小売向けカーボンオフセットに取り組む「ポセイドン」とは?
今回は、小売向けカーボンオフセットソリューション「ポセイドン」について、一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / @fukuokasho12))に解説していただきました。
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目次
- ポセイドンとは
1-1. ポセイドンの概要
1-2. ポセイドン設立の背景 - 世界初の小売業界ソリューションとは
- ソリューションの特徴
3-1. 最新テクノロジーを駆使した利便性の高い取引環境
3-2. 気候変動対策に価格をつける
3-3. 高品質なクレジットのみが取り扱われている - 実際のユースケース
4-1. ベン&ジェリーズ(Ben & Jerry’s)
4-2. ブリッグス・オートモーティブ・カンパニー(BAC) - まとめ
近年、気候変動問題をはじめとする環境問題が世界中で注目されており、「カーボン・オフセット」への関心も高まっています。
そんな中、シンガポールを拠点に環境保護プロジェクトを展開する「ポセイドン」は、ブロックチェーン技術を活用して小売店の商品販売とカーボン・オフセットを結び付けるソリューションを運営しており、注目を集めています。
実際に、イギリスの食品・日用品大手「ユニリーバ」の子会社であるアメリカのアイスクリームブランド「ベン&ジェリーズ(Ben & Jerry’s)」は、このソリューションを利用したプロジェクトを展開していることから、今後さらに多くの企業が参加していくことが予想されます。
今回の記事では、世界初となるカーボンフットプリントと連携する小売業界向けのソリューションについて、その概要や特徴、具体的なユースケースについて詳しく解説していきたいと思います。
1. ポセイドンとは
1-1. ポセイドンの概要
「ポセイドン(Poseidon)」は、ブロックチェーン技術を使いながら気候変動を中心としたSDGsに取り組む企業です。2017年にシンガポールを拠点に設立され同社は、カーボンオフセット市場の提供など、あらゆる経済活動がもたらす環境への負の影響をポジティブに変えることを目的として事業を展開しています。
具体的には、ブロックチェーンを活用して、エネルギー消費や二酸化炭素排出などの環境負荷を測定します。そして、その測定値をトークン化し、カーボンクレジットの取引をより簡単で分かりやすい形で行える環境を提供しています。
1-2. ポセイドン設立の背景
前述の通り、ポセイドンはブロックチェーン技術を活用し、気候変動に対処することを目的として設立された団体です。具体的には、企業や個人が自分たちの温室効果ガス排出量をオフセットするためのソリューションを提供しています。
設立の背景には、世界中で温暖化が進行し、気候変動が深刻な問題となっていることが挙げられます。多くの企業が環境への貢献度を高めるために温室効果ガス排出量を削減する取り組みを始めていますが、すべての企業が完全に排出量を削減することは困難です。そのため、カーボンオフセットが重要な役割を果たしています。
カーボンオフセットとは、人や組織の温室効果ガス排出量を減らすために、他の場所で同等の量の温室効果ガスを削減する取り組みを行い、その削減量を自らの排出量の補償に充てることです。例えば、企業が発生させた二酸化炭素排出量を削減するために、他の場所で風力発電や森林保全プロジェクトを支援し、同量の二酸化炭素を削減して自社の排出量を補償する形です。カーボンオフセットは世界的に普及していますが、クレジット取引の複雑さや不正・多重カウントなどの問題が浮上しています。
2. 世界初の小売業界ソリューションとは
前述の通り、ポセイドンはステラブロックチェーンを活用し、カーボンフットプリントと小売業界を結びつける画期的なソリューションを展開しています。このソリューションは、さまざまな製品やサービスが環境や社会に与える影響を定量化し、グリーン経済への転換を支援しています。具体的には、製品が作られる際に使用されるエネルギーや資源、材料の調達、組み立て、提供までのプロセスにおけるカーボンフットプリントが計算される仕組みです。
カーボンフットプリントとは、私たちの日常生活やビジネス活動で排出する二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの量を示したものです。私たちが使う製品やサービスの生産に必要なエネルギー量と、それに伴う温室効果ガス排出量を算出し、その合計がカーボンフットプリントとなります。
ポセイドンのソリューションを利用することで、カーボンフットプリントを正確に計算できます。その結果、クライアントは同等の環境クレジットを購入でき、製品の気候への影響を効果的に調整し、排出量のギャップを埋めることができます。
また、詳しくは後述しますが、パートナーシップ第1号として米アイスクリームブランド「ベン&ジェリーズ(Ben & Jerry’s)」が参加しています。ロンドン・ソーホー地区Wardour Streetの店舗では、アイスクリームが1個売れるごとに、ベン&ジェリーズがペルーのコルディジェラス・アスル国立公園の森林保護プロジェクトのカーボンクレジットを1セント購入する取り組みが行われています。
各企業や団体、個人が様々な方法で環境問題に取り組んでいますが、個人がカーボンオフセット市場に参加するハードルはまだ高いのが現状です。そうした中、ポセイドンはブロックチェーン技術を活用してカーボンフットプリントと小売業界を結びつけ、私たちの日常生活が環境に与える影響を個々に理解できるシステムを構築し、カーボンオフセットを身近に感じ、手軽に取り組める環境を実現しているのです。
3. プラットフォームの特徴
3-1. 最新テクノロジーを駆使した利便性の高い取引環境
ポセイドンのプラットフォームは、「AI(人工知能)」とブロックチェーン技術を活用して、さまざまな製品やサービスの環境フットプリントを迅速に分析し、販売時にオフセットが実行できる環境を提供しています。
具体的には、製品やサービスの生成過程で使用されるエネルギーや資源、それらの材料を組み合わせるために使われるすべての資源、および提供のために使用される資源に関して、カーボンフットプリントを作成します。正確な数値を算出することで、同等の環境クレジットを購入する仕組みが整備されています。
ポセイドンでは、この仕組みを小売POSシステムと統合することで、カーボンオフセットの一連のプロセスを現実世界のライフスタイルに取り入れています。さらに、ブロックチェーン技術を用いることで、カーボンクレジットとその購入に関するすべての詳細を正確で透明な状態で記録しています。
このように、ポセイドンのプラットフォームでは、すべての人が取引における環境コストを正確に把握し、小さい単位からオフセットできる環境を提供しています。
3-2. 気候変動対策に価格をつける
ポセイドンのプラットフォームでは、環境クレジットを通じて、各製品やサービスにおける温室効果ガス排出量やその他の環境や社会的コストに価格を設定します。この排出量のギャップを埋めることにより、パリ協定の目標である2℃の制限を達成することに努めています。
パリ協定とは、気候変動に対処するための国際的な枠組みで、2015年12月にフランスのパリで開催された「国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)」で採択されました。パリ協定では、地球温暖化の上限を2℃に抑え、できるだけ1.5℃に抑えることを目標としており、温室効果ガス排出削減に関する「国別貢献目標(NDC)」の設定が求められています。また、途上国への支援などの条項も含まれており、現在世界中で取り組まれている環境目標の一つです。
ポセイドンも、この目標達成に向けた積極的な取り組みを続けており、気候変動対策に価格をつけることでカーボンオフセット市場に変革をもたらしています。
3-3. 高品質なクレジットのみが取り扱われている
ポセイドンは持続可能な開発プロジェクトからの環境クレジットを調達する際、世界で最も広く使われている温室効果ガス自主規制プログラム「Verified Carbon Standard(VCS)」に準拠しています。
具体的には、ポセイドンが支援するプロジェクトで暮らす地域社会にとって重要な利益を確保し、地球にとって重要な生物多様性を保全することが基準となります。また、すべての炭素クレジットは、この分類の中で最も高いステータスであるCCB( 気候・地域・生物多様性基準) Gold Levelの認証を取得しています。
その他、ゴールドスタンダードや国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の定めるクリーン開発メカニズム(CDM)など、さらに高い品質基準に準拠した環境・社会プロジェクトも支援していることが特徴です。
4. 実際のユースケース
このセクションでは、ポセイドンのプラットフォームが実際にどのように利用されているか、いくつかのユースケースを紹介します。
4-1. ベン&ジェリーズ(Ben & Jerry’s)
ベン&ジェリーズは、アメリカの有名なアイスクリームメーカーで、1978年にベン・コーエンとジェリー・グリーンフィールドが創設しました。同社は、厳選された天然素材を使用し、独創的なフレーバーを開発することで、他にはない味わいを提供しています。また、社会的責任を重視し、フェアトレード認証を取得していることでも知られています。
ポセイドンは、ベン&ジェリーズと提携し、ロンドン・ソーホー地区Wardour Streetの店舗で、アイスクリームが1個売れるごとに、ベン&ジェリーズがペルーのコルディジェラス・アスル国立公園の森林保護プロジェクトのカーボンクレジットを1セント購入する取り組みを実施しています。
さらに、消費者はアイスクリームを購入する際、レジで自分でもカーボンオフセットを1セント追加購入するかどうか選択できます。同意すると、合計2セント分のオフセットが実現される仕組みです。
4-2. ブリッグス・オートモーティブ・カンパニー(BAC)
イギリスのブリッグス・オートモーティブ・カンパニー(BAC)は、ポセイドンと提携し、製造過程の各段階での温室効果ガス排出量を把握し、排出量を大幅に削減することに成功しました。BACは自動車業界で早くからカーボンフットプリントに注目しており、ポセイドンとの協力により、環境面で業界をリードする存在となっています。
5. まとめ
ポセイドンは、気候変動問題への対策として設立され、ブロックチェーンなどの最新技術を活用し、カーボンクレジット市場の変革を目指して様々な取り組みを行っています。また、世界初のカーボンフットプリントと小売業界を結びつける革新的なプラットフォームを展開し、製品やサービスの生産過程で排出された温室効果ガスを正確に算出することで、消費者が購入時の環境コストを把握できるようにしています。
パリ協定で掲げられた環境目標達成に向け、カーボンフットプリントの重要性は今後さらに増すと考えられます。ポセイドンの今後の動向にも期待が高まります。
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Source: 仮想通貨の最新情報BTCN | ビットコインニュース
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