全固体電池で注目の自動車部品メーカーは?EV関連銘柄5社を紹介

全固体電池とは、これまでのリチウム電池では液体である電解質を固体にし、正極と負極を含めたすべての部材を固体にした電池を指し、次世代電池の本命として注目されています。

トヨタが2027年にも全固体電池EV(電気自動車)を投入する予定と発表しており、関連銘柄への関心も高まっています。

本稿では、全固体電池関連の自動車部品メーカー5社を紹介します。
※本記事は2023年11月30日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。


目次

  1. 全固体電池の概要
  2. 全固体電池はEV(電気自動車)車の電池として注目
  3. 全固体電池の量産でトヨタと出光が手を組む
  4. 全固体電池で注目の自動車部品メーカー5選
    4-1.三桜工業(6584)
    4-2.三菱ケミカルグループ(4188)
    4-3.マクセル(6810)
    4-4.三井金属(5706)
    4-5.GSユアサ(6674)
  5. まとめ

1.全固体電池の概要

全固体電池は、リチウム電池の電解質に、固体を使用している電池です。リチウム電池はスマートフォンや電動工具、電気自動車などに幅広く使用されていますが、全固体電池はその進化版といえます。なぜなら、全固体電池は液体ではなく固体の電解質を使用し、高温状態でも安定性が向上しているからです。

さらに、電解質が損傷しても形状を維持するため、高い安全性を実現しています。これにより、温度変化や外力による漏液などのリスクを軽減できます。

2.全固体電池はEV(電気自動車)車の電池として注目

全固体電池は、2023年11月時点で主流のリチウムイオン電池よりも優れた特性があります。特にEV(電気自動車)用バッテリーとして期待が高まっています。安全性や耐熱性の高さにより温度変化に強く、過酷な状況でも使えるEV(電気自動車)の動力として期待されています。

さらに、航続距離の伸長や急速充電、長寿命化も可能です。これにより、より多くの電池を搭載し、航続距離を伸ばすことができ、急速充電しても劣化しません。また、固体電解質により、電解液の分解反応や電極活物質の溶解といった劣化が抑えられ、長寿命化が実現します。


出典:トヨタイムズ「全固体量産へ出光・トヨタがタッグ 「実現力」で狙う世界標準

3.全固体電池の量産でトヨタと出光が手を組む

トヨタ自動車と出光興産は、EV(電気自動車)向けの次世代電池「全固体電池」で提携します。2027年度に国内で生産を開始し、2027〜28年に発売予定のEV(電気自動車)に搭載します。トヨタと出光が連携し、電池材料の製造技術を活かし、全固体電池の量産を世界に先駆けて行います。

次世代電池の注目度が高い全固体電池は、充電時間を短縮し、航続距離を延ばすことができます。トヨタは6月に、現行のEVの航続距離の約2.4倍となる約1200キロメートルを、わずか10分以下の充電で走行できると、全固体電池の開発状況を説明しました。

参照:ロイター「トヨタ、全固体電池を27年にもEV向け投入 航続距離1200キロ

トヨタと出光は、全固体電池とその材料となる硫化物固体電解質の特許で世界トップクラスを誇り、協業して世界標準を狙います。


出典:トヨタイムズ「全固体量産へ出光・トヨタがタッグ 「実現力」で狙う世界標準

4.全固体電池で注目の自動車部品メーカー5選

トヨタと出光の提携で、全固体電池への注目度が高まっています。本稿では、全固体電池に関連する、自動車部品メーカーを解説します。

4-1.三桜工業(6584)

三桜工業は日本の独立系自動車部品メーカーです。自動車用のさまざまなチューブや配管を製造し、車輌配管メーカーとしては、世界第2位のシェアを築いています。

参照:三桜工業「統合報告書2022

2018年9月には米国のソリッドパワーに出資し、全固体電池の開発に取り組んできました。2023年11月現在では、試作品の段階を経て、電気自動車向けの実用化に向けて進んでいます。

さらに、ソリッドパワーはフォードとの提携も行っており、ロール・ツー・ロールで生産できる全固体電池の開発も進めています。

6月にトヨタが2027年にも次世代電池の本命とされる全固体電池を搭載したEVを投入と報じられると、同社の株価は急伸しました。全固体電池関連銘柄として、同社への関心は高いといえるでしょう。

4-2.三菱ケミカルグループ(4188)


出典:国立研究開発法人物質・材料研究機構「「全固体電池マテリアルズ・オープンプラットフォーム」本格始動

NIMS(国立研究開発法人物質・材料研究機構)は、酸化物型全固体電池を開発するために、JX金属株式会社、JFEスチール株式会社、住友化学株式会社、太陽誘電株式会社、株式会社デンソー、トヨタ自動車株式会社、日本特殊陶業株式会社、三井金属鉱業株式会社、三菱ケミカル株式会社、株式会社村田製作所と連携し、全固体電池マテリアルズ・オープンプラットフォームを立ち上げました。この取り組みにより、世界の開発競争に勝利するためのオールジャパンの体制を築くことを目指しています。

三菱ケミカルグループはEV(電気自動車)向けに樹脂部品の採用拡大を目指しており、今後は全固体電池関連銘柄としての注目度も上がっていくと考えられます。

4-3.マクセル(6810)

マクセルはすでに日 本国内で販売されている酸化物系全固体電池ではなく、硫化物系全固体電池を開発しています。これらの電池は、量産性や用途によって異なるメリットやデメリットを持っています。

マクセルの硫化物系全固体電池は、高温下での焼成が不要で量産性が高く、高出力と大容量の特長を持っているのです。さらに、アルジロダイト型固体電解質の採用により、充放電の繰り返しや長期保管に伴う抵抗上昇を抑制し、長期サイクル後や長期保管後の高負荷時の放電容量を向上させています。

2023年3月、マクセルは、産業機械向けに世界で初めて大容量の全固体電池を量産しました。まず工場のロボット用に生産を始めます。全固体電池の本格的な商用化として期待が高まっています。

4-4.三井金属(5706)

三井金属は、全固体電池向けの革新的な固体電解質「A-SOLiD(エー・ソリッド)」 を開発しています。同社は長年にわたり培った電池材料技術を活かし、2021年11月にサンプル出荷を開始しました。さらに、2023年2月には埼玉県・上尾市で量産試験装置の生産能力を増強する発表を行いました。

企業の発表資料によれば、サンプル供給後、国内外の顧客からの電気自動車(EV)に関するニーズが急増しました。具体的な数字は公表されていないものの、量産試験用設備の生産能力を倍増する計画です。

参照:三井金属「全固体電池向け固体電解質「A-SOLiD®」量産試験用設備の生産能力増強について

4-5.GSユアサ(6674)

GSユアサ はリチウムイオン電池の研究開発を先駆けて行い、1990年代には角形リチウムイオン電池の量産を開始しました。2009年には世界で初めて量産型EVにリチウムイオン電池を供給し、自動車メーカーの多くの車種で同社の車載用リチウムイオン電池が採用されています。

また、同社の独自の研究においては、全固体電池を実用化するためのキーマテリアルである「硫化物固体電解質」を改良し、高いイオン伝導度と優れた耐水性を兼ね備えた「窒素含有硫化物固体電解質」を新たに開発しました。

GSユアサは、ホンダの液系リチウ ムイオン電池調達パートナーの一社です。GMやLGエナジーソリューションとの合弁会社、CATL、エンビジョンAESCとの地域別パートナーシップを活用して、必要な電池を安定的に確保しています。

また、2020年代後半以降は液系リチウムイオン電池のパートナーとして活動しています。さらに、リチウム金属二次電池(半固体電池)の開発では、米国の研究開発会社SESと協力し、全固体電池も独自に開発しています。

5.まとめ

全固体電池関連銘柄の中でも、自動車部品メーカーの注目銘柄を紹介しました。

本格化する全固体電池EVに向け、今後もマーケットの関心が続く可能性は高いでしょう。全固体電池関連銘柄に興味のある方は、この記事を参考に検討を進めてみてください。

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