東急GのESG・サステナビリティの取り組みや将来性は?株価推移、配当情報も

東急グループは、東急株式会社を中核とし、交通事業を主軸に不動産、小売、ホテル、旅行、エンターテイメントなどの幅広い分野で事業を展開しています。環境に配慮した取り組みにも積極的で、例えば、東急電鉄では省エネルギーやCO2削減に取り組んだり、再生可能エネルギーの活用を推進したりしています。また、不動産事業でもエネルギー効率の高い建物の開発や環境配慮型のまちづくりを行っています。

そこでこの記事では、東急グループのESG・サステナビリティの取り組み内容や将来性について詳しく解説しています。株価推移や配当情報についても紹介しているので、ESG投資を検討している方は参考にしてみてください。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は2023年7月31日時点の情報をもとに執筆されています。最新の情報については、ご自身でもよくお調べの上、ご利用ください。

目次

  1. 東急Gの特徴
  2. 東急GのESG・サステナビリティの取り組み内容
    2-1 サステナブル重要テーマ
    2-2 環境の取り組み例
    2-3 社会の取り組み例
    2-4 ガバナンスの取り組み例
  3. 東急の株価推移
  4. 東急の株主還元
    4-1 配当金の支払い
    4-2 株主優待制度
  5. まとめ

1 東急Gの特徴

東急グループは、東急株式会社(9005)を中核とした企業グループです。グループ傘下の上場企業6社を合わせた合計200社以上から構成されています。東急株式会社は、時価総額が1兆1,100億円を超える大企業であり、日経平均に採用されている銘柄でもあります(2023年7月31日時点)。グループ理念として定めている「美しい生活環境の創造」を実現するため、「交通事業」「不動産事業」「生活サービス事業」「ホテル・リゾート事業」など人々の生活に深く関わる分野で事業を進めています。

事業セグメント 主な事業内容
交通事業 鉄道事業、バス事業を含む東急グループの基盤となる事業領域です。安全性と利便性のさらなる向上と、低環境負荷の移動手段の実現を目指しています。
不動産事業 東急沿線地域を軸に、「職住遊」を機能的に配置したまちづくりを地域や行政と連携して行っています。社会課題の解決に寄与する不動産開発を通し、選ばれる沿線であり続けることを目指しています。
生活サービス事業 様々なニーズに応え、人々の生活をより快適にするため、スーパーマーケット、百貨店、文化施設の運営から電気ガスの小売業に至るまで、様々な事業を幅広く展開しています。
ホテル・リゾート事業 国内外でホテル・リゾート事業を運営するほか、ゴルフやスキー事業、宮古島で果樹園などの運営にも取り組んでいます。

東急グループは、まちづくりを通して生まれた価値を再投資し、継続的なエリア価値の向上と住みやすい環境づくりを目指しており、長期循環型ビジネスモデルを基盤としています。

2 東急GのESG・サステナビリティの取り組み内容

2-1 サステナブル重要テーマ

継続的に社会課題を解決するため、東急グループはサステナブル経営を基本姿勢としています。自社の理念や事業領域を踏まえ、SDGsやISO2600、GRI Standardsなどを参考に重要性リストを作成し、重要性評価と社外有識者ダイアログを行った上で、取り組むべき以下の6つのサステナブル重要テーマ(マテリアリティ)を特定しました。

サステナブル重要テーマ 向き合う社会課題
安全・安心 都市部への人口集中、高齢化、交通弱者、テロ・サイバー犯罪、自然災害・気候変動、新型感染症の拡大、人手不足
まちづくり 少子高齢化・生産年齢人口の減少、ライフスタイル・ワークスタイル多様化への対応、AI・IoT等新たな技術への対応、気候変動・自然災害・循環型社会、インバウンド、新興国の急速な発展に伴う対応(医療、交通、住環境)
生活環境品質 少子高齢化・生産年齢人口の減少、ライフスタイル・ワークスタイル多様化への対応、AI・IoT等新たな技術への対応
ひとづくり 少子高齢化・生産年齢人口の減少、人権の実現、多様な人材、多様な世代への生涯学習機会の提供、地域コミュニティの創出
脱炭素・循環型社会 気候変動・自然災害、生態系維持、サプライチェーンにおける責任、資源枯渇・循環型社会
企業統治・コンプライアンス 企業不祥事・不正、非財務情報開示、持続可能な企業経営、人権の実現

(※参照:東急「サステナブル重要テーマ(マテリアリティ)」)

それでは、具体的な取り組み内容を確認してきましょう。

「安全・安心」のテーマでは、安全で利用しやすい公共交通サービスの実現と、誰もが安心して暮らせる生活環境の提供を目指して取り組んでいます。事故の防止やピーク時混雑率の緩和から、災害リスクの低減や食の安全性確保に至るまで、生活インフラ機能を担う企業として様々な対策を講じています。

「まちづくり」のテーマでは、選ばれる沿線であり続けるため、事業を通じて「住む」「遊ぶ」「働く」の活動において魅力ある都市経営を進めています。例えば、渋谷再開発や次世代郊外のまちづくりです。また、まちづくりのノウハウを国内や海外に拡充し、様々な地域の都市開発や地域活性化に貢献することを目指しています。成長著しいベトナムでは、職・住・遊環境の整備と公共交通の一体型のまちづくりに取り組んでいます。

「生活環境品質」のテーマでは、元気で自分らしく生きられる暮らしの実現に向け、IoT等テクノロジーを活用した健康的なライフスタイルを推進しています。また、高齢者の方々等への買い物支援や、在宅医療やシニア施設の運営など幅広い世代のニーズに合わせた施設やサービスの提供を行っています。

「ひとづくり」のテーマでは、東急グループを誰もが働き続けたいと思えるような会社にするとともに、新たな教育や文化活動、啓発機会を提供することで、従業員だけでなく社会の一人一人が活き活きと活躍できる環境づくりに努めています。

「脱炭素・循環型社会」のテーマでは、省エネルギーと再生エネルギーの両方を最適に利用することで、脱炭素社会の実現を目指しています。具体的には、環境効率の良い公共交通機関の利用促進や環境に配慮したまちづくりにより、CO2排出量削減に取り組んでいます。また、資源の有効利用と生態系に配慮した循環型社会を実現するため、リサイクルや脱プラスチックの促進に加え、環境認証食品の販売等を進めています。

「企業統治・コンプライアンス」では、取締役および監査役に選任にあたってスキルマトリックスを作成・公開して役員の専門性と多様性に配慮した人事を行い、取締役の任期も1年に短縮して会社経営に対する取締役の責任を明確化しています。2023年時点で取締役会の男女構成比率については、社外取締役4名を含む11名(男性9名、女性2名)となっています。また、コンプライアンス面では行動規範の制定、浸透のための研修、内部通報制度などに取り組んでおり、税の透明性についても税務方針などを開示しています。

このように、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを積極的に行っており、ESG・サステナビリティを重要な経営戦略の一環と位置付けています。

2-2 環境の取り組み例

東急グループは、サステナブル重要テーマの一つである「脱炭素・循環型社会」の実現に向けて、環境ビジョン2030を策定しました。環境と調和する持続可能なまちづくりを目指し、脱炭素社会に向けた取り組み目標と、循環型社会に向けた取り組み目標をそれぞれ掲げています。

脱炭素社会 循環型社会
目標 2030年までにCO2排出量を46.2%削減(2019年比)、再生エネルギー比率を50%
2050年までにCO2排出量を実質ゼロ、再生エネルギー比率を100%
2030年までに廃棄物量を10%削減(2019年比)、水使用量を10%削減(2019年)

具体的な取り組み内容としては、東急線全路線でCO2排出量が実質ゼロである再生可能エネルギー100%の電力を用いた運行を開始しています。また、次世代半導体装置を用いた制御装置を搭載した新型車両(2020系、6020系、3020系)を導入することで、旧型の車両(8500系)と比べて使用電力を50%削減することを可能とし、2022年度までに旧型車両の置き換えを進めています。そのほかにも、渋谷駅と渋谷ヒカリエを一体化した大規模自然換気システムを採用することで、機械に頼らない自然換気システムを実現し、駅全体で年間約1,078トンのCO2削減につながると同社は発表しています。

また、循環型社会に向けた取り組みとしては、2019年11月に開業した大規模複合施設渋谷スクランブルスクエアにおける店舗厨房排水や雑排水を、地下6階に設置された中水設備で処理しています。中水設備により、微生物などを利用して水を分解し、活性炭で浄化された水はトイレの洗浄水として再利用できるため、大量の水を節約し、下水道施設への負荷を低減することが可能です。

(※参照:東急「「環境ビジョン2030」に向けた取り組み事例」)

2-3 社会の取り組み例

東急グループは、事業活動を通じて社会の発展に貢献できることを目指しています。軸となっているのは、人権の尊重、地域社会発展への貢献、人材戦略、顧客への責任、サプライチェーンマネジメントです。例えば、自社及びサプライチェーンにおける重要な人権リスクを特定し評価するため、人権デューデリジェンスを実施しています。「国内外サプライヤーの強制労働・奴隷労働・児童労働」「顧客及び従業員の健康・安全への侵害」「差別的対応」といったリスクに対し、従業員教育や経営者向けセミナーを設けて対応するほか、「東急お客さまセンター」を設置し意見や要望をヒアリングすることで、改善につなげています。2021年度は5,215件の意見・要望が寄せられており、会社の長期的・安定的な発展につなげる予定です。

また、人材戦略として従業員の経験価値を高めることを支援する取り組みも進めています。具体的には、「管理職に占める女性比率」「男性育休取得率」等の各目標において、2021年度の実績数値と比較した2023年度目標を定めており、管理職に占める女性比率10%以上、男性育休取得率100%、運動習慣率50%以上にするなど明確な数値を用いた目標を立て、従業員の経験価値を高める施策を実施中です。施策の例として、働き方改革やダイバーシティの推進のほか、定年を迎える従業員が定年後も安定して働き続けられる「アクティブ60s制度」と呼ばれる制度を設置しています。

(※参照:東急「Social」)

2-4 ガバナンスの取り組み例

東急グループは、実効性の高いコーポレート・ガバナンスによる経営の公正性と透明性の確保を掲げ、取り組んでいます。例えば、取締役の任期を2年から1年に短縮し、経営に対する責任を明確化するとともに、監査役会の設置や内部監査の実施など、ガバナンス体制の強化を図っています。

また、コンプライアンスについては、コンプライアンス意識の向上を目的として、eラーニングでコンプライアンス研修を実施したり、新入社員集合研修や新任職責別研修など、従業員のキャリアの初期段階でコンプライアンスの重要性について学ぶ機会を設けたりしています。

リスクマネジメントについては、内部統制を実施し、定期的にリスク認識と取り組み状況を再評価しています。また、経営上のリスクを軽減させるため、各部門長を責任者として「想定されるリスク」を影響度と発生確率の観点から毎年可視化しています。このほか、腐敗行為の防止については、一切の腐敗行為を禁止するとともに、取り組み状況を定期的に取締役会に報告する仕組みがあります。

(※参照:東急「Governance」)

3 東急の株価推移

東急株式会社(9005)の株価はさえない展開が続いています。7月31日時点の株価終値は1,804.5円であり、2023年5月18日に付けた年初来高値2,036円から大きく反落しています。また、一時的には1,700円を割り込む水準まで値下がりしました。業績自体は決して悪くないものの、2023年5月17日に楽天グループの第三者割当増資を引き受ける企業として名前が上がったことなどが要因になった可能性があります。

年初来高値を付ける以前の動きについては、コロナショック時には2019年11月22日に付けた2,210円から大幅に下落しており、2020年8月3日には株価1,165円の安値を付けるところまで、値下がりしています。しかしその後、コロナが落ち着いてくるにつれて株価は持ち直し、1,400円~1,700円のレンジを横ばいで推移しています。

また、コロナショック以前の株価の動きは比較的安定しており、長期にわたって株価は右肩上がりで推移していました。例えば、2013年1月4日のアベノミクス初動時には、株価は1,000円を割り込む980円(調整後終値)でしたが、2015年11月12日には2,014円を付けています。また2016年10月17日には1,462円まで下落しましたが、そこが押し目となり、コロナショックが始まる直前の2019年11月22日の2,210円を付けるまで株価は上昇し続けています。

4 東急の株主還元

東急グループは株主還元策の一環として、配当金による支払いと株主優待制度を用意しています。配当情報や株主優待制度の詳細は、以下の通りです。

4-1 配当金の支払い

東急グループは継続した配当金の支払いを目指しています。基本的な配当方針としては、配当性向30%以上を目安に総還元性向を意識した株主還元に努めています。配当金の支払い回数は、中間配当と期末配当の年間2回であり、毎年3月31日と9月30日の株主が確定する基準日までに株主となることで配当金を受け取れます。

直近5年間の具体的な配当金の推移は、以下の通りです。

年間配当額 中間 期末
2019年3月期 20円 10円 10円
2020年3月期 23円 12円 11円
2021年3月期 15円 10円 5円
2022年3月期 15円 7.5円 7.5円
2023年3月期 15円 7.5円 7.5円

4-2 株主優待制度

東急グループは配当金の支払いに加えて、株主還元策として株主優待制度を用意しています。株主優待の内容は、「株主優待乗車証(切符・パス)」「株主優待券(Aセット・Bセット)」の2種類です(2023年7月31日現在)。

株主優待乗車証は、東急線や東急バスに乗車する際に利用できる乗車券です。切符とパスの2種類の形式があり、有効期限内にこの乗車証を使うと無料で目的地まで向かえます。乗車証が切符式の場合、片道1乗車のみに使えますが、パス式の場合、有効期限内に何度でも利用できるため、頻繁に利用する方向けの優待内容となっています。

一方、株主優待券はAセットとBセットがあります。Aセットは東急百貨店で買い物するときに使える割引券(10%割引)や東急ストアのお買い物券、東急ホテルズの宿泊優待券などがあります。Bセットは、Aセットの特典に加えて、東急病院で使える人間ドック基本料金の10%割引券やBunkamuraの招待券、映画鑑賞優待券などがプラスされています。

100株以上保有していると、切符式の優待乗車証と優待券Aセットをもらえますが、500株以上保有している場合、切符式の優待乗車証と優待券Bセット、12,000株以上保有している方にはパス式の優待乗車証と優待券Bセットが受け取れます。継続保有が3年以上であれば、切符式の枚数が増えるため、長く保有しているだけでもメリットがあります。なお、優待乗車証と優待券の有効期間は、発送から約半年なので注意しておきましょう。

(※参照:東急「株式情報」)

5 まとめ

ESGやサステナビリティに取り組む企業は、持続可能な未来を築く上で重要な役割を果たします。中でも東急グループは、日本を代表する大手企業グループとして、持続可能性に関する取り組みに積極的であり、再生可能エネルギーの利用、廃棄物削減、CO2排出削減、公共交通機関の充実や駅ビルの省エネ化など、まちづくりを通じた持続可能な社会づくりに注力しているほか、人材教育や企業統治の向上に取り組んでいるため、将来的な成長や持続可能性の観点から有望な企業の一つに挙げることができます。

東急グループのESG取り組み内容や投資に関心のある方は、この記事を参考にご自身でもお調べになった上で検討してみてください。

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