住宅建設で起こる建材ロスとは?建設廃棄物のリサイクルルールや企業事例も
住宅は、私たちの暮らしに欠かせません。道を歩くと、住宅の建設現場に遭遇します。
一方で建物の建設にはたくさんの資源が使われ、同時に廃棄物の量も多くなります。
建物の建設に伴う廃棄物は、建築材料ロス(以下建材ロス)と呼ばれています。初めて聞いた方もいるかもしれません。
今回は、住宅建設における建材ロスの現状と、解決に向けて取り組んでいる企業を紹介します。
※本記事は2023年5月29日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- 建材ロスの実態
1-1.捨てられる建築材料は?
1-2.建設廃棄物のリサイクルルールは?
1-3.建設廃棄物が捨てられる理由は?
1-4.建材ロスが発生する理由は? - 建材ロス解決のため取り組む企業
2-1.有限会社八塩板金工業の事例
2-2.HUB & STOCK株式会社の事例 - まとめ
1.建材ロスの実態
建材ロスが起こる背景には、どのようなものがあるのでしょうか。
1-1.建材ロスの具体的内容
建材ロスとは、現場で余って使用されないまま捨てられてしまう建築材料を指します。具体的な中身は、木材、金属板、ガラス、パイプ、床材、壁紙、タイル、断熱材、塗料など多岐にわたります。
1-2.建設廃棄物のリサイクルルールは?
平成12年に、建築の際に発生する廃棄物の取り扱いについて定めた、「建設⼯事に係る資材の再資源化等に関する法律」が制定されました。
解体時も含め、建築関連で比較的多く発生する廃棄物は、建築発生木材やアスファルト、コンクリート塊です。これらは「特定建設資材廃棄物」と位置付けられており、法律に基づいて厳しく再資源化のルールが定められています。
参考:環境省「令和3年度建設廃棄物の再資源化に関する調査・検討業務報告書」
参考:国土交通省「建設リサイクル基礎知識解説」
1-3.建設廃棄物が捨てられる理由は?
一方で建材ロスの中身は、「特定建設資材廃棄物」にほとんど当てはまりません。建設工事等から発生する廃棄物のうち、安定型産業廃棄物(がれき類、廃プラスチック類金属くず、ガラスくず及び陶磁器くず、ゴムくず)とそれ以外の廃棄物(木くず、紙くず等)が混在しているものを「建設混合廃棄物」と呼び、建材ロスの大半はこれに分類されるものと考えられます。建設混合廃棄物に対しては明確なリサイクルルールがないため、多くの場合、そのままごみとなります。
参考:環境省「建設工事等から生ずる廃棄物の適正処理について」
1-4.建材ロスが発生する理由は?
建築は、作業ミスなどにより資材をダメにしてしまう、急な仕様変更の対応を迫られる、想定外の材料不足などで予定通りに行かないなど、不測の事態に対応しつつ納期を厳守するため、建築資材を必要量よりも多めに発注する習慣があります。
多めに準備した資材は、建物が完成しても、余ってしまうことがほとんどであり、結果としてそのまま廃棄されるため、建材ロスが発生します。
2.建材ロス解決のため取り組む企業
廃棄される建材はコストをかけて捨てられているケースが大半です。そのため、場合によっては不法投棄につながる可能性もあり、深刻な課題です。そんな中、建築業界に共通するこの悩みの解決と、持続可能性の観点から、建材ロスの解決に向けて取り組んでいる企業があります。
具体的な企業と、取り組み事例を2つ紹介します。
2-1.有限会社八塩板金工業の事例
有限会社八塩板金工業は、建築板金工事業を営む企業です。主に金属を用いた外装工事の専門であり、具体的には、金属屋根・外壁工事などのほか、太陽光発電システムの設置工事なども行っています。
板金工事業で取り扱う建材の多くは、鉄や断熱材、プラスチック素材など数種類の素材で構成され、リサイクルしづらいものがほとんどです。リサイクルできない資材は、廃棄コストをかけてごみにするしかありません。
同社では、建築資材のデットストック化や産業廃棄物として処分されている現状を改善するべく、建材が余り困っている企業と、建材が欲しい企業をマッチングするサービス「ノコッタ」を2022年から開始しています。
ノコッタでは、サイトに会員登録をした企業同士が直接やりとりを行います。個人向けのフリマアプリとほぼ同じ仕組みではあるものの、相違点としてはプロ同士のやりとりに限定されている点と、企業名が公開されている点が挙げられるでしょう。利用者同士がビジネスとして安心して取引できる点がメリットで、すでに200社以上が利用しています。
参考:有限会社八塩板金工業「有限会社八塩板金工業」
参考:ノコッタ「ノコッタサービス紹介」
2-2.HUB & STOCK株式会社の事例
同社は、一級建築士の豊田訓平氏が2021年に立ち上げたスタートアップで、株式会社ボーダレス・ジャパンのグループ会社です。同社は、建物やインテリア空間を作る際に余分に発注する資材により発生する建材ロスを、建築業界の企業同士をつなぐことで解消しようとしています。
床材、壁紙、タイル、巾木などを取り扱い建材として仕入れています。仕入れ先は一都三県に所在する20社の建設会社(2022年9月現在)です。
販売方法は、主に公式LINEを使った取引や、サイトの注文フォームからとなります。東京都板橋区にショップを構えているものの、来店予約制です。
ホームセンターの山新グランステージつくばホームセンターと提携し販売しています。
価格はメーカー希望小売価格の7-8割引き、卸価格の2-3割引きと格安で、小ロットでの販売であるため、小規模の住宅リフォームや、賃貸での退去後の現状回復、個人のDIY需要などが多いとしています。
建材を余らせる側の建設会社からすれば、建材を保管、廃棄する手間や処分費用が不要になり、収入にもなるというメリットがあります。欲しい側としては、適量の建材を安価に買うことができます。
今後、事業モデルが整っていくに連れ、建材ロスの削減効果の高まりが期待されます。
参考:HUB&STOCK「HUB&STOCK」
参考:テレビ東京「“もったいない資材”をサステナブルに」
3.まとめ
効率重視、納期厳守の観点から、未使用の建材が廃棄されることは仕方のないことだと、これまで諦められてきました。しかし、問題に向き合う人々が現れ始めたことで、解決に向けて着実に前進しています。
国土交通省によると、産業廃棄物の最終処分量全体において、建築産業が出す廃棄物が占める割合は約2割です(平成30年時点)。廃棄物のうち大きなウェイトを占める建築業界の取り組みは、今後も注目を集めそうです。
参考:国土交通省「「建設リサイクル推進計画2020」(案)~「質」を重視するリサイクルへ~(参考資料)」
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