不動産AI査定の仕組みや精度、正確性は?導入しているサービスや利用の注意点も
不動産AI査定とは、過去の取引事例などを学習した人工知能(AI)による不動産査定サービスです。情報入力後すぐに査定価格がわかる、匿名で利用できるなどのメリットがあり、利用したいという方もいるでしょう。
そこで今回のコラムでは、不動産AI査定の仕組みを解説し、利用方法や注意点、さらにサイトの特徴なども紹介していきます。
目次
- 不動産AI査定の仕組み
- 不動産AI査定のメリットとデメリット
2-1.不動産AI査定のメリット
2-2.不動産AI査定のデメリット - 不動産AI査定システムの精度
3-1.マンション売却における不動産AI査定の精度
3-2.一戸建て売却における不動産AI査定の精度 - 不動産AI査定が利用できるサービス
4-1.SRE不動産「不動産価格推定エンジン」
4-2.三井のリハウス「リハウスAI査定」
4-3.東急リバブル「スピードAI査定」 - 不動産AI査定を利用する際の注意点
- まとめ
1 不動産AI査定の仕組み
不動産AI査定とは、人工知能(AI)によって不動産の査定価格を算出するシステムです。AIが学習した過去の取引事例と照合したり、比較計算をするなどして、対象物件の査定価格を提示してもらうことができます。
また、匿名で利用できる、入力項目が少ない、すぐに価格がわかるなどの特徴があるため、気軽に利用できることが大きな特徴です。
不動産AI査定を利用して査定価格を算出するには、対象物件の情報を入力する必要があります。各社サービスによって詳細は異なりますが、概ね下記のような情報を入力することになります。
- マンション名
- 所在地
- 専有面積
- 間取り
- 築年数
- 構造
- 方角、など
不動産AI査定ではこれらの情報を用いることで、過去のデータと照らし合わせて対象物件の査定価格を算出することになります。
ただし、サービスによって元となるデータや査定額のパターンや特徴のモデル構築を行うアルゴリズムにも違いがあり、査定価格にも差が出ます。つまり、抽出するデータ精度が高い、データ件数が多い、アルゴリズムのモデル構築が正確であるサービスを利用することが重要となってきます。
2 不動産AI査定のメリットとデメリット
2-1 不動産AI査定のメリット
不動産AI査定を利用する代表的なメリットは下記になります。
- 気軽に査定価格を知ることができる
- 個人情報を提供しないで利用できる、など
不動産を市場で売却するには、価格を設定する必要があります。その際、不動産会社に査定をしてもらい、価格をつけてもらう方法が主流となっています。
不動産査定では、対象物件の情報を不動産会社に提供して査定を行ってもらう簡易査定(机上査定)と、不動産会社の担当者が物件を訪れて状態を見てから価格をつける訪問査定という2種類があります。
それに対して、不動産AI査定の場合は対象物件の情報を入力するだけで査定価格が提示される仕組みになっています。不動産会社に依頼することなく、また簡易査定や訪問査定のように査定価格が算出されるまで待たされることなく、査定価格を知ることができるため、気軽に利用することができるのです。
また不動産AI査定はほとんどのサイトで匿名での利用が可能です。電話番号などの個人情報を誰にも知られることがないため、不動産会社の営業マンから電話がかかってくるということもありません(個人情報の入力が必要なサイトも一部あります)。
不動産AI査定は、不動産の購入を検討されている方が相場価格を知りたいといったケースや、離婚時の財産分与に関して所有する不動産の価格を知りたいといったケースなど、売却以外の目的で利用することもできます。
2-2 不動産AI査定のデメリット
一方、不動産AI査定にはデメリットもあります。代表的なのは次の3つです。
- 個別の条件は査定価格に反映されない
- 不動産会社選びはできない
- 時間が無駄になる、など
不動産AI査定の大きなデメリットは、個別の条件が査定に反映されないことです。築年数や間取り、専有面積などによって価格が算出されるため、物件ごとに異なる要素は加味されません。例えば、眺望や日当たり、床の傷や壁紙の劣化状況、住宅機器の更新やリフォーム歴といったことも査定に反映されないのです。
また不動産査定をする際は、担当者などの姿勢から仲介を依頼する不動産会社を選ぶということもできます。しかし不動産AI査定では、担当者とやり取りをすることはありません。そのため不動産会社選びの参考にすることはできないと考えられます。
すでに売却すると決めている売主には、時間の無駄と感じることもあるでしょう。不動産AI査定を利用した場合でも、結局は簡易査定や訪問査定を行うことになるからです。こうしたケースの場合も、デメリットになります。
3 不動産AI査定システムの精度
不動産を売却する際、物件種別は「マンション」や「一戸建て」「土地」「収益物件」などがありますが、不動産AI査定が取り扱えるのは主に「マンション」と「一戸建て」です。この2つの種別について、不動産AIシステムの精度について解説していきます。
3-1 マンション売却における不動産AI査定の精度
不動産AIシステムの特徴は、学習した過去の取引事例をもとに査定価格を算出することです。学習した事例の数が多いほど精度は高くなるため、マンションの場合は類似事例が多いことから、比較的精度の高い査定価格が算出されると考えられます。
例えば、同じマンション内で過去に別の住戸の取引事例があった場合、最寄り駅からの分数や築年数、周辺の住環境が同じです。階数が異なっても、間取りが同じあるいは似ているというケースもあります。また近隣のマンションの取引事例があれば、周辺環境が類似しています。このようにマンションの場合は、参考にできる類似事例が多くあると想定されるため、不動産AI査定システムの精度はより高くなると考えられるのです。
一例として、SRE不動産(旧ソニー不動産)のAI査定について見てみましょう。SRE不動産はソニーグループのAI技術と、SRE不動産が所有する不動産査定に関するノウハウで共同開発した価格推定エンジンをもとに売却推定価格を提示するAIサービスを提供しています。
このSRE不動産における価格推定の精度は、2023年5月19日時点でMER5.60%としています。MERとは誤差率の中央値のことで、MERの値が小さいほど推定精度が高く、5.60%程度の誤差率で価格を推定できるということを示しています。
【関連記事】SRE不動産(旧ソニー不動産)のAI査定の仕組みは?メリット・デメリット、他社との比較も
3-2 一戸建て売却における不動産AI査定の精度
マンションは間取りや築年数など類似点が多い物件が多く類似事例が集めやすい一方、一戸建て住宅の場合は類似事例が集めにくいという傾向があります。間取りは同じでも部屋の形状や日照条件などが異なる上に、使い方によって劣化具合が異なるからです。また、周辺地域に似たような広さの土地があっても、形状や接道状況などが同じではないため、実際の取引では価格に差が出てしまうものです。
こうした一戸建ての価格設定に関わるすべての要素をAIに学習させることは現時点では難しいため、一戸建てにおける不動産AI査定の精度は高いとは言えない状況です。そのためサイトによっては、マンションのみを取り扱っており、一戸建て住宅や土地は利用できないものもあります。
4 不動産AI査定が利用できるサービス
不動産AI査定の特徴を把握したところで、AIを用いた不動産査定システムが利用できるサイトの特徴を紹介していきます。
4-1 SRE不動産「不動産価格推定エンジン」
SRE不動産は、ソニーグループのSREホールディングスが展開する不動産テック事業の一つです。SREホールディングスの主事業は不動産テック事業とAIクラウド&コンサルティング事業の2つで、宅地建物取引業者として不動産の売却や購入サポート、賃貸管理などを行っています。
SRE不動産が提供するAI査定の大きな特徴は、ソニーグループ株式会社R&Dのディープラーニング(深層学習)技術と、SREホールディングスが有する不動産査定のノウハウを組み合わせた不動産価格推定エンジンを活用したものです。
SRE独自のマーケットデータを豊富に揃えており、さらに最先端のAI技術を融合することによって、高精度かつ根拠のある価格査定を行っています。。推定価格・推定精度については週1回の頻度で更新し、最新のデータを自動的に学習しているため、常に最新の推定価格を算出できるのが特徴です。
4-2 三井のリハウス「リハウスAI査定」
三井のリハウスは、三井グループの不動産会社「三井不動産リアルティ」の不動産コンサルティング事業の名称です。大手不動産会社のネットワークと豊富な取引実績を持ち、全国エリアに店舗展開している点が強みの不動産総合サービスとなっています。
「リハウスAI査定」は、36年連続で売買仲介取扱件数ナンバーワンを維持している三井不動産リアリティグループの三井のリハウスが提供しているサービスです。三井のリハウスで成約した膨大な事例をAIに学習させており、立地やグレード、階数、向きなどの特徴に応じて、査定価格を即時に算出することが可能です。
また、三井のリハウスではオンライン面談でもAI査定は活用されています。オンライン上で物件を内覧したり、マンションAI査定が行えるため、非対面のコミュニケーションで売却をスムーズに進められる点も特徴的です。
ただし、AI査定に対応しているのはマンションのみであるという点に注意しましょう。(※2023年5月時点)
4-3 東急リバブル「スピードAI査定」
東急リバブルは、年間25,635件の不動産売買を仲介している(※2020年度実績)という豊富な不動産取引実績を持つ大手不動産会社です。1972年に会社が設立され、2022年には創立50周年を迎えています。全国に広がる営業ネットワークを駆使し、不動産売買賃貸仲介業、販売受託業、不動産販売業、不動産ソリューション事業の4事業を柱に総合不動産流通事業を展開しています。
東急リバブルの「スピードAI査定」は、登録者が1万人以上を突破しており、特徴的なのは「マンション」「一戸建て」「土地」の3つの種別に対応していることです。またマンションの場合、売却と賃貸の両方の査定を行ってくれます。査定した結果をもとに、売却するか賃貸にするか決めるといったこともできます。
5 不動産AI査定を利用する際の注意点
不動産AI査定を提供するサービスが増えていますが、提示される査定価格はあくまで参考価格であり、実際に売却が出来る価格(成約価格)とは差が出てくるという点に注意が必要です。
不動産売買は売主と買主の相対取引になるため、売出価格の設定は売主の言い値となります。しかし、相場価格と相違がある場合、売却まで時間がかかったり、買主から大幅な値下げ交渉をされたりなどのデメリットがあります。
しかし、不動産AI査定では物件の細かな状態や、購入検討者の個別具体的なニーズまで加味して査定することができません。売買の成約に至るまでは様々な交渉が発生する取引形態であることから、AI査定で提示される価格で、そのまま売却できるとは限らないのです。
そのほかの注意点として考えられるのは以下のようなことです。
- 提供するサイトによって学習するデータが異なる
- 地域によってはデータが少ないといったケースがある
- 急激な不動産価格の上昇・下落に対応できない、など
不動産AI査定では、提供するサイトによって学習するデータが異なっています。地域によってはデータが少ない、データがないといったケースもあり、エリアによって精度が異なっていることもあります。
また、過去の事例をもとに査定価格を算出するため、急激に不動産価格が上昇または下落しているエリアでは、精度が低下している可能性もあります。
まとめ
不動産売却を検討されている方の中には、不動産AI査定サービスを提供しているサイトを目にしたこともあるでしょう。物件情報の入力項目も少なく、またその場で査定価格が提示されるため、気軽に利用できるサービスという特徴があります。
ただし、提示される価格はあくまでも参考価格で、データ量の少ないエリアなどではさらに精度は低くなることも考えられます。不動産AI査定で提示された価格を鵜呑みにせず、参考情報の一つとしてとらえ、売却戦略に合わせて柔軟に対応されていくと良いでしょう。
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