ファストフードチェーンの廃棄物に対する取り組みは?マクドナルドやモスバーガーの事例を解説
手軽に食べられて便利なファストフードは、誰もが一度は利用した体験があるのではないでしょうか。
一方で、気になるのが環境への負荷です。店内に設置されたダストボックスからゴミが溢れている場合もあり、ファストフードは廃棄物が多く、環境に悪いという印象を持つ人もいるかもしれません。
この記事では、ファストフードチェーンを展開する企業が、廃棄物に対してどのような取り組みをしているのか、具体的な事例を解説します。
※本記事は2023年7月28日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- マクドナルドの廃棄物に対する取り組み
1-1.マクドナルドの包装・容器等によるごみ削減活動
1-2.マクドナルドの食品廃棄物削減活動 - モスバーガーの廃棄物に対する取り組み
2-1.モスバーガーの包装・容器等によるごみ削減活動
2-2.モスバーガーの食品廃棄物削減活動 - まとめ
1.マクドナルドの廃棄物に対する取り組み
マクドナルドは、日本マクドナルドホールディングス(東証スタンダード市場に上場)を親会社に持つ日本マクドナルドが展開するハンバーガーレストランチェーンです。
ファストフードチェーンの代表格といえるマクドナルドの取り組みをご紹介します。
1-1.マクドナルドの包装・容器等によるごみ削減活動
ファストフード店で使われる容器などによる廃棄物の多さや、プラスチックごみへの対策が気になる方もいるでしょう。マクドナルドは、「2025年末までに、お客様提供用容器包装類を、再生可能な素材、リサイクル素材または認証された素材に変更する」という目標を掲げ取り組みを行っています。
代表的な取り組みは、プラスチックごみに対する対策です。2016年、マクドナルドはアイスコーヒーのカップをプラスチックから紙に変更しました。
2018年からは、ハッピーセット®︎(おもちゃ付きセットメニュー)のおもちゃに対する取り組みを開始しました。
1点目はおもちゃの回収です。各店舗に回収ボックスを設置して使わなくなったおもちゃを集め、2022年の回収実績は約450万個となりました(回収したおもちゃの総重量をハッピーセット®︎のおもちゃの平均重量で割り返した推測値(日本マクドナルド試算))。
参照:日本マクドナルド「おもちゃリサイクル」
また、おもちゃの素材についてもサステナブルなものへ変更を進めています。2025年末までにすべてのハッピーセット®︎のおもちゃを再生可能な素材、リサイクル素材もしくは認証された素材などへ移行し、2018年比で化石資源由来の原料を新規に使用したプラスチックの量を約90%削減することを目標としています。具体的な施策としては、おもちゃに図鑑や絵本を導入し、2021年からは紙製おもちゃを導入しています。
持ち帰り用の袋についてもプラスチックごみの削減に取り組んでいます。基本的には紙袋を使用し、プラスチックバッグの使用は必要に応じた対応としています。2018年からは1ドリンクのみを入れるプラスチックバッグを導入し、プラスチックの使用量削減に努めています。またプラスチックバッグの素材は、植物由来の原材料からつくられたポリエチレンを使用しています。カトラリー類は、2022年10月より紙ストロー、木製カトラリーを順次導入しています。
プラスチック類の廃棄量(売上100万円あたり)は、2022年は、2021年と比較し▲6.0kgとなる、9.6kgとなりました。
参照:日本マクドナルド「サステナビリティレポート 地球環境のために」
1-2.マクドナルドの食品廃棄物削減活動
マクドナルドは、食品廃棄物に対する取り組みにも力を入れています。
マクドナルドのハンバーガーに、なんとなく「作り置き」のイメージを持っている方もいるでしょう。実はかなり昔の話です。
マクドナルドは、2005年以降全店において、注文が来てからバーガー類を調理する「メイド・フォー・ユー(MFY)」システムを採用しています。このシステムは食品廃棄を極力削減することを目的に開発されたもので、導入前と比較すると完成品商品の廃棄は半分以下と、食品ロスの削減につながっています。
また、マクドナルドのハンバーガーはサイズ展開が豊富であるため、ちょうど良い量を顧客側が選ぶことで、食べ残しを防止することができます。また、食べ切れなかった商品は、店員に伝えれば紙袋を用意してくれるので持ち帰りも可能です。
ドリンク用の砂糖やミルクは、顧客に要否を確認して提供をする取り組みも行われています。
食品リサイクルに対しても積極的に取り組んでいます。2022年のサステナビリティレポートによると、マクドナルドの食品リサイクル率は65%です。
廃棄される食品は、飼料化、肥料化、バイオマス燃料化を行っており、特に廃食用油(フライオイル)は全店舗にてほぼ100%をリサイクルしています。使途は主に鶏の配合飼料です。一部店舗で行われる少し変わった取り組みとしては、ポテトあげかすの飼料化や、コーヒー豆かすのたい肥としての再資源化などが挙げられます。
参照:日本マクドナルド「サステナビリティレポート(2022)」
2.モスバーガーの廃棄物に対する取り組み
モスバーガーは、モスフードサービス(東証プライム市場に上場)が運営するハンバーガーレストランチェーンです。
ファストフードチェーンの中でも少し高価格帯商品を扱う同社が、どういった取り組みを行っているのかご紹介します。
2-1.モスバーガーの包装・容器等によるごみ削減活動
モスバーガーは、顧客向けの使い捨て製品について石油系プラスチックをできるだけ使用しない方針を掲げており、2030年度には環境配慮型製品比率を100%にすることを目標としています。なお、2022年時点では同比率は64.1%となっています。
参照:モスバーガー「ESGデータ集」
まず、テイクアウト用の資材に関する取り組みです。
モスバーガーの店舗では、スプーン・フォークなどのカトラリー使用意向の確認をしています。声かけにより、約4割の顧客からカトラリーの辞退があるといい、大きな効果をあげています。
また、2022年10月から順次、カトラリーをバイオマスプラスチック「ライスレジン®」を原料としたものに変更しています。この素材は、国産非食用米を25%配合した国産の非食用米で、食用や肥料等に活用されなかったお米を有効活用できます。また、米は生育過程でCO₂を吸収するため、焼却しても新たなCO₂を出さない「カーボンニュートラル」といえるため、温室効果ガスの削減に役立ちます。
参照:モスバーガー「お持ち帰り用のスプーン・フォークが環境対応になりました」
持ち帰り用手提げ袋には、紙バッグと植物由来のバイオマスプラスチック原料を使用したポリ袋を併用しています。持ち帰り用容器・包装資材を石油系プラスチック素材から代替素材への変更も進めており、たとえばモスライスバーガー包装紙を発泡ポリエチレンからパルプ系繊維へ、サラダ容器をリサイクルPET製へ変更するなどの改善がされています。
またモスバーガーでは創業当初より、店内では使い捨てではない食器で商品を提供しています。ファストフード店の多くが使い捨て容器を当たり前に使っていた時代からこういった取り組みをしていた点に、モスバーガーの環境に対する先見性がうかがえます。
さらに、顧客から見えない部分における取り組みも進められています。生鮮野菜を産地から店舗まで配送する容器は、通常は段ボール箱が使用されます。これは大量の資源ごみになり、雨天時等には野菜が蒸れて品質が劣化することもありました。これを一部、リユースコンテナに切り替えることで、環境負荷の軽減と品質劣化の防止を実現しています。
2-2.モスバーガーの食品廃棄物削減活動
モスバーガーの食品ロス等についての取り組みも見てみましょう。
モスバーガーでは、創業当初より注文後に商品をつくる「アフターオーダー方式」を採用しているので、作りおきのロスが発生しない仕組みになっています。店舗から1日に出る食品廃棄物は「食べ残し」ではなく、「調理くず」や「廃食油」という性状であるといいます。
店舗で発生した調理くずの一部や廃食油は飼料化、堆肥化、工業原料(廃食油のみ)などとしてリサイクルを進めており、2022年における食品廃棄物の再生利用等実施率は60.5%となっています。
参照:モスバーガー「ESGデータ集」
また、モスバーガーではフードバンク活動を食品サポーターとして支援しています。「セカンドハーベスト・ジャパン」によるフードバンク活動に対して食材を無償で提供しており、たとえば品質に問題はないものの賞味期限が短く廃棄せざるを得ない食材などが活用されています。こうした寄贈品は、児童養護施設、母子生活支援施設、障害者施設などに届けられます。
3.まとめ
ファストフードチェーンに、大量のごみが出るイメージを持っている方もいるでしょう。しかし、廃棄物を削減するためのさまざまな企業努力が行われています。
顧客である私たち自身の取り組みも大切です。余計な包装やカトラリー類は断ることや、食べ切れる量を注文すること、ごみの分別などの一人ひとりの取り組みがあってこそ、企業の活動も効果を発揮します。
企業と顧客、どちらか任せではなく、支えあって問題解決に取り組む風土づくりが求められているのではないでしょうか。
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