不動産デジタル証券に投資するメリット・デメリットは?個人で投資できるサービスも
デジタル証券とは、ブロックチェーンを活用して運営される金融商品の一つです。不動産のような流動性の低い資産を小口化し、売買しやすい形で流通させる上で有効な手段となります。
一方で、まだまだ発展途上であり、さらなる商品として普及が望まれるところです。今回の記事では、不動産デジタル証券へ投資するメリット・デメリットや代表的なサービスを紹介します。
目次
- 不動産デジタル証券とは?
1-1.デジタル証券(ST)の仕組み
1-2.不動産デジタル証券とは - 不動産デジタル証券に投資するメリット・デメリット
2-1.不動産デジタル証券へ投資するメリット
2-2.不動産デジタル証券へ投資するデメリット - 個人で不動産デジタル証券に投資できるサービス
3-1.野村證券
3-2.SBI証券
3-3.ALTERNA(オルタナ) - まとめ
1 不動産デジタル証券とは?
不動産デジタル証券とは、デジタル証券(ST)の仕組みを使って実質的に不動産へ投資が可能な金融商品です。デジタル証券自体が発展途上の仕組みですが、足元では個人でも購入可能な商品が出始めています。
1-1 デジタル証券(ST)の仕組み
デジタル証券は、英語でSecurity Tokenといいます。日本語においても「トークン型商品」「セキュリティトークン」といった呼称が便宜的に用いられる場合もあります。
ブロックチェーン技術を用いて電子上で取引情報や試算に関する情報を連続的に更新して運営される金融商品です。ブロックチェーン技術自体はビットコインなどの仮想通貨でも導入されている仕組みです。
デジタル証券は、それ自体が有価証券と同じ機能を持つ点で仮想通貨とは異なります。一方で有価証券とは、それ自体が財産的価値を有する証券です。
デジタル証券では、分散型台帳という技術を使って、中央集権的なデータベースなしに運営が可能です。
たとえば日本の証券の多くは証券保管振替機構(ほふり)という機関が発行や流通に関するデータを管理していて、このデータのもと日々の取引が成立しています。
デジタル証券はそのような中央集権データベースを必要とせず、取引参加者やネットワーク参加者が情報を日々更新・同期してその時点での資産価値が担保される仕組みです。
こうした仕組みにより、管理機関の対応時間に左右される必要がないため、24時間365日リアルタイムでの取引が出来る可能性がある技術となっています。また、中央集権的な機関やデータベースを必要としないため、取引コストの低減効果も期待できます。
1-2 不動産デジタル証券とは
不動産デジタル証券とは、不動産投資を通じた受益権が発生するデジタル証券を指します。不動産経営のための資金調達を主目的に発行されるもので、調達した資金は不動産の取得や運営などに充てられます。保有者は不動産から発生した賃料収入や売買益を受け取れます。
デジタル証券なら、小口化して多数の投資家から資金を集められるため、不動産投資法人や不動産会社から見れば、資金調達手段の多様化につながります。また、投資家は不動産の物件価格と比べて少額で投資ができるため、不動産投資に取り組みやすいのが特徴です。
2 不動産デジタル証券に投資するメリット・デメリット
不動産デジタル証券へ投資するメリット・デメリットについてまとめました。不動産デジタル証券は、すでにいくつかの証券会社などで売買が可能になっています。こちらのメリット・デメリットを踏まえて投資にチャレンジするか検討してください。
2-1 不動産デジタル証券へ投資するメリット
不動産デジタル証券へ投資するメリットとしては、次のような点が考えられます。
- 現物の不動産を取得するよりも少額で不動産投資に挑戦できる
- 価格変動リスクが他の有価証券と比べると小さい
- REITと比べて投資先が分かりやすい
- クラウドファンディングより売却しやすい
不動産デジタル証券は、現物の不動産の受益権を小口化して販売するため、現物の不動産を取得するよりも少額で投資が可能です。価格は商品により異なりますが、2024年時点では10万円~100万円程度を1口とする証券が多いといえます。
株やREITと比べると価格変動リスクが小さいのも特徴です。不動産デジタル証券は取得後売却が可能ですが、REIT、ETFや株のように上場しているわけではありません。そのため、投資先の不動産から乖離する形で価格が変動する可能性は小さいといえます。
上場商品は、市場の需給の影響でそれぞれの裏付けとなる資産価値から乖離するケースがしばしばあります。たとえばREITの場合、投資先の不動産の価値や収益性が改善していても、売却が増えればREITの価格が下がります。不動産デジタル証券では、基本的にこのようなことは起こりにくい仕組みです。
不動産へ投資できる有価証券といえばREITも該当しますが、REITと比べて投資先が分かりやすいのが不動産デジタル証券の特徴です。REITは多数の不動産へ投資し、さらに時どきリバランスもするため、特定の物件などに投資したい場合には不向きの投資先のと言えます。
一方、不動産デジタル証券は1つ~少数の物件に投資する商品が多いため、特定の不動産への投資が行いやすいのが特徴です。
また、クラウドファンディングも不動産に少額投資できる商品の一つですが、より途中売却がしやすいのが不動産デジタル証券の特徴といえます。クラウドファンディングは、実質満期まで売却できないか、売却機会が限られている商品がしばしばみられます。
不動産デジタル証券は、上場はしていないものの、取り扱う証券会社が売買に対応しているケースが多いといえます。
2-2 不動産デジタル証券へ投資するデメリット
不動産デジタル証券へ投資するデメリットは、次の点です。
- 不動産の所有権は生じず減価償却などはできない
- ローンを活用した投資は困難
- 投資先を分散させるには複数銘柄への投資が必要
- 市場が未発達なため売買しづらい
不動産デジタル証券を保有すると、不動産から生じた利益を受け取る権利は生じますが、不動産の所有権は生じず、減価償却費の経費計上などはできません。この点では、経費計上の余地がある現物での不動産投資や任意組合型の不動産小口化商品と比べたときには、留意すべき点といえます。
また、現物の不動産投資と異なり、ローンを活用したレバレッジ効果を得るような運用は困難です。ある程度まとまった自己資金があるなら、ローンを活用して現物投資をおこなった方が収益性が高くなる可能性もあります。
不動産デジタル証券は、2024年時点では1物件もしくは少数物件に投資する商品が多く見られます。投資先が分かりやすい反面、投資先の分散が効きにくいという特徴があります。投資先の不動産の経営が不調となれば、たちまち分配金の減少や価格の下落を引き起こすでしょう。
最後に、まだ商品ラインナップが少なく、売買も多くないのがデメリットと言えます。デジタル証券は本来、24時間365日売買できるポテンシャルを秘めたスキームですが、売買相手がいなければ売買は成立しません。
仕組みとして売買の発注は出来ても、取引相手がいないため実質的に流動性が低い商品もみられます。2024年6月時点でいえば、上場していて平日日中にはリアルタイムで取引できるREITの方が売買機会は豊富です。
3 個人で不動産デジタル証券に投資できるサービス
不動産デジタル証券へ投資できる個人向けのサービスを3つ紹介します。
3-1 野村證券
国内の大手証券の一角である野村證券では、不動産デジタル証券の取扱を行っています。2021年から販売を行っています。
野村證券の不動産ST(セキュリティ・トークン)は、不動産の証券化によって、個人では難しかった大型の不動産へ小口投資ができる不動産投資サービスです。ブロックチェーン技術を利用しており、分散型台帳上で権利の記録・移転がされている点が従来の不動産ファンドとの大きな違いとなっています。
予定分配利回りは3.0%~4.5%、最低投資額は100万円/1口です。2023年以降は100億円前後の大規模なファンド組成を行うなどの運用実績があり、主なアセットマネージャーとしては、りそな銀行、三井物産デジタル・アセットマネジメント、ケネディクス・インベストメント・パートナーズなどが参画しています。
野村證券の不動産ST(セキュリティ・トークン)に投資するには、野村證券に証券口座を開設し、野村證券オンラインサービスから募集中の銘柄を購入する流れとなります。
これまでの販売商品例
- 2021年8月|ケネディクス・リアルティ・トークン渋谷神南
- 2022年9月|ALTERNAレジデンス銀座・代官山
- 2022年12月|ケネディクス・リアルティ・トークン湯けむりの宿 雪の花
- 2023年8月|ケネディクス・リアルティ・トークン 月島-リバーシティ21イーストタワーズⅡ
- 2021年8月|ケネディクス・リアルティ・トークン渋谷神南
(※参考:野村證券「取扱実績」)
2024年6月25日からは「ケネディクス・リアルティ・トークンKolet-1(譲渡制限付)」を販売しています。本商品については、1口100万円~で投資可能です。
購入したデジタル証券は、野村證券通じて売却が可能ですが「流動性は限られており、売却の機会は保証されておりません」と記載があるため、売りたい時に柔軟に決済できるとは限りません。なお、既存発行銘柄の流通市場での購入も受け付けていません。
3-2 SBI証券
SBI証券はSBIホールディングス株式会社の100%出資子会社です。同グループでは証券・銀行・保険・住宅ローンなど様々な金融商品を提供しており、ネット金融業界では大手の企業となります。また、SBI証券はネット証券でもトップクラスの実績を誇っています。
SBI証券でも不動産デジタル証券を取り扱っています。2021年の7月から販売を行っています。
これまでの販売商品例
- 2021年11月|不動産のデジタル証券~神戸六甲アイランドDC~(譲渡制限付き)
- 2022年11月|いちご・レジデンス・トークン-麻布・白金・日本橋-(譲渡制限付)
- 2023年5月|MFシェア 駒込レジデンス(譲渡制限付)
- 2023年12月|いちご・レジデンス・トークン-芝公園・東新宿・都立大学・門前仲町・高井戸・新小岩-(デジタル名義書換方式)
- 2024年5月|いちご・レジデンス・トークン-西麻布・代々木・八丁堀・上野・門前仲町・阿佐ヶ谷・金町-(デジタル名義書換方式)
(※参考:SBI証券「ST取扱実績」)
商品により最低投資金額は異なりますが、たとえば「いちご・レジデンス・トークン-西麻布・代々木・八丁堀・上野・門前仲町・阿佐ヶ谷・金町-(デジタル名義書換方式)」は1口10万円から投資が可能でした。また、一部商品について、既存発行銘柄の取引が可能なのも特徴です。
3-3 ALTERNA(オルタナ)
ALTERNA(オルタナ)は三井物産グループが運営する小口化商品のプラットフォームです。一見不動産小口化商品の一種に見えますが、実はデジタル証券を活用したファンド商品を販売しています。1口10万円から購入可能で、すでに多数のファンド販売実績があります。
これまでの販売商品例
- 2023年8月|三井物産のデジタル証券〜京都・三条〜
- 2023年10月|三井物産のデジタル証券~熱海温泉〜
- 2024年1月|三井物産のデジタル証券〜日本橋〜
- 2024年6月|三井物産のデジタル証券 〜日本橋・人形町〜
(※参考:ALTERNA「現在運用中の案件」)
ALTERNAは、運用ファンドごとに売却可能なタイミングが設定されています。ALTERNAが許容すれば、同タイミングにて途中売却ができる仕組みとなっています。
4 まとめ
不動産デジタル証券は、ブロックチェーンの技術を用いて不動産受益権を小口化して販売したものです。現物不動産よりも少額で投資ができ、賃料収入や売買益を原資とした収益を獲得できます。
またREITと比べて価格変動リスクが抑えられる、クラウドファンディングと比べれば売却機会があるなどの特徴もあります。一方で、現物投資と異なり節税効果は期待できない、ローンを活用するのが困難といった点には留意しましょう。
既にいくつかの大手証券会社やファンド運営会社が、不動産デジタル証券の取扱を始めています。今回の記事を参考にして、不動産デジタル証券への投資の是非を検討してみてください。
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