パートナーズ)を含む多数の民間企業が、同社のソリューションを利用しています。
参考:Business Wire「Novata Launches Framework to Support ESG Integrated Disclosure Project (ESG IDP)」
参考:Novata HP「General Partner Advisory Committee」
3-3.ROI(投資収益率)の最大化を狙う 次世代ESGデータ管理ツール「Proof of Impact」
クライアントのESG目標の達成と投資に対するリターンの最大化を両立させるように設計された、エンド・ツー・エンド型ESGデータ・インテリジェンス・プラットフォームを開発したのは、サンフランシスコのスタートアップ、Proof of Impact(プルーフ・オブ・インパクト)です。
同社のプラットフォームは独自のクラウドAPI(Application Programming Interface/ソフトウェアやプログラム、Webサービス間をつなぐインターフェイス)インフラとデータ・マッピング・エンジン(データ同士を一致させるシステム)「Catalyst(カタリスト)」を搭載しています。
企業や投資家は同社のプラットフォーム上で収集・検証・可視化された包括的なESGデータから、ESGパフォーマンスの進歩状況や成果を評価し、事業体に影響を及ぼし得る非財務リスクを特定できます。また、財務パフォーマンスと関連付けることにより、ESG投資や経営に関する意思決定に役立てることも可能です。
参考:Proof of Impact「Proof of Impact」
同社は金融やヘルスケア、教育などの30以上の産業に、ESGデータ管理・分析ソリューションを提供しています。
4.まとめ
ESG情報を「投資情報」として重視する潮流が投資家間で強まっています。規制環境の整備とともに、情報やデータの管理環境が発展していくことは当然の成り行きでしょう。
企業はこのようなプラットフォームを自社のESGパフォーマンスの向上に役立てることで、投資家はより的確な投資判断をくだせるようになるでしょう。また、普及が進むにともない、ESG市場の透明性が向上することも期待されます。投資対象としても、今後さらなる成長が期待される領域です。
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Source: 仮想通貨の最新情報BTCN | ビットコインニュース
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