中国のレアアース輸出規制、欧州自動車産業に深刻な影響 EU法的対抗措置の可能性も

欧州自動車部品工業会(CLEPA)は6月4日、中国政府によるレアアースと磁石の輸出規制により、欧州の自動車部品産業が深刻な打撃を受けていると発表した。すでに欧州各地で複数の生産ラインや工場が操業停止に追い込まれており、在庫の枯渇に伴い今後数週間でさらなる影響が拡大する見通しだ。

影響を受けているのは、内燃エンジン車と電気自動車(EV)の双方に不可欠な部品だ。4月初旬以降、中国当局に数百件の輸出許可申請が提出されたが、承認されたのは約4分の1にとどまる。許可プロセスは不透明で、省によって対応が異なり、手続き上の理由で却下されるケースや、知的財産に関わる機密情報の開示を求められるケースも報告されている。

CLEPAのベンジャミン・クリーガー事務局長は「深く相互に絡み合ったグローバルサプライチェーンにおいて、中国の輸出規制はすでに欧州の部品供給セクターの生産を停止させている」と述べ、EUと中国当局に対し、許可プロセスが透明で、均衡が取れ、国際規範に沿ったものとなるよう建設的な対話を緊急に要請した。

今回の事態は、EUの法的対応を促す可能性がある。EUは2023年に施行した「重要原材料法(Critical Raw Materials Act)」により、戦略的原材料の域内生産・リサイクル・調達先多様化の目標を定めている。レアアースは同法で「戦略的重要原材料」に指定されており、2030年までに域内消費量の10%を域内で採掘、40%を域内で加工、25%をリサイクルで賄うことを目指している。また、単一国への依存度を65%以下に抑えることも規定されている。さらに、EUは「国際調達措置規則(IPI)」や「外国補助金規則(FSR)」といった通商防衛措置も整備している。中国の輸出規制が不当な貿易制限と認定されれば、WTO提訴や対抗措置の発動も視野に入る。実際、2012年には日米欧が中国のレアアース輸出規制をWTOに提訴し、勝訴した前例もある。

欧州では供給源の多様化や、レアアースを使用しない電気モーターの開発への投資が加速している。各自動車メーカーは、フェライト磁石を使用したモーターや、巻線界磁同期モーターなど、レアアースフリー技術の実用化を急いでいる。しかし、これらの対策は即効性がなく、現在直面している供給網の危機には対処できない。

欧州のグリーンディール実現に不可欠なEV戦略と、対中依存の再資源化サプライチェーン。その間に横たわる制度対応と地政学リスクは、循環経済への移行が単なる企業努力ではなく、法制度・外交戦略・投資判断の交差点にあることを浮き彫りにする。今後の対応次第で、欧州全体のサステナブル産業構造の信頼性が問われる局面を迎えている。

【参照URL】Urgent action needed as China’s export restrictions on rare earths disrupt
European automotive supply chains

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Source: 仮想通貨の最新情報BTCN | ビットコインニュース
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