不動産の相続、相続手続きを代行してもらう手順は?代行費の相場や注意点も
不動産の相続は戸籍謄本・印鑑証明書などの取得や申請書作成、法務局での移転登記など手続きが煩雑であるため、これらの作業に対して「代行をお願いしたい」という方も少なくありません。
不動産相続は司法書士事務所又は銀行・信託銀行へ相談することで登記手続きを代わりに行ってもらうことが可能です。
本記事では、相続の流れと不動産相続、手続きを代行してもらう手順と費用の相場、不動産以外の相続手続き代行の依頼先について解説していきます。
目次
- 不動産を含む相続の流れ
- 不動産の相続手続きを代行してもらう手順と代行費用の相場
2-1.司法書士事務所と銀行・信託銀行のどちらかを選ぶ
2-2.複数の事務所(又は金融機関)を比較・検討する
2-3.不動産相続の代行を依頼する - 他の相続手続きの代行は誰に依頼すべき?
3-1.弁護士
3-2.税理士
3-3.行政書士 - まとめ
1.不動産を含む相続の流れ
不動産を含む相続の大まかな流れは以下の通りになっています。
- 被相続人が亡くなり相続開始
- 遺言書の有無を確認
- 保管されている場所によっては遺言書の「検認」手続き
- 遺産・相続人の調査、把握
- 相続放棄・限定承認(3ヶ月以内)
- 被相続人の準確定申告(4ヶ月以内)
- 遺産分割協議・遺産分割協議書の作成
- 遺産の分割
- 相続税の申告・納付
場合によっては他にも手続きが必要になることがあります。例えば遺産分割協議において相続人に未成年者・判断能力が乏しい方(認知症・知的・精神障害)がいる時には家庭裁判所に申し立て、後見人を選任しなければならないなどのケースがあるため、注意しましょう。
不動産の相続は、必要書類を集め申請書を作成し法務局で所有権移転登記の手続きを行います。自分で行う場合には、法務局に書類を持参・郵送・オンラインの3つの方法があります
銀行・信託銀行に代行を依頼する際には、銀行が窓口となり提携している司法書士が手続きを行う事になります。所有者以外に不動産の登記手続きを代わりに行えるのは司法書士のみであるためです。
相続税が基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)を超えた場合には相続税の計算・申告・納付が必要となります。税計算や確定申告の代行を希望する際には、税理士に依頼します。
2.不動産の相続手続きを代行してもらう手順と代行費用の相場
司法書士が登記手続きを行い、銀行・信託銀行は窓口となり提携先の司法書士事務所に外注する形になります。人件費がかさむため、銀行・信託銀行は費用が高めになっています。
- 司法書士事務所と銀行・信託銀行のどちらかを選ぶ
- 複数の事務所(又は金融機関)を比較・検討する
- 不動産相続の代行を依頼
2-1.司法書士事務所と銀行・信託銀行のどちらかを選ぶ
代行の依頼先である司法書士事務所又は銀行・信託銀行のどちらかを選択します。銀行・信託銀行は司法書士事務所よりコストが高くなっていますが、自分で複数の司法書士事務所を比較・検討する必要がない点がメリットとなります。
また預貯金の名義変更や、相続人と相続財産の調査・把握など他の相続手続きも代行が可能です。
「不動産相続の手続きのみを行ってもらいたい」「費用をおさえたい」という方は司法書士事務所を選ぶと良いでしょう。
2-2.複数の事務所(又は金融機関)を比較・検討する
司法書士事務所を選んだ場合、複数の事務所を比較・検討しましょう。司法書士は「登記」の専門家ですが、登記は主に「不動産」と「法人・商業登記」の2種類があります。
司法書士によって得意分野・不得意分野がありますので、不動産登記の経験が豊富な司法書士に依頼する事でスムーズに手続きができる可能性が高くなります。
銀行・信託銀行に依頼する方は金額やサービス内容を比較・検討しましょう。一定額を預金している場合には手数料が安くなることもありますので、被相続人(亡くなった方)が取引のあった金融機関を中心に調べていきましょう。
2-3.不動産相続の代行を依頼する
不動産相続の代行を依頼します。多くの場合、法務局への申請に加え被相続人の戸籍謄本や相続人全員の戸籍謄本などの必要書類の収集も併せて代行して貰えます。司法書士に依頼したケースと銀行に依頼したケースの2つのパターンをそれぞれみて行きましょう。
司法書士事務所
日本司法書士会連合会が行った「2018年司法書士の報酬アンケート結果」によると、相続の所有権移転登記の報酬の目安は以下の通りになります。
相続の条件やエリアに費用が大きく前後していることがわかります。おおよその目安として、参考としてみましょう。
銀行・信託銀行
手数料は相続財産の評価額によって費用が異なる金融機関が多く、価額の0.5~2.5%程度となっています。不動産の場合は、固定資産税評価額を基準とするケースが多くなっています。
3.他の相続手続きの代行は誰に依頼すべき?
相続手続きの代行は、職種によって担当できる範囲が異なります。例えば弁護士は相続人同士のトラブル解決や法律に関する相談など法律分野が主で、税理士は相続税の申告、税務相談が中心になります。
遺言書があり、内容を実行して貰う際には家庭裁判所に「遺言執行者」として選任手続きを行います。以下3つの職種別に、相続で代行できることを詳しく見ていきましょう。
- 弁護士
- 税理士
- 行政書士
3-1.弁護士
弁護士は法律の専門家となりますので、相続におけるトラブル解決や法的に有効な遺言書や遺産分割協議書の作成などの代行が出来ます。場合によっては遺言執行者となり遺言の執行、相続人・相続財産の調査、相続放棄・限定承認の手続きなども可能となります。
ただし、不動産の名義変更(所有権移転登記)、相続税の申告は行う事ができません。
日本弁護士連合会が弁護士を対象に行ったアンケート調査「市民のための弁護士報酬の目安」によると、公正証書遺言の作成は10~20万円程度、遺言執行者になる際の手数料は40万円前後が27.1%、次いで60万円前後、20万円前後が18%台となっており内容によって幅があることが分かります。
弁護士費用は「着手金」「報酬金」「手数料」「法律相談料」「顧問料」「日当」「実費」などがあります。初めに総額でどのくらいの金額がかかるかを聞いてみましょう。
3-2.税理士
相続税に関しては税理士事務所に依頼します。不動産は相続時点で利用できる税制度も豊富なため、確定申告の手間を省けるだけでなく、税理士費用を支払ってもなお金銭的なメリットがあるケースも少なくありません。
税理士報酬は相続財産の評価額と比例する事務所が多くなっていますが、税理士事務所によって詳しい報酬は異なります。複数の事務所へ相談し、依頼したい内容とサポートしてもらえる範囲を含めて、比較検討してみると良いでしょう。
複数の税理士を効率的に比較するのであれば、税理士紹介サイトを利用して、不動産の相続税申告に強い税理士を紹介してもらうという方法もあります。
税理士紹介サイトでは、コーディネーターが、相談者のニーズに合った税理士をピックアップし、面談を調整してくれます。税理士との依頼内容の調整や、料金交渉などもコーディネーターに任せることが可能です。
税理士ドットコム
税理士ドットコムは、全国5,900名の税理士の中から無料で希望に沿った税理士を紹介してもらえるウェブサービスです。複数の税理士を比較することができるうえ、「費用はいくら?」「どんな税理士を選ぶべき?」といった税理士を選ぶ際の相談も可能となっています。
不安のある方は、このようなサービスの利用を検討するなどして、手間やリスクを省くことも選択肢の一つと言えるでしょう。
3-3.行政書士
行政書士は官公庁や役所などに提出する書類作成、代行手続きが主な業務です。
相続の際にできることは、遺言書・遺産分割協議書の作成や相続人や相続財産調査のための書類(戸籍謄本・住民票・登記事項証明書など)の取得、書類提出や代行申請などとなります。
日本行政書士会連合会が行った2020年の「報酬額統計調査」の結果によると、相続に関する費用の相場は下記の通りになります。
業務内容 | 平均額(単位:円) |
---|---|
遺言書の起案及び作成指導 | 68,727 |
遺産分割協議書の作成 | 68,325 |
相続人及び相続財産の調査 | 63,747 |
相続分なきことの証明書作成 | 38,405 |
遺言執行手続 | 384,504 |
あくまで平均額となり、遺産額によって異なる可能性があります。おおよその目安として参考にしてみましょう。
まとめ
不動産相続の手続き代行は、司法書士事務所又は銀行・信託銀行に依頼する事が可能です。
司法書士事務所の費用の相場は約6~8万円、金融機関は不動産の固定資産税評価額の0.5~2.5%程度となっています。
司法書士事務所の方が費用はおさえられますが、他にも相続の手続きをお願いしたい場合には金融機関の方がスムーズにできる可能性もあります。代行依頼したい範囲に合わせて相談を検討してみると良いでしょう。
なお、不動産相続では利用できる税制度も多く、税理士へ代行依頼をすると手間を省けるだけでなく適切な制度利用をすることにもつながります。それぞれの分野にあった専門家の利用を検討しつつ、効率よく相続手続きを行ってみましょう。
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