ESG経営に“3つの壁”、アビームコンサルティングとJACFOが「日本企業における非財務情報活用とその実態調査」結果を発表

企業の経済活動におけるESG(環境・社会・企業統治)が重視され、非財務情報の開示に対する関心が高まっている。アビームコンサルティング株式会社は4月21日、一般社団法人日本CFO協会(JACFO)と共同で調査した「日本企業における非財務情報(ESG関連情報)活用とその実態調査」の結果を発表した。「真の統合型ESG経営」の課題となる“3つの壁”と、壁を解消するポイントを導き出している。

調査は今年3月15日から3月31日にかけ、JACFOに登録する企業のCFO(最高財務責任者)や経理・財務幹部を対象にインターネットで行い、249社から有効回答を得た。まず、ステークホルダー資本主義に求められる経営戦略の1つとしてESG経営にフォーカスし、企業におけるESG経営の取り組みについて調査したところ、投資家をはじめとする外部からの要請が多い、大規模(従業員5000名以上)な企業ほどESGに対する意識を高めており、59%の企業でESG専門部門を設置し、統合報告書での開示を始めていることがわかった。

一方、ESG経営に向けた具体的な取り組みに関しては、非財務情報の活用を重視する企業でも、高度な取り組み内容になるほど実施できているケースはわずかだった。非財務情報の管理状況については、「非財務情報(ESG データ)の活用」を重視・活動している企業でも、81%は非財務情報をシステム管理できておらず、うち55%はデータの定義が未定義、社内に散在している状態であることが明らかとなった。

ESG経営の推進者については、CEO(最高経営責任者) が「非財務情報活用」の検討をリードすべきとされ、明確な意志とコミットメントが求められている。CEO以外では、ステークホルダーへの説明責任という面で深く関わる CFOへの期待が高まっている。そこで、同社は日本企業におけるESG経営推進の実態と自社がESG経営推進支援で培ってきた知見やノウハウから、企業が真の統合型ESG経営を実現するために打破すべき3つの壁と解決のポイントをそれぞれ導き出した。

壁の筆頭は「重要性の壁」。これまでESG対応を進めてきた企業ほど、「真の統合型ESG経営」の重要性を認識している。一方、そのような先進企業でも、ESGデータをフル活用した経営管理は実現できていない。そこで、真の統合型ESG経営の実現に向けたロードマップを可視化し、第1歩として手元の ESGデータで「ESGと企業価値の関係性」を分析するスモールスタートから変革を実現することが重要としている。

次に「収集・管理の壁」がある。真の統合型ESG経営を目指す先進企業群においても、ESGデータは社内に散在しており、非システム管理となっている。同社は「企業の開示情報から多種多様な ESG データが取得できるためまずは、企業内に存在するESGデータ量を把握すること」を指摘する。

3つ目は「推進者の壁」。真の統合型ESG経営の旗振りにはCEOの明確な意志とコミットメントが求められている一方、調査ではESGデータの管理において主管部門が存在しないか不明という企業が大半だった。同社は「推進者であるCEOが正しい外部の期待値を把握し、CFOや主管部門の連携を維持することが重要」と強調している。

同社は、アジアを中心とした海外ネットワークを通じ、それぞれの国や地域に即したグローバル・サービスを提供している総合マネジメントコンサルティングファーム。戦略、BPR、IT、組織・人事、アウトソーシングなどの専門知識と、豊富な経験を持つ約6600名のプロフェッショナルを有し、金融、製造、流通、エネルギー、情報通信などの分野を担う企業、組織に対し幅広いサービスを提供している。

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