「循環型社会」の視点から考える、木造物件への不動産投資の意義は?

無駄遣いや廃棄につながる製品の大量生産などを減らし、可能な限りリユース・リサイクルが実現されている社会を「循環型社会」と呼びます。資源の保護や二酸化炭素の排出抑制などを通じて、循環型社会はSDGsにおいて目指している持続的な社会の形成に貢献するものといえます。

不動産投資の枠組みの中で循環型社会の形成に貢献する一つの方法として、木造物件への投資があります。この記事では、循環型社会の形成に対して木造物件が果たす役割や、木造物件で不動産投資を行う意義について紹介します。

目次

  1. 「循環型社会」とは?
  2. 建物の木造化が「循環型社会」推進に果たす役割
    2-1.建設・加工におけるエネルギー消費が少ない
    2-2.植林により再生が可能
    2-3.炭素貯蔵の効果が期待できる
    2-4.断熱・調湿効果によるエネルギー使用の抑制
    2-5.国内材を使用すれば地産地消を促進できる
  3. 木造建築物の普及状況
  4. 木造物件で不動産投資を行う意義とは?
    4-1.新築購入により木造物件の増加に貢献
    4-2.木造の中古物件や空き家を長寿命化に
    4-3.断熱・調湿効果の高い物件で間接的に資源を節約
    4-4.建設や管理の工夫によりさらに貢献度を高められる
  5. まとめ

1 「循環型社会」とは?

循環型社会とは、製品の製造や流通、廃棄に至る過程での効率的な利用や、リサイクルを行うことで大量生産・大量消費・大量廃棄から脱却しようとする取り組みです。しばしば「3つのR」という言葉で表現されます。

  • Reduce(減らす):無駄遣いしない、少ない原材料で製造する、廃棄を減らすなど
  • Reuse(繰り返し使う):使えるものは繰り返し使う
  • Recycle(リサイクルする):資源として再利用する

以上の取り組みを高いレベルで行い、資源を守る社会が「循環型社会」です。循環型社会を実現すれば、資源保護とともに、エネルギー消費の抑制による環境保護にもつながります。

さらに、地域の資源を地域で消費する「地産地消」を促進すれば、ほかの地域の環境破壊や資源の過剰消費を防ぐことにもつながります。

2 建物の木造化が「循環型社会」推進に果たす役割

かつては木造建築=環境破壊のイメージが強かったのですが、近年は考え方が改められ、むしろ循環型社会の達成と地球温暖化の抑制を両立する手法であると、注目されはじめています。

近年は政府からも木造建築を推進するための法律が制定されはじめています。ここからは木造建築が循環型社会に果たす役割や、木造建築の推進状況について紹介していきます。

2-1 建設・加工におけるエネルギー消費が少ない

現代では適切に分別された建材であれば、リサイクル自体は木造でもコンクリート造りでも高い比率で可能です。しかし、木造の方が、建築・廃棄・リサイクルというライフサイクルの過程におけるエネルギー消費が相対的に少なくすみます。

コンクリートや鉄筋は原料から建材に加工する過程で、高温の処理や工場での加工が多く必要になるため、必然的にエネルギーを多く消費します。

さらに、鉄やコンクリートの方が相対的に重量が重くなるため、輸送にも多くのエネルギーを使用します。100%再生可能エネルギーを使用する社会にならない限り、エネルギー消費が多いということは、何らかの資源を消費し、また間接的にCO2を多く排出する原因となります。

自然の木を使用する木造の方が、相対的に加工・運搬の手間が少なく、また廃棄・再利用する際にも、資源をあまり消費することなくプロセスを進められるのです。

2-2 植林により再生が可能

木は植林をすることで、資源の再生が可能です。これは鉄やコンクリートなど鉱物を消費する材質にはない特徴といえます。かつては植林によって再生するペースより木材を伐採するペースが早く、かつ木材のリサイクル技術も未熟だったため、木材使用=森林減少というイメージが先行していました。

しかし現代のように、建材の大半をリサイクルできる場合には、木をリサイクルしながら消費し、その分植林によって森林を再生させる、というプロセスで不動産を建築することで、優れた循環型社会のモデルを成立させることが可能なのです。

実際の取り組み事例としては、株式会社ウッドフレンズが取り組む「木質資源カスケード事業」があります。地域の木材を積極的に活用することで、森林を適正に循環させることを目標とし、木材を無駄なく有効活用し、かつ製造小売による流通変革により、国産材を低価格で提供することにも成功しています。

ウッドフレンズ「木質資源カスケード事業への挑戦」より画像引用

株式会社ウッドフレンズが運営する不動産クラウドファンディング事業に「信長ファンディング」というサービスがあります。1口10万円から不動産へ間接的に投資が可能となっており、主には想定利回り5.0%・12カ月運用のファンドが提供されています。

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2-3 炭素貯蔵の効果が期待できる

木材は成長過程で光合成を通じて多くの炭素を貯蔵します。木材をそのまま使用すると炭素は住宅の壁に吸収されたまま残ることになります。

燃料などに再利用しない限りは炭素は長期間にわたり固定される一方で、その間に植林などにより使用した木が再生すれば、その木がさらに炭素を貯蔵することになります。このサイクルを繰り返すことで、実質的に脱炭素化の促進効果が期待できるのです。

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2-4 断熱・調湿効果によるエネルギー使用の抑制

木造の建築物は、同程度の広さの鉄筋コンクリート造の建物より断熱効果や調湿効果があります。木の表面の微小な気孔が空気の層を形成することで熱をしゃ断してくれるため断熱効果があります。また、木材は乾燥時に水分を放出し、湿気が多い時は吸収する仕組みを持っているため、調湿効果もあるのです。

木造の建築物は冷暖房や除湿・加湿を機械であまり行わなくてもすみます。これらの機械使用に伴うエネルギー消費が抑制されるため、資源保護や二酸化炭素排出の抑制につながります。

2-5 国内材を使用すれば地産地消を促進できる

コンクリートや鉄筋の場合は、多くの比率で他国の資源やエネルギーを使って建物を建てることになるため、日本の中だけでは循環が形成されているとは言えません。一方で木材の場合は、国内材を積極的に使用し、また植林を積極化していけば、地産地消によるより高度な循環型社会が実現されます。

国内材は高価で輸入材を使用する建物も多いため、この役割を果たしている木造建築物はまだ充分に多いとは言えません。国内材による木造建築物の普及に貢献するために、自身が不動産投資を行う場合には、使用する材木の産地にも着目してみると良いでしょう。

なお、商品の原料や取引の履歴などをさかのぼって確認できるよう情報公開を積極的に行うことを「トレーサビリティ」と言います。多くの資材を必要とする不動産投資においても近年注目されている施策の一つとなってきています。

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3 木造建築物の普及状況

木造建造物の普及が循環型社会にさまざまな面から貢献することを踏まえて、政府では平成22年に「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」を制定し、公共建造物における木造建築普及を進めています。この取り組みには一定の効果が現れており、令和2年度時点で、低層の公共建築物の木造の比率が10年前比で約12%、公共建築物全体でも約6%増加しています。

公共建築物の木造率の推移

出典:林野庁「令和2年度の公共建築物の木造率について
注1:国土交通省建築着工統計調査(令和2年度)のデータを元に林野庁が試算、注2:木造とは、建築基準法第2条第5号の主要構造部(壁、柱、はり、屋根又は階段)に木材を利用したものをいう。建築物の全部又はその部分が2種以上の構造からなるときは、床面積の合計のうち、最も大きい部分を占める構造によって分類する。注3:木造率の試算の対象には住宅を含む。また、新築、増築及び改築を含む(低層の公共建築物については新築のみ)。注4:公共建築物とは、国及び地方公共団体が建築する全ての建築物並びに民間事業者が建築する教育施設、医療、福祉施設等の建築物をいう。

政府では、公共建築物に限らず、幅広い建築物の木造化を推進する意味合いで、令和3年に同法を改正し「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」として、一般建築物の木造化の普及に舵を切りはじめています。

一般建築物においては、特に高層建築物では鉄筋コンクリート造りが中心で、たとえば2019年着工の建造物では、4階以上の建築物にはほとんど木造がありませんでした。また、オフィスや商工業施設など非住宅については、全体的に木造の物件が少なくなっています。

2019年着工の物件の木造・非木造の床面積(千平方メートル)

出典:林野庁「第1部 第3章 第2節 木材利用の動向(2)
注:住宅とは居住専用建築物、居住専用準住宅、居住産業併用建築物の合計、非住宅はそれ以外。国土交通省「建築着工統計調査2019年」より林野庁作成

また、住宅についても、過去からの推移を見ると、着実に非木造の建築物が増えてきている流れがあります。政府の期待に逆行する動きです。

住宅の構造別割合の推移

背景には、防火性や耐震性に対する不安や、一昔前まで木の使用=環境破壊というイメージがあり、むしろ木の消費を抑制する流れがあったものと考えられます。

しかし、現代では木造でも充分な防火性・耐震性を有する建築が可能で、最近では高層ビルを木造で建設する事例も少しずつ出始めています。循環型社会の形成に向けて不動産の領域からできることとして、木造建築物の普及が期待されるところです。

4 木造物件で不動産投資を行う意義とは?

木造建築物が循環型社会の形成にプラスに働くことが明らかになってきているものの、2023年時点ではまだ充分に普及しているとは言えません。そこで、木造物件へ投資し不動産経営を行うことで、木造建築物の普及に貢献する余地があるといえます。

4-1 新築購入により木造物件の増加に貢献

新築の木造物件を購入して不動産投資を行えば、木造物件普及に貢献が可能です。特に効果が大きいのは、住宅以外の物件や3階建て以上の集合住宅の一棟投資です。これらのカテゴリーはまだ木造物件の割合が少ないため、その分投資家が果たす役割は大きいといえるでしょう。

2023年時点ではまだ物件数が限られていますが、近い将来は木造マンションの数も増えてくると期待されます。その時に、木造の高層建築で一棟投資ができれば果たす役割は一段と大きくなります。また一棟が難しくとも、区分所有を通じて木造物件へ投資することも可能です。

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4-2 木造の中古物件や空き家を長寿命化に

法律上、木造物件は耐用年数が22年と短くなっていますが、古くから現存する木造建築もあることからも分かるように、質の高い技術で建てられ、適切にメンテナンスされた物件は長持ちします。

木材がリサイクル可能とはいえ、リサイクルに消費するエネルギーや解体・運搬に消費するリソースまで含めれば、長期間にわたり現存の建物のまま維持させた方が、循環型社会の観点から望ましいと言えるでしょう。不動産投資の領域で考えれば、木造の中古物件や空き家への再投資し、適切なメンテナンスを通じて長持ちさせることでも、循環型社会の発展への貢献が可能です。

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4-3 断熱・調湿効果の高い物件で間接的に資源を節約

木造建築物は断熱効果、調湿効果が高いため、木造物件で不動産経営を行うと、そこに住む人のエネルギー使用を抑えることができます。

全てのエネルギー源を再生可能エネルギーにでもしない限り、エネルギーを消費すれば何らかの資源を使用します。裏を返すと、断熱・調湿により温度・湿度の調節を抑制すれば、間接的に資源の消費を抑えられるのです。

このように、木造物件での不動産経営は、木造以外の資源消費の抑制にもつながります。

4-4 建設や管理の工夫によりさらに貢献度を高められる

不動産投資のやり方をさまざまなポイントで工夫することで、木造物件での不動産経営を通じて循環型社会の発展にさらに大きな貢献を果たすことができます。

まず、新築物件を建てる場合には、国内材を使用して建設することで、地産地消を達成可能です。また、建材ごとに簡単に分別できた方が、解体時に効率的なリサイクルができます。建設については建築業者に任せるほかないため、解体時のことまで考慮した質の高い建設技術を導入してくれる建設業者を選びましょう。

また、物件の保有期間中の管理にも気を配ることが大切です。質の高い管理業者や修繕時の施工業者を活用することで、物件の機能を長期間維持することができます。さらに物件の寿命を長持ちさせるために、不具合・劣化を放置せず、適切なタイミングで修繕やリフォームを行うこともポイントとなります。

まとめ

木造建築物は、一昔前まで環境破壊につながりかねないという、今とは逆のイメージを持たれることもありました。しかし、リサイクル技術などが発達し、製品のライフサイクル全体で環境へのインパクトを考えるようになった昨今では、木造建築物は循環型社会の形成を促進する有効な手法の一つとなってきています。

まだ木造建築物の普及が途上である中で、不動産投資を木造物件で行い、適切に物件を管理していくことで、循環型社会の発展に貢献していくことが可能になります。持続的な社会の形成に不動産投資の領域で貢献したいと考えている人にとっては、木造物件による不動産経営が、有効な選択肢の一つとなるでしょう。

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