アパートの物件価格の高騰がこのまま続くとどうなる?融資や入居率など過去の事例や今後の動向を解説
日本では長年にわたり不動産価格の上昇が続いています。本来、物件価格の高騰は利回りの低下を招き、やがて投資需要が冷え込むことで価格が調整されるのが市場のサイクルです。
しかし、現在の日本市場は、金融政策の転換期を迎えつつも、根強いインフレや旺盛な海外からの投資需要などを背景に、高値圏での推移が続いています。この「終わらない価格高騰」に、多くのアパートオーナーや投資家が不安を感じているのではないでしょうか。
本記事では、直近のデータを基に、物件価格の高騰がアパート経営に及ぼす影響を多角的に分析。その上で、今後の市場を見通し、この状況下で有効な投資戦略を解説します。
目次
- 不動産価格・物件価格の高騰の実態
- 物件価格の高騰で想定される影響
2-1.利回りの低下
2-2.賃料の高騰
2-3.入居率の低下
2-4.投資に必要な自己資金の増大
2-5.不動産需要の低下・価格の頭打ち - 足元までの市場環境と今後の見通し
3-1.利回りの低下と賃料高騰は実際に発生
3-2.入居率の低下はみられず
3-3.ローン環境や海外需要が不動産価格の下支え要因となる可能性 - 価格高騰時代のアパート経営戦略
- 将来を見据えたエリア選びを相談できる不動産会社
1 不動産価格・物件価格の高騰の実態
不動産価格が実際のところどのように高騰しているのかみてみましょう。こちらは、国土交通省が集計する不動産価格指数です。
不動産価格指数の推移(商業用不動産)
出所:国土交通省「不動産価格指数(2009年12月末の値を100として指数化。商業用不動産/アパート・マンション)」
2009年12月末~2025年3月末(四半期データ)
リーマンショック後、アベノミクスによる異次元緩和が始まった2013年頃から価格は右肩上がりに転じました。2016年のマイナス金利導入は、金融機関の融資姿勢をさらに積極化させ、投資マネーが不動産市場に流入。価格上昇を加速させました。
コロナ禍で一時的な調整があったものの、その後の世界的なインフレ、資材価格の高騰、そして円安を背景とした海外投資家の旺盛な需要が重なり、価格は再び上昇。2024年にマイナス金利が解除された後も、この勢いは衰えていません。2009年末から2025年初頭までの約15年間で、三大都市圏の商業用不動産価格は約80%も上昇しています。
2 物件価格の高騰で想定される影響
実際の動向を見る前に、物件価格の高騰によって起きうる基本的な影響についておさらいしましょう。物件価格の高騰は、次のような事態を引き起こす可能性があります。
- 利回りの低下
- 賃料の高騰
- 入居率の低下
- 投資に必要な自己資金の増大
- 不動産需要の低下・価格の頭打ち
物件価格の高騰は、アパート経営に以下のような連鎖的な影響を及ぼします。
2-1 利回りの低下
物件価格が上昇しても、賃料が同じペースで上昇するとは限りません。特に賃貸借契約は2年ごとなど長期にわたるため、価格上昇分を即座に賃料に転嫁することは困難です。結果として「利回り(=年間賃料収入 ÷ 物件価格)」は低下し、投資の収益性は圧迫されます。
2-2 賃料の高騰
低下した利回りを補うため、オーナーは新規募集や契約更新のタイミングで賃料を引き上げようとします。特に、人口流入が続く都心部や利便性の高いエリアでは、賃料上昇の動きが顕著になります。
賃料が高騰すれば、不動産価格が高騰する中でも満足のいくリターンを得られる可能性があります。今後、アパート投資を始めるなら、利便性が高く競争優位な物件を購入して、賃料の引き上げ交渉がしやすい物件を選ぶと良いでしょう。
2-3 入居率の低下
賃料の上昇は、入居者の家計を圧迫します。家賃負担の限界を超えれば、入居者はより安価な郊外へ転出したり、住み替えを控えたりする可能性があります。これは空室の増加、つまり「入居率の低下」に繋がり、安定経営を脅かすリスクとなります。
2-4 投資に必要な自己資金の増大
不動産価格が高騰すれば、投資を始めるときに必要な自己資金が増大します。足元の物件価格が変わったからといって、金融機関が融資額を増やすとは限りません。
賃料が不動産価格の高騰に追随できなければ、収益性が低下して、物件価格に比して担保価格が相対的に小さくなる要因となります。
金融機関は、不動産価格が高騰したからといって、融資限度額を増やすわけではありません。そのため、不動産価格の高騰により、融資限度額と投資に必要な金額の格差が拡大し、より多くの自己資金を必要とする可能性が高くなります。
2-5 不動産需要の低下・価格の頭打ち
利回り低下と自己資金の増大で投資のハードルが上がり、入居率の低下で運用リスクが高まれば、不動産投資の魅力は薄れます。買い手が減り、売り手が増えることで、高騰した価格は適正水準へと調整される――これが本来の市場原理です。しかし、今の日本市場では、この調整メカニズムが働きにくくなっています。
3 足元までの市場環境と今後の見通し
では、これまでに紹介した影響は、実際の市場でどのように現れているのでしょうか。
3-1 利回りの低下と賃料高騰は実際に発生
まず、利回りは以下のとおり過去10年にわたって低下傾向です。
一棟アパートの利回り推移
出所:健美家「収益物件 市場動向 年間レポート 2024年」
全国平均で見ると2014年~2024年の間に、10.2%から8.2%へ、およそ2%ほど利回りが低下しました。不動産価格の高騰を賃料収入の拡大で吸収しきれず、投資家の収益性が下がっている様子が伺えます。賃料の推移は次のとおりです。
東京都・1部屋の賃料水準の推移
出所:全国賃貸管理ビジネス協会「全国家賃動向」
賃料の上昇は不動産価格よりも遅行している様子が伺えます。2016年ごろまでは賃料は低下傾向でしたが、その後は上昇に転じています。特にコロナ禍の影響が一巡した2022年からは上昇ペースがやや加速しているのが特徴です。
一つの仮説として、賃料はより「物価水準」の影響を受けると考えられます。以下は2020年の価格水準を100としたときの消費者物価指数です。
消費者物価指数(総合:2020年の価格水準=100とした指数)
出所:e-Stat「消費者物価指数」
右肩上がりであるほど物価が急に高騰していることを意味しますが、2016年頃までは消費増税の影響を除くと物価は横ばいとなっています。
それが2016年末ごろから徐々に上がり始めます。コロナ禍で一度停滞したのち、2022年末ごろからは上昇ペースが加速しました。賃料水準は、不動産価格の高騰だけでなく、物価の影響も受けるものと考えられます。
利回りの低下と賃料価格の高騰は確かに進行しています。この辺りは不動産価格高騰の影響がシンプルに現れていると言えるでしょう。
なお、利回りは賃料収入を不動産価格で割って計算します。利回りが下がっているということは、賃料収入より不動産価格の上昇率が大きい傾向であることが伺えます。利回りの低下により、安定的な不動産投資の難易度が高まる可能性があります。
賃料と利回りは、今後エリアによる二極化がより顕著になると考えられます。東京や大都市の都心部周辺は、利便性や都市の魅力を背景に賃料が上がっても需要が落ちにくい環境が当面続くでしょう。
一方で、地方に行けば行くほど、高い賃料を維持するのが難しくなります。そもそも過疎が進む中、こうした地域は逆に賃料の低下と不動産価格の下落が進むでしょう。少子高齢化の中で、地方の人口は今後さらに減少が加速する見込みです。不動産価格や賃料も、こうした人口動態の影響を受けるでしょう。
3-2 入居率の低下はみられず
「日本賃貸住宅管理協会」によると、入居率の推移は以下のとおりです。
入居率の推移
日本賃貸住宅管理協会「市場データ(日管協短観)」をもとに筆者集計
2020年~2022年にかけて都市部では入居率の低下がみられました。これはコロナ禍において、人口密集地を避ける動きが進んだためと推測されます。「その他」の入居率がこの間緩やかに増加していることからも、都心を避ける動きが進んだ様子が伺えます。
一方で2022年度~2023年度にかけては入居率が回復しました。この間は力強い賃料の上昇が始まった時期ですが、現状は賃料の高騰=入居者の低下という状況には至っていません。
現状の賃料において高稼働率を維持できるのであれば、アパートオーナーは相対的に高い賃料収入を維持できるため、賃料や不動産価格の高騰に歯止めがかかりにくくなると考えられます。
3-3 ローン環境や海外需要が不動産価格の下支え要因となる可能性
低いローン金利や銀行の積極的な融資姿勢の継続、そして投資家・入居者双方における海外需要が、不動産市況の下支えとなって、不動産価格の上昇に歯止めがかからない可能性があります。
まず、金融機関の融資姿勢は、まだ不動産投資に取り組みやすい環境を醸成していると考えられます。2010年代半ば以降、日本の政策金利は低く抑えられ、金融機関が不動産ローンを低金利で積極的に貸し出せる環境が続いていました。
2024年から利上げが実行されてゼロ金利の時代は終わりましたが、政策金利は0.5%と依然として低水準です。不動産投資家にとってローンを利用しやすい環境が当面続く見通しで、融資環境の悪化が不動産価格の下落要因となる可能性は限定的と見込んでいます。
さらに、海外からの来訪者は投資家・入居需要の双方の下支え要因となります。近年インバウンド需要の拡大が進んでいますが、同時に外国人居住者も増加傾向です。
在留外国人数の推移
出入国在留管理庁「令和6年6月末現在における在留外国人数について」
外国の方は日本に永住するハードルが高いため、必然的に賃貸住宅に住む可能性が高いといえます。すなわち、在留者の増加は、賃貸需要の拡大に直結する可能性が高いのです。特に東京・大阪などの都市部では、外国人の増加に伴う入居需要の拡大が期待されます。
さらに、経済的に豊かな一部の外国人は、投資目的で日本の不動産を購入するとも考えられます。足元のドル円為替相場は、1ドル140円台後半で推移しており、過去数年でみれば円安の水準にあります。
円安局面においては、外国人はドル建てで考えると割安に日本の不動産を購入可能です。また、日本は治安がよく、クーデターなどの懸念が小さいという意味で、政治的・地政学的なな安定性も高いことから、海外投資家にとって日本の不動産は有力な投資先のひとつです。
このように居住需要・投資物件の購入需要の双方で、近年増加傾向の外国人の下支えが期待される点も、不動産価格が短期的には下がりにくい一因となると考えられます。
4 価格高騰時代のアパート経営戦略
物件価格の高騰は続き、利回りは低下傾向にあります。しかし、高い入居率に支えられ、市場は高値圏で推移しており、価格がすぐに下落に転じるとは考えにくい状況です。「価格が下がるまで待つ」という選択肢もありますが、いつ訪れるか分からない下落を待つ間に、優良物件を取得する機会を逃すリスクも存在します。
このような価格高騰時代においてアパート経営で成功を収めるためには、これまで以上に緻密な戦略とリスク管理が不可欠です。まず何よりも重要なのは、徹底したエリア選定です。感覚や過去の常識に頼るのではなく、人口動態や再開発計画といった客観的なデータに基づき「人が集まり続けるエリア」を厳選することが、二極化が進む市場での成否を分ける絶対条件となります。
そして、有望なエリアを見つけたとしても、資金計画は極めて堅実に立てなければなりません。「今の低金利が続く」という楽観的な想定は捨て、将来的な金利上昇を必ずシミュレーションに織り込み、それでもキャッシュフローが回るかを確認するべきです。自己資金比率を高め、借入への依存度を下げることが、金利変動リスクへの最良の備えとなるでしょう。
また、物件選びにおいては、価格が高騰した新築や築浅だけに固執せず、割安な中古物件に目を向ける柔軟性も求められます。物件の状態を正確に見極め、適切なリノベーションで価値を向上させる「目利き力」は、高値市場で高い利回りを実現するための有効な手段です。
さらに、これら全てのプロセスの土台として、購入時に「誰に、いつ、いくらで売却するのか」という明確な出口戦略を描いておくことが欠かせません。市況が悪化した場合のシナリオまで想定しておくことで、長期的な資産形成の安定性が格段に高まります。
市場環境はかつてなく複雑化していますが、その変化を正しく理解し、リスクを管理しながら戦略的に行動することで、この価格高騰時代においても、アパート経営を成功に導くことは十分に可能なのです。
5 将来を見据えたエリア選びを相談できる不動産会社
以下ではエリア選定と用地仕入れに強みがあるアパート経営会社2社をご紹介します。
5-1.シノケンプロデュース
- 駅徒歩10分以内の土地にこだわり、入居率98.75% (2024年年間平均/自社企画開発物件)
- 管理戸数50,000戸以上(2024年12月末時点)の豊富な管理実績
- 初回の入居が成約になるまで家賃を100%保証する「100%初回満室保証」
シノケンプロデュースは、東京・福岡・大阪・名古屋・仙台の都市圏で投資用アパートの販売を中心に行っているシノケングループのグループ企業です。管理戸数50,000戸以上(2024年12月末時点)の実績があり、直近10年の入居率は98%超の実績があります。初回の入居が成約になるまで家賃を100%保証する「100%初回満室保証」や、入居者からの家賃の支払いが遅れた場合の家賃滞納保証などオーナーが安定した収益を生むための保証制度も充実しています。購入者の半数以上がリピーターとなっており、会社員・公務員からの評判も良い会社です。
さらに、シノケンでは入居者向けコールセンター(24時間365日8カ国語対応)で、外国人や高齢者など敬遠されがちな方にも手厚い対応を行っています。このような入居者向けサービスは、高齢者の継続的な安否確認、外国人の言語の壁によるコミュニケーションや生活マナーの改善などが期待でき、オーナーにとっても入居者層を広げられるメリットや将来的な入居需要に応えることができるメリットがあります。
【関連記事】シノケンのアパート経営の評判は?営業、融資、物件、入居率の評判・口コミ
5-2.アイケンジャパン
- 入居者のターゲットを社会人女性に絞り、入居率99.3% (2024年年間平均/自社企画開発物件)
- 入居者が決まるまで無期限で家賃保証が行われる「初回満室保証」
- 女性入居者に合わせた高い防犯性を備えている点も特徴的
アイケンジャパンは、「堅実なアパート経営」をコンセプトに掲げる不動産投資会社で、2006年の創立から1000棟以上の開発・引渡し実績があります。
アイケンジャパンのアパートは、対象エリアを主要駅10分圏内(首都圏は15分圏内)、入居者のターゲットは物件選びの目線が厳しい社会人女性に絞って、防音性・防犯性・デザイン性・コストパフォーマンスなどを追求し、入居率99.3%(2023年年間実績)を実現しています。事業計画の設定家賃に対しても、10年以上経っても98.7%(2024年6月末時点)の高い収益率を達成できており、オーナーからの紹介・リピート率も高い会社です。
さらに、オーナーに対する保証やサポートが手厚いのもアイケンジャパンの特徴です。家賃滞納保証や管理代行サポートなども利用できるため、初心者の方でもアパート経営に取り組むことができます。建物完成後は全部屋に入居者が決まるまで無期限で家賃保証が行われる「初回満室保証」があり、地盤の問題や構造上の欠陥についても、建物引渡日の翌日から20年以内に不同沈下が発生し、建物に被害が出た場合、建物と地盤の修復工事を行う「宅地地盤保証」という保証があります。
また、アイケンジャパンの入居者のターゲットとして想定しているのは「社会人女性」のため、①オートロック・カラーモニターフォン、②共用廊下・共用階段が屋内となるように設計、③バルコニー前をライトで照らすなど、④高さのあるベランダにする、⑤防犯シャッター、⑥防犯カメラの設置など、ターゲットから求められる高い防犯性を備えている点も特徴的です。
<!–なお、アイケンジャパンでは2025年4月24日(木)から5月6日(火・祝)までの期間限定で「アパート経営オンデマンドセミナー」を配信しています。この機会に不動産投資やアパート経営に関して相談をしてみたいという方は検討されてみると良いでしょう。
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