【重要ニュースまとめ(12/17~12/23)】CoinbaseがついにIPO申請書類を提出。暗号資産がウォール街からの信頼獲得へ。米SECが正式にリップル社を提訴
今回は、12月17日〜12月23日の暗号資産・ブロックチェーン業界の重要ニュースについて、田上 智裕 氏(@tomohiro_tagami)に解説していただきました。
目次
今週(12月17日〜12月23日)の暗号資産・ブロックチェーン業界は、CoinbaseのIPO報道やリップル社に対するSECの訴訟などが話題となりました。本記事では、1週間の重要ニュースを解説と共におさらいしていきます。
CoinbaseがIPOの申請書類を提出
世界最大手取引所のCoinbaseが、株式上場(IPO)のための必要書類をSEC(米国証券取引委員会)に提出したことを発表しました。一時はデカコーン(100億ドル)を超える評価額に到達していたテック界の巨人が、ついにこの時を迎えます。
CoinbaseのIPOはこれまでに何度も噂されてきました。承認されれば、暗号資産・ブロックチェーン業界における過去最大のIPOとなります。評価額は8,000億円を超えると予想され、米国では業界初の事例です。
暗号資産・ブロックチェーン業界の企業に対して、ここまで頑なにIPOが承認されてこなかったのにはいくつかの理由があげられます。1つは、暗号資産という商品の複雑さがあげられるでしょう。
今でこそ、本人確認(KYC)のフローが整備され規制も明確になってきましたが、それでもやはり取り扱い難易度が高く、不透明な部分も数多く残されています。また、次から次へと新たな取り組みが出てきているため、規制当局の対応も追いついていません。
さらに、暗号資産が社会的に悪いイメージを払拭できていないことも少なからず影響していると考えられます。業界全体を通して規制当局との関係性もあまり良くないため、コミュニケーションが円滑に進んでいないのは事実です。
金融が大きく絡む規制産業であることから、マネーローンダリングやテロ資金供与への対策(AML/CFT)が重要視されるため、不明確な点があればまずはNGとする、という当局の方針もわからなくはありません。
新興市場の場合、最初の事例が誕生するまでに長い期間を要してしまうのはある程度仕方のないことだと言えるでしょう。
そのため、今回のCoinbaseのIPOは極めて重要なことであり、業界全体を通して大きな一歩となるのです。承認されることで、暗号資産がウォール街からの信頼を得ることに繋がり、更なる市場の活性化が期待できると考えられます。
今回のIPOでは、既にCoinbaseで取り扱われているトークンの一部が除外される可能性が浮上しています。例として、匿名性の高いものや分散生に欠けるものがあげられます。上場が承認されることで、「上場企業の取り扱うトークン」というある種のお墨付きが与えられることにもなるため、どのような方針となるのか注目が集まりそうです。
なお、今回のIPOは昨今話題のダイレクトリスティングによるものになると噂されています。ダイレクトリスティングとは、株式公開時に新株を発行せずに既存株だけを売りに出す方式です。
資金調達を行わない代わりに、銀行や証券会社を仲介させる必要がなく、スピーディーかつ低コストでIPOすることができます。SpotifyやSlackなどのテック企業がダイレクトリスティングによるIPOを実現しており、昨今注目を集めています。
【参照記事】Coinbase announces confidential submission of draft registration statement
【参照記事】米仮想通貨取引所コインベース、SECに株式公開を申請
SECがリップル社を正式に提訴
米国証券取引委員会(SEC)が、リップル社およびCEOを務めるガーリンハウス氏、共同創業者のクリスラーセン氏を相手に、正式に訴訟を起こしたことを発表しました。2013年から7年にわたり、証券に該当する可能性が高いものの届け出が済んでいないXRPを販売し、1,300億円を超える売上を捻出していたとしています。
今回の論点は、XRPが証券に該当するか(1933年証券法に抵触するか)どうかです。SECは、リップル社がXRPの発行を行なっていることからXRPは証券に該当すると主張しています。一方のリップル社側の主張は、金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)をはじめ複数の規制当局が、既にXRPを通貨として認められているというものです。
リップル社の主張では、XRPは通貨となるためSECの管轄である証券法の枠組みからは外れるとしています。そのため、SECは自らの持つ権限を超えたことを行なっており、「イノベーションを著しく阻害する」と声明を出しています。
1933年証券法では、投資家が意思決定を行うための適切な情報が提供されることを目的として制定され、証券を発行する場合には有価証券届出書をSECに提出することが義務付けられています。
つまり、今回の訴訟が認められた場合は、リップル社は届出書を提出せずに証券を発行していたことになるのです。
SECは、過去に暗号資産の証券性について度々言及しており、現状はビットコインとイーサリアムのみ証券ではないとしています。根拠としては、いずれも発行体が十分に分散化されている(数万を超えるマイナーが存在している)ためとしています。これに対して、XRPはリップル社が独占的に発行権限を有しているというのがSECの見解です。
リップル社とSECの訴訟はこれから本格化していきます。現状は訴訟が起こされた段階でしかありませんが、今回の一件は長期的にも小さくない影響を暗号資産市場に与えそうです。
なおリップル社は過去に、XRPの販売に際して虚偽の宣伝を行なったとして、2018年に投資家から集団訴訟を起こされています。他にも、銀行秘密法に違反したとして、FinCENに70万ドルを、カリフォルニア州の連邦検事局に45万ドルを罰金として支払っています。
【参照記事】SEC Charges Ripple and Two Executives with Conducting $1.3 Billion Unregistered Securities Offering
【参照記事】Ripple CEO Warns SEC May Sue Company Over XRP Sales
ブロックチェーンで温室効果ガスの排出量を追跡
世界経済フォーラム(WEF)の鉱山・金属ブロックチェーン・イニシアチブ(MMBI)が、温室効果ガスの排出量をブロックチェーンで追跡するための取り組みにおける概念実証が完了したことを発表しました。
MMBIは、鉱業・金属業を営む大手7社とWEFにより設立されたイニシアチブであり、原材料や温室効果ガス排出量の追跡および報告を行なっています。以前より、COT(Carbon Tracing Platform)と呼ばれるプラットフォームを開発しており、鉱山から製品化までバリューチェーン全体で排出される温室効果ガスのトレーサビリティ向上へ取り組んでいました。
世界的にSDGsへの取り組みが進んだことで、金属や鉱山資源に対する取り扱いが見直されている中で、情報の透明性や正確性が求められています。MMBIは、トレーサビリティにも持続可能性を持たせるべく、ブロックチェーンを活用していくと言及しました。
昨今は、ブロックチェーン業界でも環境に配慮した取り組みが進んでいます。大手決済プラットフォームのSquareでは、2030年までに事業を運営する上でのCO2排出量をゼロにすると宣言しました。
その他にも、アップル共同創業者のウォズニアック氏の参画するEfforceでは、エネルギー事業者に対して電力を削減した分だけ独自トークンWOZXを付与する仕組みを開発しています。
【参照記事】環境問題をブロックチェーンで解決。機関投資家によるビットコイン大量購入で市場が活性化
【参照記事】Blockchain Can Trace Carbon Emissions for Mining, Metals Companies, Proof of Concept Released
まとめ、著者の考察
過去に何度も報じられてきたCoinbaseのIPOが、ついに現実のものとなりそうです。これまで非常に長い年月がかかりましたが、業界全体として最初の事例となるため今後も続くことが期待できるでしょう。Coinbaseは日本にも拠点を構えているため、今回のIPOを受けて日本法人にどのような動きが見られるか要注目です。
一方で、CoinbaseのIPO報道にも劣らない賑わいをみせたのがリップル社への提訴です。XRPの証券性についてはこれまで何度も指摘されてきましたが、米国の政権交代のタイミングで正式に具体化されることとなりました。
仮にXRPが証券として認められた場合、その他の暗号資産についても同様の指摘がなされる可能性があるため、今回の一件はリップル社だけでなく業界全体に影響が広がりそうです。
Source: 仮想通貨の最新情報BTCN | ビットコインニュース
【重要ニュースまとめ(12/17~12/23)】CoinbaseがついにIPO申請書類を提出。暗号資産がウォール街からの信頼獲得へ。米SECが正式にリップル社を提訴