不動産投資型クラウドファンディングの法規制は?不特法について詳しく解説
不動産特定共同事業法(不特法)とは、不動産投資型クラウドファンディングや不動産小口化商品に影響する法律です。
不特法は投資家保護を目的とした法律ですが、法改正により規制緩和が行われ、近年、不動産投資型クラウドファンディングのサービスを提供する事業者が増加したという背景もあります。
不動産投資型クラウドファンディングで投資を行う際は、投資判断の際に事業者を見分けるためにも、不特法の内容についても理解し、事業者にはどのような規制があるのか確認しておくことが大切なポイントとなってきます。
本記事では、不動産特定共同事業法(不特法)の内容や制定された理由について解説します。不動産投資型クラウドファンディングでの投資を検討している方、投資を始めている方はご参考ください。
※本記事は2021年11月12日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報については、国土交通省「不動産特定共同事業等について」をご参照のうえ、投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- 不動産特定共同事業法(不特法)とは
1-1.不特法が制定された理由
1-2.不特法で運用される投資の種類
1-3.第二種金融商品取引業登録が不要 - 不動産投資型クラウドファンディングと不特法の関係
2-1.不特法改正で不動産投資型クラウドファンディングサービスが増加
2-2.不特法事業者の種類 - 小規模不動産特定共同事業者とは
- まとめ
1.不動産特定共同事業法(不特法)とは
不動産特定共同事業法(不特法)とは、1995年4月に施行された法律です。不動産特定共同事業の発展や不動産特定共同事業に出資する投資家の保護を目的として制定・施行されました。
不動産特定共同事業とは、不動産会社などが匿名組合契約や任意組合契約などを通じて複数の投資から出資を受け、集めたお金でマンションやアパートなどの収益不動産を取得し、賃貸や売却で得た収益を投資家に分配する事業のことです。
不動産特定共同事業法ができたことで、不動産特定共同事業を行うには国土交通大臣などの許可が必要となっています。
不動産特定共同事業法は、1995年に施行されて以降、2013年、2017年、2019年に一部法改正が行われています。主な改正ポイントは、以下のとおりです。
- 2013年:特別目的会社(SPC)を活用した特例事業の制度を導入など
- 2017年:中小企業でも特例事業者として算入が認められたことなど
- 2019年:不動産特定共同事業法の電子取引業務ガイドラインの制定や不動産特定共同事業法施行規則の改正など
ここからは、不動産特定共同事業法が制定された理由や運用される投資の種類などについて、見ていきましょう。
1-1.不特法が制定された理由
不動産特定共同事業法(不特法)が制定されたのは、投資家を保護するためです。小口化により比較的簡単に不動産投資ができるようになったため、不動産特定共同事業法が施行される前の1980年代は、高額な不動産を分割した不動産小口化商品が生まれ、販売が急増していました。
しかし、1991年にバブルが崩壊したことで、経営基盤が脆弱な事業者の倒産が相次ぎました。事業者が倒産して多くの投資家が大きな損失を負ったことで、法規制の必要性が高まり、投資家を保護することを目的に、不動産特定共同事業法(不特法)が制定されています。
不動産特定共同事業法によって、不動産特定共同事業を運営するには国土交通大臣または都道府県知事の許可が必要となります。許可を得るには、資本金など一定の要件を満たさなくてはなりません。以下は、不動産特定共同事業法の許可を受けるための主な要件です。
不動産特定共同事業法の要件
- 各事業者に必要な資本金額を満たしている
- 宅地建物取引業者免許を受けている
- 不動産特定共同事業契約約款の内容が基準を満たす
- 不動産特定共同事業を営むのに必要な財産的基礎があり、適切に事業を遂行できる人的構成がある
- 事務所ごとに業務管理者(不動産特定共同事業業務で3年以上の実務経験があるなど)を配置している
各事業者の不特法の許可を受けるのに必要な資本金額は、次のとおりです。
- 第1号事業者:1億円
- 第2号事業者:1000万円
- 第3号事業者:5000万円
- 第4号事業者:1000万円
このように、不動産特定共同事業法ができたことで、不動産特定共同事業を運営できるのは健全な事業運営ができると認められた事業者のみとなりました。
1-2.不特法で運用される投資の種類
不動産特定共同事業法で運用される投資の種類には、次のようなものがあります。
- 不動産小口化商品
- 不動産投資型クラウドファンディング
不動産小口化商品とは、特定の不動産を数万円〜数十万円など小口化して投資家に販売し、事業者は不動産を運用して得た収益を出資者に分配します。比較的少ない投資資金で不動産投資を始められ、実際に登記を行うことから不動産を所有できる点がメリットです。
不動産投資型クラウドファンディングは、インターネットを通じて不特定多数の投資家に対して出資を募り、集めた資金で収益不動産を取得して、そこから生まれた収益を投資家に分配します。1口1万円からなど、少額資金で始められるのが不動産投資型クラウドファンディングの特徴です。
ただし、不動産投資型クラウドファンディングは登記を伴わず間接的に不動産投資を行い、投資額に応じた収益を分配する仕組みとなります。2021年11月時点の税法では、不動産所得とはならず雑所得に分類される点に注意が必要です。
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また、不動産特定共同事業契約には、次の3つがあります。
任意組合型
任意組合型とは、不動産特定共同事業者と投資家の間で締結する任意組合契約に基づき運用される商品のことです。投資家と不動産特定共同事業者が組合となり任意組合を組成します。
1口数百万円など高額で運用期間が長い商品が多く、不動産の所有権は組合員(投資家、不動産特定共同事業者)で共有します。不動産小口化商品の多くは、この契約形態となります。
匿名組合型
匿名組合型は、不動産特定共同事業者と投資家の間で締結する匿名組合契約に基づき運用される商品のことです。投資家が匿名組合員、不動産特定共同事業者が営業者となり、匿名組合を組成します。
1口数万円など少額で、運用期間は短い商品が多く、不動産投資型クラウドファンディングサービスの多くがこちらの契約形態になります。不動産の所有権は不動産特定共同事業者に帰属し、投資を行っても不動産は所有しない点に注意が必要です。
賃貸借型
賃貸借型は、投資家が共同出資をして不動産を購入して、事業者と賃貸借契約もしくは賃貸借の委任契約を行い、事業者が不動産の運営管理をして収益を投資家に分配します。賃貸借型の商品はあまり多くありません。
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1-3.第二種金融商品取引業登録が不要
通常、インターネットで出資を募るには、第二種金融商品取引業登録が必要になります。しかし、不動産特定共同事業法における不動産投資型クラウドファンディングは案件組成の規模が比較的小さいため、第二種金融商品取引業登録をしなくても行うことができます。
2021年時点、不動産投資型クラウドファンディングを運営している不動産会社は、大半が不特法に則った運営を行っています。
一方、貸付を行う融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)では、第二種金融商品取引業登録が必須となっており、登録を受けていない業者の募集は詐欺的な商法である可能性があります。このような違いにも注意しましょう。
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2.不動産投資型クラウドファンディングと不特法の関係
不特法が改正され、小規模不動産特定共同事業の創設など、不動産投資型クラウドファンディングを活用しやすい環境整備が行われたことで、不動産投資型クラウドファンディングを提供する事業者は増加傾向にあります。
ここでは、不特法改正と不動産投資型クラウドファンディングサイトの関係や不特法事業者の種類、小規模不動産特定共同事業者について見ていきましょう。
2-1.不特法改正で不動産投資型クラウドファンディングサービスが増加
不動産特定共同事業法は、2013年、2017年、2019年に一部法改正が行われています。
2017年の法改正では、資本金などの要件を緩和する小規模不動産特定共同事業が創設されるなど、事業者が不動産特定共同事業に参入しやすいよう規制緩和が行われました。また、クラウドファンディングを電子取引業務と定義し、一定の規制を設けるなど、今後のクラウドファンディングの発展を見越した環境整備も行われています。
2019年の法改正では、不動産特定共同事業法の電子取引業務ガイドラインの制定や不動産特定共同事業法施行規則の改正、不動産特定共同事業への新設法人参入要件の見直しがあり、不動産投資型クラウドファンディングがより一層活用しやすい環境になっています。
このような法改正を背景に、近年、不動産投資型クラウドファンディングを提供している事業者が増加していると考えられます。
2-2.不特法事業者の種類
不特法事業者の種類は、以下4種類です。
事業者 | 内容 |
---|---|
第1号事業者 | 不動産特定共同事業契約を締結して、契約に基づき運営される不動産取引から得た利益等の分配を行う事業者。必要な資本金は1億円。 |
第2号事業者 | 不動産特定共同事業契約締結の代理、または媒介をする事業者。必要な資本金は1000万円。 |
第3号事業者 | 特例事業者の委託を受けて、不動産特定共同事業契約に基づき運営される不動産取引に係る業務を行う事業者。必要な資本金は5000万円。 |
第4号事業者 | 特例事業者が当事者となる不動産特定共同事業契約締結の代理・媒介をする事業者。必要な資本金は1000万円。 |
3.小規模不動産特定共同事業者とは
小規模不動産特定共同事業者とは、不動産特定共同事業者のうち、比較的規模が小さい事業を扱う事業者のことで、2017年に創設されました。小規模不動産特定共同事業者の主な要件は、以下のとおりです。
- 事業者になるための手続き:主務大臣または都道府県知事による登録
- 資本金:1000万円以上
- 純資産:純資産≧(資本金×90/100)
- 免許:宅地建物取引業
- 投資家から受けられる出資合計額:1億円以下
- 投資家1人あたりの出資額:100万円以下(特例投資家は1億円以下)
小規模不動産特定共同事業者が運営する不動産投資型クラウドファンディングでは、原則的に投資家1人が出資できる金額は100万円以内の制限があります。また、運営会社が投資家から出資を受けることができる金額が合計1億円以内となっています。
小規模不動産特定共同事業については5年の登録更新制が採用されており、運営法人の最低資本金も1,000万円と少額です。
まとめ
不動産特定共同事業法(不特法)は、不動産特定共同事業の発展や投資家保護を目的とした法律です。これまでに数回法改正が行われており、不動産投資型クラウドファンディングを活用しやすい環境整備がなされています。
事業者の参入がしやすくなったこともあり、不動産投資型クラウドファンディングを提供する事業者は増加しています。
投資家は多くのサービスから自分に合った投資先を選ぶことが可能ですが、このような背景を踏まえ、投資を行う事業者を見分けていく重要性も上がっていると言えるでしょう。
今後も法改正の可能性があるため、不動産特定共同事業法(不特法)の動向にも注目しておきましょう。
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