排出削減困難5分野の脱炭素化戦略:最新レポートが示す「Aからゼロへの道筋」と技術的優先事項
3月18日に発表された調査報告書「Your route from A to Zero: Technologies to cut emissions in five hard-to-abate sectors」は、鉄鋼、セメント、化学、鉱業、そして石油・ガスという、世界の温室効果ガス(GHG)排出量において大きな割合を占める5つの排出削減困難な産業分野における脱炭素化への実用的な道筋を提示した。このレポートは、各産業特有の課題と機会を詳細に分析し、電化、エネルギー効率の向上、炭素回収・有効活用・貯留(CCUS)、水素利用といった主要技術の具体的な活用法と、短期および長期的な優先事項を詳述している。
パリ協定の目標達成に向け、世界のGHG排出量の約3分の1を占める産業セクターへの変革圧力は日増しに高まっている。レポートによると、政府による規制強化に加え、サプライチェーン全体を通じた持続可能性への要求が、企業にとって競争優位性を確立する上で重要な要素となりつつある。脱炭素化は全ての産業にとって共通の課題であり、特にエネルギーセクター自体の脱炭素化と、再生可能エネルギーの統合を支える電力網のアップグレードが不可欠であると指摘された。国際エネルギー機関(IEA)が示すように、電化とエネルギー効率の向上が2050年のネットゼロ達成に向けた主要な経路であるが、最適なアプローチはセクターごとに異なり、排出されるGHGの種類も多様であるのが現状だ。
本レポートは、これら5つの主要産業それぞれについて、最も排出量の多いプロセスを特定し、それらを緩和しうる具体的な技術を示している。特に焦点が当てられているのは、プロセスの電化、熱利用の最適化、CCUS、そして低炭素水素の活用という4つの核心技術だ。例えば鉄鋼分野では、電気アーク炉(EAF)の導入や水素還元製鉄技術の開発が、セメント分野では代替結合材の使用やCCUS技術の統合が鍵となる。化学産業では低炭素水素を利用したアンモニア製造プロセスの革新や各種プロセスの電化、鉱業では採掘車両の電化やメタン排出抑制策、石油・ガス産業ではフレアリング(余剰ガス燃焼)の削減やプロセスの電化などが、具体的な取り組みとして挙げられた。
さらに、産業横断的なテーマとして、再生可能エネルギー由来の電力の安定供給と、高効率な電気駆動装置(ドライブ)やモーターの導入が、ほぼ全てのセクターにおいて極めて重要になると強調された。短期的な優先事項としてはエネルギー効率の最大化、熱供給と各種プロセスの電化を推進し、長期的にはCCUS技術と低炭素水素の本格的な活用が脱炭素化達成の鍵を握ると結論付けている。レポートは、既に実証されている技術を早期に導入し、技術パートナーと緊密に連携しながら革新的なソリューションの成熟に備えるという、多角的かつ段階的なアプローチを推奨した。
この報告書は、排出削減が困難とされるセクターが直面する複雑な脱炭素化の課題に対し、具体的な技術的選択肢と戦略的な優先順位を提示するものであり、各企業のリーダーが自社の状況に応じた最適な「Aからゼロへの道筋」を判断する上で重要な示唆を与える。サーキュラーエコノミーの観点からも、エネルギー効率の最大化、再生可能エネルギーへの大胆な転換、そしてCCUSや水素といった革新的技術による産業プロセスの変革は、資源生産性を高め、廃棄物を削減し、持続可能な産業構造を構築する上で不可欠な要素となるだろう。
【参照URL】ABB “Your route from A to Zero: Technologies to cut emissions in five hard-to-abate sectors”
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