新築アパート建築、工法の違いは?選び方やメリット・デメリットも
アパートを新築する際には、工法の違いやメリット・デメリットを把握しておき、自身の経営スタイルに合った選択することが大切です。長く経営していくことを考え、どの構造・工法で建てるのがいいのか、知識を身につけておきましょう。
今回は、アパートの工法の違いについて解説していきます。また構造との違いも簡単に紹介します。
目次
- 建築物の工法とは
- 木造アパートで用いられる工法
2-1.在来工法
2-2.プレハブ工法 - 鉄骨造のアパートで用いられる工法
3-1.ラーメン構造(工法)
3-2.鉄骨パネル工法 - 鉄筋コンクリート造(RC造)のアパートで用いられる工法
4-1.ラーメン構造(工法)
4-2.壁式プレキャスト(PC)工法 - まとめ
1 建築物の工法とは
建築物について調べている際、「工法」と「構造」という用語がよく出てきます。同じような意味で使われていることもありますが、厳密には異なるものです。簡単にまとめると下記のようになります。
- 構造:建物を支える骨組みのこと。建築物の強度は構造によって異なり、構造体の素材によって「木造」「鉄骨造」「鉄筋コンクリート造(RC造)」などがある
- 工法:骨組みから建物の形にしていく方法のこと。「軸組工法」や「壁式(壁組)工法(プレハブ工法)」など
軸組工法は柱と梁で建物を支える方法で、壁式工法は壁で建物を支える方法になります。構造によってその名称が違います。
構造 | 軸組工法 | 壁式工法 | 木造 | 在来工法 | プレハブ工法、ツーバイフォー工法、木質パネル工法、木質ユニット工法 |
---|---|---|
鉄骨造 | ラーメン構造(工法) | 鉄骨パネル工法、鉄骨ユニット工法 |
鉄筋コンクリート造 | ラーメン構造(工法) | 壁式プレキャスト(PC)、壁式工法 |
それぞれの工法の特徴について詳しく見ていきましょう。
2 木造アパートで用いられる工法
ハウスメーカーが独自の工法を開発したり、独自の名称をつけていることもありますが、その基本となるのが「在来工法」と「プレハブ工法」の2つの工法になります。それぞれに詳しく見ていきましょう。
2-1 在来工法
古くからある伝統的な工法として広く知られているのが在来工法です。建物の土台となる基礎を造り、そこから垂直に柱を建て、水平の梁を組み合わせてから、床や壁などを造っていきます。木造軸組工法とも呼ばれます。
工程は主に下記のようになります。
- コンクリートなどで基礎を設ける
- 基礎に柱を立てる
- 柱に梁などを組み合わせて構造体を造る
- 屋根を載せる
- 壁や床、窓などを造る
大工さんが現場で活躍する工法で、設計の自由度が高く、木造の注文住宅などはこの在来工法で行われます。代表的なメリットとデメリットは下記のようになります。
メリット | デメリット |
---|---|
・設計の自由度が高い ・地域に合わせた建物が建築できる ・職人による施工になるため、品質が高い |
・現場での作業が多いため、工期が長い ・コストが高い ・品質の一定化が難しい |
2-2 プレハブ工法
建築に用いる部材をあらかじめ工場で生産・加工をし、それを現場に運んで組み立てる工法です。「事前に」という意味の「プレ」と、製造や組み立てという意味の「ファブリケーション」を組み合わせて、「プレハブ工法」と呼ばれています。主に壁で支えていく構造で、「壁式工法」のひとつです。
工場での生産ラインが決まっているため設計の自由度が低くなりますが、その分、品質は比較的に均一化されており、コストも安くなります。
木造の場合、床や壁などを構成するパネルを組み合わせていきますが、このパネルが2インチ×4インチの部材と合板で造られている場合はツーバイフォー工法(枠組壁工法)と言われます。
箱型のユニットで家を支えているため耐震性のほか、気密性、断熱性、防音性、防火性なども優れているのが特徴です。メリットとデメリットは下記のようになります。
メリット | デメリット |
---|---|
・工場での生産・加工なのでコストが安い ・品質が高く、供給数も多い ・工期が短い |
・設計の自由度が低い ・工場が必要なので、対応できるのは大手企業に限られる ・内部結露が発生しやすく、降雨対策や腐食対策が必要になる ・増改築が難しい |
3 鉄骨造のアパートで用いられる工法
鉄骨造は骨組みに鉄骨が用いられ、その鉄骨によって「軽量鉄骨造」と「重量鉄骨造」に分かれます。2階建てのアパートでは軽量鉄骨造、3階建て以上から重量鉄骨造が用いられることが通常です。この鉄骨造の軸組工法はラーメン構造(工法)、壁式工法は鉄骨パネル工法が主流になります。
3-1 ラーメン構造(工法)
鉄骨造におけるラーメン構造(工法)とは、鉄骨の柱と梁で建物を支える構造です。木造ではこの部分が木でしたが、鉄骨で支えているため建物の強度はより高くなっています。ラーメンとはドイツ語で「額縁」や「枠」という意味があります。
通常、柱と柱の間などにコンクリートスラブ(床材)を載せて床を造ります。その上にフローリングやカーペットなどを貼っていくことで部屋を構築していきます。それではメリットとデメリットを見てみましょう。
メリット | デメリット |
---|---|
・設計の自由度が高い ・室内空間を広くすることができる ・木造よりも強度がある |
・室内に柱や梁が出っ張ってしまう ・横からの力に弱く、耐震性は高くない ・工期が長い |
3-2 鉄骨パネル工法
鉄骨造で用いられる壁式工法は、鉄骨パネル工法や鉄骨ユニット工法などと呼ばれます。壁の中に鉄骨の骨組みを埋めた耐力壁を工場で生産し、組み立てていきます。木造よりも壁が少なくてもいいため、間取りの自由度は木造のプレハブ工法よりも上がります。
メリットとデメリットは下記のようになります。
メリット | デメリット |
---|---|
・工場で生産することが多いため、品質が比較的に均一化されている ・工期が短い ・コストが安い |
・窓やドアの位置や大きさなど部屋の構造が制限される ・リノベーションがしづらい ・ラーメン工法に比べると設計の自由度は低い |
4 鉄筋コンクリート造(RC造)のアパートで用いられる工法
鉄筋コンクリート造の建物は、鉄筋を配した型枠にコンクリートを流し込んで造る構造体によって建てられます。頑丈な造りが大きな特徴で、一戸建て住宅にも用いられますが、アパートでは4階建て以上の建物で見られるようになります。
鉄骨造と同様に軸組工法はラーメン構造(工法)ですが、壁式工法は壁式プレキャスト(PC)工法と呼ばれる工法が用いられます。詳しく見てみましょう。
4-1 ラーメン構造(工法)
鉄骨造で解説した方法と同じです。ただ柱や梁、床スラブが鉄筋コンクリートで造られています。この構造体に壁などを造っていき、部屋を構成していきます。
ラーメン構造(工法)は主に高層階の建物で多く見られる工法で、低層階のアパートでは次の項目で紹介する壁式プレキャスト工法や壁組工法が用いられることが多くなります。
メリット | デメリット |
---|---|
・耐震性が優れているため丈夫な部屋を提供できる ・設計の自由度が高い ・耐火性に優れており、火事などの災害にも強い |
・室内に柱や梁が出っ張ってしまう ・増改築は難しい ・コストが高い |
4-2 壁式プレキャスト(PC)工法
5階以下の建物で採用されることが多い壁式プレキャスト工法は、壁式工法のひとつです。鉄筋コンクリートで壁や床、階段などの主要部材を造り、現場で組み立ていく方式です。
現場作業が少ないため、工事中の騒音や産業廃棄物の排出も減らすことができます。また工場で主要部品が造られるため、製品の品質も均一であるメリットがあります。
メリット | デメリット |
---|---|
・ラーメン工法よりは価格が安い ・耐火性に優れており、火事などの災害にも強い ・室内の出っ張りがない |
・設計の自由度が低い ・地上5階建て以下に限られている ・増改築が難しい |
このほか、鉄筋コンクリート造では、鉄筋コンクリートで型枠を造る際に柱を設けずに壁と床スラブのみで建物を構成する壁式工法も行われています。
まとめ
アパートを新築する際、構造と工法をすぐに決めることは難しいので、まずは構造から決めると進めやすいでしょう。例えば、長く経営することを目的に耐震性や耐久性を求めるなら鉄筋コンクリート造をまずは選び、次に工法を選んでいくという流れです。
一方、コストを抑えたいのであれば、木造で壁式工法にするといったように、構造と工法のそれぞれのメリットとデメリットを組み合わせて、ご自身にとってふさわしいアパートの構造と工法を選んでいきましょう。
この構造と工法の知識があれば、アパートを建築するアパートメーカーや施工会社などの違いも大まかに判断しやすくなります。新築アパートを建設する際は、構造や工法の違いも参考にしてみましょう。
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