【脱炭素銘柄】太陽光発電システム・装置の米エンフェーズ・エナジー(ENPH)の業績や今後は?新NISA対応組み入れファンドも

世界的に太陽光発電を始めとする再生可能エネルギーの導入が加速する中、エンフェーズ・エナジー(ティッカーシンボル:ENPH)は太陽光パネルの効率性を大幅に高めるマイクロインバーターを開発・販売しています。

同社製のマイクロインバーターを繋いだ太陽光パネルが普及することにより、温室効果ガス(GHG)排出量の削減やガソリンの消費量削減など、サステナビリティを推進することにも繋がります。

そこで今回は、エンフェーズの会社概要や製品の特徴をおさらいした上で、サステナブルな取り組みや業績・株価動向、新NISA成長投資枠対応の組み入れファンドを紹介します。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は2022年11月6日時点の情報をもとに執筆しています。最新情報はご自身でもご確認の上、ご判断下さい。

目次

  1. 太陽光向けマイクロインバーター世界最大手
  2. バイデン政権のIRAが後押し
  3. エンフェーズのサステナブルな取り組み
    3-1 マイクロインバーター設置拡大でGHGやガソリン削減
    3-2 グリッドサービスで電力調整機能を向上
  4. エンフェーズの業績・株価動向
  5. エンフェーズを組み入れる新NISA成長投資枠対応ファンド2選
    5-1 ピクテ・エコディスカバリー・アロケーション・ファンド(年2回決算型)為替ヘッジなし
    5-2 クリーンテック株式ファンド(資産成長型)
  6. まとめ

1 太陽光向けマイクロインバーター世界最大手

エンフェーズは太陽光パネルに繋ぐマイクロインバーターの世界最大手です。

創業 2006年
従業員数 3,028人 (2023年6月30日時点)
本店所在地 米カリフォルニア州フレモント
売上高 23億ドル (2022年)
マイクロインバーター出荷台数 約 6,800万台 (23ギガワット相当)
サービス提供国数 145ヵ国超

※参照:エンフェーズ・エナジー「Investor Presentation

マイクロインバーターとは、住宅など小規模な太陽光発電に利用される超小型のパワーコンディショナー(太陽光パネルで発電した電力を家庭で使用できる電力に変換する装置)のことです。

エンフェーズのマイクロインバーター IQ8

※画像引用:エンフェーズ・エナジー「The IQ8 Series Microinverter

私たちが家庭で使用している冷蔵庫やエアコンといった電化製品は交流電力を使用しています。一方、太陽光パネルで発電した電気は直流電力となるため、家庭で使えるように、パワーコンディショナーで直流から交流へ変換しなければなりません。

従来のセントラル・インバーターは、複数の太陽光パネルを1つのインバーターに繋ぐため、最終出力が最も低出力なパネルに依存することになります(電力の変換効率が低い)。

一方、エンフェーズのマイクロインバーターは、1つ1つのパネルにインバーターを設置することで、発電ロスを抑えられます。また、設計や施工を簡略化することにより、降雪などの影響で設置が非効率な場所でも太陽光パネルを設置できる可能性を高められます。

太陽光パネルに半導体を埋め込み、IoTシステムと連携してクラウドベースのエネルギー管理も可能です。ユーザーは同社アプリ「ENPHASE APP」を通じ、電力の使用状況やパネルごとの電力生産量を確認できます。

エンフェーズのスマホアプリ


※画像引用:エンフェーズ・エナジー「The IQ8 Series Microinverter

さらに、エンフェーズはマイクロインバーターのほか、太陽光パネルと蓄電池をソフトウェアでシームレスに連携管理する包括的なエネルギーソリューション(マイクロインバーターシステムと呼ぶ)に強みを持っています。

高性能かつ利益率の高いマイクロインバーター(IQ8シリーズ)を始めとする包括的なサービスにより、エンフェーズが提供する住宅1戸当たりの潜在価値は大きく高まっている状況です。

エンフェーズの住宅1戸当たり潜在価値を金額換算(ドル)

※エンフェーズ・エナジー「Investor Presentation」をもとに筆者作成
金額はエンフェーズ・エナジーの内部データを活用した推定額

なお、エンフェーズは研究開発と販売に注力しているため、大規模な製造工場の建設のための投資を必要としません。

地域別売上高を見ると、米国(新築住宅への太陽光発電設備の設置が義務づけされたカリフォルニア州が中心)が会社全体の8割弱を占めています。

※参照:エンフェーズ・エナジー「2022 Annual Report

2 バイデン政権のIRA が後押し

世界のマイクロインバーター市場は、2023年から2028年に19.6%のCAGR(年平均成長率)で順調に拡大していく見込みです。

※参照:Research and Markets「Micro Inverter Market – Growth, Trends, and Forecasts (2023 – 2028)

米国では2022年8月にインフレ抑制法(IRA)が成立しました。IRAの下で4,370億ドルを歳出し、その内の85%ほどに当たる3,690億ドルをエネルギー安全保障と気候変動の分野に割り当てる米国最大の気候変動対策となります。

具体的には、太陽光パネル、燃料電池、蓄電池などの生産税控除に10年間で306億ドル投じる計画です。さらに、各家庭が住宅に再生可能エネルギーを導入する際にも10年間で220億ドルの税控除(対象設備への支出の30%)が設けられています。

※参照:電力中央研究所「米国「インフレ抑制法」における気候変動関連投資

各家庭にとっては、太陽光発電を始めとする再エネ設備を導入する強力なインセンティブとなるでしょう。

また、エンフェーズが拠点とするカリフォルニア州では、2020年1月から新築住宅への太陽光発電設備の設置が義務づけられました。同州政府が太陽光パネルと蓄電システムの併用を奨励していることも、マイクロインバーター、太陽光パネル、蓄電池などをシームレスに連携したシステムを提供するエンフェーズへの需要の増加を期待できます。

太陽光パネルと蓄電システムの併用は、カリフォルニア州のみならず、他の国・地域でも同様の課題であることから、世界的にエンフェーズのソリューションが一層強みを発揮すると考えられます。

3 エンフェーズのサステナブルな取り組み

ここからはエンフェーズのサステナブルな取り組みを見ていきましょう。

3-1 マイクロインバーター設置拡大でGHGやガソリン削減

エンフェーズは太陽光発電用マイクロインバーターを開発、販売しているため、太陽光発電が普及(マイクロインバーターの設置拡大)することによる温室効果ガス(GHG)排出量の削減が主な効果として考えられます。

また、太陽光エネルギーおよび蓄電池を活用したEVの利用が拡大することで、大量のGHGを排出するガソリンの消費量削減やガソリン車の走行を抑えることも期待できます。

創業した2006年以来の実績(いずれも2022年12月31日時点)は以下の通りです。

  • マイクロインバーターシステムを300万超導入
  • 815メガワット時を蓄電
  • 二酸化炭素換算(CO2e)で4,500万トン削減(570万世帯の年間電力消費量に相当)
  • ガソリン消費量を51億ガロン(約194億リットル)削減
  • 平均的なガソリン乗用車の走行距離を1,150億マイル(約1,840キロ)削減

3-2 グリッドサービスで電力調整機能を向上

また、エンフェーズはグリッドサービスプログラムも推進しています。同プログラムは、エンフェーズの蓄電池(IQバッテリー)を設置した各世帯の発電システムを、ソフトウェアを活用して複数世帯単位の仮想発電所(VPP)にします。そして、VPPを電力会社の電力網と繋げることで電力調整能力を高める取り組みになります。

※画像引用:エンフェーズ・エナジー「Enphase Grid Services

太陽光発電が普及するのに伴い、電力供給の変動を抑えることが課題になります。そのような中、同社のグリッドサービスを通じ、各家庭で蓄電したエネルギーを最も必要とされるときに電力会社の電力網に送ることで、その課題の解決に貢献すると考えられます。

各世帯にとっては、蓄電エネルギーを電力網に送ることで報酬を得られるため、新たな収益源を確保できます。

このようなグリッドサービスプログラムの規模が拡大すれば、全ての人がよりクリーン且つ手頃な価格で、信頼性の高いエネルギーを利用できるようになることが期待できます。

※参照:エンフェーズ・エナジー「ESG Report 2022

4 エンフェーズの業績、株価動向

ここからはエンフェーズの業績や株価動向を見ていきましょう。

過去5年間(2018年と2022年)を比較した業績は、売上高、利益共に大きく伸長しました。世界的に再エネの導入拡大機運が高まっていることが追い風になっています。

  • 売上高は7.7倍(3億ドルから23億ドルへ)
  • 希薄化後一株当たり利益(EPS)は黒転(-0.12ドルから2.77ドルへ)

収益性(5年平均)は良好な水準を維持しています。

  • 営業利益率は16%
  • 株主資本利益率(ROE)は56%
  • 投下資本利益率(ROIC)は26%

参考:Morningstar「ENPH

エンフェーズの株主還元策については、配当を支払っていませんが、継続的に自社株買いを実施しています。

株価に目を転じると、2018年12月31日を基準日とする5年間の株売主総利回り(値上がり益+配当)は、S&P500およびインベスコ・ソーラーETFを大幅に上回りました。


※エンフェーズ・エナジー「2022 Annual Report」をもとに筆者作成

今後の株価推移についてはアナリストの目標株価を確認しましょう。31名のアナリストによるコンセンサス・レーティングは「Buy(買い推奨)」です(2023年11月6日から遡って過去3ヵ月間の評価)。

目標株価の平均値(12ヵ月後)は115.44ドルと、11月3日終値と比較して約43%の上値余地を残します。アナリスト予想の最高値は262ドル、最安値は114ドルです。

株価

価格
目標株価の平均値(12ヶ月後) 115.44ドル
2023年11月3日終値 80.81ドル

アナリスト予想

価格
最高値 175ドル
最安値 75ドル

参照:Nasdaq 「ENPH Analyst Research」、Yahoo Finace 「ENPH

5 エンフェーズを組み入れる新NISA成長投資枠対応ファンド2選

ここからはエンフェーズが組み入れられているファンドを紹介します。

  1. ピクテ・エコディスカバリー・アロケーション・ファンド(年2回決算型)為替ヘッジなし
  2. クリーンテック株式ファンド(資産成長型)

両ファンドは、2024年1月から始める新しい小額投資非課税制度(NISA)の「成長投資枠」で購入できる投資信託です。

参考:投資信託協会

5-1 ピクテ・エコディスカバリー・アロケーション・ファンド(年2回決算型)為替ヘッジなし

まずは、ピクテ・ジャパンの「ピクテ・エコディスカバリー・アロケーション・ファンド(年2回決算型)為替ヘッジなし」が挙げられます。

「エコディスカバリー」は、エネルギー効率化、省資源化、再エネといったテーマを基に世界の環境関連企業の株式に投資します。特定の国や通貨に集中せず分散投資を行い、原則、為替ヘッジを行いません。

エンフェーズの他に、SiC(シリコンカーバイド)パワー半導体を製造・販売するオン・セミコンダクター(ON)、半導体製造装置世界首位のアプライド・マテリアルズ(AMAT)、電子機器や半導体などの設計作業を自動化するソフトウェアなどを提供するシノプシス(SNPS)、米建築資材メーカーのトップビルドなどが組み入れ上位銘柄となります。

※参照:ピクテ・ジャパン「ピクテ・エコディスカバリー・アロケーション・ファンド(年2回決算型)為替ヘッジなし

1、3、5、10年間のトータルリターンは何れも、同一カテゴリー(国際株式・グローバル・含む日本)を上回る運用成績を上げています(2023年8月31日時点)。2009年11月の設定来では+327.41%のパフォーマンスです。コスト(信託報酬率)はフィーレベル・カテゴリー(先進国株式・アクティブ)において平均的となります。

※参照:ウエルスアドバイザー「ピクテ・エコディスカバリー・アロケーション・ファンド(年2回決算型)為替ヘッジなし

同ファンドは、モーニングスターの「ファンド オブ ザ イヤー 2021」のESG型部門で優秀ファンド賞に選定されました。販売会社はSBI証券、野村證券、auカブコム証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券などです。

5-2 クリーンテック株式ファンド(資産成長型)

また、大和アセットマネジメントの「クリーンテック株式ファンド(資産成長型)」にも組み入れられています。

同ファンドは、投資リターンと社会的利益の両立を目指すクリーンテック関連企業株式へ投資します。具体的には、環境に優しい輸送手段、代替エネルギー、持続可能な食料供給、水資源の保全や再利用、再起物削減などの分野において優れたテクノロジーを持つ企業を投資対象とします。

エンフェーズの他に、水に関連した計測機器メーカー米ザイレム、肉加工食品の廃棄物や使用済み食用油などを収集して食用油脂やバイオディーゼルなどを製造するダーリン・イングレディエンツ、米科学機器大手サーモフィッシャーサイエンティフィックなどが組み入れ上位銘柄になります。販売会社はSBI新生銀行、三井住友信託銀行、SBI証券などです。

※参照:大和アセットマネジメント「クリーンテック株式ファンド(資産成長型)(愛称:みらいEarth S成長型)

1年、3年のトータルリターンは、同一カテゴリー(国際株式・グローバル・含む日本)を下回る運用成績となります(2023年8月31日時点)。2020年7月の設定来では+43.24%のパフォーマンスです。コスト(信託報酬率)はフィーレベル・カテゴリー(先進国株式・アクティブ)において平均より安い水準となります。

※参照:ウエルスアドバイザー「クリーンテック株式ファンド(資産成長型)

まとめ

エンフェーズは、過去5年間において大幅な業績拡大と代表的な株価指数を大幅に上回る株価パフォーマンスをあげました。GHGやガソリン使用量の削減、電力供給の変動を抑えるVPPなど、サステナビリティの取り組みも推進しています。

同社が経済的、環境的に大きなポジティブインパクトをもたらすことに今後も期待したいです。

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