世界の投資家64%が 「2021年に不動産投資額を前年より増やす」と回答、CBRE「投資家意識調査 2021」

欧米では経済正常化への動きが顕在化する一方、日本では新型コロナウイルスのデルタ型変異株の感染拡大への懸念が解消されない。不動産投資への影響について、事業用不動産サービスのシービーアールイー(CBRE)はレポート「ビューポイント 海外投資家との比較で見た日本人の不動産投資戦略」(6月16日発表)で、国内外の投資家の意識を対比させている。

CBRE は毎年、世界の投資家に対して投資戦略に関するアンケート調査「CBRE INVESTOR INTENTIONS SURVEY 2021」(IIS)を実施している。米州、欧州・中東・アフリカ(EMEA)、アジア太平洋地域(APAC)の3つの投資対象地域で分類し、各地域の投資戦略の特徴を分析。今回のレポートでは、IISの結果から日本の投資家や投資市場にとって特に重要とみられるポイントを選んで考察した。

世界の投資家の64%が 「2021年に不動産投資額を前年より増やす」と回答しており、特に米州で同回答を選択した投資家は全体の70%と3地域の中で最も高い。コロナ禍収束後の景気回復への期待が投資意欲を後押ししていると考えられる。21年第1四半期の世界の投資額は対前年同期比31%減の1840億USドル(19.5兆円)。CBREは、21年の世界の不動産投資総額は前年に比べて約20%増加すると予想している。日本については「コロナ禍の長期化による影響に注視する必要があるものの、海外投資家がけん引役となって2020年の投資額を押し上げる可能性もある」にとどまった。

調査では、投資判断の際の基準の一つとしてESG(環境・社会・ガバナンス)を採用している不動産投資家の比率は、EMEAが66%と最も高く、次いで米州64%、APAC49%となった。一方、日本の投資家は28%と、他の地域を大きく下回っている。ただしESGの採用を予定している、もしくは検討中と回答した投資家は53%を占め、今後拡大していく可能性は高い。

主要なアセットタイプの取引利回りが低下する中、より高い利回りが期待できるオルタナティブ投資に不動産投資家は注目している積極的に投資したいオルタナティブ投資の対象として、米州ではトップに「不動産債権」が選ばれたのに対し、EMEAおよび日本では「学生寮」、APACでは「データセンター」が選ばれた。各地域で回答が分かれたのは、それぞれの地域における各アセットタイプの流動性や成長性などの違いを反映していると考えられる。

日本の調査で最も回答率が高かった学生寮は、運営会社へのマスターリースで安定した収益が期待できることや、開発投資においても市場に参入しやすい点などが評価されていると考えられる。データセンターや冷凍・冷蔵倉庫については、事業者自身による開発やBTS開発が多く、売買市場で検討できる既存案件が少ないことが相対的な関心の低さの主因のようだ。

ただし、データセンターについては海外事業者と国内投資家とのJVによる開発が徐々に増えており、20年以降は海外投資家が出資するケースもみられ始めた。こうした動きから、同社は「海外投資家の存在感が増すことで、現在は黎明期にある市場の拡大が加速する可能性がある。今後は日本のプレイヤーも徐々に増えてくる」と予測している。

日本からのアウトバンド投資にあたって、最も魅力的な地域として、日本の投資家の41%が北米を選んだ。北米における投資家の不動産投資戦略は、前年と変わらず物流施設と住宅が上位を占めたものの、いずれも回答率は前年に比べて減少。一方で、オフィスとホテルの回答率が前年より上昇した。両アセットの価格下落に対する期待が背景にあると考えられる。オフィスやホテルについては、9割超の投資家がコロナ前の価格からのディスカウントを想定しているといい、日本の投資家も、これらのアセットタイプを割安で取得できる可能性がありそうだ。

2016年から2020年の5年間で、日本のアウトバウンド投資におけるオフィス投資額の比率は61%を占めている。オフィス投資を今後も戦略の中心に据える日本の投資家が多いとみられるものの、オフィス需要がコロナ前の水準に戻るかは現地の投資家の多くが懐疑的で、同社は「日本以上にオフィス需要が変化する可能性には留意すべき」とする。

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