不動産投資で拡大戦略の手順・流れは?注意すべき3つのポイントも
不動産投資が軌道に乗ると、物件を増やして事業拡大を検討する投資家の方も少なくありません。事業拡大をスムーズに進めるためには、借入をうまく活用しながら計画的に準備する必要があります。
今回の記事では、不動産投資の拡大戦略のステップや注意点についてまとめました。複数棟・複数室での不動産経営を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
- 不動産投資の拡大戦略の長期プロセス
1-1.不動産投資ローンの与信枠を確認する
1-2.日本政策金融公庫の融資・保証つき融資を検討
1-3.資産の一部売却や与信の空きを活用して物件購入 - 不動産投資の事業拡大の手順・流れ
2-1.自己資金を蓄積する
2-2.投資物件の選定
2-3.資金計画・収支計画を立てる
2-4.金融機関との融資交渉
2-5.契約締結
2-6.経営開始後の税金・確定申告対応 - 不動産投資の事業拡大における3つの注意点
3-1.1戸(棟)目を買う前から事業拡大を検討しておく
3-2.副業規定に抵触するケースも
3-3.拡大するほど不動産投資のリスクが増大する - まとめ
1 不動産投資の拡大戦略の長期プロセス
不動産投資の拡大戦略は、長期で見ると複数のプロセスに分けられます。不動産投資ローンの融資枠の中でどこまで物件数を拡大できるか、またどこまで拡大するのかを検討するのがスタートです。
不動産投資ローンの融資枠の限界まで拡大する場合でも、徐々に家賃収入で返済することで純資産が増え、また融資枠を活用することができます。こうなった時に、さらなる事業拡大を目指すかどうか長期計画を立てておきましょう。
1-1 不動産投資ローンの与信枠を確認する
拡大戦略の第一歩は、不動産投資ローンの与信枠を確認することです。不動産投資ローンで借入可能な総額は年収その他の属性によって異なりますが、おおむね年収の10〜13倍が一つの目安となります。
ただし、金融機関によって条件に違いがあり、現金保有額や既存物件の資産価値、経営状況などを加味する場合もあります。潤沢な現預金を持っていたり、年収が一定程度高かったりすると、不動産投資ローンだけで複数の物件所有も可能です。
また、金融機関とのリレーションが強い不動産会社を活用すれば、融資交渉がスムーズに進む場合もあります。まずは、個人向けの不動産投資ローンを活用した事業拡大を検討しましょう。
1-2 日本政策金融公庫の融資・保証つき融資を検討
個人向けの不動産投資ローンの他にも、事業資金の借入に使用する融資制度の活用が検討できます。小規模な企業や個人事業主が利用する、日本政策金融公庫の融資や信用保証協会の保証つき融資などがあります。
事業資金の融資審査では不動産経営を「事業」として判断されることになり、不動産の資産価値や収益性だけでなく、事業者としての経営方針なども総合的に評価されることになります。
多くの場合、一定程度の自己資金が必要になるのも特徴です。自己資金が潤沢であるほど、融資審査が順調に進みやすい傾向にあります。不動産投資を事業経営と呼べる規模まで拡大して本格的に取り組みたい場合には、このような事業資金の借入も選択肢となってきます。
1-3 資産の一部売却や与信の空きを活用して物件購入
不動産投資が順調に進むと時間と共に不動産投資ローンの返済が行われ、残債が少なくなっていきます。借入当初には使い切っていた与信枠に余裕が出てきたり、手元の現金資産が増えて新たな物件購入の頭金が準備できるようになります。
また、物件の資産性が高いのであれば、売却によって残債を処分しても手元に余資が残り、次の物件購入に充てられるようになります。このような与信枠の復活や物件の売却を通じて、より規模の大きい優良物件に乗り換えることでも事業拡大は可能です。
2 不動産投資の事業拡大の手順・流れ
具体的に事業拡大を実行するときの具体的なステップは次のとおりです。
- 自己資金を蓄積する
- 資金計画・収支計画を立てる
- 投資物件の選定
- 金融機関との融資交渉
- 契約締結
- 経営開始後の税金・確定申告対応
おおまかなプロセスは、最初に物件を購入するときと大きくは変わりません。しかし、すでに物件を保有していることや、今後の事業拡大を念頭にそれぞれの手順を踏んでいく必要がある点に留意しましょう。
2-1 自己資金を蓄積する
不動産を新たに購入するためには、第一に自己資金を貯める必要があります。ローンを利用するとしても、一定程度の自己資金が求められます。
すでに保有している物件の不動産投資ローンの借入がある分、審査は厳しくなる可能性があるでしょう。一棟目の購入時以上に、潤沢な自己資金を保有している状態が望ましいといえます。
まずは、本業収入や不動産投資による収入をもとに、物件の20〜30%を目安に自己資金を貯めていきましょう。
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2-2 投資物件の選定
自己資金がある程度貯まってきたら、物件を調べて候補を探してみましょう。自分でポータルサイトを見てみるほか、過去の購入時に利用した不動産会社に相談してみるのも一つの方法です。物件の候補がある程度絞られてきたら、次に紹介する資金計画や収支計画をもとにそれぞれの物件を比較していきます。
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2-3 資金計画・収支計画を立てる
投資物件を購入する際は、物件それぞれの収益性やリスクなどを総合的に判断する必要があります。物件価格や利回りといった表面的な情報だけで決めずに、将来の収支や資金の出入りをシミュレーションしたうえで最終決定します。
2-4 金融機関との融資交渉
購入物件の候補が絞られてきたら、金融機関との融資交渉を行います。投資用物件の取り扱い実績が豊富な不動産会社の場合はそれぞれ提携の金融機関があるので、物件購入の相談と同時に融資についても相談してみると良いでしょう。
不動産投資ローンの融資審査は、事前審査・本審査の順に進みます。事前審査が通過したら、物件購入の方では売買契約を締結します。融資審査において金融機関が重視するポイントはさまざまですが、次のようなポイントを重点的にチェックされます。
- 自己資金額
- 金融資産の額
- 年収・勤務先や勤続年数
- 既存の借入額
- 既存の不動産の経営状況
- 購入物件における収支計画
- 滞納歴の有無
自己資金と金融資産の金額を、切り分けて考える銀行もあります。現預金が潤沢な方が万が一のときに返済に困らずに済むため、債務不履行のリスクが低いと期待されるためです。
既存の借入額は、住宅ローンなどのプライベートの借入と不動産事業用の借入を総合して判断されます。1棟目の借入が完済されていなければ、この部分では審査のハードルが上がる可能性があるでしょう。
また、保有している投資用不動産がある場合には、こちらの収支状況をチェックされる場合もあります。現在黒字で今後も収支見通しが良好であれば、評価上はプラスに働きます。提示された金利や融資年数を加味し、収支計画を再度立ててみましょう。
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2-5 契約締結
不動産投資ローンの審査の前に買付申込書を提出し、ローン審査の途中(事前審査を通過したタイミングなど)で売買契約を結びます。売買契約においては融資特約(ローン特約)をつけて、本審査を通過できなかった場合には違約金無しで契約破棄できるようにしておきましょう。
一方で、ローンの本審査が通過したら金消契約を結びます。さらに購入物件の現地の最終確認を実施したうえで、登記や引き渡しの手続きを行います。
2-6 経営開始後の税金・確定申告対応
たとえば区分マンションを1室→2室に拡大した場合など、事業規模に満たない場合は、事業拡大以前と確定申告の対応は大きく変わりません。不動産それぞれの賃料収入・経費を計算して、確定申告を実施しましょう。
一方で、5室以上のアパートを1棟から2棟に増やした場合などは、事業拡大により5棟10室が目安とされる「事業規模」に達するケースがあります。
従来まで白色確定申告で対応していた方は、早めに所轄の税務署に開業届や青色申告承認申請書を提出して、個人事業主として「青色確定申告」で申告する準備をすすめましょう。
青色確定申告は、55万円(一定の要件を満たす場合は65万円)の青色申告特別控除があるなど税制面での利点がある一方で、申告の要件が白色より複雑化します。
意図せぬミスで修正申告を迫られることのないように、税理士などの専門家に一任するのも一つの方法です。
【関連記事】不動産投資に強い税理士を探すポイントは?相場や相談方法も
3 不動産投資の事業拡大における3つの注意点
不動産事業の拡大を考えるうえでは、次の3つの注意点に留意しましょう。
- 1戸(棟)目を買う前から事業拡大を検討しておく
- 副業規定に抵触するケース
- 拡大するほど不動産投資のリスクが増大する
3-1 1戸(棟)目を買う前から事業拡大を検討しておく
事業拡大を考えるかどうかは、できれば1戸(棟)目を買う前に検討しておきましょう。物件を複数持ちする場合、2棟目以降を買えるように与信枠を残しておく必要があります。
また、自己資金や金融資産を潤沢にしておくためには、初めに保有する物件のキャッシュフローを潤沢にしておくなどの対策も必要です。事業拡大の可能性が高い場合、初めの物件選びにおいては、自己資金・借入比率・収益性などの面でより厳格な評価が求められます。
あとになって2棟目を購入したくなっても、1棟目の経営状況や借入が足かせとなるリスクがあります。可能なら一番初めの購入段階から、事業拡大をするかどうかを検討しておきましょう。
3-2 副業規定に抵触するケースも
サラリーマンや公務員などの方が副業で不動産経営を行う場合は、副業規定への抵触リスクに留意が必要です。基本的に不動産経営は5棟10室を基準に「事業」とみなされます。
これを機に開業届を提出すると、不動産投資が「副業」と判断される可能性があります。事業規模になると副業として申請が必要だったり、副業自体が禁止されたりしている場合があるでしょう。
特に公務員の方である場合は「国家公務員法」「地方公務員法」により副業が禁止されており、次のように定められています。
- 営利企業からの隔離…国家公務員法第103条第1項
- 他の事業又は事務の関与制限…国家公務員法第104条
- 営利企業等の従事制限…地方公務員法第38条
ただし、公務員の副業は原則禁止ですが、一部例外があります。「国家公務員法第103条第2項」「人事院規則14-8(営利企業の役員等との兼業)」により、公務員の不動産投資は条件付きで認められています。所轄庁の長の申し出により人事院の「承認」が得られた場合には、公務員の方がマンション・アパートや土地の賃貸を行うことも可能です。
公務員(国家公務員)の不動産投資が副業に該当する賃貸規模のケースは次のとおりです。
- 一定規模(「5棟以上」「10室以上」など)以上の場合
- 不動産収入が年500万円以上
事業拡大を検討する前に、副業規定において問題がないか確認しておきましょう。
【関連記事】公務員は不動産投資に向いている?副業の注意点も併せて解説
3-3 拡大するほど不動産投資のリスクが増大する
不動産投資を事業拡大すると運用資産総額が増え、投資全体のリスクが高まることになります。また与信限度額まで借入を行ったり、手元の現金を全て不動産運用に活用していると、突発的なトラブルが起きた時に対処できなくなる可能性もあります。
また、不動産投資は年収の10~12倍ほどの物件を保有できる高いレバッレジ効果が得られるために、拡大戦略を取っていると自身の資産バランスが不動産に偏ることになります。不動産の値下がりが起きた際には資産を大きく目減りさせてしまうリスクもあるのです。
また、複数の物件を保有する際は収支管理を一層厳格に行う必要があります。少数の物件であれば、借入返済額や管理費などのランニングコストの規模も小さいため「一時的な赤字であれば何とか自己資金で払える」という方も少なくないでしょう。
しかし、事業規模が拡大するなかでそれぞれの物件で赤字が発生すれば、金額が大きくなって個人で負担するのが困難になります。拡大戦略を取りながら長期で事業を経営していくためには厳格な収支管理が必要です。
可能な限りキャッシュフローをプラスに維持するように努め、どうしても一時的なキャッシュフロー上の赤字が発生するときは、早めに資金対策を講じておきましょう。
4 まとめ
不動産投資での事業拡大は、多くの場合物件購入により収入を増やして進めていきます。1棟所有のときよりも総借入額が増えて返済負担やランニングコストも膨らむため、より厳格に収支管理を進めなければなりません。
副業として事業拡大を目指す場合には、本業の規定に留意しましょう。そのうえで、どこまで本格的な事業拡大を目指すのか計画を立てたうえで、資金の準備や物件探しを進めてください。
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