不動産経営における出口戦略「サステナブル住宅」のポイントは?5つ解説
サステナブル住宅とは、次世代に受け継いでいく視点を取り入れた長寿命住宅のことです。住宅を次世代に受け継ぐためには、建物が長期の使用に耐え、また人々が「住みたい」と思えるような住環境が保たれることがポイントになります。
このようなサステナブル住宅の特徴は、不動産経営の出口戦略においても有効な選択肢です。新築を検討するうえでも、また既存物件をリフォームするうえでも、サステナブル住宅の考え方を取り入れて資産価値の維持・向上を目指していきましょう。
今回は、出口戦略をふまえたサステナブル住宅での経営のポイントについて5つ紹介していきます。
目次
- 不動産経営における出口戦略とは
1-1.出口の主なアクション
1-2.出口戦略の成功とは?
1-3.不動産経営を始める時点で出口戦略を策定することが大切 - サステナブル住宅での経営が出口戦略にもたらす効果
- 出口戦略を見据えたサステナブル住宅の5つのポイント
3-1.ポイント①|長期優良住宅での建設
3-2.ポイント②|木造建築の活用
3-3.ポイント③|修繕や設備更新に配慮した物件
3-4.ポイント④|可変性の高い住宅
3-5.ポイント⑤|周辺環境に配慮した住宅 - まとめ
1 不動産経営における出口戦略とは
不動産経営における出口戦略とは、保有する不動産を何らかの形で処分して、その物件での経営を終了するための戦略です。物件の売却がイメージされますが、その他にもいくつか手だては存在します。
なお、複数物件で不動産経営をおこなっているときは、基本的にはそのなかの一つの物件の経営を終了するための戦略を「出口戦略」と呼び、すべての不動産経営を手仕舞いすることを指しません。
出口戦略はある物件の不動産経営を終了するときの対策ですが、経営を始める段階から工夫しておくことが重要なポイントとなります。
1-1 出口の主なアクション
不動産投資における出口におけるアクションは次のようなプランが考えられます。
- 売却
- 更地売却
- 建て替え
- 相続
出口戦略を考えるときにイメージしやすいのは物件の売却です。売却は既存の建物を中古物件のまま売却する方法のほか、更地にして売却することもできます。
なお、売却を意図していない場合でも不動産会社の査定を受けておき「売却した場合とどちらが良いか?」と勘案できるよう、売却を一つの指標とすることもポイントです。建物の資産価値や解体コストなどをふまえて合理的な手法を選択することになります。
また、建て替えをした場合には、売却する方法と、新たな物件で自分で経営を再開する方法があります。その他、家族や親戚などに不動産を相続することで、不動産経営を終了することも可能です。
1-2 出口戦略の成功とは?
最も単純に考えれば、投資は投下した資金よりも得た資金が多ければひとまず収支はプラスとなります。さらに収支が目標とする利回りや金額に達していれば、投資としては成功です。
長期投資を行うケースの多い不動産経営においては、収入も支出も複数の要素があります。
収入の例
- 賃料収入
- 赤字計上に伴う税還付
- 売却時の収益*
*売却価格>売却に伴う手数料+残債の時に発生
支出の例
- 初期費用
- 管理費用
- 税支払い
- 修繕・リフォームや建て替え価格
- 売却時の損失*
*売却価格<売却に伴う手数料+残債の時に発生
以上の要素を全て加味したときに、収益目標を達成した状態で不動産経営を終了できるようにすることが、出口戦略を策定する主な目的です。
1-3 不動産経営を始める時点で出口戦略を策定することが大切
出口戦略=不動産経営を終了するときの戦略だからといって、その時になってから経営を終了する方法を考えるのは適切ではありません。
不動産経営を終了する間際では、すでに賃料収入、費用とも実現した要素が多く、また不動産の資産価値も簡単に向上させられるものではないため、仮に損失が増えて経営に失敗していたとしても、状況を改善する手段が限られるためです。
不動産経営を始める前から出口戦略を計画し、どのタイミングでどのくらいの収支を実現したいのかを明確にしながら、目標を達成できる物件の購入もしくは新築を計画するのが理想です。
また、物件保有中も、出口戦略をもとに適切に設備更新・修繕をおこなうことで、資産価値を維持していきましょう。
2 サステナブル住宅での経営が出口戦略にもたらす効果
出口戦略をうまく実行していくうえでは、質の高い不動産物件の所有・管理を通じて資産価値を維持することが有効な手段となります。
その点では、サステナブル住宅の考え方を取り入れた物件で不動産経営を行うことが、出口戦略を立てやすくなります。サステナブル住宅が出口戦略に与える効果についてみていきましょう。
- 長寿命住宅のため解体のリスクが減少
- 環境変化に強い物件で資産価値の維持が期待できる
- SDGsへの貢献もプラスに
- 相続という出口戦略を検討しやすくなる
再開発に伴い割高な売却代金が得られるなどの特殊事情がない限り、解体は建物の価値がゼロになったときや、住居として使用することが難しい場合に検討される方法です。
解体や建替えは高額なコストが発生するため、建物の資産価値がしっかり残るのであれば、建物を残したままで不動産経営を終了する方針を取るのが有効な判断といえます。
サステナブル住宅は耐久性の高さが特徴の一つとなるため、経年劣化が進みにくくなります。そのため、解体せずに売却できる可能性は向上するでしょう。
また同時に、気候変動への対応力、社会環境や居住ニーズへの対応力が高いのもサステナブル住宅の特徴です。将来環境が変化しても住み続けられる物件は魅力的な価格で売却しやすくなると期待されます。
サステナブル住宅での不動産経営は、SDGsに対する貢献性が高く環境面・社会面での課題解決に役立ちます。SDGsを意識する投資家の購入需要が期待できるため、出口戦略を進めやすくなるでしょう。
最後に相続という戦略を取りやすくなります。サステナブル住宅であれば、不動産の魅力がしっかり残った状態で資産を引き継ぐことができるため、次の世代もうまく不動産経営を進めやすくなります。
相続による出口戦略の選択肢がこれまでより身近なものになるでしょう。
3 出口戦略を見据えたサステナブル住宅の5つのポイント
出口戦略の策定に寄与するサステナブル住宅のポイントを5つ紹介します。住宅が長期間本来の機能を維持し、少ないコストで管理できるならば、出口戦略を組みやすくなるでしょう。
また、可変性の高さや周辺環境との調和などにより、現代および将来の居住者・周辺住民が快適に暮らせるよう配慮することも大切です。
3-1 ポイント①|長期優良住宅での建設
長期にわたり建物の資産価値を維持するためには、耐用年数の長い物件の建設や保有を行うことが大前提となります。
例えば住宅の場合は「長期優良住宅」の認定された住宅や、同等の性能を持つ住宅で不動産経営を行うのが有効な選択肢となります。
同制度は国土交通省が定める「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づいて認定されるものです。長期にわたり利用できる構造や一定程度の住戸面積など、複数の基準が設定されています。
また施工業者は、建設後の維持・管理方法などを「維持保全計画」としてまとめなければなりません。
長期優良住宅は保全計画だけでも(新築の場合)30年以上の期間で策定することが求められており、認定された物件は長期にわたり人が住み続けられると期待できます。資産価値を維持しやすい物件となるため、出口戦略を策定しやすくなるでしょう。
【関連記事】アパート経営で長期優良住宅の認定を受けるメリットは?認定条件や事例も
3-2 ポイント②|木造建築の活用
近年は木造建築のSDGsに対する貢献性の高さに着目されています。木造建築は税法上の耐用年数が相対的に短いため「長持ちしない」と誤解されがちです。
しかし、木造でも適切な施工・管理を通じて長期優良住宅の認定を受けられるほど長期仕様に耐える物件にすることは可能です。
また、品質の高い木造建築は断熱性能が高くなりやすく、外気温の変化の影響を受けにくい住宅を建てられます。夏涼しく、冬暖かい居住環境が実現し、将来の気候変動リスクへの対策として有効です。
空調使用を自然に抑えられるため、エネルギー消費の抑制などにもつながります。
木造物件で不動産経営を行えば、環境性能の高さやエネルギー使用の抑制に寄与する点が、売却時に高く評価されると期待されます。そのため、出口戦略を描く上で有効な選択肢となるでしょう。
【関連記事】社会貢献と収益の両立へ。アパート経営でできるSDGs・サステナビリティの取り組みは?
3-3 ポイント③|修繕や設備更新に配慮した物件
建物を長持ちさせるうえでは、適切な管理も重要な要件となります。サステナブル住宅の指針においては、管理のしやすさや修繕頻度の抑制への配慮も求められます。
施工業者が住宅の構造や維持・管理の方法について書面や資料を不足なく用意していて、かつ、追加の要確認事項があったときには説明責任を果たせる物件であることが大切です。また、継続的な点検や管理がしやすい構造となっていることもポイントとなります。
施工業者が住宅の構造などの説明責任を果たし、また、複雑で手に入りにくい建材を避けるなど、スムーズな大規模修繕に役立つ構造になっていると良いでしょう。
さらに、建材や設備の耐用年数や耐久性が高く、大規模修繕の頻度が少なく済む物件は、コストをかけずに物件を長期運用できるため、さらにサステナブル住宅として質が高いといえます。
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3-4 ポイント④|可変性の高い住宅
間取りや設備の面で可変性の高い住宅であることも、サステナブル住宅の重要な要件の一つです。日本全体や地域の人口動態の変化、居住者の加齢や家族構成の変化などに伴い、理想的な住宅構造は時代とともに変化する可能性があります。
全ての時代のニーズに応える物件を実現することは不可能なので、その時々に応じて改築がしやすい物件であることが、サステナブル住宅の観点から有効です。
近年はスケルトン・インフィル(Skeleton-Infill)という考え方があります。構造体(スケルトン)と、間仕切り壁・内装(インフィル)を分けて設計し、またインフィルだけを容易に変更できる仕組みを持つ建物を指します。
こうしたタイプの物件であれば、その時々のニーズに応じて最適な施設を維持できるため、長期にわたり資産価値を高く保つことができます。
3-5 ポイント⑤|周辺環境に配慮した住宅
建物自体の耐久性が高くとも、周囲に悪影響を与えたり、景観上望ましくないと判断されたりすれば、寿命を全うせずに早々と取り壊されるリスクが高くなります。
建築基準法のほか、その地域の景観条例などを踏まえて、準拠した物件を建設・保有することがまず大前提となります。
さらに、周囲の環境に悪影響を与えないことも大切です。例えば、排水・排気などが周囲の環境汚染を引き起こさないよう気を配る必要があります。さらに、遮音性にも着目しましょう。
室内の音が外に漏れて騒音問題となりやすい物件は好まれず、出口において思うように買い手がつかないリスクがあります。周辺環境に溶け込み、また環境悪化を引き起こさないことも、サステナブル住宅に求められる要件の一つです。
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まとめ
出口戦略は売却や建て替えなど、今保有する物件での不動産経営を終了するときの戦略を意味しますが、いざ経営を終了するときに考え始めるのは望ましくありません。
建設や購入、管理という不動産経営のライフサイクル全体について、出口戦略を念頭に、不動産経営を進めることが大切です。
サステナブル住宅は今ある建物を持続的に活用することを前提とした考え方であるため、SDGsへの貢献につながるとともに、建物の資産価値の維持・向上にも役立ちます。
不動産経営で出口戦略を策定する際は、サステナブル住宅の視点を取り入れることで、より具体的なアクションに繋げやすくなるでしょう。
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