アメリカ雇用統計でドル円はどうなる?マイナス金利解除やアメリカの利下げも解説【2024年3月】
2024年3月現在、アメリカの雇用統計が発表されました。先月の数字が強かったことや、アメリカの利下げ期待が強まる中での発表だったため、市場の注目を集めました。
本稿ではプロトレーダーの筆者が、雇用統計の内容を詳細に解説し、今後のドル円のポイントを解説します。是非参考にしてみてください。
※本記事は2024年3月13日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
1.3月雇用統計の結果
雇用統計の結果
<table summary="雇用統計の結果
総じて弱い数字が並びました。まず非農業部門雇用者数は、好調だった前月の数字が大幅に下方修正され、マイナス材料となりました。失業率が3.9%まで上昇しており、労働市場の軟化を示しています。平均時給は予想を下回る結果となっており、前月分も下方修正されています。
出典:BLS「ニュースリリース」
詳細を確認すると、特に恒久的な解雇が大きく増加しています。企業業績の悪化による解雇であり、労働市場の軟化を示す大事な材料です。
また自発的な失業者も大幅に減少しています。自発的失業者とは、給料を上げるために転職をするなど、自ら進んで仕事を辞める人を指しており、経済が良好で次の仕事が見つかりやすい時に増加する傾向があります。
コロナ中には自発的失業者が増加し、労働市場がタイトになり、転職によって給料を上げる人が多くなりました。しかし2024年3月現在は、仕事を辞めても次の仕事を見つけにくい状況になっており、自ら辞める人が減少しています。
今回の雇用統計は、主要な項目から細かな数字まで総じて悪く、FRBが利下げする可能性が高まったと言えるでしょう。
2.雇用統計を受けた市場の動向
※図はTradingView[PR]より筆者作成
上記はドル円(ローソク足)、米国債2年金利(水色)、S&P500指数(オレンジ)で示しています。
雇用統計が発表された後、最初は非農業部門雇用者数が予想対比良好だったことに反応したのか、ドル高、金利上昇となりました。しかし、その他の数字が悪化し、前月分も下方修正されたことから反転下落し、金利も低下しました。
株式市場も金利低下を受けて株高で反応したものの、引けにかけては金利が上昇し、株安の動きとなっています。金利は低下した分を取り戻しており、雇用統計前の水準まで戻しました。ドル円は146円台半ばまで下落するも147円台を回復しており、ドル円の下落は続かなかった状況です。
3.ドル円の今後のポイント
3-1.日銀のマイナス金利解除
ドル円は、ドル安ではなく円高圧力により、雇用統計前から下落していました。雇用統計前のドルインデックスとドル円のチャートを確認してみましょう。
※図はTradingView[PR]より筆者作成
雇用統計前にはドル安が若干進行したものの、それ以上に円高圧力が強いことが分かります。雇用統計で弱い数字が出たことから、円高圧力からの下落ではなく、ドル安圧力からの下落に繋がりました。
雇用統計前の動きは、次回の日銀の政策会合においてマイナス金利解除の可能性が高まっており、日米金利差が縮小する可能性があることや、雇用統計前にドル円のロングで保有している投資家の調整売りのフローが入ったことが背景として挙げられます。
次の日銀政策会合は3月18日・19日に行われる予定ではあるものの、中川審議委員や植田総裁からもマイナス金利解除を示唆するコメントが出ており、市場参加者の多くがマイナス金利解除に対する確信を持ち始めたことが、ドル円が147円台まで下落した背景の一つとなっています。ドル円をショートで攻めている投資家が増えたのではなく、ポジション解消による短期的な値動きと言えます。
参照:ロイター「物価目標の確度「少しずつ高まる」発言続く、市場は3月解除意識 円高進行」
2024年3月現在のドル円の水準は、マイナス金利解除がある程度織り込まれていると判断できます。そのため日銀政策会合までにマイナス金利解除の思惑が強まったとしても、更なる円高圧力に繋がる展開にはならないでしょう。
一方で円売り材料にはならないため、日銀政策会合までに日本円をショートで攻める投資家は少なく、円売り圧力は強まらない可能性が高いでしょう。
3-2.アメリカの利下げ
今後のドル円のポイントは、米ドルの動向です。
アメリカのインフレは低下基調が続いているものの、サービス価格が低下しない点が課題となっています。労働市場が堅調だったことから、給料や時給が低下せず止まりを続けていたため、インフレが今後低下するかは労働市場の抑制が焦点です。
今回の雇用統計において労働市場が抑制方向にあると確認できたため、単月での判断は時期尚早かもしれませんが、大きな材料となりました。金利は低下方向で進みやすく、利下げのタイミングが早まる可能性も考えられます。
仮に利下げタイミングが早まれば、金利低下によってドル安が進行することから、ドルは売られやすい地合いが続く可能性があります。ドル円は145円程度まで円高ドル安が進む可能性があります。
ドル円は雇用統計後に147円を一旦回復しているものの、ポジション動向を見ると148円台でまだロングを保有している投資家が多く存在しており、もし148円台まで反発したとしても、ファンダメンタルズから判断すると、戻り売りで再度147円割れまで戻ってくる可能性が高いでしょう。
ドル円は戻り売りでのトレードは、選択肢の一つとなるでしょう。
4.まとめ
本稿では、雇用統計の数字の詳細や今後のドル円の動きについて解説しました。
これまでは円売りトレードが主であったものの、短期的な流れが変化しそうな相場展開になってきました。リスク管理には十分注意しながらトレードしましょう。
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