マンション投資で注意したい修繕積立金の目安は?確認する方法も

マンション投資において、精査すべき費用の一つに修繕積立金があります。毎月のコストになるからといっていたずらに抑えようとせず、そのマンションの規模に沿った修繕積立金を拠出することが大切です。

修繕積立金は長期計画に沿って算出されていますが、さまざまな要因で将来増額となる可能性もあります。修繕積立金の増額リスクを加味したうえで投資判断していきましょう。

この記事ではマンションの修繕積立金の考え方や目安、確認方法を紹介しています。マンション投資の計画を立てるうえで、ぜひ参考にしてください。

目次

  1. マンションの修繕積立金の概要
    1-1.修繕積立金とは?
    1-2.長期修繕計画とは?
    1-3.具体的な修繕箇所の例
  2. 修繕積立金の目安は?
    2-1.マンション総合調査結果における修繕積立金の額
    2-2.修繕積立金のマンションのガイドラインにおける目安と考え方
    2-3.修繕積立金目安の計算式とモデルケース
  3. 目安と購入物件の修繕積立金を比較
  4. マンションの修繕積立金が値上がりする原因
    4-1.そもそも修繕積立金が過少だった
    4-2.段階増額積立方式を採用している
    4-3.予期せぬ修繕が発生した
    4-4.施工費用の増大
  5. まとめ

1 マンションの修繕積立金の概要

修繕積立金は、マンションをメンテナンスするためにマンションの保有者が月々貯めていく資金です。長期にわたってマンションの住民が快適に暮らしていくため、そして資産価値を適正に維持するために欠かせない資金となります。

1-1 修繕積立金とは?

マンションをできるだけ長期にわたり住める状態に維持するためには、適切なメンテナンスが不可欠です。日本では国土交通省が定める「長期修繕計画作成ガイドライン」に従ってマンションの長期にわたる修繕計画を作る必要があります。

修繕にかかる費用は、マンションの所有者が分担して負担しなければなりません。分譲マンションなら基本的に住民が毎月支払いますし、投資用マンションなら投資家が負担します。

大規模なマンションにおいて、急にまとまった資金を支払うとなるとリスクが大きいため、計画に沿って必要な修繕ができるよう、毎月修繕積立金を支払っていく仕組みです。

この修繕積立金をつかって、マンションの修繕を計画に従って行い、マンションの資産価値を維持していきます。修繕積立金は基本的に返還されないため、住民なら住居費の一部になりますし、マンション区分投資家なら投資収益を減らす支出となります。

1-2 長期修繕計画とは?

修繕積立金を算出する根拠となるのが「長期修繕計画」です。日本ではマンションの管理において「建築物の所有者、管理者または占有者は、その建物の敷地、構造および建築設備を常時適法な状態に維持するよう努めなければならない」という定めが建築基準法にあります。

国土交通省では、この法令順守をスムーズにするために「長期修繕計画作成ガイドライン」を長期修繕計画の指針として整理しています。

建築基準法を遵守しながらマンションを管理するうえで、多くのマンションがガイドラインに沿って長期の修繕計画を立てたうえで、必要金額を算出しマンション保有者から修繕積立金を徴収しています。

2023年10月時点のガイドラインでは、長期修繕計画の策定期間は少なくとも30年以上、かつ2回の大規模修繕工事が含まれる期間としています。

「大規模修繕」についても建築基準法で定義が定められており「建築物の主要構造部 (壁、柱、床、はり、屋根、階段)の一種以上について行う過半の修繕、 模様替え」とされています。

すなわち主要構造物の少なくとも一つを半分以上の範囲で修繕すれば、大規模修繕です。大規模修繕はほかの修繕と比べて高額な費用がかかるため、綿密な修繕計画を立てて、不足が出ないよう適切な金額を積立てて行かなければなりません。

1-3 具体的な修繕箇所の例

長期修繕計画では、具体的な修繕個所ごとにおよその修繕周期を記載します。以前は具体的な年数で記載する形でしたが、2023年10月時点では〇~〇年のように一定の範囲で記載することが推奨されています。

具体的な年数は、マンションごとに決める必要がありますが、国土交通省は「長期修繕計画の記載例」を公表しており、そこには修繕個所ごとの年数も記載されているため、しばしば参考にされます。

国土交通省による長期修繕計画の記載例(一部抜粋)

カテゴリー 修繕箇所 修繕時期・内容
屋上防水(保護) 屋上・塔屋・ルーフバルコニー 12~15年:伸縮目地の打替え、保護コンクリート部分補修
24~30年:下地処理、ウレタン塗装防水通気緩衝工法
躯体コンクリート補修 外壁、屋根、床、手すり壁など 12~15年:ひびわれ・欠損・爆裂補修
外壁塗装
雨掛かり部分
外壁、手すり壁等 12~15年:高圧水洗の上、下地処理、アクリルシリコン樹脂塗材
24~30年既存塗膜除去、アクリルシリコン樹脂塗材(撤去・新規防水)
建具関係 窓サッシ、面格子、網戸、シャッター 12~15年:点検、補修
34~38年:建具(掃出しアルミサッシ、面格子)取替、アルミ枠被せ
ガス管 屋外埋設部ガス管、屋内共用ガス管 28~32年:取替(更新)

※出所:国土交通省「長期修繕計画の記載例

大規模修繕だけでなく、小規模でより頻度の高い設備の修繕についてもまとめ、費用は修繕積立金から賄っていきます。

2 修繕積立金の目安は?

修繕積立金については、過去には実際の費用の統計が取られていました。また、国土交通省がまとめた「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」においては、金額の目安が公表されています。これらを基に、修繕積立金の目安をみていきましょう。

2-1 マンション総合調査結果における修繕積立金の額

国土交通省では概ね5年に1度「マンション総合調査」を行っています。最新のデータは平成30年になりますが、これによると、修繕積立金は11,243円、駐車場使用料等からの充当額を含めると12,268円です。

平成11年以降の推移は以下の通りで、緩やかではありますが年々上昇傾向となっています。

月・戸あたりの修繕積立金の平均額

月・戸あたりの修繕積立金の平均額※出所:国土交通省「平成 30 年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状

2-2 修繕積立金のマンションのガイドラインにおける目安と考え方

マンションの修繕積立金に関するガイドライン」においては、国土交通省が調査した事例をもとに、修繕積立金の月額目安を公表しています。まず駐車場以外の部分の費用目安は以下の通りです。(算出式は複雑なため「2-3 修繕積立金目安の計算式とモデルケース」で後述)

計画期間全体における修繕積立金の平均月額目安(機械式駐車場除く)

地上階数/建築延床面積 事例の2/3が含まれる幅 平均値
20階未満|5,000㎡未満 235円~430円/㎡ 335円/㎡
20階未満|5,000㎡以上~10,000㎡未満 170円~320円/㎡ 252円/㎡
20階未満|10,000㎡以上~20,000㎡未満 200円~330円/㎡ 271円/㎡
20階未満|20,000㎡以上 190円~325円/㎡ 255円/㎡
20階以上 240円~410円/㎡ 338円/㎡

出所:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン

さらに、機械式駐車場がついている場合については、追加で以下がかかります。実際に計算する際には、マンションの面積全体で割って1平方メートル当たりに換算する必要があります。

機械式駐車場の1台あたり月額の修繕工事費

機械式駐車場の種類 修繕工事費(1台あたり・月額)
2段(ピット1段)昇降式 6,450円
3段(ピット2段)昇降式 5,840円
3段(ピット1段)昇降横行式 7,210円
4段(ピット2段)昇降横行式 6,235円
2段(ピット1段)昇降式 6,450円
2段(ピット1段)昇降式 6,450円

金額については5円単位で表示
出所:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン

2-3 修繕積立金目安の計算式とモデルケース

マンションの修繕積立金に関するガイドライン」においては、以下の計算式によって目安を算出しています。

修繕積立金目安の計算式

修繕積立金目安の計算式出所:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン

駐車場部分の修繕積立金目安の計算式

駐車場部分の修繕積立金目安の計算式※出所:同上

国土交通省では「モデルケース」による計算例が公表されているので、合わせて紹介します。

  • 建物の階数:地上 10 階建
  • 建築延床面積:7,000 ㎡
  • マンションの総専有床面積:4,900 ㎡(戸当たり 70 ㎡、住戸数 70 戸)
  • 計画期間当初における修繕積立金の残高:7,000 万円
  • 計画期間全体で集める修繕積立金の総額:2 億 6,460 万円
  • 計画期間:30 年
  • 計画期間全体における専用使用料等からの繰入額の総額:9,000 万円
  • 機械式駐車場(3段(ピット2段)昇降式)30 台

駐車場部分以外の修繕積立金の計算式

駐車場部分以外の修繕積立金の計算式※出所:同上

駐車場部分の修繕積立金の計算式

駐車場部分の修繕積立金の計算式出所:同上

3 目安と購入物件の修繕積立金を比較

マンション投資を行う際には、修繕積立金を上記のモデルケースと照らし合わせて修繕積立金が適切な金額かを確認して投資判断をしなければなりません。ここで確認すべきは、以下の3点です。

  • 月々の積立金
  • 積立金の積立方針
  • 購入時点での積立金額

月々の積立金額は、購入後毎月の支出であるため、いうまでもなく確認が必要です。また、マンション購入前に確認できる「重要事項に関わる調査報告書」では、修繕積立金の積立方針をみることができます。具体的には、マンションの修繕積立金の方針には、以下の2パターンがあります。

  • 段階増額積立方式:徐々に値上げしていく
  • 均等積立方式:長期的に必要な総試算額を均等に割って一定額を徴収

国土交通省では均等方式を推奨していますが、法的義務はないため、増額方式の場合も少なくありません。増額方式の場合は、将来積立金が増額して月々の収支悪化要因となるため、注意しましょう。

なお、月々の修繕積立金を払っても黒字化できるかをみるのと同時に、国土交通省のガイドラインをふまえて、金額が適正かも見ておきましょう。

最後に特に中古物件の場合は、購入時点の修繕積立金額の総額やこれまでの修繕履歴もみておきましょう。これも「重要事項に関わる調査報告書」で確認できます。

さらに、ガイドラインに従って積立金額総額が適切であるかを見てください。適正額より積立が少なかった場合、将来の修繕積立金の増額リスクが高いといえます。

4 マンションの修繕積立金が値上がりする原因

修繕積立金は、しばしば不足して値上がりしたり、臨時の追加徴収が発生したりするケースも少なくありません。ここまで紹介した方法で目安と購入物件の条件を確認すればある程度リスクは減らせるものの、値上がりリスクを完全に回避することはできません。ここからは修繕積立金が値上がりする原因について紹介します。

4-1 そもそも修繕積立金が過少だった

根本的に修繕積立金が、本来必要な額に対して少ないケースがしばしば考えられます。現行の修繕積立金のガイドラインは2008年に策定されたもので、古いマンションほどそれ以前の修繕積立金の管理が(法令違反とまでは言えない範囲で)適切ではなかった可能性があります。

特に中古物件では、2008年以降に是正に努めたものの、修繕積立金が足りないケースは珍しくありません。修繕積立金が少なすぎれば、計画的な修繕を維持していくために、積立金を増やすか、臨時の徴収をするしかありません。

4-2 段階増額積立方式を採用している

段階増額積立方式を採用している場合は、確実に将来修繕積立金が増えていくと考えた方がよいでしょう。この方式は、計画的に修繕積立金の負担額を徐々に増やす方法です。国土交通省は均等方式を推奨してはいるものの、2023年10月時点では導入しても問題ない方式なので「計画通り」積立金が増額されていく物件もあります。

4-3 予期せぬ修繕が発生した

計画にない修繕が発生すれば、その費用を負担するために修繕積立金を増やしていかなければなりません。長期修繕計画は数十年先の状況まで予測するため、100%予定通りに行くとは限りません。

特定の箇所について想定より劣化が早く、計画より早いペースで修繕が必要になるケースは少なからずあります。バリアフリーや省エネなどの性能を高めるために、追加の大規模修繕を行う場合なども考えられます。

4-4 施工費用の増大

近年しばしば見られるのが施工費用の増大です。長期修繕計画では、将来の物価上昇まで読み込むのは困難です。当時の施工費や原材料費をもとに費用を計上するため、費用が増大すれば、計画通りの工事でも修繕積立金が足りなくなるケースがあります。

特に、昨今は資源価格の高騰や日本国内での賃上げの潮流、人手不足などを背景に工賃が上昇傾向にあるため、計画通りでありながら修繕積立金が不足する事態は珍しくありません

まとめ

修繕積立金は、物件の居住環境と資産価値を適正維持するうえで重要なものです。投資家にとっては月々のコストであるため、つい節約してしまいたくなりますが、修繕積立金の不足は、将来のコスト増大やマンション資産の劣化の加速などさまざまな弊害を産み出します。

単純な修繕積立金の多寡だけでなく、購入物件の規模をもとに修繕積立金の総額や積立方法が適正であるかを確認のうえ、問題のない物件を選んで投資して下さい。

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マンション投資で注意したい修繕積立金の目安は?確認する方法も