米国FOMCでドル円はどうなる?利下げ予想やユーロも解説【2023年5月】
2023年5月現在、アメリカのFOMCにマーケットの注目が集まっています。マーケット参加者は公表された内容から、FRBの金融政策の動向についての予測を色々な角度から行っています。
そこで今回はプロトレーダーの筆者が、5月のFOMCについて内容を解説します。今後の金融政策の方向性や、ドル円を含めた為替市場の動向も予想しますので、参考にしてみてください。
※本記事は2023年5月7日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
1.FOMCの内容
2023年5月のFOMCについて解説します。政策金利は予想通り0.25%の利上げとなり、市場予想と合致する引き上げ幅となりました。今回は参加者が全会一致で賛成しました。
FOMC声明文の内容は、以下の通りです。
- アメリカの金融システムは堅固である
- 家計や企業の信用の引き締まりが経済活動、雇用、インフレの重しとなる可能性があり、不透明な環境となっている
- インフレリスクを大いに注視している
- 雇用の伸びは引き続き堅調な状況である
ポイントは、「追加の引き締めが適切」という文言を削除している点です。
パウエル議長の会見では、利上げの停止を示唆するようなコメントがあり、マーケットで意識されました。しかし全体的にはタカ派とも言える内容となっており、労働市場の堅調や失業率の低位安定等、インフレリスクを警戒するような発言も出ました。バランスを取ろうとしている様子が会見内容から判断できます。
またパウエル議長は個人的な見解として、「リセッションに陥るより回避できる可能性の方が高いというのが私自身の見解だ」と述べていました。
参考:ブルームバーグ「FOMC、0.25ポイント利上げ-パウエル議長は停止の可能性示唆」
つまり景気後退には陥ることはない可能性が高いということを意味しており、これが本心かどうかは不明ではあるものの、まだまだ景気に対して強気な姿勢だと分かります。
次にFOMCを受けて市場の利上げ予想がどのように変化したのかを解説します。
2.FOMC後の市場の見通しの変化
FOMC後の市場の利上げ見通しの変化を確認しましょう。こちらは5月5日時点でのFED watchツールの市場の利上げ織り込みの確率です。
※画像はCME「FedWatch」より引用
市場では現在7月まで据え置くことが予想されています。しかし7月は、わずかに利下げの可能性も40%弱織り込んでいます。
スワップ市場での動きからも、市場はかなり利下げ方向に視点が傾いていると言えるでしょう。7月以降は急速に利下げを織り込み、年末には4.25%を予想しています。
しかしパウエル議長の会見ではインフレは緩やかに低下すると考えているものの、インフレがしっかりと抑制されない限り利下げの話は早いというコメントを出しています。市場はFRBに先んじて、利下げを織り込んでいます。2023年5月時点では、年後半からの利下げの可能性がある程度の認識を持っておけばいいでしょう。
市場の利下げ織り込みが、ドル安圧力となっています。今後の金融政策は完全にデータ次第とパウエル議長も話しており、来月の利下げはないでしょう。
参考:ブルームバーグ「FOMC、0.25ポイント利上げ-パウエル議長は停止の可能性示唆」
しかしアメリカでは大手地銀の買収や経営不安等が広がっており、動きも流動的なことから先行きを見通しにくい状況ではあります。ポジションは方向性を決めてかからず、様子を見ながら構築しましょう。
アメリカの銀行が連鎖破綻に追い込まれた場合は、相場が一変する可能性があります。景気後退が濃厚になるでしょう。アメリカの金融不安は、引き続きポイントになりそうです。
3.FOMC後考えるべき為替市場の動き
2023年5月現在、為替市場ではドル安が進んでいる中、FOMCの翌日にECBが0.25%の利上げを行い、ラガルド総裁は追加利上げを示唆しました。追加利上げは必要と断言しており、市場は、0.25%の利上げを後2回行うと見込んでいます。
参考:ブルームバーグ「ECB、0.25ポイント利上げにペース減速-「停止しない」と総裁」
つまりアメリカの金融政策は、政策金利がどのくらい据え置かれるかが焦点となっている中で、ECBではあと何回利上げを行うかが市場の焦点となっています。この市場の見方の差が、ユーロ高ドル安の動きの背景です。2023年5月現在、ドル円は137円まで上昇していたものの、FOMC後には下落しており134円台まで下落する動きとなりました。
ただし為替市場を考える上では、金融政策の方向性だけでなく、ポジションの傾きも考慮する必要があります。ユーロは機関投資家がロングポジションを積み上げています。
※画像はIMMポジション「外為ドットコム」より引用
2022年からユーロのポジションが、ロングポジションで積み上がっていると分かります。ある程度利益が出ている状態でもあるため、機関投資家はどこで利益確定をしようかと考えている時期でもあるでしょう。
一方で2022年に強かった米ドルは、年末から2023年の年初に一気に巻き戻され、現在ではネットショートになっています。つまり売っている投資家が多いということです。
日本円は唯一のマイナス金利の国の通貨であり、ショートポジションが先物市場でも優勢な状況となっています。機関投資家はこのショートポジションをどこかで買い戻す必要性があります。トリガーは、日銀の金融政策の変更でしょう。
ドル円は引き続き上昇すれば上から叩かれるイメージで、戻り売りのスタンスでトレードをすれば大きく負けないと、プロトレーダーの筆者は予想しています。
ドル円は140円を突破する力はなくなってきており、どちらかといえば120円台が近くなってきている地合いです。大きな方向性が見えてきたタイミングで、トレードすることも選択肢の一つでしょう。
ただしドルショートが増えているため、急なドルショートの巻き戻しには注意してください。ニュースからの方向性と、ポジションの傾きからの値動きの把握を意識してみると、相場を見極めるヒントになるでしょう。
ポジションの傾きは現在のトレンドを表しているとも言えます。しかし一方で、反転した時のトレンドを作り出す圧力にもなります。夏場までのトレードの参考にしてみてください。
4.まとめ
今回はFOMCの解説から、金融政策がどのように変化するのか、そしてドル円含めた為替市場の動向、そしてトレードでの大事な考え方をプロトレーダーが解説しました。
言葉で聞くと簡単でも、実際のトレードで活かすためには経験を培う必要があります。興味を持った方は、実際にトレードしてみながら、改善を繰り返してみてください。
今後も様々な動きが出そうな相場です。引き続き一喜一憂せずに、落ち着いてトレードを行っていきましょう。
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