DAO(分散自律型組織)の立ち上げとマネジメントを円滑化するDAOツール

今回は、Web3.0とDAOをテーマに事業を行うFracton Ventures株式会社の太田航志 氏から寄稿いただいたコラムをご紹介します。

目次

  1. DAOにおけるガバナンス
  2. DAOツール
    2-1. Aragonとは
    2-2. Tallyとは
  3. まとめ

本記事では、Ethereumなどのブロックチェーンにおいて、DAO(分散自律型組織)の立ち上げとマネジメントを円滑化するツールについて、DAOにおけるガバナンスなどを俯瞰しながら、いくつかの具体的なプロジェクトを元に深堀します。Crypto領域の勃興と共にさまざなDAOが登場し、試行錯誤が繰り返されながら、理論的な研究と実務的な取り組みは、進展しています。

DAOとは、一般にスマートコントラクトなどの一定のプログラムに基づいて資産が管理され、中央集権的な管理者なく、参加者による投票などに基づいて、自律的に運営される組織を指します。一方、DAOにはさまざまな解釈が入り混じっており、例えば日本においては人々のコミュニティをベースとする組織のことをDAOと表現する場合もあります。この場合には、DiscordやTelegramなどを活用することで、容易にその立ち上げを行うことが出来るでしょう。

一方定義として用いたDAOの場合には、資産の管理や投票の仕組み、DAO内のトークンアロケーションの決定など、コントラクトで定義すべき要件や変数が多岐に渡るのです。もちろん、これらの設計を一から構築することも可能ですが、それには大変な労力を要するわけであり、ハッキングや種々の脆弱性など様々なリスクも伴います。本記事ではDAOツールについて、その代表的なプロジェクトであるAragon、Tallyなどを例に具体的な解説、紹介を致します。

DAOにおけるガバナンス

本記事の下記では、TallyやAragonなどについて言及いたしますが、上記のツールは、DAOにおけるオンチェーンガバナンスを志向するプロジェクトとなります。本セクションでは、はじめにオンチェーンガバナンスの概要や特徴、対照的な概念であるオフチェーンガバナンスについても踏まえながら、その理解を深めます。

オンチェーンガバナンスとは、一般にブロックチェーンにおける分散型のガバナンスプロセスを指します。具体的には、ネットワーク内のすべてのステークホルダーがプロトコルのパラメーターやソフトウェアアップグレード、リソース割り当てといった提案や課題について合意に達する方法などを想定しています。オンチェーンガバナンスの目標は、公平で透明性があり、単一障害点を極力生まないネットワークを構成することにあるのです。オンチェーンガバナンスは、スマートコントラクトベースとして、オンチェーン投票の結果に基づいて提案を自動的に執行するように設計でき、またそれが信頼できるサードパーティやコアチームなどに依存する必要がなく実行可能となります。

一方、オフチェーンガバナンスでは透明性の低さや仮にDAO内のガバナンスにより合意形成がなされたとしても、それに沿って実装がなされないといった懸念がありました。もちろんこのことはオンチェーンガバナンスがいかなる局面であっても万能であるという示している訳ではありません。例えば柔軟性という観点から見れば、オフチェーンのガバナンスでは、当然ブロックチェーン技術による制限は課されないため、柔軟に議論、交渉、意思決定を行うことができ、手動介入と迅速な対応も容易となることが考えられます。

現状、オンチェーンとオフチェーンのガバナンスにはそれぞれ長所と短所があります。結論としてオンチェーンガバナンスは、高い透明性、自動実行、さまざまユーザーな参加を特徴としていますが、実際の参加の少なさやインセンティブ不足など、課題に直面しています。オフチェーンのガバナンスは、手動介入と迅速な対応のための柔軟性を高めますが、その意思決定プロセスは十分に透明ではなく、その集中化に対して脆弱であると言えるでしょう。実際、多くのプロトコルやアプリケーションは、より効率的で公平かつ持続可能なガバナンスを実現するために、オンチェーンガバナンスとオフチェーンガバナンスの組み合わせを採用しています。

DAOツール

さて、DAOツールといえば、かなり広範な定義になってしまうが、本記事で取り扱う内容は、先の例でも取り上げたAragon、TallyなどDAOの立ち上げやマネジメントを支援するツールとなります。

DAOといってもただその構成員が、コミュニケーションをとれる場を整備するだけでは不十分で、例えば資産はどのように管理されるのか、トークンは移転は可能か、トークンスワップを実装するのかなど、設定すべき事項はさまざまあります。先のDAOツールは、これらをアプリケーションとして提供し、ユーザーは上記の条件や変数を入力するだけで、DAOの組成、運営が可能となります。実際にDAOツールの利用は急速に拡大しており、例えばUniswapやAave、LidoなどトップティアプロダクトもTallyやAragonを活用しています。

Aragonとは

引用:Aragon App


Aragonは2017年にLuis Cuende氏とJorge Izquierdo氏によって創設されたDAOのフロントエンドを提供するサービスで、DAOにおけるトークンの発行やその管理、トレジャリーマネジメント、柔軟な設定を可能とするガバナンス機能などを提供しています。

Aragonでは具体的な投票のメカニズムやプロポーザルの採択までプロセス、そしてどの主体にどのような権限を保持させるのかについてなどきめ細かく、分散型のガバナンスモデルを実装できます。投票メカニズムの一つを取っても、単純な多数決、トークン保有量に基づく加重投票、またはより複雑な投票メカニズムなどを設定することができます。トークン発行や管理の設定についても対応しており、例えばユーザーはDAOにおいてどのアドレスにどれくらいのトークンを配布するのかといった点やメンバーシップなどこちらも柔軟な設定が可能となります。

それ以外にもトレジャリーやその他カスタマイズ可能な機能を多数提供しており、使い勝手の良い設計がなされています。

Tallyとは

引用:Tally


Tallyは、オンチェーンのDAOフロントエンドです。ユーザーはTallyを通じて投票権のデリゲートやDAOの資金を用いる提案を作成、承認、スマートコントラクトをアップグレードなど行うことができます。またTallyが提供するさまざなダッシュボードを元にリアルタイムでアクティブな提案を確認することが可能なほか、現在の投票数やその賛否、いつ誰が投票したのかという詳細な情報についても容易にアクセスすることができるのです。

このようにTallyはオンチェーンDAO(ブロックチェーン上で運用されるDAO)の運営を支援します。実際に500以上のオンチェーンDAOに対して1,000億ドル以上の資産、5,000以上の提案、15,000以上のデリゲートについて扱っています。Aragonは、現状対応しているネットワークがEthereumとPolygonとなっており、やや限定的な感はある一方、Tallyは互換性が非常に高く、Ethereum、Polygon、Optimism、Arbitrum、Avalanche、BSC、Gnosisおよび各テストネットワーク上のDAO ガバナンスコントラクトをサポートしています。

まとめ

今回はAragon、Tallyといった代表的なDAOツールを理解しながら、それらのツールが必要とされる理由、またそもそもオンチェーンガバナンスとは何か、その利点欠点になどについても概観しました。DAOを支える縁の下の力持ち的な存在を放つツールは上記以外にも枚挙にいとまがありません。ブロックチェーンやNFT、DeFiプロジェクトと比較するとこれらのプロダクトはやや認知が低い傾向にありますが、間違いなく、これまでもそして今後もDAO、Cryptoプロダクトを支え重要なピースであり続けるでしょう。

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Source: 仮想通貨の最新情報BTCN | ビットコインニュース
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