投資信託のリスクはどう測ればいい?低リスクなファンドの選び方も

投資信託をスタートするにあたっては、どのくらいプラスになるのかを基準にファンド選びを行うかと思いますが、どの程度のリスクを負うことになるのか、という点も気になるところではないでしょうか。

個別株に比べて比較的リスクが低い傾向にある投資信託でも、リターンを得るために相応のリスクを負います。この記事では、具体的な投資信託のリスクと、リスクを分析するための方法や指標を解説します。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. 投資信託におけるリスクの意味
  2. 投資信託が持っているリスク
    2-1.価格変動リスク
    2-2.為替変動リスク
    2-3.信用リスク
    2-4.金利変動リスク
    2-5.流動性リスク
    2-6.地政学リスク
  3. 投資信託のリスク分析の方法
    3-1.ベンチマークをもとにリターンを測定
    3-2.標準偏差によるリスクの測定
    3-3.シャープレシオ
  4. タイプ別低リスクなファンドの選び方
    4-1.国内債券ファンド
    4-2.高格付けの先進国債券ファンド
    4-3.資産分散型のバランス投信
  5. 標準偏差に注目した低リスクなファンド選び
    5-1.日興-2023年満期日本公共債ファンド
    5-2.One-DLIBJ公社債オープン(短期コース)
    5-3.日興-年金積立 日本短期債券オープン(愛称:DC日本短期債券オープン)
  6. まとめ

1.投資信託におけるリスクの意味

普段の生活の中で、リスクという言葉は危険や損失というニュアンスで使われることが多くありますが、投資の世界では、今後予想される収益のブレ、当初予想した収益から外れる可能性、という意味で使われます。損失だけを指してリスクと呼ぶのではなく、収益の増加も含めて、不確実性をリスクと呼んでいます。

したがって、大きなリターンを得たい場合、大きなリスクを取る必要があるのです。

2.投資信託が持っているリスク

投資信託が持っている基本的なリスクを6点説明します。

2-1.価格変動リスク

投資全般の代表的なリスクは、価格変動リスクです。有価証券や金融商品の価格は、以下の3点により、需給バランスが変化し価格が変動します。

  1. 企業の業績
  2. 国内外の政治
  3. 国内外の経済情勢

基本的に状況が悪くなると価格は下落し、改善されると上昇に転じます。各種情報は事前に価格に織り込まれることが多く、現在、どの要因で価格変動が起きているのか把握することも重要なポイントです。

2-2.為替変動リスク

外国の通貨や株式に投資するファンドの場合、為替ヘッジなしのファンドでは、為替変動リスクが伴います。為替ヘッジありのファンドでは、為替変動リスクは軽減されますが、金利リスクの影響が強くなります。

為替変動リスクは外貨建の金融商品ならではのリスクで、買い付け当初よりも円高にふれると、日本円に換金した時に為替差損が生じることもあります。逆に円安にふれると、為替差益を得ることができます。運用成績が悪くても円安にふれた分だけ、プラスになることもあり得るのです。

2-3.信用リスク

投資先の企業や国の信用力に起因するリスクです。

企業が発行する有価証券や国が発行する債券が含まれているファンドでは、業績や内情しだいで、基準価額が下落することがあります。企業の株式中心のファンドと、国が発行する債券中心のファンドでは、同じく信用リスクが伴うもののリスクの大きさは異なります。投資のテーマや構成銘柄をしっかりと確認することも忘れないようにしましょう。

2-4.金利変動リスク

ファンドの運用では、金利の変動によるリスクも顕在化します。金利が大幅に変動すると、得られるリターンにも影響が出るのです。

金利変動の一般的なパターンは以下の通りです。

金利 債券価格
上昇 下落
下落 上昇

金利はさまざまな要因で変動し、主な要因としては国内情勢や、株式市場から債券市場へのお金の流れなどが挙げられます。為替ヘッジありのファンドでは、為替スワップにより為替のリスクを軽減します。金利差を生かしたヘッジ方法で、金利変動しだいでは、ヘッジコストが余計にかかってしまう場合があるのです。

2-5.流動性リスク

所有しているファンドによっては、取引量や需給関係の変化により売買自体ができないこともあり、これを流動性リスクと呼んでいます。

流動性リスクの要因は以下の通りです。

  1. 市場での取引量が少ない
  2. 総資産額が少ない
  3. 組入銘柄の企業や国の問題

需給関係の問題や、元々の市場規模、ファンドに起因する事柄などケースは様々です。流動性リスクが高いと、解約の時に安い基準価額で妥協を強いられることがあります。

2-6.地政学リスク

地政学リスクは、特定の地域が抱える政治的、軍事的、社会的な緊張の高まりが地理的な位置関係によって、さまざまなエリアの経済、世界経済全体の先行きを不透明にしたり、特定商品の価格に変動をもたらすリスクを指します。一般的にはテロや紛争、戦争による影響を指すことが多い傾向です。

3.投資信託のリスク分析の方法

ファンドの運用成績やリスクについての分析方法を紹介します。

3-1.ベンチマークをもとにリターンを測定

ファンドのパフォーマンスを測定し、リスクの大きさを確認するには、ベンチマークとする指標との比較を行います。国内株式であれば、市場全体の価格を表すTOPIX、米国株式の場合はS&P500が該当します。このベンチマークの過去3年間の価格推移グラフと、ファンドの過去3年間の基準価額推移のグラフを重ねることで、ベンチマークとする指標を基準にパフォーマンスが測定できるのです。

アクティブファンドでは、このような測定方式によってファンドの運用成績やリスクの大きさを確認することができます。インデックスファンドでは、本来の目的である指数への連動が達成されているか、を確認します。

3-2.標準偏差によるリスクの測定

リスクはリターンの幅の程度を表しており、幅が広いとリスクが大きい、狭いとリスクが小さいと呼びます。

資産運用の世界では、リスクのばらつきを標準偏差とよび、数値で表します。標準偏差とは、ある一定期間のファンドのリターンから月次、年次リターンがどの程度離れているかを示す統計的な数値です。この数値が大きい(小さい)ほど、ファンドのリターンが大きい(小さい)ことを示しています。

以下の表は、SBI証券のファンド分析の項目に掲示されている2021年5月時点の「SBI日本株4.3ブル」の標準偏差の値です。

項目 1年 3年
SBI日本株4.3ブル 88.48 85.57
カテゴリ平均 40.59 45.35

数字が大きいほど、リターンが大きいことを表しています。得るリターンの大きさとともに、損失も同じ振れ幅があります。

3-3.シャープレシオ

シャープレシオの数値が高いほど、リスクを取ったことで得られたプラス収益が高いことを表しています。シャープレシオ数値が高いと、効率よく収益を獲得していると見ることができます。

算出する計算式は以下の通りです。

シャープレシオ=(ポートフォリオの収益率ー無リスク資産の収益率)÷ポートフォリオの収益率の標準偏差

シャープレシオは異なる投資対象のファンドを比較する時に、同じリスクならどちらのファンドが効率よく稼ぐことができるか、を考える時に役立ちます。

以下、先述のSBI日本株4.3ブルの2021年5月時点のシャープレシオです。

項目 1年 3年
SBI日本株4.3ブル 2.08 0.17
カテゴリ平均 2.03 0.28

シャープレシオを基準として考えると、直近1年では高い数値を示していますが、3年で見ると、カテゴリ平均を下回っています。

4.タイプ別低リスクなファンドの選び方

低リスクなファンドタイプを3つピックアップしてみました。

4-1.国内債券ファンド

債券ファンドは株式と違い、大きな値動きがありません。ファンドの収益は債券市場で債券を売却した時の譲渡益と、受取利息です。大きく値上がりを狙えない反面、運用商品の中では値動きが穏やかな特徴があります。

4-2.高格付けの先進国債券ファンド

信用リスクをできるだけ排除するため、先進国の格付けの高い債券へ投資します。国内債券と同じく、ファンドの収益は債券を売却した時の譲渡益か、受取利息です。国内債券と同じくリスクは低めですが、為替リスクを考慮する必要があります。

4-3.資産分散型のバランス投信

株式、債券、REIT、金融商品、国内や海外という具合に、投資対象を分散させたファンドです。債券ファンドよりもリスクは高くなりますが、値上がり益も狙うことができます。構成銘柄をリバランスして収益を狙うファンドも存在しますので、運用方針は事前にしっかり確認しましょう。

5.標準偏差に注目した低リスクなファンド選び

標準偏差を指標にすることで、低リスクなファンドを探し出すことができます。また参考に、シャープレシオにも注目しましょう。

以下、SBI証券の取り扱いファンドの中から、2021年の5月時点で標準偏差が低い順に3つピックアップしました。

5-1.日興-2023年満期日本公共債ファンド

標準偏差 1年 3年 5年
日興-2023年満期日本公共債ファンド 0.1 0.31 0.66
カテゴリ平均 1.39 1.95 1.81
シャープレシオ 1年 3年 5年
日興-2023年満期日本公共債ファンド -2.40 -0.81 -0.43
カテゴリ平均 -0.08 0.07 -0.14

5-2.One-DLIBJ公社債オープン(短期コース)

標準偏差 1年 3年 5年
One-DLIBJ公社債オープン(短期コース) 0.1 0.42 0.38
カテゴリ平均 1.39 1.95 1.81
シャープレシオ 1年 3年 5年
One-DLIBJ公社債オープン(短期コース) 3.46 0.22 0.18
カテゴリ平均 -0.08 0.07 -0.14

5-3.日興-年金積立 日本短期債券オープン (愛称:DC日本短期債券オープン)

標準偏差 1年 3年 5年
日興-年金積立 日本短期債券オープン 0.13 0.27 0.27
カテゴリ平均 1.39 1.95 1.81
シャープレシオ 1年 3年 5年
日興-年金積立 日本短期債券オープン -0.46 -0.68 -0.83
カテゴリ平均 -0.08 0.07 -0.14

まとめ

投資信託はいくつかのリスクを持っており、運用にはリスクの理解と管理が必要です。

リスク分析の方法として、ベンチマークを基準としたリターンの測定と、標準偏差、シャープレシオを活用しリスクとパフォーマンスの成果を確認します。標準偏差やシャープレシオの数値はファンドの特性やリスクを把握するのに、有効な数値です。投資信託のパフォーマンスの確認として有効に活用し、運用に役立てましょう。

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