海外企業がブロックチェーンなどWeb3技術の導入を積極的採用!その背景とは?

NFT(ノン・ファンジブル・トークン)は、2021年前後に注目を集め始めた新興技術として、日本国内でも大きな話題となりました。しかし、2023年に突入すると、その活況は一転し、NFT市場の取引量は減少の傾向にあります。一方、国内外でNFTプロジェクトが数多く誕生しており、大手企業も参入し始めている動きが見受けられます。

本稿では、ブロックチェーンを活用したサービス展開を行っている企業やコミュニティがどうして注目を浴びているのか、ブロックチェーン導入により必要とされる人材とは何か、そしてWeb3の活用で具体的にどんな変化が起こるのか、を解説します。筆者自身も国内のNFTプロジェクト「DAOコミュニティ」の一員として参加し、その変化を身近で感じています。

目次

  1. 2023年に入ってからのNFT市場
  2. NFTとは
  3. NFTの活用方法について
    3-1.Play-to-Earn(P2E)ゲームモデルのサポート
    3-2.デジタルアートの所有権の証明
    3-3.NFTチケットによるメンバーシップ
    3-4.メタバースでデジタル不動産を所有する
    3-5.医療記録と臨床データの保存
  4. 企業がNFTを活用している事例
    4-1.米スターバックスのWeb3メンバーシップ「Starbucks Odyssey」
    4-2.PUMA(プーマ)は創業75周年記念してNFT発行
    4-3.ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)のブロックチェーンゲームアプリ「LOUIS THE GAME」
    4-4.バーバリー(Burberry)初のNFTコレクション
  5. 海外もコミュニティを形成しブランド宣伝
  6. 新しく仕事の幅拡がる可能性もある未来
  7. まとめ

①2023年以降のNFT市場の動向

NFT市場は、2021年からその存在が広く認知され、2022年1月にはその活動がピークを迎えました。しかし、2023年3月のNFTの月間取引額は、ピーク時と比較し75%減少。また、アメリカにおけるNFT関連の検索数も、過去1年間で80%も減少しています。NFT界隈ではこれを「冬の時期」と称しています。

過去にビットコイン市場でも、似たような現象が見受けられました。2017年にビットコインが一躍世間の注目を集めると、そのボラティリティ(価格変動)の高さが話題となり、9月以降は「ビットコインバブル」なる状況が形成されました。だが、2018年1月にはその泡は一気に破裂し、仮想通貨の価格が急激に下落。その後もビットコインの価格は高騰と暴落を繰り返し、2023年5月現在の1BTCの価格は360万円にまで落ち着きました。

NFTはブロックチェーンを基にした「トークン」であり、市場で取引されます。現在の市況を見ても、かつてのNFTバブルから大きく落ち着いた状態と言えます。

ビットコインと同様の市場に市場が再燃する可能性があると考えれば、NFT投資を検討するタイミングとして、今は悪くないともいえます。ただし、その価格が直ぐに上昇するわけではないことも理解しておくべきです。

②NFTとは

NFTとは、「Non-Fungible Token(ノンファンジブルトークン)」の略称で、日本語では「非代替性トークン」と表現されます。これはブロックチェーンにより発行されるトークン(暗号資産)の一種で、コレクションとしてのトレーディングカード、仮想空間内の不動産、デジタルスニーカー等、形状や性質を問わず様々なデジタルアイテムやコンテンツの所有権を示すものです。

「ノンファンジブル(非代替性)」という名称が示す通り、各トークンは個別の識別子がつけられ、それぞれが唯一無二の証明を持つものとして発行されます。これにより、デジタル空間における希少性や唯一性が確保される仕組みとなっています。

NFTの最大の魅力は、何と言っても「デジタル空間における唯一性」の確立です。各NFTには、他と区別するための独自の情報が含まれており、その作品が世界に一つしか存在しないことを証明しています。さらに、ブロックチェーン上には、元の発行者や現在の所有者の情報が記録され続けるため、作品が本物であることを容易に証明することが可能になりました。

③NFTの活用方法について

NFTは2021年の中盤に需要が急増し、CoinGeckoによる市場分析では総取引量が全世界で50億ドルを超えたとの報告があります。このように、大きな需要が存在する背後には、さまざまな分野での応用が可能なNFTの多用途性が挙げられます。以下に、NFTの具体的な活用例をいくつか紹介します。

3-1.Play-to-Earn(P2E)ゲームモデルのサポート

NFTは、ゲーム内での代替不可能な資産を実現するツールとして、広く活用されています。プレイヤーはブロックチェーンをベースにしたゲームでアイテムを獲得したらい、キャラクターを育成し、これらを市場で取引や売却することが可能です。また、ゲーム内のレアアイテムは、時間と共に価値が高まることがあり、プレイヤーに利益をもたらす手段となります。さらに、ゲームプレイ後もNFTを所有し続けることで、将来的な価値の創出も期待できます。

3-2.デジタルアートの所有権の証明

デジタルアートや音楽コンテンツなどの著作権侵害は、これまで制御が困難でした。しかし、NFTを使用することで、デジタルアート、写真、音楽等をNFTに結びつけることが可能になりました。ブロックチェーンは改ざんが困難であり、全取引データを記録し、所有者を証明できます。これにより、アーティストは画像やデジタルファイルが商業的に利用される際に、ロイヤリティを得られるよう設定することができます。

3-3.NFTチケットによるメンバーシップ

NFTを所有することでコンサートチケットやオンラインコミュニティのメンバーシップ、さらには特定のバーへの入場許可などをデジタルで証明することができます。メタバース(仮想現実空間)のようなデジタル空間への需要が高まる中で、このようなデジタルメンバーシップの証明はビジネスの重要な要素となってきています。

3-4.メタバースでデジタル不動産を所有する

NFTはデジタル空間、特にメタバース内の土地(parcels)や不動産の所有権を証明するためにも用いられます。DecentralandやThe Sandboxなどのメタバースプラットフォームでは、ユーザーが仮想空間内の不動産を所有し、それを売買することで利益を得ることも可能です。企業もこれらの仮想空間にオフィスを設け、新たな収益源を確保することができます。

3-5.医療記録と臨床データの保存

NFTは、医療業界におけるデータ管理にも応用できます。医療記録や臨床データは個人情報を含んでおり、その取り扱いは非常に重要です。しかし、患者が転院する際などには、新たな医師に適切に情報を引き継ぐことも必要です。NFTは、改ざん防止とデータの持続性を保証し、医療記録の信頼性を維持します。また、適切なセキュリティ対策を講じることで、許可された人だけがデータにアクセスできるという利点もあります。

④企業がNFTを活用している事例

では実際に企業がNFTをどのように活用しているのか、実例を紹介します。様々な分野でNFTは活用されつつあります。

4-1.米スターバックスのWeb3メンバーシップ「Starbucks Odyssey」

米スターバックスは2022年9月12日、カーボンネガティブを目標に掲げるPolygon(MATIC)基盤によるWeb3対応のメンバーシッププログラム「Starbucks Odyssey」を発表しました。2023年3月、2,000枚のNFTを、1枚100ドルで発行し、合計取引額は54万USD(約0.7億円)に達しました。

「Starbucks Odyssey」は、スターバックス商品を購入することでスターポイントが溜まる「スターバックスリワード」会員や米国のスターバックス従業員を対象とした、Web3対応の新メンバーシップサービスです。

メンバーは、仮想空間でインタラクティブなゲームを楽しんだり、コーヒーの知識を得るためのチャレンジに参加したりすることができます。一連のアクティビティを完了すると、デジタル収集NFT「ジャーニースタンプ」を獲得できるほか、マーケットプレイスで限定版のNFTを購入することもできます。

NFT収集でもポイントも加算されるため、ランクが上がったメンバーは、バーチャルで学ぶコーヒーの作り方体験や、限定イベントへの参加、アーティストとのコラボ商品など、さまざまな特典へのアクセスが可能になります。

4-2.PUMA(プーマ)は創業75周年記念してNFT発行

スポーツブランドのプーマは2023年2月15日、現在進行中のWeb3プロジェクト「ニトロ・コレクション」を補完するものとして「Super PUMA PFP NFT」のリリースを発表しました。そして2023年2月、10,000枚のNFTを、1枚0.15ETHで発行され、合計取引額は3,400ETH(約9.5億円)に達しました。

PFP(Profile Photo)とは、ソーシャルメディア上のプロフィール画像として使用できるもので、1970年代にプーマが発表したコミックブックに登場する有名なマスコット「Super PUMA」をWeb3で表現したものです。またNFT所有者は提携している「10KTF」上で、独自のデジタルアートの生成が可能とのことで、2022年にGucci(グッチ)ともタッグを組んだNFTプロジェクトです。

この新しいPFPプロジェクトは、同ブランドの既存Web3コミュニティからのフィードバックによって生まれたといいます。また「Super PUMA PFP」はコミュニティを巻き込み、この空間で人気があるストーリー性のある方法で、オーディエンスを増やすことができるそうです。

4-3.ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)のブロックチェーンゲームアプリ「LOUIS THE GAME」

フランスが誇る高級ブランド「ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)」はブロックチェーン技術を積極的に導入しており、21年8月4日にはブロックチェーンゲームアプリである「LOUIS THE GAME」のリリースを果たしています。このLOUIS THE GAMEは、ルイ・ヴィトンの創業者であるルイ氏の生誕200年を記念したプロジェクト「LOUIS 200」の一環として、ルイ氏の誕生日にリリースされました。

作品内容としては、何世紀にもわたるメゾンの伝統と高度なアニメーションを融合させたものとなっており、時を超えて存在する6つの架空の世界を舞台として、アクション満載の冒険が繰り広げられるというストーリー構成が採られています。

LOUIS THE GAMEは公開初週で50万ダウンロードという驚異的な記録を樹立し、22年4月時点で200万ダウンロードを突破したことが報じられるなど、その注目の高さを窺わせました。

LOUIS THE GAMEでは、ゲーム内において抽選でプレイヤーにNFTポストカードが当たるキャンペーンが実施されました。このキャンペーンでは、3種類のNFTポストカードがそれぞれ10枚ずつ、合計30枚発行され、そのうちの10枚は、デジタルアート界にセンセーションを巻き起こすアーティスト「BEEPLE」が制作したとして、大きな話題となりました。

4-4.バーバリー(Burberry)初のNFTコレクション

21年8月、ロンドン発の高級ファッションブランド「バーバリー(Burberry)」は、アメリカの次世代ゲームテクノロジーカンパニー「ミシカル・ゲームズ(Mythical Games)」と提携し、NFTコレクションを発表しました。

このコレクションは「Bシリーズ」と呼ばれ、ミシカル・ゲームズの代表作である、ブロックチェーン上に存在するデジタルトイ「Blankos」を用いたブロックチェーンゲーム「Blankos Block Party」において、限定商品の販売が行われました。NFTは「Sharky B(シャーキー・ビー)」と名付けられ、サメをモチーフとしたデザインで、全体にバーバリーのモノグラムをまとった仕様となっています。

Blankos Block Partyの公式Twitterによると、NFTはたったの30秒ほどで完売したということで、業界では大きな話題となりました。またバーバリーは22年6月、21年に引き続き再びミシカル・ゲームズと提携し、同じくBlankos Block Party上において新しいNFTコレクションをローンチしました。

第二弾となる今回のNFTは「Minny B(ミニー・ビー)」と名付けられ、ユニコーンをモチーフとしたデザインで、バーバリーのモノグラムを身にまとった作品となっています。

⑤海外もコミュニティを形成しブランド宣伝

米スタバーやプーマはWeb3のコミュニティを構築しおり、コミュニティを形成することでよりファンに寄り添ったり、ファンもより好きなものが近くなると言えます。コミュニティ参加者の60%がブランド広告やコンテンツに前向きというデータがあります。

またコミュニティ参加者の90%が「自分のコミュニティから商品を買う可能性」が高いというデータもあります。そのため企業ではWeb3を使ったコミュニティによるサービス提供が注目されています。

企業のブロックチェーン導入が進む中、AmazonはWebチームの採用を強化しています。しかし、どの企業もNFTやWeb3にコミットできない要因もあり、ブロックチェーンを扱うことができるエンジニアの確保が難しい点とも言われています。

⑥新しく仕事の幅拡がる可能性もある未来

NFT市場はピーク時から比較して75%ほど減少していますが、一方で、企業はブロックチェーンを使ったサービス展開やコミュニティ構築による商品宣伝も視野に入れているので、企業から求められる人材になることで、新しい分野での仕事を確保することも可能でしょう。

とはいえ誰しも直ぐにエンジニアのスキルを獲得できるわけではありません。ここ最近はNFTプロジェクトが日本国内でも複数存在しています。それらのコミュニティは「DAO」とも呼ばれ、そこでのやりとりはテキストコミュニケーションが主になります。

したがって参加メンバーは自主的にアイディアを出したり、あるいは外で学んできたことをアウトプットしたりと、ぞれぞれがDAOでの活動を楽しみながら行っています。先輩後輩ではないですが、Discordの使い方が分からないメンバーに対してアドバイスをする方もいます。また決定されたアイディアを実行するメンバーもいるので、プロジェクトの運営はそういった積極的にDAO内で活動しているメンバーに対して、報酬を支払うことも可能であり、実際に存在します。

今後、エンジニアではないがDAOで活動することで、収入を得るが新しい収入源となり、本職以外の副業にすることも可能になると言えるでしょう。そのためには複数のNFTプロジェクトを覗いてみて、気に入ったところを2〜3個見つける良いでしょう。

⑦まとめ

NFT市場がかなり落ち着いた市況となり「乗り遅れた」と感じる方もいるかもしれませんが、Web3はまだ始まったばかりであり、NFTは新興市場です。世に出てきたばかりのNFTは投機目的による売買が盛んでした。しかし今やNFTは、チケット詐欺や偽ブラント、デジタルアートやコンテンツの著作権被害の撲滅、所有者の証明書など、問題解決の「道具」としてフォーカスされつつあります。

そのため今後、企業のNFT業界の参入が加速すると思われ、個人や投資家であっても「乗り遅れた」と思うのではなく、まだこれから始まる市場だということを覚えておくのが良いでしょう。

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Source: 仮想通貨の最新情報BTCN | ビットコインニュース
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