ダナハーのサステナブルな取り組み・製品や将来性は?新NISA対応組み入れファンドも

産業機械大手の米ダナハー(ティッカーシンボル:DHR)は、積極的なM&A(企業の合併・買収)で業容を拡大し、トヨタ式カイゼンを模した「ダナハー・ビジネス・システム(DBS)」と呼ばれる独自の経営手法を導入してグループ全体の企業価値向上を図っています。

25年間の株主総利回り(値上がり益と配当金、TSR)は4,661%と、米国を代表する株価指数であるS&P500の530%を大きく上回る 高い成長力を発揮してきました。医療サービスへのアクセスや環境保全などサステナブルな取り組みも推進しています。

そこで今回は、ダナハーの会社概要をおさらいした上で、同社のサステナブルな取り組みや製品、業績・株価動向、新NISA成長投資枠に対応した組み入れファンドを紹介します。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. 医療機器や検査装置のリーディングカンパニー
  2. 世界課題の解決に資するダナハーのサステナブルな取り組み・製品
    2-1 医薬品・医療サービスへのアクセス向上
  3. ダナハーの業績・株価動向
  4. ダナハーを組み入れる新NISA成長投資枠対応ファンド2選
    4-1 インベスコ世界厳選株式オープン(年1回決算型)
    4-2 野村ACI先進医療インパクト投資Bコース為替ヘッジなし資産成長型
  5. まとめ

1 医療機器や検査装置のリーディングカンパニー

ダナハーは、医療診断機器や水質検査などの検査・測定機器を提供するリーディングカンパニーです。2022年の売上高は315億ドル、従業員数は8万1,000人、20社超の事業会社を傘下に収め、各分野で有力ブランドを有しています。

項目 金額
売上高 315億ドル
従業員数 8.1万人
グループ事業会社 20社超

※参照:ダナハー「2023 Sustainability Report

元々は不動産投資会社でしたが、M&Aを通じてバイオテクノロジー、ライフサイエンス、診断、環境・応用ソリューションの4部門に注力しています。

  • バイオテクノロジー:バイオプロセシング(バイオ医薬の研究開発や検査のための機器や消耗品の販売)など
  • ライフサイエンス:ライフサイエンス機器(がんなど)、ゲノミクス
  • 診断:出産前スクリーニング、新型コロナの検査キットなど
  • 環境・応用ソリューション:水質検査など

優れたブランド力やテクノロジーを有する企業を積極的に買収することで、業態を変化、拡大させているところが特徴です。

これまでに数百社の企業を買収してきており、その中にはゼネラル・エレクトリック(GE)のバイオ医薬事業、水処理のポール、新型コロナのPCR検査機器メーカー大手セフィエドなどが含まれます。

世界中にトヨタのカイゼンシステムを広めた岩田良樹氏を招き、「カイゼン」として知られるトヨタ生産方式の考え方を取り入れた「ダナハー・ビジネス・システム(DBS)」と呼ばれる経営手法を確立します。

買収した企業にはその都度DBSを展開し、買収先の企業価値を向上させてきました。直近7年間で買収した企業の売上高が会社全体の50%超を占め、ダナハーの成長をけん引しています。

DBSは継続的改善でダナハーの競争優位性になると共に、同社の企業文化として醸成されています。

※参考:ダナハー「ACQUISITIONS

また、ダナハーは消耗品など繰り返し利用される製品・サービスを提供しています。リカーリング・レベニュー(継続収益)が、2015年の約45%から2024年以降は約80%まで拡大する見込みであり、高い業績の安定性を有していることも特徴として挙げられます。

※参考:ダナハー「2022 OVERVIEW

2 世界課題の解決に資するダナハーのサステナブルな取り組み・製品

ここからは世界的な課題の解決に資するダナハーのサステナブルな取り組みや製品を見ていきましょう。

同社は2022年、世界各国で様々な事業を手掛ける約300人の従業員への調査や約125回の面談などを基に、サステナビリティ戦略をアップデートしました。そして、以下の3つの分野を優先事項として位置づけています。

  • 生活と地球をより良くする革新的な製品
  • チーム形成
  • 環境保護

今回は、生活と地球をより良くする革新的な製品の分野にフォーカスし、ダナハーならではの課題解決に資する取り組みや製品を紹介します。

2-1 医薬品・医療サービスへのアクセス向上

生活と地球をより良くする革新的な製品の分野の課題としては、医薬品・医療サービスへのアクセスや効果的な医療機器・サービスの提供などが挙げられます。

ダナハーはイノベーションにより未来を形作るというコアバリューの下、革新的な製品を開発し、多岐にわたる事業において世界中で多大なポジティブインパクトをもたらしています。

  • 顕微鏡ワークフローの加速
  • 米国食品医薬品局(FDA)より細胞・遺伝子治療薬の承認を受けた企業の75%がダナハーのソリューションを活用
  • 世界で承認取得済みモノクローナル抗体作製の90%をダナハーがサポート
  • 1時間当たり100万件超の診断テストを実施
  • HIV感染症が疑われた患者の約半分の検査にダナハーのソリューション活用
  • 2010年以来1億個超の結核検査用カートリッジを提供

このように、様々な取り組みが挙げられますが、具体的な製品を挙げると、たとえば、ダナハー傘下のライカマイクロシステムズ(Leica Microsystems)が、世界初のイメージングマイクロハブ「Mica」をリリースしました。

Micaはスクリーニング(たとえば、がん細胞と非がん細胞をふるい分ける業務)から超解像まで、あらゆる蛍光観察と人工知能(AI)による画像解析までを1つのシステムに統合し、顕微鏡ワークフローを大幅に簡素化します。

  • 最初の画像観察のステップ数85%減
  • 最初の画像観察によるする時間33%短縮
  • トレーニング時間50%短縮

Micaであれば、顕微鏡を用いた観察業務の初心者でも高品質の画像を簡単に取得できます。2022年には、がん研究に関する科学論文の55%で、顕微鏡を用いた観察業務にライカマイクロシステムズの製品・ソリューションが活用されたとしています。


※画像引用:ライカマイクロシステムズ「Mica The world’s first Microhube

また、バイオ医薬品の製造は少量多品種化が進んでおり、製造する医薬品の種類や量が変わっても対応できるフレキシブルな設備を整えておくことが、コストと時間を大幅に削減することに繋がります。

ダナハー傘下のサイティバ(cytiva)のFlexfactoryを採用することで、バイオ医薬品メーカーは、従来18ヵ月から36ヵ月要したバイオ医薬品の製造設備の整備を12ヵ月以下に短縮できます。さらに、世界中で同一の医薬品製造インフラを構築し、医薬品の品質の一貫性を担保し、上市までの時間を短縮、コストを最大50%削減することができます。

FlexFactoryのイメージ図

※画像引用:サイティバ「Bioprocess Journey with Cytiva

ダナハーは多岐にわたる最先端の医療機器を開発し、救命治療薬の生産拡大や臨床検査における最高水準の生産性などを実現し、医療の質向上や新興国の健康医療へのアクセス向上などに貢献しています。

※参考:ダナハー「2023 SUSTAINABILITY REPORT

3 ダナハーの業績、株価動向

ここからはダナハーの業績、株価動向を見ていきましょう。

過去5年間(2018年と2022年)を比較した業績は、大幅な増収増益を達成しました。

  • 売上高は58%増(199億ドルから315億ドルへ)
  • 希薄化後一株当たり利益(EPS)は2.6倍(3.74ドルから9.66ドルへ)

収益性(5年平均)は良好な水準を維持しています。

  • 営業利益率は22%
  • 株主資本利益率(ROE)は12%
  • EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)マージンは30%

以下は株主還元の指標(5年平均)です。さらなる還元余地を残しますが、成長投資に資金を投じていると考えられます。

  • 総還元利回りは0.39%
  • 配当性向は15%

※参考:モーニングスター「DHR

25年間の株主総利回り(値上がり益と配当金、TSR)は4,661%と、米国を代表する株価指数であるS&P500の530%を大きく上回るパフォーマンスをあげています。

※参考:ダナハー「2022 OVERVIEW

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今後の株価推移についてはアナリストの目標株価を確認しましょう。20名のアナリストによるコンセンサス・レーティングは「Strong Buy(強い買い推奨)」です(2023年9月7日から遡って過去3ヵ月間の評価)。

目標株価の平均値(12ヵ月後)は278.7ドルと、9月6日終値と比較して約8%の上値余地を残します。アナリスト予想の最高値は305278.7ドル、最安値は240ドルです。

株価

価格
目標株価の平均値(12ヶ月後) 278.7ドル
2023年9月6日終値 256.99ドル

アナリスト予想

価格
最高値 305ドル
最安値 240ドル

※参照:Nasdaq 「DHR Analyst Research」、Yahoo Finace 「DHR
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4 ダナハーを組み入れる新NISA成長投資枠対応ファンド2選

ここからはダナハーが組み入れられているファンドを紹介します。

  1. インベスコ世界厳選株式オープン(年1回決算型)
  2. 野村ACI先進医療インパクト投資Bコース為替ヘッジなし資産成長型

両ファンドは、2024年1月から始める新しい小額投資非課税制度(NISA)の「成長投資枠」で購入できる投資信託です。

※参考:投資信託協会「NISA成長投資枠の対象商品

4-1 インベスコ世界厳選株式オープン(年1回決算型)

まずは、インベスコ・アセット・マネジメントの「インベスコ 世界厳選株式オープン(年1回決算型)」です。同ファンドは、成長・配当・割安という3つの視点から厳選した世界のベストと考える銘柄に投資を行います。

ダナハーに加え、英国の投資会社3iグループ、米半導体大手ブロードコム、仏容器メーカーのべラリア、100年の歴史を誇る香港保険会社の友邦保険控股(AIAグループ)、米鉄道会社ユニオン・パシフィックなどが組み入れ上位銘柄として挙げられます。

参考:インベスコ・アセット・マネジメント「追加型投信/内外/株式インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(年1回決算型)【愛称:世界のベスト】

信託報酬率はフィーレベル・カテゴリー(先進国株式・アクティブ)において平均より高い水準になります。

販売会社はSBI証券、楽天証券、マネックス証券、auカブコム証券などです。

参考:ウェルスアドバイザー「インベスコ 世界厳選株式<H無>(年1回決算型))

4-2 野村ACI先進医療インパクト投資Bコース為替ヘッジなし資産成長型

続いては、野村アセットマネジメントの「野村ACI先進医療インパクト投資Bコース為替ヘッジなし資産成長型」です。

同ファンドは、製薬、バイオテクノロジー、医療機器、医療・健康サービス関連企業などの内、先進的な医療技術の発見・開発や、先進的な医療サービスの提供に寄与するもしくはその恩恵を受けると考えられる企業(先進医療関連企業)を主な投資対象とします。

投資テーマは「革新的な治療の提供」、「医薬品・医療サービスへのアクセス」、「医療費削減のソリューション」、「効果的な医療機器・サービスなど」です。

他の組み入れ銘柄としては、米国最大の民間医療保険会社のユナイテッドヘルス・グループ、世界的なバイオ医薬品会社のブリストルマイヤーズスクイブ、「ダ・ビンチ」と呼ばれる手術ロボットを開発・製造するインテュイティブサージカルなどが組入上位10銘柄に含まれています。

参考:野村證券「野村ACI先進医療インパクト投資

コスト(信託報酬率)はフィーレベル・カテゴリー(先進国株式・アクティブ)において平均的となります。

販売会社は野村證券、筑波銀行、岩井コスモ証券、静銀ティーエム証券です。

「野村ACI先進医療インパクト投資Bコース為替ヘッジなし資産成長型」は、野村證券が実施中の「野村ではじめる!「ESG投資」応援キャンペーン」の対象銘柄です。同キャンペーンは、2025年12月30日までに対象銘柄を「投信積立」で購入した場合、毎月の購入金額合計50万円までの購入時手数料相当額をキャッシュバックするものです。

まとめ

ダナハーは、DBSと呼ばれる独自の経営手法を導入してグループ全体で企業価値を高め、高い株価パフォーマンスを発揮してきました。サステナビリティの面でも、最先端の機器を開発し、医療の質向上や新興国の健康医療へのアクセス向上などに貢献しています。

同社が経済的、社会的、環境的に大きなポジティブインパクトをもたらすことに今後も期待したいです。

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