デジタル製品パスポートがファッション製品の価値を2倍に。消費者が最大の恩恵享受へ
経営コンサルティング大手のベイン・アンド・カンパニーと世界的ECプラットフォームのイーベイは6月25日、デジタル製品パスポート(DPP)の導入により、ファッション製品の生涯価値が最大2倍に増加する可能性があるとの共同調査結果を発表した。2026年から欧州連合(EU)で義務化されるDPPは、単なる規制対応を超えて、ファッション業界に新たなビジネス機会をもたらすことが明らかになった。
調査によると、500ポンド(約10万円)で販売されたファッションアイテムが、DPPによる信頼性・追跡可能性・転売の容易さの向上により、リセールやサービスを通じてさらに500ポンドの追加価値を生み出す可能性がある。特に注目すべきは、この価値向上による恩恵の最大65%を消費者が享受できる点だ。リセールプラットフォーム、ブランド、認証サービスも恩恵を受けるが、最大の受益者は消費者となる。
DPPは、QRコードやNFC、ブロックチェーンなどの技術を活用した標準化されたデジタル記録システムで、製品の素材、構成要素、原産地、環境フットプリント、ライフサイクルに関する詳細情報を含む。EUの持続可能製品のためのエコデザイン規則(ESPR)に基づき、2030年までにEU域内で販売されるほぼすべての物理的製品にDPPの搭載が義務付けられる。繊維製品については2026年から適用が開始される予定だ。
しかし現状では、ベインの調査対象企業の約90%がDPPを単なる規制遵守の負担として捉えている。これに対し、ベイン・アンド・カンパニーのリテール・顧客戦略&マーケティング部門のパートナーであるアーロン・チェリス氏は「DPPは単なるコンプライアンスのチェックボックス以上のものだ。製品の生涯にわたって価値がどのように創出され、獲得され、維持されるかという根本的な変化を表している」と指摘する。同氏は、早期に行動するブランドは消費者とのより直接的でデータ豊富な関係を構築し、リセールトレンドを活用し、これまでにない方法でサービスをパーソナライズできると述べた。
DPPがもたらす具体的な機会として、ブランドは信頼性の高いリセール、トレードイン、買い戻しスキームの展開、個別化された保証・修理・アフターケアサービスの提供、製品使用状況の追跡と寿命延長、ESG目標に関する透明性の高い報告などが可能になる。イーベイのグローバルファッション担当バイスプレジデントのアレクシス・フープス氏は「DPPはファッションにおける循環性の未来を推進する上で重要だ。リセールの最前線にあるグローバルマーケットプレイスとして、より良い製品データが賢明な購入、責任ある販売、より信頼できるプラットフォームをどのように実現できるかを探求している」と述べた。
報告書は、DPPの真の価値は消費者体験の改善にあると強調する。紛失したレシートや面倒な出品作業が不要になり、ワンクリックでのリセールが可能になることで、中古市場への参加障壁が大幅に低下する。これにより信頼が深まり、参加が拡大し、循環型ショッピングが当たり前になるという好循環が生まれると期待される。
ファッション業界は世界の温室効果ガス排出量の約10%を占め、環境負荷の大きい産業として知られる。世界人口が2050年までに96億人に達し、資源利用量が2倍になると予測される中、循環経済への転換は持続可能な未来の実現に不可欠だ。DPPは「リニアエコノミー(直線経済)」から「サーキュラーエコノミー(循環経済)」への転換を加速させる重要なツールとして期待されている。
2026年のESPR期限が迫る中、報告書は企業に早期行動を促している。今日DPPインフラに投資し、消費者との関わりを深め、リセールモデルをテストするブランドが、明日の持続可能でデータ駆動型ファッションのリーダーになる。一方、対応を遅らせる企業は、リセール経済が拡大する中で競争力を失うリスクがあると警告している。
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Source: 仮想通貨の最新情報BTCN | ビットコインニュース
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