MIT発スタートアップのアントラ、シリーズBで226億円調達。サーマルバッテリーの生産加速

マサチューセッツ工科大学(MIT)発のスタートアップのアントラ・エナジー(Antora Energy)は2月22日、シリーズB(資金調達ラウンド)で1億5,000万ドル(約226億円)を調達したと発表した(*1)。調達した資金を元手に、サーマルバッテリー(熱電池)の生産を加速させ、数十億ドル規模のゼロエミッション・エネルギーの供給を目指す。

今回の投資ラウンドは、米資産運用大手ブラックロックとシンガポールの政府系投資会社テマセクのパートナーシップにより設立されたDecarbonization Partners(脱炭素化パートナーズ)が主導した。

ビル・ゲイツ氏が創設したファンドであるブレイクスルー・エナジー・ベンチャーズなどの既存投資家に加え、社会活動団体エマーソン・コレクティブ、ネクステラ・エナジー・リソーシズ子会社なども加わった。

今回の資金調達により、2022年にシリーズAを実施して以来、アントラの資金調達総額は2億3,000万ドルを超えた。同社は、民間部門から資金を調達するのに加え、米国エネルギー省傘下のエネルギー高等研究計画局(ARPA-E)および産業効率化・脱炭素化オフィス(IEDO)など政府系組織からも、初期段階から継続的な支援を受けている。

アントラは、再生可能な電力を熱に変えて炭素ブロックに蓄え、産業用に必要とされる規模の熱や電気を供給する熱エネルギー貯蔵システムを開発している。同社の熱電池は、熱光起電力(TPV)技術により、画期的な効率で電気を出力することができ、従来の熱エンジンの欠点なしに、蓄えられた熱を直接電気に変換する。

産業部門は世界の排出量の30%を占め、気候変動に大きな影響を与えている(*2)。風力発電と太陽光発電が地球上で最も安価な新電力源となった一方で、産業界はこのクリーン・エネルギーの可能性をほとんど利用することができなかった。

そのような中、アントラは、再生可能エネルギーと工業生産のギャップを埋め、米国製のバッテリーで工場にゼロエミッションの熱と電力を供給する。カリフォルニア州サンノゼの工場で製造されるアントラのモジュール式サーマルバッテリーは、生産ラインから出荷され、工業用地で簡単に設置できる。

これまでに、セメントや鉄鋼のような脱炭素化が難しい業界向けに、十分な高温でエネルギーを貯蔵する商業規模の熱電池を開発したほか、世界初の熱光起電力(TPV)セル専用製造ラインを建設し、TPV技術で40%以上の効率を実証した。

米TIME誌がその年の最も優れた発明品を選ぶ「The Best Inventions of 2023」や、米Fast Companyが世界的な課題を解決する製品や企業を表彰する「2023 World Changing Ideas」に選出された。

アントラのサーマルバッテリーは、産業用エネルギーの脱炭素化に大きな影響を与えると共に、米国の雇用を創出し、製造業を活性化し、サプライチェーンを強化すると期待されている。

【参照記事】*1 BUSINESS WIRE「Antora Energy Raises $150 Million to Slash Industrial Emissions and Spur U.S. Manufacturing
【参照記事】*2 ブレイクスルー・エナジー「Climate change can seem like a problem that’s either too big—or too far down the road—to solve

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