カーボンエフィシエント指数とインデックス別の構成銘柄の特徴とは?

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / @fukuokasho12))に解説していただきました。

目次

  1. カーボンエフィシエント指数とは
    1-1. カーボンエフィシエント指数の概要
    1-2. カーボンエフィシエント指数の特徴
  2. 2. S&P 500カーボン・エフィシェント・セレクト指数
    3. S&P アジア太平洋大中型株カーボン・エフィシエント指数
  3. 4. S&P グローバル1200カーボン・エフィシエント指数
  4. 5. S&P/JPXカーボン・エフィシエント指数
  5. 6. 指数の使い方
  6. 7. まとめ

近年、環境(Environmental)、社会(Social)、企業統治(Governance)に対する企業の取り組みを重視して投資銘柄をチョイスする「ESG投資」がますます浸透してきている中、ESG指数の一種である「カーボンエフィシエント指数」にも注目が集まっています。

カーボンエフィシエント指数は、世界的な指数算出会社であるS&Pダウ・ジョーンズ・インデックスによって提供され、環境に配慮した企業を選出することで知られています。

今回は、カーボンエフィシエント指数の概要と、その中に含まれる銘柄の特徴を詳細に解説します。

1. カーボンエフィシエント指数とは

1-1. カーボンエフィシエント指数の概要

「カーボンエフィシエント指数」とは、「S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス」によって提供されている指数のことを指します。

S&P ダウ・ジョーンズ・インデックスとは、「S&P グローバル」と「シカゴ・マーカンタイル取引所グループ」の合弁事業として運営が行われているインデックス・プロバイダーのことを言い、株価指数や債券指数、コモディティ指数など、多岐にわたる金融市場指数を提供していることで知られています。

そして、カーボンエフィシエント指数は、炭素排出量の多い企業へのエクスポージャーを減らす一方で、ベンチマークと同様のリスク・リターン特性を維持するように設計されていると説明されています。売上高当たりの炭素排出量に基づいて構成銘柄のウェイト調整を行なっており、これによって炭素排出量の多い企業へのエクスポージャーの削減を実現しています。さらに、S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス独自の炭素分類システムである「S&P グローバル炭素基準」を用いることで、炭素ウェイトの調整に関する計算を行なっているということです。

1-2. カーボンエフィシエント指数の特徴

①温室効果ガス排出量の算出

S&P ダウ・ジョーンズ・インデックスでは、それぞれの企業の売上高当たりの炭素排出量を評価するにあたって、「インプット」として使用される年間温室効果ガス排出量(直接的排出量および最上位の間接的排出量)を算出することを目指して、下記の項目の測定を行なっています。

  • 企業が直接排出する二酸化炭素換算トン
  • サプライ・チェーンの最上位により排出される二酸化炭素換算トン

これには、購入されるエネルギーや、直接サプライヤーから企業に対する排出量が含まれています。S&P ダウ・ジョーンズ・インデックスでは、これらを測定することによって、それぞれの企業がどのくらい、炭素へのエクスポージャーを有しているかについて細かく把握しています。

②S&P グローバル炭素基準

前述した通り、S&P ダウ・ジョーンズ・インデックスでは独自の炭素分類システムである「S&P グローバル炭素基準」が採用されており、企業の売上高当たりの炭素排出量を活用することで、構成銘柄のウェイト設定や指数値の算出のための枠組みを構築しています。

なお、S&P グローバル炭素基準には下記のような項目が設けられています。

  • 十分位数分類
    S&P グローバル大中型株指数の構成企業の売上高当たりの炭素排出量に基づいて、「世界産業分類基準®(GICS®)」の各産業グループに対して十分位数によるベースを決定します。次に、これらのベースを用いて、すべての企業を、指数の構成銘柄であるかないかに関わらず、S&P グローバル炭素基準の十分位数に振り分けます。
  • 産業グループ分類
    各産業グループを「高インパクト」、「低インパクト」、および「中インパクト」のいずれかに指定します。この分類は、S&P グローバル大中型株指数の各産業グループ内の企業における売上高当たり炭素排出量の範囲に基づいており、各産業グループの範囲は、第1十分位数基準と第9十分位数基準の格差として算出されます。
  • 開示状況
    各企業は、炭素排出量を十分に開示していると認定された企業と、そうでない企業に分けられます。開示状況は、最大となる炭素排出量カテゴリーにて、全部もしくは部分的に開示していると認定された際に完了します。
  • TCFDの枠組み状況
    開示状況が「開示」となっている企業については、企業の公の報告書において「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」を統合しているとS&P グローバルによって認められた企業に、追加で振り分けられます。

③モニタリング

指数構成企業は、「Environmental(環境)」、「Social(社会)」、「Governance(ガバナンス/企業統治)」のリスクに関連するビジネス情報の大手プロバイダーである「RepRisk社」によって監視されています。

RepRisk社は、経済的な犯罪、詐欺、違法な商慣行、汚職、人権問題、職場の安全性、労働争議、大惨事の事故、および環境災害などといった幅広い問題に関して企業分析を実施します。

そして、これらのデータを用いて、日々の「RepRisk指数(RRI)指標」をそれぞれの企業に割り当て、各企業のRRI指標が75まで到達しているか、またはそれを超えているとRepRisk社が報告したケースでは、その企業が指数から除外される仕組みとなっています。

また、除外された企業については、すべての適格性基準を満たし、RRIスコアが前年のリバランス日以降のすべての日に75まで届いていないケースに限って、指数への再追加に関する検討が行われるということです。

では、次の項からは実際にいくつかインデックスをピックアップし、それぞれの構成銘柄の特徴について、詳しく解説していきます。

2. S&P 500カーボン・エフィシェント・セレクト指数

「S&P 500カーボン・エフィシェント・セレクト指数」とは、米国株式市場の主要ベンチマークである「S&P 500」のパフォーマンスと連動する一方で、ポートフォリオ全体の炭素排出量を大幅に削減するように設計されているもののことを指します。

なお、2023年11月時点における1年のリターンは16.87%となっています。

構成銘柄の特徴

S&P 500カーボン・エフィシェント・セレクト指数の構成銘柄の特徴は、下記の通りとなっています。

項目
構成銘柄数 333
最大時価総額 2,669,857.80
最小時価総額 4,295.58
平均時価総額 93,711.35
時価総額中央値 35,318.21

また、構成銘柄の比率トップ10は下記の通りとなっています。

  1. Microsoft Corp
  2. Apple Inc.
  3. Amazon.com Inc
  4. Nvidia Corp
  5. Meta Platforms, Inc. Class A
  6. Unitedhealth Group Inc
  7. Procter & Gamble
  8. JP Morgan Chase & Co
  9. Visa Inc A
  10. Johnson & Johnson

さらに、セクター別の内訳は下記の通りとなっています。

  • Information Technology: 25.5%
  • Health Care: 15.4%
  • Financials: 14.4%
  • Consumer Discretionary: 10.3%
  • Industrials: 8.1%
  • Communication Services: 7.8%
  • Consumer Staples: 7.6%
  • Energy: 3.9%
  • Utilities: 3.0%
  • Real Estate: 2.2%
  • Materials: 1.9%

3. S&P アジア太平洋大中型株カーボン・エフィシェント指数

「S&P アジア太平洋大中型株カーボン・エフィシェント指数」とは、「S&P アジア太平洋大中型株指数」の構成企業のパフォーマンスを測定するように設計されており、売上高1単位当たりの炭素排出量が少ないまたは多い企業をオーバーウェイトまたはアンダーウェイトとしています。

なお、2023年11月時点における1年のリターンは15.14%となっています。

構成銘柄の特徴

S&P アジア太平洋大中型株カーボン・エフィシェント指数の構成銘柄の特徴は、下記の通りとなっています。

項目
構成銘柄数 640
最大時価総額 295,715.44
最小時価総額 77.99
平均時価総額 12,397.84
時価総額中央値 5,562.19

また、構成銘柄の比率トップ10は下記の通りとなっています。

  1. Toyota Motor Corp
  2. Samsung Electronics Co
  3. BHP Group Ltd
  4. Sony Group Corp
  5. AIA Group Ltd
  6. Commonwealth Bank Australia
  7. Mitsubishi UFJ Financial Group Inc
  8. CSL Ltd
  9. Keyence Corp
  10. Mitsubishi Corp

さらに、セクター別の内訳は下記の通りとなっています。

  • Financials: 18.6%
  • Industrials: 18.1%
  • Consumer Discretionary: 15.0%
  • Information Technology: 12.4%
  • Materials: 8.5%
  • Health Care: 7.0%
  • Communication Services: 6.0%
  • Consumer Staples: 5.6%
  • Real Estate: 4.9%
  • Utilities: 1.9%
  • Energy: 1.9%

4. S&P グローバル1200カーボン・エフィシェント指数

「S&P グローバル1200カーボン・エフィシェント指数」とは、「S&P グローバル1200指数」の構成企業のパフォーマンスを測定するように設計されており、売上高1単位当たりの炭素排出量が少ないまたは多い企業をオーバーウェイトまたはアンダーウェイトとしています。

なお、2023年11月時点における1年のリターンは17.63%となっています。

構成銘柄の特徴

S&P グローバル1200カーボン・エフィシェント指数の構成銘柄の特徴は、下記の通りとなっています。

項目
構成銘柄数 1,205
最大時価総額 2,669,857.80
最小時価総額 1,566.08
平均時価総額 47,414.25
時価総額中央値 20,155.48

また、構成銘柄の比率トップ10は下記の通りとなっています。

  1. Apple Inc.
  2. Microsoft Corp
  3. Amazon.com Inc
  4. Nvidia Corp
  5. Alphabet Inc A
  6. Unitedhealth Group Inc
  7. Alphabet Inc C
  8. Visa Inc A
  9. Meta Platforms, Inc. Class A
  10. Tesla, Inc

さらに、セクター別の内訳は下記の通りとなっています。

  • Information Technology: 20.6%
  • Financials: 15.4%
  • Health Care: 13.0%
  • Consumer Discretionary: 10.8%
  • Industrials: 10.3%
  • Consumer Staples: 7.8%
  • Communication Services: 7.6%
  • Energy: 5.5%
  • Materials: 4.4%
  • Utilities: 2.8%
  • Real Estate: 2.0%

5. S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数

「S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数」とは、S&P ダウ・ジョーンズ・インデックスが「日本取引所グループ(JPX)」の「東京証券取引所」と共同で開発を行なったESG指数のことを指します。

本指数は、日本のマーケット動向を示す代表的な株価指数として知られている「TOPIX」をユニバースとして、環境情報の開示状況、炭素効率性(売上高当たり炭素排出量)の水準にフォーカスして、構成銘柄のウェイトを決定する指数となっています。

また、環境情報の開示を十分に行っている企業や炭素効率性の高い(売上高当たり炭素排出量が少ない)企業のウエイトを引き上げるなどのルールを採用することによって、市場全体の環境に関する取り組み、情報開示を促し、株式市場の活性化を目指しています。

なお、2023年11月時点における1年のリターンは23.05%となっています。

構成銘柄の特徴

S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数の構成銘柄の特徴は、下記の通りとなっています。

項目
構成銘柄数 1,859
最大時価総額 42,255,816.33
最小時価総額 1,680.61
平均時価総額 434,825.23
時価総額中央値 69,500.16

また、構成銘柄の比率トップ10は下記の通りとなっています。

  1. Toyota Motor Corp
  2. Sony Group Corp
  3. Mitsubishi UFJ Financial Group Inc
  4. Keyence Corp
  5. Sumitomo Mitsui Financial Group
  6. Nippon Tel & Tel Corp
  7. Hitachi
  8. Mitsubishi Corp
  9. Tokyo Electron
  10. Mitsui & Co

さらに、セクター別の内訳は下記の通りとなっています。

  • Industrials: 23.7%
  • Consumer Discretionary: 19.1%
  • Financials: 12.5%
  • Information Technology: 11.9%
  • Communication Services: 7.7%
  • Health Care: 7.5%
  • Consumer Staples: 7.4%
  • Materials: 5.7%
  • Real Estate: 2.1%
  • Utilities: 1.4%
  • Energy: 1.0%

6. 指数の使い方

今後ESG投資を基準とした投資方法が出てくる可能性がある中で、指数連動型でも構成比率や銘柄が異なるということは投資家として考えておく必要があります。

またセクター別でも脱炭素の意識を後退させるセクターが出てくる可能性もあるため、動向を見ながら、どの指数に連動する投資信託を購入すればいいかという選択する場合のベースとして上記を利用してもらうといいでしょう。

ESGに配慮した投資信託といっても千差万別今後出てくる可能性があるため、上記の点を注意しておく必要があります。

7. まとめ

近年、投資対象を決定する際に「ESG」の観点を重視する「ESG投資」がますます広がりを見せており、それに伴ってESG指数の一種である「カーボンエフィシエント指数」にも関心が寄せられています。

実際、今回紹介したように、カーボンエフィシエント指数にはさまざまなインデックスが存在しており、時価総額の規模や構成銘柄のセクター別の内訳など、それぞれの構成銘柄ごとに異なる特徴を持っています。

そして、これらのインデックスをしっかりと把握しておくことによって、現在のESG投資の状況や、より積極的な取り組みを行なっている企業の情報などを知ることができるため、ESG投資を考えているけれど、何から始めていいか分からないという方は、一度これらの主要なインデックスについて理解を深めてみることをおすすめします。

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Source: 仮想通貨の最新情報BTCN | ビットコインニュース
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