【米国株ESG】AIで覇権獲得狙うマイクロソフトのサステナブルな取り組みは?組み入れファンドも紹介

かつて「ウィンテル連合(ウィンドウズとインテル)」の一角としてパソコン市場を席捲したのがマイクロソフト(ティッカーシンボル:MSFT)です。

2023年時点では、人工知能(AI)で覇権獲得を狙っており、再びテクノロジー業界の主役に躍り出ました。同社は気候変動の分野でも野心的な目標を掲げています。

そこで今回は、マイクロソフトの概要をおさらいした上で、同社のサステナブルな取り組みやESG(環境、社会、ガバナンス)評価、業績、株価動向、組み入れファンドを紹介します。

※2023年6月時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. AIでリード目論むマイクロソフト
  2. マイクロソフトのサステナビリティ
    2-1 カーボンネガティブの取り組み
  3. マイクロソフトのESG評価
  4. マイクロソフトの業績、株価動向
  5. マイクロソフトの組み入れファンド2選
    5-1 モルガン・スタンレー グローバル・プレミアム株式オープン
    5-2 アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Bコース(為替ヘッジなし)
  6. まとめ

1 AIでリード目論むマイクロソフト

マイクロソフトは1975年、ビル・ゲイツ氏とポール・アレン氏が立ち上げたソフトウェア会社です。ビル・ゲイツ氏は、気候変動やヘルスケアといったグローバル課題の解決に向けて積極的に取り組む人物としても知られています。

世界のデスクトップPC市場の基本ソフト(OS)では圧倒的なシェアを握り、PCとモバイルでは第2位に位置づけています(2023年5月時点)。(※参照:statcounter「Desktop & Mobile Operating System Market Share Worldwide – May 2023」)

世界のデスクトップOS市場シェア(%)

※statcounter 「Desktop Operating System Market Share Worldwide – May 2023」を参照し筆者作成

近年、急成長を遂げているクラウドコンピューティング市場では、マイクロソフトの「アジュール(Azure)」が「アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)」に次ぐ第2位のシェアを獲得しています。

世界のクラウド市場シェア(2023年第1四半期時点、%)

※Statista「Big Three Dominate the Global Cloud Market」を参照し筆者作成

マイクロソフトの歴史を振り返ると、OS「ウィンドウズ(Windows)」がPC市場を席捲しましたが、成長市場がスマートフォンに移り変わる過程で、他のテクノロジー企業の後塵を拝しました。

転機になったのが、2014年にサティア・ナデラ氏が最高経営責任者(CEO)に就任したことです。ナデラ氏は事業や企業文化の改革を遂行しました。新型コロナ禍をきっかけに社会のデジタルトランスフォーメーション(DX)が進む中、注力分野の「アジュール」は過去最高益を叩き出しました。

「ウィンドウズ」やワードやエクセルなどの業務ソフト「オフィス365」、「エックスボックス(Xbox)」などに加え、「アジュール」が新たな収益の柱に成長しています。

マイクロソフトの売上高構成比(2022会計年度)

※Microsoft「Annual Report 2022」を参照し筆者作成

株式市場からの評価も高まり、時価総額ベースでは世界第2位に位置づけ、アップルなどと競い合うテクノロジー業界の巨人へと復活を遂げています(2023年6月9日時点)。

※Statista「The 100 largest companies in the world by market capitalization in 2023」、TOYOTA「株式の状況」を参照し筆者作成
※海外企業の時価総額は1ドル=141.5円で円換算

足元ではAIの分野で主役に躍り出ます。マイクロソフトは、対話型AI「チャットGPT(Chat GPT)」を開発する米新興オープンAIと技術提携を深化させています。OS「ウィンドウズ」を始め、検索エンジン「ビング(Bing)」、「マイクロソフト365」といったマイクロソフトの製品・サービスへ矢継ぎ早にオープンAIの生成AI技術を組み込みました。

マイクロソフトのエイミー・フッド最高財務責任者(CFO)は2023年6月12日、「次世代のAI事業は当社の歴史において最も早く100億ドル規模のビジネスに成長するだろう」と強気の姿勢を示しています。(※参照:Microsoft「AI Discussion with Amy Hood and Kevin Scotte-」)

マイクロソフトはビジネス分野における生成AIの応用でリードしています。同社の製品・サービスと生成AIを融合した革新的なソリューションを提供し、より多くのユーザーを囲い込むことで、更なる業績拡大を期待できるでしょう。

2 マイクロソフトのサステナビリティ

ここからはマイクロソフトのサステナブルな取り組みを見ていきます。

2-1 カーボンネガティブの取り組み

マイクロソフトは、2030年までにカーボンネガティブの実現を目指しています。カーボンネガティブとは、二酸化炭素(CO2)の除去量が排出量を上回ることです。

多くの企業がコミットするカーボンニュートラルは、排出量と除去量を実質ゼロにすることですが、マイクロソフトは更に一歩踏み込んだカーボンネガティブの実現を目指しています。

また、1975年の創業以来、直接的もしくは電力消費による間接的に排出してきた全てのCO2を2050年までに大気中から除去することにもコミットします。

マイクロソフトはカーボンネガティブを実現すべく、再生可能エネルギーや省エネ技術を利用してCO2を削減することに加え、大気中からCO2を取り除くネガティブエミッション技術の活用を試みています。

ネガティブエミッション技術の身近な例としては植林が挙げられます。また、大気中から直接CO2を回収して地中に貯留する「ダイレクト・エアー・キャプチャー(DAC)」などの先進技術の開発・運用も進められています。

マイクロソフトはCO2除去技術の開発を後押しすべく、10億ドル規模のファンドも創設しました。

2022会計年度(2021年7月~2022年6月)の進捗状況は以下の通りです。

  • スコープ1、スコープ2(*)排出量を95%超削減
  • スコープ3(*)排出量は0.5%増
  • 13.5ギガワット(GW)の電力購入契約(PPA)を締結
  • 140万トン超の炭素除去

※参考:Microsoft「2022 Environmental Sustainability Report
(*)スコープ1…事業者自らによるCO2の直接排出。
スコープ2…他社から供給された電気や熱などを使用して発生する間接排出。
スコープ3…事業者の活動に関連する取引先や製品使用に伴う排出。

マイクロソフトでは、スコープ3が年間排出量の約97%を占めています。

スコープ3の排出は、「Xbox」や「サーフェス(Surface)」などのマイクロソフト製品の使用や、半導体から光ファイバーケーブルといった製品の製造段階における電力消費などによってもたらされていることから、バリューチェーン全体で再エネを大量に購入しなければなりません。

更に、スコープ3の排出を削減するためには、マイクロソフトのデータセンター向けに使用される鉄鋼、コンクリート、その他建設資材といった、CO2の排出削減が困難な(hard-to-abate)産業の脱炭素化を図る必要があります。

そのような中、マイクロソフトのデータセンター向け「サーキュラー・センター・プログラム」においては、データセンターで使用しなくなったハードウェアの90%を再利用・リサイクルする見通しです。

また、国連が貧困や疾病をなくすために提起した新たなイニシアティブ「SE4All(Sustainable Energy for All:万人のための持続可能なエネルギー)」と共に、気候変動対策として電力網の脱炭素化を推進しています。

2023年も気候変動分野で様々な取り組みを行っています。

例えば、3月中旬には、米気候テック企業CarbonCaputure IncとDACによって生成された炭素除去クレジットを調達することで合意しました。

5月上旬には、核融合発電の米スタートアップ企業へリオン・エナジーと、2028年からの電力購入契約(PPA)を締結しました。核融合技術は二酸化炭素(CO2)を発生しない「夢のエネルギー」とも言われており、核融合発電によるPPAとしては世界初となります。

3 マイクロソフトのESG評価

ここからはマイクロソフトのESG評価を見ていきましょう。

世界的な環境NPOのCDPより、気候変動部門において10年連続で最高評価となるAリスト評価を得ました。マイクロソフトの長年にわたる気候変動への取り組みが高く評価されていることが分かります。

また、多くの機関投資家投資家が利用するMSCI ESG Ratingでは、最上位のAAAを獲得しました。MSCI ACWIインデックスのソフトウェア・サービス業界に属する110社の中で、上位11%に入るリーダー企業として位置づけられます。プライバシー・データ保護、クリーンテックで高い評価を得ています。(※参考:MSCI「ESG Ratings & Climate Search Tool」)

4 マイクロソフトの業績、株価動向

ここからはマイクロソフトの業績や株価動向を確認します。

過去5年間(2018会計年度と2022会計年度)の業績を比較すると、新型コロナ禍でDXが進む中、売上高、利益ともに大きな伸びを示しています。

  • 売上高は80%増(1,104億ドルから1,983億ドルへ)
  • 希薄化後一株当たり利益(EPS)は4.5倍(2.13ドルから9.65ドルへ)

収益性(5年平均)も高い水準を維持しています。

  • 営業利益率は38%
  • 株主資本利益率(ROE)は41%
  • 投下資本利益率(ROIC)は26%

参考:Morningstar「MSFT

株価に目を転じると、5年間の累積トータルリターンは、S&P500およびナスダックコンピューター株指数を大きく上回りました。

※画像引用:Microsoft「Annual Report 2022

アナリストの目標株価を確認しましょう。35名のアナリストによるコンセンサス・レーティングは「Strong Buy(強い買い推奨)」です(2023年6月19日から遡って過去3ヵ月間の評価)。

マイクロソフト株は史上最高値圏で推移しています。同社のAI事業に対する楽観的な見方を背景に、今後アナリストが目標株価を引き上げてくる可能性があるでしょう。アナリスト予想の最高値は420ドル、最安値は232ドルです。

株価

  • 目標株価の平均値(12ヶ月後):347.12ドル
  • 2023年6月16日終値:346.62ドル

アナリスト予想

  • 最高値:420ドル
  • 最安値:232ドル

※参照:Nasdaq 「MSFT Analyst Research」、Yahoo Finace 「Microsoft

5 マイクロソフトの組み入れファンド2選

ここからはマイクロソフトが組み入れられているファンドを紹介します。

  1. モルガン・スタンレー グローバル・プレミアム株式オープン(為替ヘッジなし)
  2. アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Bコース(為替ヘッジなし)

5-1 モルガン・スタンレー グローバル・プレミアム株式オープン

まずは、三菱UFJ国際投信の「モルガン・スタンレー グローバル・プレミアム株式オープン(為替ヘッジなし)」です。同ファンドは、高いブランド力、有力な特許、強固な販売網といった、競争優位性を有するプレミアム企業へ厳選投資します。

マイクロソフトに加え、大手たばこ会社フィリップス・モリス・インターナショナル、欧州の日用品大手レキットベンキーザー・グループ、世界的ソフトウェア会社SAP、世界最大級のコンサルティング会社アクセンチュアなどが組み入れ上位銘柄として挙げられます。(※参照:三菱UFJ国際投信「モルガン・スタンレー グローバル・プレミアム株式オープン(為替ヘッジなし)」)

10年間のトータルリターンは、同一カテゴリー(国際株式・グローバル・除く日本)を上回る運用成績を上げています(2023年5月31日時点)。設定来の運用パフォーマンスは+349%です。信託報酬率はフィーレベル・カテゴリー(先進国株式・アクティブ)において平均より高い水準になります。

販売会社はSBI証券、楽天証券、三菱UFJ銀行、イオン銀行などです。例えば、SBI証券は、同ファンドを「SBIプレミアムチョイス」銘柄に選定しています。「SBIプレミアムチョイス」は、SBI証券が約2,700本ある投資信託の中から優良ファンドを厳選した銘柄です。

「SBIプレミアムチョイス」銘柄のため、「投信マイレージサービス」におけるポイント付与率が、月間平均保有額に対して年率0.15%になります。(※参照:ウェルスアドバイザー「M・Sグローバル・プレミアム株式(H無)」、SBI証券「三菱UFJ国際-モルガン・スタンレーグローバル・プレミアム株式OP為替ヘッジなし」)

なお、「モルガン・スタンレー グローバル・プレミアム株式オープン(為替ヘッジなし)」は、R&Iファンド大賞2023で投資信託10年/外国株式コア部門にて最優秀ファンド賞を受賞しました。

5-2 アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Bコース(為替ヘッジなし)

続いては、アライアンス・バーンスタインの「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Bコース(為替ヘッジなし)」です。

同ファンドは、主として成長の可能性が高いと判断される米国株式に投資します。

マイクロソフトに加え、医療保険ユナイテッドヘルス・グループ、クレジットカード大手VISA、半導体大手エヌビディア、飲料大手モンスター・ビバレッジ、バイオ医薬品バーテックス・ファーマシューティカルズなどが組み入れ上位銘柄として挙げられます。(※参照:アライアンス・バーンスタイン「米国成長株投信Bコース(為替ヘッジなし)」)

10年間のトータルリターンは、同一カテゴリー(北米)を上回る運用成績を上げています(2023年5月31日時点)。設定来の運用パフォーマンスは+484%です。信託報酬率はフィーレベル・カテゴリー(先進国株式・アクティブ)において平均より安い水準になります。

販売会社はSBI証券、楽天証券、マネックス証券、auカブコム証券、イオン銀行などです。

同ファンドもSBI証券の「SBIプレミアムチョイス」銘柄に選定されており、「投信マイレージサービス」におけるポイント付与率が、月間平均保有額に対して年率0.15%になります。(参照:ウェルスアドバイザー「M・Sグローバル・プレミアム株式(H無)」、SBI証券「アライアンス-アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Bコース為替ヘッジなし」)

「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Bコース(為替ヘッジなし)」は、R&Iファンド大賞2023で投資信託10年/北米株式グロース部門にて最優秀ファンド賞を、リフィニティブ・リッパー・ファンド・アワード・ジャパン2023で最優秀ファンド賞を受賞しました。

まとめ

マイクロソフトは「ウィンドウズ」、「アジュール」に次ぐ新たな収益減としてAIを活用した革新的なソリューションの提供を試みています。気候変動の分野では、2030年カーボンネガティブ達成という野心的な目標を掲げています。

マイクロソフトが、経済面だけでなく環境面でも、テクノロジー業界、そして世界をリードする取り組みを実践することに今後も期待が集まります。

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