カーボンオフセットとカーボンクレジットの違いとは?
一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / @fukuokasho12))に解説していただきました。
目次
- カーボンオフセット の概要
1-1. カーボンオフセットの概念
1-2. カーボンオフセットとは?
1-3. カーボンオフセットの手順
1-4. カーボンオフセットの方法 - カーボンクレジットについて
2-1. カーボンクレジットとは?
2-2. カーボンクレジットとカーボンオフセットプロジェクト
2-3. カーボンクレジットの取引 - カーボンオフセットとカーボンクレジットの違い
3-1. カーボンクレジットはカーボンオフセットの手段の一つ
3-2. カーボンクレジット以外のカーボンオフセット - カーボンクレジットの今後について
4-1. カーボンクレジット市場は拡大傾向が継続
4-2. ブロックチェーンがカーボンオフセットに貢献する可能性 - まとめ
「温室効果ガス排出量削減」は、21世紀の企業が向き合うべき最も重要な課題の一つとなっています。我々が地球上で持続可能な生活を送るためには、CO2排出の削減やカーボンニュートラルの実現が不可欠です。そこで重要な役割を果たすのが「カーボンオフセット」と「カーボンクレジット」です。
しかし、これらの言葉を耳にしたことがあっても、その具体的な意味や使い方が分からないという方も少なくないでしょう。本記事では、カーボンオフセットとカーボンクレジットの違いを解説し、それぞれがどのようにCO2排出削減に貢献できるのか、その具体的なメカニズムについて説明します。さらに、ブロックチェーン技術がこれらの活動にどのように影響を及ぼすか、その可能性についても見ていきます。
1.カーボンオフセットの概要
1-1.カーボンオフセットの概念
まずは、カーボンオフセットという概念から掘り下げていきましょう。カーボンオフセットは、気候変動対策の一部として比較的新しく登場したものです。具体的な市場やプロジェクトの展開は2000年代初頭から始まりました。
2005年には、国際連合気候変動枠組条約(UNFCCC)のもとで、クリーン開発メカニズム(CDM)というカーボンオフセットの取引を規制するプログラムが導入されました。CDMは、発展途上国で温室効果ガス削減プロジェクトを実行し、その結果としてカーボンクレジットを発行するシステムを指します。CDMの導入により、カーボンクレジットの発行が困難だった先進国の企業や国が、これらのクレジットを取得し、自国の排出量をオフセットすることが可能となりました。
現在では、民間のNGOなどから多くの認証プログラムや基準が提供され、カーボンオフセット市場は急速に拡大しています。カーボンクレジットの市場が拡大する様子を見る限り、カーボンオフセットはすでに企業や個人が持続可能性の目標達成に向けての手段として取り入れ始めているといえるでしょう。さらに、国際的な取り組みの一部としても位置づけられ、気候変動の緩和と対応策に取り組む重要な一端を担っています。
1-2.カーボンオフセットとは?
ここで、カーボンオフセットの具体的な意味について説明します。カーボンオフセットとは、自らが排出した二酸化炭素(CO2)やその他の温室効果ガス(GHG)の量を相殺、あるいは補填することを指します。
温室効果ガスは、化石燃料の燃焼や産業プロセスを通じて排出されます。二酸化炭素の排出量を削減することは重要ですが、全ての排出量をゼロにするのは困難な場合があります。そこで、自らの手でコントロールできる範囲を超えてカーボンオフセットを進める方法として、環境に優しいプロジェクトへの投資やカーボンクレジットの購入があります。これにより、同等量の温室効果ガスの排出削減や吸収を行うことが可能となります。
1-3.カーボンオフセットの手順
カーボンオフセットは以下の手順で実行されます。
- 排出量の計算
まずは、自分の日常生活やビジネス活動におけるエネルギー使用量、移動手段、廃棄物処理などからGHGの排出量を計算します。 - 削減策の実行
次に、エネルギー節約の実践、再生可能エネルギーの活用、持続可能な交通手段の選択などを通じて自分の排出量を減らす努力を行います。 - オフセット手段の選択
削減だけでは補えない排出量を相殺するため、信頼できるカーボンオフセットプロジェクトへの投資や、カーボンクレジットの購入などを行います。カーボンオフセットのプロジェクトとしては、風力発電や太陽光発電、森林保全、廃棄物管理などが例として挙げられます。 - カーボンオフセットの購入
選択したカーボンオフセットプロジェクトに投資し、必要な量のカーボンオフセットを購入します。これにより、自分の排出量を相殺することができます。
1-4.カーボンオフセットの方法
カーボンオフセットの方法には、炭素を削減するか炭素を吸収することを目的として、自身のGHG排出量の相殺、持続可能な開発への貢献、ネットゼロ排出の実現、そして気候変動対策の強化といった手法が取られます。以下で詳しく見ていきましょう。
- 温室効果ガス(GHG)の相殺
自分が排出したGHGを相殺することを目指したカーボンオフセットの方法です。 - 持続可能な開発への貢献
持続可能な開発目標に対する貢献として位置づけられるカーボンオフセットの方法です。
具体的には、環境配慮型プロジェクトへの投資により、再生可能エネルギーの普及、森林保全、廃棄物管理の改善などを通じて、炭素を吸収する資源を増やし、環境へのポジティブな影響を実現します。 - ネットゼロ排出の実現
企業や個人は、自身の排出量を相殺し、ネットゼロ排出を達成するための手段としてカーボンオフセットを使用することがあります。
自身の排出量を削減することは重要ですが、それだけでは対応しきれない排出量に対して、カーボンオフセットを活用することで、持続可能な未来の実現が可能になります。 - 気候変動対策の強化
気候変動への対策を強化するための手段としても重要です。排出量を削減するだけでなく、カーボンオフセットを通じて全世界のGHG削減努力を後押しし、温暖化の緩和に貢献します。
これらの目標を達成するために、信頼性の高いカーボンオフセットプロジェクトへの投資が行われ、またカーボンクレジットの取引も行われています。
2.カーボンクレジットについて
2-1.カーボンクレジットとは?
カーボンクレジットとは、カーボンオフセットを実現するための一つの手段です。具体的には、カーボンクレジットはカーボンオフセット市場で取引される、削減された炭素の取引単位です。特定の量の温室効果ガス(GHG)排出量の削減または吸収に対応し、カーボンクレジットが生成される仕組みとなっています。
言い換えれば、カーボンクレジットとは、特定のプロジェクトがそのプロジェクトに相当する量のGHGを削減または吸収したことを証明する証書のことを指します。1トンのカーボンクレジットは1トンのカーボン排出を相殺する能力を持っており、このカーボンクレジットを取引することでカーボンオフセットが可能となります。
2-2.カーボンクレジットとカーボンオフセットプロジェクト
カーボンクレジットにはさまざまなタイプがありますが、その一つひとつは、カーボンオフセットプロジェクトによって温室効果ガス(GHG ※)の排出量削減または吸収の成果として生み出されます。
※ GHGとして計測されるガスには、二酸化炭素(CO2)だけでなく、メタン(CH4)や一酸化窒素(N2O)なども含まれます。
こうしたカーボンオフセットプロジェクトの代表例としては、風力発電や太陽光発電プロジェクト、森林保全、廃棄物管理といったプロジェクトが挙げられます。これらのプロジェクトは、持続可能な開発目標に寄与しながら、環境にポジティブな影響を与えるのです。
2-3.カーボンクレジットの取引
カーボンクレジットの取引プラットフォームには、オンラインマーケットプレイスやカーボンクレジット専門の取引所など複数の形態の取引プラットフォームがあります。また、カーボンクレジット市場は、国際的な協定やイニシアチブに基づいてカーボンクレジットの取引が行われることもあります。実際に、一部の国や地域では、国内の排出量削減目標を達成するための枠組みが設けられており、そこでカーボンクレジットが活用されます。
カーボンクレジット市場の一つの特徴は、認証プログラムや検証機関が信頼性と透明性を維持するために大きな役割を果たすことです。市場でカーボンクレジットが取引されるためには、厳格な基準に基づいて認証や検証が行われる必要があります。これらの認証基準や検証プロセスは、クレジットの品質と信頼性を確保するために存在します。
また、市場でのカーボンクレジットの価格は、株式市場などの金融市場と同様に市場の需給によって形成されます。需要が高まると価格が上昇し、供給が増えると価格が下落するということです。つまり、カーボンクレジットの価格は、クレジットの種類、品質、量、そして市場参加者のニーズによって変動するということです。
3.カーボンオフセットとカーボンクレジットの違い
3-1.カーボンクレジットはカーボンオフセットの手段の一つ
ここまででカーボンオフセットとカーボンクレジットについて説明してきましたが、以下ではこれら二つの違いについて解説をしていきます。
カーボンオフセットとは、具体的に炭素排出量を減らす行動のことを指します。そして、その目的を達成するための手段の一つにカーボンクレジットがあります。自身で炭素排出量を減らす、つまりカーボンオフセットを達成するのが理想的ですが、個々の取り組みには限界があります。一つの企業や一つの地域だけではなく、地球全体としてカーボンオフセットを実現するための手段として、カーボンクレジットが発行されています。
カーボンクレジット市場が拡大している背景には、排出削減の取り組みに限界が見え始めた場合や、その取り組みに資金を投じることが難しい企業でも、カーボンクレジットの購入によりカーボンオフセットが可能になるという利点があります。逆に、森林業や再生可能エネルギー分野など、カーボンクレジットの発行に適した環境にある場合、より多くのクレジットを発行し、地球全体のカーボンオフセットを進めることが可能ともいえます。
3-2.カーボンクレジット以外のカーボンオフセット
カーボンオフセットを達成するための手段は、カーボンクレジットだけでなく、以下のような方法でも実現できます。
- 森林保護・植林
森林は二酸化炭素(CO2)を吸収し、酸素を放出します。そのため、森林の保護や植林は、カーボンオフセットに効果的な方法の一つとされています。森林を保護することで、CO2の排出量を抑制し、生態系の維持や生物多様性の保護にも貢献できます。 - 再生可能エネルギーの利用
太陽光、風力、水力などの再生可能エネルギー源を利用することで、化石燃料に比べて温室効果ガスの排出を減らすか、またはゼロにすることができます。再生可能エネルギーの利用により、化石燃料の排出を減らし、エネルギー需要を持続可能な形で満たすことができます。 - エネルギー効率の改善
エネルギー効率を向上させることは、カーボンオフセットにとって重要な手段です。効率的なエネルギーの利用は、エネルギーの無駄遣いを減らし、二酸化炭素の排出を抑制します。具体的な方法としては、省エネ家電の導入、建物の断熱性向上、輸送手段の効率化などが考えられます。 - 持続可能な農業や廃棄物管理
農業や廃棄物管理においても、温室効果ガスの削減や吸収が可能です。例えば、持続可能な農業方法の採用、有機農業の推進、堆肥化やバイオガス化などの廃棄物管理手法の導入により、メタンなどの温室効果ガスの排出を削減できます。
これらの方法は、企業や個人が自身の排出量を削減するための手段として利用されることが多くなっています。
4.カーボンクレジットの今後について
4-1.カーボンクレジット市場は拡大傾向が継続
排出量削減を目指す際、カーボンクレジットは有益な手段になります。カーボンクレジットを使わずにカーボンオフセットを実現しようとすると、高額な投資が必要になることが多いですし、その実現には長い時間を要することも少なくありません。しかし、カーボンクレジットを用いると、市場でこれを購入するだけで簡単にカーボンオフセットが可能となり、個人でも手軽に取り組むことができます。
4-2.ブロックチェーンがカーボンオフセットに貢献する可能性
カーボンクレジットの課題として挙げられるのが、その属性や品質についての信頼性です。排出削減クレジットについて、現状と不一致な過大なクレジットが生成されてしまっている事例が存在するとの批判があります。しかし、ブロックチェーンの特性でもある改ざん耐性を適切に活用することによって、こうした課題を克服できる可能性があると言えるでしょう。現在でもアナログな側面のあるカーボンオフセット市場ですが、Web3技術を活用して取引を行うことで、取引の信頼性を担保しつつ、より手軽に取引が可能なマーケットが形成されることが期待されているのです。
5.まとめ
今回の記事では、カーボンオフセットとカーボンクレジットの違いについて詳しく見てきました。この二つのコンセプトは、目的と手段という観点で理解すると分かりやすいでしょう。カーボンクレジットは、排出量削減を目指す際の効率的で手軽な手段であり、それによって個人でも企業でも簡単にカーボンオフセットを達成することができます。また、カーボンクレジットとブロックチェーン技術の組み合わせは、より透明で信頼性の高い形で炭素排出削減に貢献する可能性があり、今後の動きに注目です。
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Source: 仮想通貨の最新情報BTCN | ビットコインニュース
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