水質汚濁への対策に注力している日本の上場企業は?取り組み事例や株主還元も

環境面におけるESGの取り組みの一つに水質汚濁への対策があります。水質汚濁は、地球環境にとって深刻な問題の一つであり、企業が自らの事業活動によって引き起こす可能性があるため、企業が水質汚濁への対策を積極的に行っていることは、社会的責任を果たしていることを示す重要な指標となります。

この記事では、水質汚濁への対策に注力している日本の上場企業とその取り組み事例を詳しく紹介していきます。日本の上場企業はどのような形で水質汚濁対策を行っているのかを知りたい方は、参考にしてみてください。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は2023年4月8日時点の情報をもとに執筆されています。最新の情報については、ご自身でもよくお調べの上、ご利用ください。

目次

  1. 水質汚濁への対策が必要な理由とは
  2. 水質汚濁への対策に注力している日本の上場企業
    2-1.三菱ケミカル
    2-2.ダイキン工業
    2-3.大成建設
    2-4.住友林業
  3. まとめ

1 水質汚濁への対策が必要な理由とは

水質汚濁とは、河川・湖沼・海洋などの水質が、自然浄化作用を超えるスピードで悪化することであり、水質汚濁の起こる原因は、おもに有機汚濁と富栄養化です。有機汚濁とは、水に含まれる有機物の量が酸素の量よりも多くなって、水が汚染された状態になることで、有機汚濁によって有害物質を発する微生物が生息するようになり、水が汚染されます。

一方、富栄養化とは、水の中に含まれる窒素やリンが必要以上に多くなる状態です。富栄養化の状態になると、アオコと呼ばれる植物プランクトンの増殖によって、水中の酸素が不足し、魚や藻などの生物が死滅したり、水質が悪化したりします。

水質汚濁は、人々の日常生活による排水、企業活動における工場や農場からの排水などによって起こります。また、地球温暖化による水温上昇で生息環境の悪化が起こることも、水質汚濁が発生する原因の一つに挙げられています。

水質汚濁が起こると、生物多様性の損失や病気の蔓延が起こるとともに、人々の生活環境や企業の経済活動に悪影響をもたらします。持続可能な地球環境の構築や経済成長の実現のためには、社会全体で水質汚濁への対策を考える必要があります。

実際、国内外において、様々な水質汚濁への対策が行われています。2015年9月に開催された国連サミットにおいて、「SDGs(持続可能な開発目標)」が採択され、17項目の目標がある中、目標6に水質汚濁への対策が挙げられました。

世界各国では、汚染、投棄、有害な化学物質や危険物の放出を最小限に抑える、未処理の排水の割合を半減させるなどの方法で水質汚濁対策への取り組みが行われており、国内においても、以下の方法で行われています。

  • 下水道の整備を行うことによる水質改善
  • 国内全国の海域の水質環境の改善を図る再生プロジェクト
  • 国内全国の河川・湖沼の水質浄化対策の推進
  • 住民が参加する形で行う水環境に関する各調査の実施
  • ダムにおける水質保全対策
  • 放置座礁船対策の推進
  • 国内全国の海域で海面に浮遊するゴミや油の回収
  • 油の流失事故へ対応できる環境の整備

2 水質汚濁への対策に注力している日本の上場企業

水質汚濁への対策を行うことで生物多様性や環境保全に繋がり、持続可能な環境社会の実現に貢献できます。企業が水質汚濁への対策を行うメリットは、新しい成長事業の創出や、技術のイノベーション、企業イメージの向上を図れるなど様々あるので、サステナビリティ経営の一環として、事業活動の中で水質汚濁への対策を行う日本の上場企業も多く存在します。

そこで、日本の上場企業が取り組む水質汚濁対策の内容について、各企業の株主還元情報を併せて見ていきましょう。

2-1 三菱ケミカル

三菱ケミカルは、三菱グループに属する国内大手の総合化学メーカー企業です。石油化学製品・炭素誘導品・電子部品などの開発・製造・販売、ヘルスケアなどの事業を行っており、グループ企業を含む数は、国内外で252社あります。

三菱ケミカルの水質汚濁対策の取り組み内容

三菱ケミカルを含むグループ企業全体において、水質改善への取り組みは事業活動における重要事項の一つと位置付け、水質汚濁対策にも力を入れています。具体的には、水域への有害物の排出抑制、窒素・リンの含有量の水質総量規制への対応のため、排水処理整備を継続的に改良することで、水質汚濁への対策に取り組んでいます。海や河川の水質維持の取り組みは、冷却水の循環利用の徹底、排水水質の適切な管理をする形で行われています。

また、「水マネジメント」という形で水リスクの高い事業所でヒアリング調査によるリスク評価を行う方法によって、水資源の管理も推進しています。その他、水の浄化機能のある製品を開発したり、販売したりして、水資源の保全に寄与しています。

三菱ケミカルの株主還元情報

三菱ケミカルは、年2回配当を行う形で株主に対する還元を行っています。事業資金の充実を考慮の上、中期的な利益水準の30%を配当性向の基準とし、継続的な配当を目指す旨の方針を掲げています。

三菱ケミカルの2019年3月期~2022年3月期までの1株当たりの配当金額の推移は、以下の通りです。

項目 中間配当額 期末配当額 年間合計配当額
2019年3月期 20円 20円 40円
2020年3月期 20円 12円 32円
2021年3月期 12円 12円 24円
2022年3月期 15円 15円 30円

2019年3月期から2年連続で1株当たりの年間配当額は減少しています。しかし、2022年3月期の1株当たりの配当金額は、中間と期末は各3円、年間合計配当額は6円増加しました。また、2023年3月期の1株当たりの配当金額は、中間と期末は各15円、年間合計配当額は30円になる見込みです。

2-2 ダイキン工業

ダイキン工業は、大阪市に本社を置く国内の機械メーカー企業です。おもに「空調」「化学」「フィルタ」に関する事業を行い、国や地域の異なるニーズに対応した製品やサービスを提供しています。また、海外事業比率が全体の79%を占めるグローバル企業である点もダイキン工業の特徴です。

ダイキン工業の水質汚濁対策の取り組み内容

ダイキン工業では、水質汚濁対策の取り組みとして、事業中の事故や自然災害による化学物質やオイルの流失を最小限に抑えるための体制を整えた上で、定期的な訓練も行っています。実際、2021年度にはオイルの漏洩が発生した場合を想定し、外部に流出させないための水質緊急訓練を堺製作所で行いました。

また、鹿島製作所では、地下水の有機塩素系化合物の濃度が環境基準を超えていることが2000年度に判明して以降、地下水の浄化作業を継続的に行っています。その結果、2020年度時点で、地下水の機塩素系化合物の濃度が環境基準未満の数値まで下がりました。

その他、水処理技術をもとにした水処理装置・水処理プラントの設計・加工に力を入れる形で水質汚濁対策に取り組んでいます。事業を行う際に発生した水質汚濁の原因となる汚染物質は、国や地方自治体が定める基準よりも厳しい自社基準を設けた上で管理・処理しています。

ダイキン工業の株主還元情報

ダイキン工業は、年2回の配当を実施する形で株主還元を行っています。連結純資産配当率3%の維持と高い水準の配当性向を目指し、継続的に配当を行っていくことを宣言しています。

ダイキン工業の2018年3月期~2022年3月期までの、1株当たりの年間合計配当額の推移は、以下の通りです。

事業年度 年間合計配当額
2018年3月期 140円
2019年3月期 160円
2020年3月期 160円
2021年3月期 160円
2022年3月期 200円

2018年3月期~2019年3月期には、1株当たりの年間合計配当額が20円増加しましたが、その翌年と翌々年は据え置きとなりました。しかし、2022年3月期の1株当たりの年間合計配当額は、前年期よりも40円の増加となっています。

2-3 大成建設

大成建設は、国内の総合建設企業で、建築・土木、住宅・不動産を中心に事業を行っています。事業区域は、国内ほか、アジア・中東、アフリカなどグローバルに及んでいます。また、大成建設は、「鹿島建設」「大林組」「清水建設」「竹中工務店」とともに国内の最大手建設企業5社に位置付けられており、「スーパーゼネコン」とも呼ばれています。

大成建設の水質汚濁対策の取り組み内容

大成建設を含む当グループ企業では、持続可能な環境配慮型社会の実現を目指し、長期環境目標を策定の上、水環境の課題への取り組みを行っています。策定された長期環境目標の「水資源の保全」において、水環境負荷の低減方法として、工事中の水質汚濁の防止が掲げられています。

大成建設は、当企業で構築した環境マネジメントの中において、社内で定める基準をもとに工事排水の管理を徹底する形で水質汚濁対策の取り組みを行っています。例えば、工事計画時に排水先、排水基準や関係法令を確認したり、現地の基準に沿った排水方法と管理計画を立案したり、作業所において管理計画に基づき工事排水の水質管理を行ったりしています。

また、現場パトロールや環境パトロールを行い、水質汚濁対策の取り組みに関する評価や改善指導をする形でアフターフォローをしています。

大成建設の株主還元情報

大成建設は、配当と株主優待の方法によって株主への還元を行っています。大成建設の2020年3月期~2022年3月期の1株当たりの配当金額は、いずれの年度も中間と期末で各65円、年間合計配当額が130円となっています。2023年3月期の1株当たりの中間配当額、期末配当額、年間合計配当額も同様の金額になる見込みです。

このほか、毎年3月31日時点で株主名簿に株主としての記載があり、なおかつ100株以上の株式を保有している株主は優待の対象となるので、ゴルフ場優待クーポン券や工事請負代金・仲介手数料等割引クーポン券等の贈呈を受けられます。

さらに、優待の対象となる株主で保有株式数が1,000株以上である場合、上記クーポン券のほか、簡易地震リスク診断の申込書1枚の贈呈を受けられます。

2-4 住友林業

住友林業は、1948年に設立した国内の建設・不動産の企業であり、おもに、「資源環境事業」「木材建材事業」「海外の住宅・建築・不動産事業」「住宅関連事業」「生活サービス事業」などのビジネスを展開しています。

住友林業の水質汚濁対策の取り組み内容

住友林業クレストの全工場、筑波研究所、紋別バイオマス発電所、八戸バイオマス発電所は、水質汚濁防止法の特定施設に該当するため、定期的に水質濃度検査を行い、排水の水質を管理しています。水質汚濁防止法とは、排水による公共用水域および地下水の水質汚濁の防止を図り、人々の生活環境を保全する目的で定められた法律です。

例えば、住友林業クレスト伊万里工場では、工場からの排出水につき、外部委託機関による水質検査2ヶ月に1回、自動測定装置による社内の水質検査を毎日実施し、これらの検査結果を半年ごとに地方自治体へ報告をしています。さらには、県と市の水質検査を合計年4回受けており、いずれも排水基準未満の検査結果が出ています。

筑波研究所においても、水質汚濁防止法の規定に基づき、実験設備の一部更新・新規設置の届出を行うとともに、月1回のペースで外部委託機関による水質検査を実施し、その結果を半年ごとに市へ報告しています。

また、住友林業の海外にある工場においても、各国の排水の水質規定に基づいて、水質の汚染物質濃度の検査を実施しています。

住友林業の株主還元情報

住友林業は、年2回配当を実施する形で株主への還元を行っています。継続的な配当を基本とし、業績状況を総合的に考慮した上で利益還元を行う旨の配当方針を打ち出しています。

住友林業の2020年12月期から2022年12月期までの1株当たりの配当金額の推移は、以下の通りです。

項目 中間配当額 期末配当額 年間合計配当額
2020年12月期 10円 25円 35円
2021年12月期 35円 45円 80円
2022年12月期 60円 65円 125円

2017年~2020年までの1株当たりの年間合計配当金額は、35円~40円台を推移していました。しかし、2021年度になると、1株当たりの年間合計配当金額は80円まで上昇し、さらに2022年度は、前年より45円上昇し、125円となっています。

まとめ

国内の上場企業の水質汚濁対策への取り組みは、法令の規定や厳格な社内規定に基づく排水や、地下水などの水質検査や管理、排水処理整備の継続的な改良、水処理設備の設計・加工、汚染物質の流出防止のための水質緊急訓練の実施など様々な方法で行われています。

この記事で紹介した水質汚濁対策に取り組む国内の上場企業の中には、2022年度以降の1株当たりの年間配当金額が大幅に上昇したところも見られます。水質汚濁対策に注力している上場企業に関心のある方は、この記事を参考にご自身でも調査を進めてみてください。

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