グリーン黒鉛スタートアップUP Catalyst、シード期に6億円調達。CO2からの炭素材料量産へ

持続可能な炭素材料を開発するスタートアップUP Catalystは12月6日、シード期(創業前または創業後間もない企業が行う資金調達)に400万ユーロ(約6億2,000万円)を調達したと発表した(*1)。調達した資金を元手に、欧州で二酸化炭素(CO2)由来の炭素材料と黒鉛(グラファイト)の生産を拡大することで、黒鉛の中国依存の低下に貢献する。

世界的に電気自動車(EV)の普及が進む中、中国が23年10月、EV電池の主要材料である黒鉛の一部の輸出を規制すると発表した。黒鉛は車載電池の負極材に使われ、負極材はリチウムイオン電池の主要材料となる。黒鉛生産においては、中国が世界シェア65%超を握り、圧倒的な優位性を有している(*2)。

この発表を受け、特に、黒鉛の99%を輸入している欧州を始め、世界各国が代替国からの調達や代替品の開発が急務となっている状況だ。黒鉛の世界的な需要が供給を上回り、2030年までに年間70万トンの供給不足が生じると予想される中、UP Catalystは欧州のバッテリー市場に変革をもたらす存在になるだろう。

UP Catalystはエストニアを拠点とし、CO2から持続可能な炭素材料を製造するパイオニアだ。同社は化石燃料由来の黒鉛をCO2由来のグリーンなものに置き換えることで、負極材はカーボンネガティブを実現する。これにより、30年までに年間118.7メガトンのCO2排出削減に貢献し、環境に大きなインパクトを与えられる見込みだ。

UP Catalystは、年間100トンのCO2を分解し、27トンの炭素材料を生産できるパイロットリリアクター(炉)の建設に調達資金を充てる。新たな設備は生産能力が現在の10倍に拡大する。

UP Catalystのゲーリー・アーブ最高経営責任者(CEO)は「今回の資金調達により、30年までにCO2由来グラファイトを用いて400万台の車載電池を製造することに一歩近づいた。これにより、欧州EVバッテリー市場の年間炭素需要の約20%をカバーすることができる。」と述べた(*1)。

今回の投資ラウンドは、ドイツ・ベルリンを拠点とし気候変動に配慮したベンチャーキャピタルExtantiaが主導した。エストニアの政府系ファンドSmartCapが支援したほか、Sunly、Little Green Fund、Scottish Baltic Investなどの既存投資家も加わった。

UP CatalystがCO2から炭素材料の量産化を推進することで、環境に有害な化石燃料を使用した方法から脱却し、従来の黒鉛製造のアプローチを再定義することになる。世界的にEVバッテリー需要が高まる中、信頼性が高く、価格競争力のある同社のソリューション拡大が期待される。

【参照記事】*1 UP Catalyst「UP Catalyst secures €4M in funding to reduce Europe’s reliance on Chinese carbon materials
【参照記事】*2 スタティスタ「Distribution of graphite production worldwide in 2022, by country

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