NFTのゲームチェンジとなるか?新規格「ERC-6551」で実装される「トークンバウンドアカウント(TBA)」
今回は、Web3.0とDAOをテーマに事業を行うFracton Ventures株式会社の中村翔太 氏から寄稿いただいたコラムをご紹介します。
目次
- ERC-6551とは
- ERC-6551の活用例
2-1. Sapienz
2-2. Tokenbound.org - 最後に
2017年に、NFT(Non-fungible Token)と呼ばれる規格がEthereumネットワーク上に誕生して以来、ゲームアイテムやデジタルアート、音楽、仮想の土地やアイデンティティなど幅広く利用されてきました。
本記事では、NFTの拡張機能として、今年の2月に新しく提案されたERC-6551(Non-fungible Token Bound Accounts)について、機能や実際に利用されているプロジェクトの例などを紹介します。
ERC-6551とは
ERC-6551は、FUTURE PRIMITIVEのJayden Windle氏とBenny Giang氏らによって提案されました。Benny氏は、NFTを活用したゲームであるCryptoKittiesのCo-Founderとしても知られており、CryptoKittiesはERC721を用いた最初のユースケースの一つとして著名です。ERC6551は、NFTの初期段階から貢献をしているBenny氏が新しく提案した規格ということでも注目を集めています。 また、NFT関連のノーコードツールThirdwebがTwitterでERC6551について言及していることから、既存のNFT関連のプロジェクトもこの新規格について注目をしているがわかります。
ERC-6551 is the latest Ethereum standard which could completely transform the way we think about NFTs
Here's a full technical breakdown on ERC-6551 and 'Token Bound Accounts'.
Let's get you up to speed.
— thirdweb (@thirdweb) May 9, 2023
ERC-6551が提案されているEthereum Improvement Proposals(EIP)では、「すべてのERC-721トークンにスマートコントラクトアカウントを与えるシステム」とまとめられており、Token Bound Account(TBA)とも表現されています。
本提案では、TBAのデプロイとTBAのアドレス算出する「Registry」、およびETHの受け取りを行うreceive関数やコントラクトとのやりとりを行うためのexecuteCall関数などを定義している「Account」の、2つインターフェースで構成されています。また、TBAは、ERC-721によって「所有(owned)」されるコントラクトアカウントとして機能し、TBAが所有するERC-20やNFTなどのアセットの制御はTBAと紐づいたNFTの所有者に委譲されます。また、単一のERC-721に対して複数のTBAを紐づけることが可能となっています。
つまり、NFT一つに対し複数のウォレットを持たせることが可能になっており、紐づけたウォレットを使い分けることにより、より多彩な状態をブロックチェーン上で表現することが可能になっています。
ERC-721トークンはエージェントとして機能したり、他のオンチェーンアセットと関連付けたりすることはできないといった欠点について言及されており、以前からそれらを解決しようとする旨の提案がなされていましたが、すでに実装されているERC-721コントラクトとの互換性が失われてしまうという問題を抱えていまいした。しかし、ERC-6551の登場により既存のERC-721コントラクトとの後方互換性を維持した状態でのERC-721へのアカウントアドレスと機能の付与を実現しました。この観点から、ERC-6551は従来抱えていた課題も解決しています。
ERC-6551のユースケースとして以下のようなものが例として提示されています。
- アイテム、衣装、装備品を所有するためのインベントリシステム
- コミュニティへの愛着度合いや評判システム
- 資産(アート、コレクターズアイテム、DeFi)のまとまりをミントまたはキュレーション
- コンポーザブルなメディア構造
- 新しいオンチェーンゲームメカニズム
- オンチェーンミームと派生した経済圏
- ウォレットに代わるオンボーディングツールとしてのNFT
また、以前よりNFTは、ブロックチェーンコミュニティでのアイデンティティとして機能・普及してる背景から、NFTの活用の幅が大きく増えるため、今後、デベロッパー、ユーザー含めたコミュニティ全体からのERC-6551への関心は、より一層高まっていくだろうと考えられます。
ERC-6551の活用例
Sapienz
Sapienzは、jeffstaple氏によって2021年に設立されたStapleverseにより運営されているNFTプロジェクトです。また、本プロジェクトは、イラストレーターとして活躍するRhymezlikedimez氏とパートナーシップを結び「クリエイティブな起業家たちが活躍する、未来のNeue New York」をイメージして進められており、次の100年以上のストリートカルチャーを変えるためのプラットフォームとして機能するよう目指しているとしています。SapienzのカテゴリーはPFPであり、プレイアブルキャラクターのコレクションとして15,000個供給される予定としています。
Sapienzが、ERC-6551を活用している点としては「SAPIENZ GEAR」というものが用意されており、これはSapienzのPFPとしてのレンダリングに対して大きく影響しています。SAPIENZ GEARは「Headgear・Accessories・Background・Clothing・Items」の5種類に分類されており、これらは常にガスフリーで変更可能で自分自身を真に表現することができるとしています。ERC-6551の機能の性質上、TBAが保有するNFTなどの資産はバンドルされているため、TBAと紐付けたNF(ここではSapienz)をTransferするとTBAが保有する資産(同じくSAPIENZ GEAR)も全てTransferしてしまうので注意が必要です。
Tokenbound
Tokenboundは、SapienzのようなNFTプロジェクトではなく、デベロッパーがERC-6551アカウントをアプリケーションに簡単に統合できるようにするオープンソースツールであり、ERC-6551アカウントの「実装・対話するためのフロントエンドSDK・表示と操作のためのアカウントエクスプローラーUI」を提供しています。
また、Tokenboundチームはセキュリティ面に関して真剣に取り組んでいるとし、すでに0xMacro(スマートコントラクトの監査機関)による予備監査を終えており、今後、Certikによる追加監査(貢献者パートナーであるManifoldのサポートによる)を実施し、Code4renaによる追加補償を求める予定としています。
最後に
本記事では、NFTの拡張規格であるERC-6551の機能やユースケースなどについて触れてきました。ブロックチェーンコミュニティでは、PFPでの利用や、オンチェーンアイデンティティ関連への応用を議論している一方で、Transfer可能なウォレットとしての使い道を模索する意見も見受けられ、幅広く活用されると考えます。また、執筆時点での本提案はドラフトであるた変更が加わっている可能性がありますので十分注意ください。
【参照記事】ERC-6551: Non-fungible Token Bound Accounts
【参照記事】SAPIENZ FAQ
【参照記事】What is ERC-6551? Token Bound Accounts Explained
【参照URL】STAPLEVERSE Official Keynote PT3
ディスクレーマー:なお、NFTと呼ばれる属性の内、発行種類や発行形式によって法令上の扱いが異なる場合がございます。詳しくはブロックチェーン・暗号資産分野にお詳しい弁護士などにご確認ください。
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Source: 仮想通貨の最新情報BTCN | ビットコインニュース
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