英国、30年までに航空燃料の10%をSAF義務付け。25年より施行へ。脱炭素化をリード
英国政府は4月25日、2030年までに同国発の路線で利用される航空燃料の、少なくとも10%を持続可能な航空燃料(SAF)にすることを義務付けると発表した(*1)。この取り組みを通じ、英国におけるSAFの需要を喚起し、排出を削減につなげ、航空や環境分野で世界をリードする。
今回の取り組みは、英国の航空、SAF業界が熟練労働者の雇用を創出し続けるとともに、航空輸送が将来に適合するようにするための措置となる。
SAFの10%利用義務付けは、世界で初めて法制化されるものの1つであり、英国が再び航空分野の脱炭素化の最前線に立つことになると同国政府は主張した。議会の承認を経て25年1月1日から施行し、SAFの利用割合を同年に2%、40年には22%まで引き上げる方針だ。40年以降は、SAFの供給がより確実なものになるまで22%の水準で据え置く。
SAFの義務化により、30年には2.7 MtCO2e(二酸化炭素換算値)、40年には6.3 MtCO2eの排出削減を目指す。SAF産業が18億ポンド以上の経済効果をもたらし、英国全土で1万人以上の雇用を創出すると推定されることから、航空、環境、そして英国全体にとって有益なものである。
今回の義務化では、廃食油などを原料にSAFを製造する水素化処理エステル・脂肪酸(HEFA、#1)プロセスで使用される原料の上限も定められた。HEFAは現在、商業的に利用可能な唯一のSAFであるが、限られた原料に依存している。
25日の発表によれば、HEFAの供給は、最初の2年間は制限されないが、30年には全体の71%、40年には33%まで減少する見通しだ。これにより、新しいSAF技術の開発にインセンティブを与えつつ、SAFの需要を満たすことができる見込みである。
28年からは液体燃料合成技術(Power to Liquid)に関する義務も導入し、40年には航空燃料の総需要の3.5%を満たす計画だ。これにより、原料への依存度が低く、より大きな排出削減効果を期待できる燃料の開発加速が期待される。
SAFの供給を奨励するための買取メカニズムや、脱炭素化が消費者の犠牲の上に成り立つことのないよう、価格の管理をサポートし、航空券運賃への影響を最小限に抑えるためのメカニズムも計画に含まれている。
英国製SAF生産への投資を後押しするための「レベニュー・サーテインティ・メカニズム(revenue certainty mechanism)」に関するコンサルテーションも開始した。政府は23年9月に同メカニズムの導入を約束し、26年末までに実現する方針を示している。
(#1)HEFA…廃食油・獣脂・非可食植物油などの脂肪酸エステルを水素化処理することでジェット燃料と同等のSAFを製造する技術。
【参照記事】*1 GOV.UK「Aviation fuel plan」
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