既存のVCM市場と一般ユーザーをReFiへ引き込むReFiゲートウェイプロトコル「C3.app」とは?

目次

  1. C3.appとは?
    1-1. 使い方
    1-2. カーボンプール
    1-3. インセンティブ設計
    1-4. トークンエコノミクス
  2. 設立背景と展望
  3. ReFiゲートウェイの可能性

C3.appとは?

C3.appは、VCM(自主炭素市場)をReFiに組み込むことを目的にしたプロトコルです。具体的にはVCMのカーボンクレジットをトラストレスにトークン化する”カーボンブリッジ”の開発と運営を行っています。

カーボンブリッジを利用するとVCMのプレイヤーは誰でもカーボンクレジットをブロックチェーン上に持っていくことができ、ReFi市場にアクセスすることができます。このブリッジプロトコルはパーミッションレスで公開されているため、希望するプレイヤーは自由に利用できます。また、APIに対応しているため、人為的なミスを起こすことなくトラストレスにカーボンクレジットをトークン化できます。

カーボンクレジットをトークン化するためにブリッジするプロトコルは他にも存在しますが、C3.appは既存の全てのカーボンレジストリ(Gold Standard、Verra、ACRなど)にアクセスすることができます。

使い方

現時点でブリッジは一方向であり、オフチェーンからオンチェーンに持ってくることのみ可能です。

トークン化を希望するには、まずトークン化する際にオフチェーン上のクレジットは廃止(リタイヤメント)します。そしてその廃止したクレジットのメタデータをブロックチェーンに取り組み、トークン化します。この仕組みによって二重カウントの問題がなくなり、ブロックチェーンの特性である、透明性やグローバルでシームレスな決済の利点を使うことができます。

参照:Carbon Bridge

カーボンプール

トークン化されたカーボンクレジットは、トークン前のクレジットと1対1のNFTとなるわけではなく「カーボンプール」にプールされます。固有のNFTとなるわけではなく、1つの大きなFTの一部になるイメージです。

現時点でC3.appはUniversal Basic Offsets (UBO) とNatured Based Offset (NBO)の2種類のトークンを発行しています。基本的はUBOにプールされ、森林由来のクレジットがNBOにプールされていくというイメージです。

参照:Pools & Token

ではなぜ、このような仕組みを取っているのでしょうか。その理由は”流動性の確保”にあります。

既存のVCM市場は発行したクレジットを直接取引するか取引所で売買します。この際、買い手と売り手が異なる価格を提示します。この価格の擦り合わせにお互いが合意することで取引が成立します。逆に言えば、擦り合わないと取引が成立しません。そして、VCM市場はクレジットごとの価格が公開されておらず、相場も定まっていないため、取引の流動性が極めて低い現状があります。そのため、クレジットをそのまま固有のNFTにしたとしても、価格決定プロセスにおいて時間がかかり、取引の流動性が向上しない可能性が高いです。そこで、全てのクレジットをFTとして、AMM(自動マーケットメイカー)の仕組みを採用することで、価格決定及び購入のプロセスを劇的に改善し、流動性を提供することが可能になります。

尚、AMMとは主にDEXに採用されている概念で、流動性プールに資金をプールしておくことでトレーダーが好きなタイミングで自由に取引をしなくて済む仕組みです。

C3.appではUBOとNBOという2種類のトークンに対してカーボンプールを生成し、カーボンクレジットに流動性を提供しています。

インセンティブ設計

この流動性プールを運営するにはプールにトークンを預け入れてくれる人が必要です。そこでC3.appは独自トークン”C3”を発行してインセンティブ設計を行っています。C3の取得には3つの方法があります。

  1. カーボンクレジットのブリッジ
  2. 流動性プールへの資金提供
  3. ステーキング

これら3つを行うことで”C3”を獲得できます。C3はガバナンストークンとして機能します。

また、C3の報酬を最大限受け取るために、C3をロックすることで「Vote-Escrowed C3(veC3)」を獲得できます。veC3を保有するとC3エコシステムで投票、ステーキング、ブーストをすることができます。ステーキングはプロトコルがブリッジ等で獲得した収益の一部を獲得することができ、ブーストでは保有するveC3の量によって、流動性の提供時に獲得できる報酬を増加させることができます。また、ユーザーの提案にも投票ができるようになり、プロトコルのガバナンスに具体的に参加することが可能となります。尚、veC3はより長期間C3をロックした方が多く受け取ることができます。

トークンエコノミクス

veC3の総供給量は40億で5年間をかけて配布されていきます。コアチームに7.5%、投資家に7.5%、KlimaDAOに10%、エコシステムのインセンティブとして75%の割合で、下記のスケジュールで配布されていきます。

設立背景と展望

C3.appはKlimaDAOに触発されたメンバーによって2022年1月に誕生しました。C3は「Crypto Carbon Company」の頭文字とのことです。

カーボンニュートラルの実現へ向けて、VCM市場は急拡大をする必要があります。2050年までに目標とされている1.5度の温度低下を目指すには、2030年までにVCM市場を15倍に拡大する必要があるそうです。

しかし、VCM市場にはまだまだ課題が多く存在します。それは仕組みが複雑で透明性がなく、価格も明確ではないことです。この現状をブロックチェーンを活用してトークン化し、且つAMM型のトークンプールを利用することでVCM市場の更なる急拡大を目指すことがC3.appの設立理由です。

すでにKlimaDAO等がカーボンプールの凄さを実証していますが、より多くのプレイヤーがReFiへ参加できるように、C3.appは自らのReFi市場へのゲートウェイと位置付けています。よって、使いやすいUXの構築を目指しており、近日中にはメールアドレスの登録でウォレット作成ができたり、クレジットやデビットカードでトークンが購入できるように実装予定です。その他、ガスレストランザクションや銀行振込等の新規ユーザーの抵抗感を減らす改善とDeFiへの接続を強化する運用先の強化などがロードマップに書かれていました。

ReFiゲートウェイの可能性

最後に筆者自身の考察を書きます。「ReFiへのゲートウェイ」と明言するC3.appのポジションには非常に可能性があると考えています。

“ゲートウェイ”というのは2種類のターゲットが存在しており、既存のVCM市場をReFiへ連れてくること、そして一般ユーザーをReFiへ連れてくることの2点です。一点目に関してはAPI連携でトラストレスにブリッジできるソリューションを提供しており、既存のVCM事業者がすぐにReFiへ参加することができます。もちろんこの仕組みも大切なのですが、筆者としては二点目の一般ユーザーをReFiへ連れてくる観点が非常に大切だと考えています。

当たり前ですが、売り手がいても買い手がいなければ市場は盛り上がりません。ReFi市場は現在売り手側をサポートするプロトコルが多く、一般ユーザーがReFiに気軽に触れるサービスが不足しています。まずは売り手側のクレジットをトークン化しなければ何も始まらないので、そこから盛り上がりを見せることが自然ですが、その辺りが徐々に整ってきたため、今後はいかに一般ユーザーをReFiに連れてくるかが求められると感じています。

そのため、メールアドレスでのアカウント登録、ガスレストランザクション、クレカ・デビット・銀行振込による決済方法は一般ユーザーにとっても慣れ親しんだ行動のため、ReFiへストレスなく参加できる可能性があります。一般ユーザー(買い手)が増えれば、流動性が向上し取引高が向上するので売り手のインセンティブも増加し、より多くの売り手がReFiへ参加します。

この好循環を築くためにも、C3.appのようなReFiのゲートウェイとなるプロトコルは大きな可能性を秘めており、今後のReFiエコシステムにおいて重要な存在となる可能性があります。引き続き注目していきます!

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