世界の再エネ、現行下では30年までに2.5倍と目標の3倍に届かず。一段の政策支援の必要性も IEA予測

国際エネルギー機関(IEA)は1月11日、再生可能エネルギーに関する新たな報告書「Renewables 2023」を公表した(*1)。世界の再生エネの導入量は2030年に現状の2.5倍に拡大するとの予測を示した。政策対応の遅れや送電網インフラへの投資などの課題に取り組むことで、30年までに世界の再エネ容量3倍増の公約を達成する軌道に乗せることができると指摘する。

世界の再エネにおける2023年の設備容量は前年比50%増加し、約510ギガワット(GW)となる。これは過去20年間で最も速い成長率である。再エネ容量の増加は22年連続で新記録を達成した。

米国とブラジルの再生可能エネルギー容量の増加は史上最高を記録したが、中国の加速は並外れたものだった。中国は22年に世界全体が稼働させたのと同じ量の太陽光発電を稼動させ、世界の再生可能エネルギー容量増加の4分の3を占めた。風力発電も前年比66%増となった。

23年12月に開催した第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)では、パリ協定で定めた各目標に対する進捗状況を5年ごとに包括的に評価する「グローバル・ストックテイク(GST)」を初めて実施した。その成果文書には、IEAが優先取り組み事項として要請した再生エネを30年までに現状の3倍に拡大する目標が盛り込まれた。

ただし、既存の政策と市場環境の下では、世界の再エネ容量は28年までに7,300GWに達すると予測されている。この成長軌道では、30年までに世界の再エネ容量は現在の2.5倍までの増加に留まり、3倍という目標には届かない見通しだ。

各国政府は、現在の課題を克服し、既存の政策をより迅速に実施することによって、30年までに11,000GW以上へのギャップを埋めることができるとも、IEAは指摘する。政策の不確実性と新しいマクロ経済環境に対する政策対応の遅れ、送電網インフラへの投資が不十分などの課題に取り組むことで、世界の再エネ容量3倍増の公約を達成する軌道に乗せることができると見込む。

130か国以上の政策支援を後押しに、23年から28年の間に、約3,700GWの新規再エネ容量が拡大し、そのうち中国が60%を占める。28年には、再エネが世界の発電量の42%以上を占める見通しだ。

太陽光発電および陸上風力については、28年までに米国、欧州連合(EU)、インド、ブラジルで倍増以上になると予想する。23年には、新たに設置されるユーティリティ規模の太陽光発電と陸上風力発電の96%が、新規の石炭火力発電の発電コストを下回ると推定する。
特に太陽光発電は、2023年に太陽電池モジュールのスポット価格が前年比50%近く下落し、生産能力は21年比3倍に達した。

一方、洋上風力発電に関しては、マクロ経済環境によって最も大きな打撃を受けており、中国を除く28年までの成長率は15%下方修正された。投資コストは僅か数年前より20%以上高くなっており、多くの開発業者が厳しい市場環境にさらされている状況だ。

次世代のエネルギーとして注目されている水素の製造に向けた再エネ容量は、23年から28年の間に45GW増加すると予測されているが、既に発表済みのプロジェクト容量の僅か7%に過ぎない。同容量において、中国、サウジアラビア、米国が75%以上を占める。

バイオ燃料の世界的な拡大は、ブラジルを筆頭とする新興国が主導し、その成長率は過去5年間を30%上回る見込みである。IEA の 50 年までのネット・ゼロ・エミッション(NZE)で示された、30 年までにバイオ燃料需要が約 3 倍になるという予測と一致させるには、新たに政策面からの強力な後押しと原料の多様化が必要にあると指摘する。

【参照記事】*1 国際エネルギー機関「Renewables 2023

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