インフレ率と為替の関係性は?為替変動要因や物価の影響、経済理論と実態など
モノやサービス全体の値段が、継続的に上がっていくこと(お金の価値が下降していること)をインフレーション、略してインフレといいます。
インフレになると、これまでと同じ生活を続けていくために、よりたくさんのお金が必要になります。身近な物で言うと、食品の価格が上昇し、給料がこれまでと変わらなければ、国民は大きなダメージを受けることにもなりかねません。デフレはこの逆で、物価が下降し、お金の価値が上昇している状態です。
このような物価の変動は、為替レートにも大きく影響を与えますし、為替レートからも大きく影響を受けます。たとえば、物価が上昇すれば、その国の通貨価値が下落するので為替レートも安くなります。すなわち、日本でインフレが起きると、理論的には外貨との交換の比率である為替レートは円安に動きやすくなるのです。
反対に、日本がデフレになれば円高・ドル安になります。ただし、これはあくまで理論的なもので、実際に為替レートがその通りに動くことはありません。インフレが発生したその先に、インフレを抑えるために中央銀行の利上げが予想されるのであれば、インフレ減退や高金利国への資金流入などにより、通貨高となることもあります。
今回は、インフレと為替の関係について解説していきます。
目次
1.為替レートの変動要因
一般的に、ある国にとって良くないと思われることが起きると、その国の通貨が売られ、為替レートは下落します。簡単に以下に図で示した通り、例えば、「経済成長率が下がった」「失業率が悪化した」「財政状況が悪化した」「テロが発生した」などといったことが起きると、その国の通貨が売られ、為替レートが下落します。
A国 | 資金移動⇒ | B国 |
---|---|---|
・貿易赤字 | ・貿易黒字 | |
・経常赤字 | ・経常黒字 | |
・低金利 | ・高金利 | |
・インフレ | ・デフレ | |
・景気が悪い | ・景気が良い | |
・政治が不安定 | ・政治が安定 | |
=通貨安 | =通貨高 |
しかし、為替レートは国同士の強弱によって水準が決まってきます。したがって、A国がインフレに陥っていたとしても、インフレの絶対水準によってA国の通貨が売られるわけではなく、A国よりも物価が低いB国の存在があってはじめて、A国の通貨は売られていくのです。
また、為替レートは将来の事象を織り込む形で水準が決まってきます。したがって、仮に現時点でA国がインフレだとしても、将来的に中央銀行の利上げによりインフレが抑制されると予想されるのであれば、むしろデフレを織り込んで買われていくことがあります。
2.為替レートと物価の関係
次に、物価の動きで為替レートがどう変わっていくのか考えてみましょう。
2-1.物価から求められる為替レートの理論値
例えば、日本とアメリカで全く同じハンバーガーを購入できるとします。
- 1ドル=100円の場合
日本では100円で1個のハンバーガーを買うことができ、アメリカでは1ドルで1個のハンバーガーを買うことができます。 - 日本の物価が上昇し、日本のハンバーガーが120円になった場合
日本では120円を出さないと1個のハンバーガーを買うことはできませんが、アメリカでは1ドルで1個のハンバーガーを買うことができます。
全く同じハンバーガーという前提ですから、120円と1ドルが同じ価値ということになります。つまりハンバーガーの価値からみた場合は、1ドル=120円の為替レートが妥当な水準ということになります。これは、円の価値が低くなった(100円で買えていたのに120円ではないと買えなくなった)ということで、為替は「円安」になったということです。これがいわゆる「ビッグマック指数」の考え方です。
2-2.インフレになると通貨安になる理由
理論的には、国内の物価が上昇したら「通貨安」、逆に国内の物価が下降したら「通貨高」になると言われていますが、果たして実際の経済活動の中でそのようになるのでしょうか。以下に具体的な例をいくつか挙げてみます。
例えば日本国内でインフレになってモノの値段が上がると、相対的にお金の価値が下がります。これまで1,000円で買えたものが、1,200円に値上がりしたとすると、同じものを買うためにたくさんのお金を払うので、円の価値は下がっているといえます。円の価値が下がると、円と外貨を交換するときの比率である為替レートにおいても円の価値が下がるため、円安の原因になります。
また、インフレには、良いインフレと悪いインフレがあります。良いインフレは、景気が良くて物価が上がるインフレです。景気が良いとモノがよく売れるため、需要が供給を上回り、モノの値段が上がってインフレになるのです。景気が良いときは給与も上がりやすいため、モノの値段が上がっても、それほど気にならないかもしれません。
一方、悪いインフレは、例えば原材料の値上がりなどで、モノを作るための費用が高くなり、その結果、モノの値段が上がるインフレです。輸入の割合が高い国は、通貨安により輸入材料の値段が上がれば、その分、企業のコストは増え、利益は減ります。
もし、国内の給与が増えていないなかで、企業が利益を上げるために商品の値段を上げると、生活は圧迫されてしまいます。そうなると国内景気が悪化して通貨は売られていきます。
また、通貨安になると海外では自国の製品が安くなり買われやすくなります。日本のように海外に輸出をする自動車メーカーなどが経済的に大きな割合を占めている国では、輸出が増えて企業の業績があがると景気が良くなります。景気がよくなると、給料も上がり、モノがよく売れてインフレが起きやすくなります。
一方で、輸入企業にとっては、輸入商品の値段が高くなり(仕入れるために円を沢山支払わなければならない)、インフレの原因になります。
2-3.インフレでも通貨安にならない事例
一般的に物価の上昇によって、将来的に金利の上昇が見込まれる場合は、むしろ通貨高になることがあります。物価の上昇が起こるときは、お金の価値が下がっている状態であると言えます。消費者はお金を持つよりも物を持つほうが価値を見いだせるため購買意欲が高まると考えられ、資金需要が高まる一方で貯蓄など資金の供給は減り、金利が上がると考えられます。
金融政策も購買意欲とインフレを抑えるために、物価上昇時には引き締め(=金利上昇)に動きます。したがって、市場のマネーは高金利の方に流れる性質がありますので、通貨高になります。
3.実質金利とは
下記の計算式の通り、本来的にインフレ率上昇自体は、実質金利低下に伴う通貨安を示唆しているといえます。
名目金利 - インフレ上昇率 = 実質金利
この計算方法に則って考えてみると、インフレ率の上昇以上に名目金利が上昇すれば、実質金利が上昇し、通貨高になるということです。つまり、名目金利上昇またはインフレ率上昇のどちらが強いかが、為替相場の評価を決めることになるのです。
例えば5月の米CPIの急上昇の局面では、米実質金利急低下に伴う日米の実質金利差縮小により、理論的には米ドル/円は下落してもおかしくありませんでした。ところが、実際は米ドルが急騰しました。
これは、予想以上のインフレ率の上昇を受けて、利上げなどを織り込む形で名目金利がインフレ以上に上昇に向かう可能性が考慮されたのか、もしくは、今回のインフレ率上昇はあくまで一時的なものであり、すぐに上昇率は縮小に向かう可能性を織り込んだか、のどちらかが原因であり、一概にインフレ=通貨安とはならないことがお分かりいただけたのではないでしょうか。
まとめ
2021年後半に向けては、米国を中心としたインフレ率が相場の中心テーマとなってきそうです。インフレや為替変動の要因はひとつだけではなく、複数の要因が影響しあっているので、単純な理論値に当てはまることはないでしょう。
何故なら、インフレが起こると物価が上昇して通貨価値が下がってしまう為、バランスを整えようとする為に中銀が金利を上げて通貨価値を上げる対策をしてしまうからです。そうすると、高金利通貨を買いたいといった人が増えるため、高金利通貨狙いを招きやすくなります。表向き、中銀は「為替レートは市場に任せている」というスタンスを取っていますが、為替政策というのは国の施策と密接なつながりがあるものなのです。
インフレ、金利上昇、購買力上昇、様々な要因のなかで、それのどれが将来最も連想されるかによって、通貨の強弱は決まってくるのです。
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Source: 仮想通貨の最新情報BTCN | ビットコインニュース
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