グリーン水素スタートアップNovoHydrogen、30億円調達。米国でプロジェクト開発加速へ
グリーン水素プロジェクトを手がけるスタートアップNovoHydrogenは10月17日、クリーンエネルギー企業Modern Energyより、エクイティ・コミットメント(新株予約権を利用した資金調達)で2,000万ドル(約30億円)の資金を調達したと発表した(*1)。調達した資金を元手に、全米でグリーン水素の製造を加速させる方針だ。
今日、世界の水素産業は、2022年に年間9,500万トンもの強い需要があり、世界の最終エネルギー消費(#1)の約2.5%を占めている。しかしながら、現在の水素の生産に関しては、その95%以上が化石燃料(主に天然ガスと石炭)に依存している。
化石燃料への依存に加え、それに伴うエネルギーと排出ガスを大量に消費するプロセスは、脱炭素化を図るうえで重大な問題を提起している状況だ。
そのような市場環境下において、世界的なエネルギー転換と脱炭素化に向けた取り組みを推進しているのがNovoHydrogenだ。同社はマット・マクモナグル氏が21年に設立し、様々な業界の顧客向けにオンサイトおよびニアサイトにてグリーン水素プロジェクト事業を行っている。
グリーン水素プロジェクトの組成や開発、資金調達、建設、運営に注力し、既に30以上のプロジェクトを開発中で、2ギガワット規模のグリーン水素の製造を見込む(*2)。
今回の資金調達を受け、NovoHydrogenはチームの強化を引き続き進めると共に、グリーン水素プロジェクトの開発ポートフォリオは最終投資決定(FID)に至り、建設段階へと進めることができる。
NovoHydrogenは、Modern Energyからの投資を受ける前のシード期(創業初期の資金調達)に350万ドルを調達した。併せて、プロトン交換膜(PEM)電解槽の有力メーカーOhmiumと戦略的パートナーシップも結んでいる。
グリーン水素は、クリーンなエネルギーを使用し、電気分解により水分子を分解することで製造される。温室効果ガス(GHG)を排出することなく、汎用性が高く、貯蔵可能、輸送可能な燃料を生産する次世代エネルギーとして期待されている。
また、重工業(鉄鋼やセメントなど)、分散型電力(マイクログリッド(小規模電力網)やバックアップ電源など)、輸送(航空や大型車両など)といった重要なセクターでは、二酸化炭素(CO2)排出量を大幅に削減する可能性を秘めており、現在進行中のエネルギー転換に不可欠な要素だ。
国際エネルギー機関(IEA)は、世界の水素の需要が、20年の8,700万トンから50年には5億2,800万トンに達する可能性があると指摘する(*3)。今後、大きな伸びが期待できる水素需要を取り込むべく、世界各国が政策面からの後押しを進める。
中でも米国は、同国最大級の気候変動対策となるインフレ抑制法(IRA)を通じ、1kgあたり最大3ドルの生産税額控除を、またインフラ投資・雇用法(IIJA)によりクリーン水素ハブの開発に80億ドルを提供するなど、世界の中でもグリーン水素に対する政策支援が非常に充実している(*1)。
バイデン米政権は10月13日、全米7か所を水素の生産拠点として選定し、70億ドルを助成することを発表した(*3)。
NovoHydrogenは、その内の1か所であるパシフィック・ノースウエスト水素ハブのメンバーとして、最大10億ドルの資金提供を受けながら、大規模な電解槽を活用したグリーン水素の製造を推進していく計画だ。
(#1)最終エネルギー消費…産業活動や交通機関、家庭など、需要家レベルで消費されるエネルギーの総量を指す。
【参照記事】*1 NovoHydrogen「NovoHydrogen Secures $20M Equity Commitment from Modern Energy」
【参照記事】*2 NovoHydrogen「Affordable,industrial-grade,zero-emission hydrogen.」
【参照記事】*3 国際エネルギー機関「Net Zero by 2050」
【参照記事】*4 ホワイトハウス「Biden-Harris Administration Announces Regional Clean Hydrogen Hubs to Drive Clean Manufacturing and Jobs」
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