インド株のESG戦略を解説 長期的に先進国入りを目指す展望とは?

投資家のサステナビリティ投資への注目度が高くなるなか、インドでは水質汚染や大気汚染等の環境問題や企業の不祥事が少なくなく、企業のガバナンスが問われています。

こうした状況下、インド証券取引委員会(SEBI)は、上場企業上位1,000社(時価総額上位)に対し、事業責任及び持続可能性に関する報告書(BRSR)の提出を2021年に発表し、2023年会計年度から義務化しました。政府は2070年までに温室効果ガス(GHG)純排出ゼロを目指しており、政府は目標達成ための取組を行っています。

本稿では、インドにおけるESGへの取り組みが世界投資家に与える影響について解説します。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は2024年8月23日時点の情報をもとに執筆されています。最新の情報については、ご自身でもよくお調べの上、ご利用ください。

目次

  1. インドの現状
  2. インドのESGに関する取組と目標
    2-1.時価総額上位1,000社にサステナビリティ報告を義務化
    2-2.温室効果ガス排出量を2070年までにネットゼロ
  3. 太陽光関連銘柄
    3-1.ファースト・ソーラー
    3-2.ソーラーエッジ・テクノロジーズ
    3-3.ネクステラ・エナジー
  4. まとめ

1.インドの現状

インドの二酸化炭素排出量は、世界第3位の約22.8億トン(2021年)です。インドの発電量を電源別にみると、水力が10%、石炭が74%と、石炭火力発電が主流となっています。
参照:環境省「世界のエネルギー起源CO2排出量

インドは石炭資源が豊富なため、コスト面でも利用しやすいのが理由です。しかし、石炭の利用は大気汚染や二酸化炭素排出につながり、環境に悪影響を与えるため、同国では2030年までに再生可能エネルギー量を総電力の50%まで高める目標を掲げ、取り組んでいます。

インドの再生可能エネルギーの主流は、風力発電と太陽光発電ですが、近年では太陽光発電の割合が高まっています。インドは日射量が多く、北部のラジャスタン州、グジャラート州など年間を通して太陽光発電に適した地域が多々あるためです。

2.インドのESGに関する取組と目標

インドのESGに関する取組と目標をみていきましょう。

2-1.時価総額上位1,000社にサステナビリティ報告を義務化

インド証券取引委員会(SEBI)は、2021年に上場企業上位1,000社(時価総額上位)に対し、事業責任及び持続可能性に関する報告書(BRSR)の提出を発表し、2023年会計年度から義務化されました。SEBIが導入した基準は、環境保全、人権、公正性、従業員の福祉、包括的な成長、持続可能な製品、責任ある消費者エンゲージメント、ステークホルダーへの対応、責任ある公共政策への関与の9つの主要カテゴリーに分類されます。

例として、対象企業には、CSR(社会的責任活動)委員会を設置し、直近3年間の純利益の平均2%以上をCSRの活動に支出することが義務付けられました。また、女性取締役の選任、及びセクシャルハラスメント委員会の設置が義務付けられました。

インドではESGファンドへの関心の高まりから、SEBIが、ESGファンドの資産運用会社に保有銘柄のESGスコアの提出を義務付けました。ESGのインパクトは、財務諸表上の数値よりも、投資家にインパクトを与えるもので、インドのESGの取り組みを世界の投資家の注目を集めています。

2-2.温室効果ガス排出量を2070年までにネットゼロ

インドは、2070年までに温室効果ガス排出量実質ゼロ(ネット)を目指し、排出量削減に取組んでいます。

非化石燃料による発電量の引き上げ

インド政府は、非化石燃料による発電容量を2030年までに500GWに引き上げる目標を掲げています。インドは1年を通して日照時間が長く、太陽光発電には好立地といえます。政府はこの条件を利用し、太陽光発電に力を入れています。

特に、太陽電池のセル・モジュールの製造に対し、産業連動型インセンティブ・スキーム(PLI)の予算を割り当て、セル・モジュールの国内生産を拡大しており、将来的には輸出も視野にいれています。

再生可能エネルギー量を総電力の50%に

インドは、世界有数の石炭埋蔵国で、石炭需要の約8割を国内で調達しています。インドのエネルギー源の約70%を石炭に依存しているため、大気汚染などの問題が深刻化しています。

政府は、石炭火力に伴う二酸化炭素排出量を抑制するため、2030年までに再生可能エネルギー量を総電力の50%に、引き上げることを掲げ、10億トンの温室効果ガス排出量を削減するとしています。

また、モディ政権は、2021年のCOP26において、2070年までにインドがカーボンニュートラルを達成すると宣言しました。

3.太陽光関連銘柄

太陽光関連の3銘柄を解説します。

3-1.ファースト・ソーラー

ファースト・ソーラーは太陽電池モジュールの大手米国メーカーです。インドでは、インド国内では初となる完全垂直統合型太陽光発電製造工場を新設しました。この施設ではインド市場に向けた製品されたソーラーモジュールを生産しています。

インド政府は太陽光発電設備分野の国産化を進め、生産連動型インセンティブ(PLI)の対象です。2023年4月には承認され、1,950億ルピーの助成金を獲得しました。

2023年度の売上高は33.18億ドル(前年比26.6%増)、純利益は8.3億ドルです。
参照:The Financial Express「First Solar, Avaada Group among winners of Rs 19,500 crore PLI grants to manufacture solar modules in India
参照:SolarEdge Technologies「Form 10-K for Solaredge Technologies INC filed 02/26/2024

3-2.ソーラーエッジ・テクノロジーズ

ソーラーエッジ・テクノロジーズは太陽光発電の最大化・効率化を可能にした多様な製品提供を世界各地で展開しています。

2023年のサステナビリティレポートにおいて、同社の太陽光発電ソリューションの活動により、年間4,000万トンの二酸化炭素排出量の削減が可能になったと報告されました。

2023年度の売上高は29.76億ドル、純利益は3.4百万ドルです。
参照:SolarEdge Technologies「Form 10-K for Solaredge Technologies INC filed 02/26/2024
参照:SolarEdge Technologies「ソーラーエッジ‐スマートエネルギー技術のグローバルリーダーソーラーエッジについて

3-3.ネクステラ・エナジー

ネクステラ・エナジーは再生可能エネルギーの米国最大手の企業です。風力と太陽光により再生可能エネルギーの発電事業を米国中心に行っています。

再生可能エネルギー事業はNEERが展開しており、2023年度の売上高は96.72億ドルと売上高全体の34.4%、利益は35.58億ドルと利益全体の48.67%を占めています。
参照:NextEra Energy「NEE.Q4.2023.Exhibit 99

4.まとめ

インドは、2070年までに温室効果ガスネットゼロを目指し、太陽光発電を中心とする再生可能エネルギー比率を高めています。インド政府は、階級や女性への差別や暴力の問題が根強いという問題を深刻にとらえています。

こうした状況下で、インド証券取引委員会は上場会社上位1000社に対し、企業責任及び持続可能性に関する報告書(BRSR)の提出を義務付けました。上場会社のまだ一部ではあるものの、徐々に対象企業が拡大していくと思われ、企業のESGへの取組が上場企業全体に広がることで、インドのイメージ回復に繋がり、先進国にふさわしい国となっていくことが期待されます。

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