EY、持続可能な経済モデルへの移行を提言する「新経済レポート」を発表

大手会計事務所アーネスト・アンド・ヤング(EY)の新経済ユニット(NEU)は、現在の経済システムの根本的な欠陥を指摘し、持続可能な未来に向けた5つの原則を提示する報告書「A new economy: Exploring the root causes of the polycrisis and the principles to unlock a sustainable future」を発表した。同報告書は、GDP成長を最優先する従来の経済モデルからの脱却と、地球の限界内で繁栄する「再生型経済」への長期的な転換を提言している。

報告書によると、現在の世界は単一の危機ではなく「ポリクライシス(複合危機)」に直面している。これは環境、社会、経済における複数の崩壊が相互に影響し合い、予測不可能な形で危機を増幅させる状態を指す。既に地球の9つのプラネタリーバウンダリー(地球の限界)のうち6つが超過されており、生命維持システムが不安定化していると警告する。

NEUは現在の危機の根本原因として、「持続不可能な成長の追求」「過剰消費」「線形経済モデル」「金融資本への偏重と近視眼的な判断」「短期主義的な意思決定」「分野横断的な連携を妨げるサイロ化思考」の6つのシステム的欠陥を特定した。これらの要因が相互に作用し、気候変動、生物多様性の喪失、社会的不平等などの問題を深刻化させているという。

こうした課題に対し、報告書は新経済への移行を導く5つの原則を提示している。第一に「充足性」として、一部の人々の無限の消費ではなく、すべての人に十分な資源を確保すること。第二に「循環性」として、資源ループを閉じ、生態系を再生すること。第三に「システム思考」として、人、地球、市場の相互依存性を認識すること。第四に「価値の再定義」として、財務的リターンを超えた多元的な繁栄を追求すること。第五に「公平性と正義」として、移行の恩恵がすべての人に行き渡るようにすることを掲げている。

EYノルウェーの気候変動・サステナビリティサービス責任者であるニーナ・ラフェン氏は「規制の不安定性、貿易摩擦、サプライチェーンリスクは長期的な思考を要求します。新経済の原則を取り入れることで、企業は急速な変化の中で成長し、新たな機会を掴むことができます」と述べている。

報告書は特に北欧地域の事例に言及し、多くの北欧企業が概念的には新経済モデルに沿っているものの、「充足性」のような概念は依然として敏感なテーマであると指摘する。企業リーダーは長期的な持続可能性目標にコミットしている一方で、投資家の期待や株主の要求という現在の圧力にも対処する必要があり、気候変動への野心との慎重なバランスが求められているという。

日本においても、2050年カーボンニュートラル目標の達成に向けて、経済成長と環境保全の両立が大きな課題となっている。経済産業省が2023年3月に策定した「成長志向型の資源自律経済戦略」では、サーキュラーエコノミーへの移行加速を目指しており、EYの提言する新経済モデルは、日本企業にとっても重要な示唆を含んでいる。

報告書は、変化を遅らせることは実行可能な戦略ではないと警告する。完璧な条件を待つことは、企業を時代遅れの経済モデルに固定化し、リスクを増大させ、重要な機会を逃すことになる。早期に行動を起こす企業は、インセンティブや資本にアクセスしやすくなり、地球とビジネスの両方にとって長期的な価値を構築できるとしている。

【参照記事】New economy report from EY: Sustainable business transformation
【参照記事】成長志向型の資源自律経済戦略

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