不動産投資の融資が厳しい時の対策は?フルローンを受けるコツも
不動産投資はアパートやマンションなどの収益不動産を運用して家賃収入を得る投資方法です。不動産投資の大きなメリットの一つに、運用対象の不動産を担保に金融機関の融資を受けられるというものがあります。
しかし、融資元となる金融機関では融資に関する審査を行っており、審査に通過できないと融資を受けることができません。このような金融機関の融資姿勢は、各銀行や時期によって異なり、審査基準が厳しいタイミングだと資金調達に難航してしまうケースもあります。
そこで今回のコラムでは、不動産投資の融資が厳しいときに行うべき対策を6つ紹介します。またフルローンを受けるためのコツも解説していきます。
目次
- 不動産投資ローンの融資が厳しい時の対策法
1-1.担保評価が高い物件を選ぶ
1-2.融資前にできるだけ属性を高めておく
1-3.融資審査の資料を適切に用意する
1-4.共同担保を用意する
1-5.複数の金融機関に申し込む
1-6.オーナーとしての実績を積み上げる - 不動産投資でフルローンを受けるためのコツ
2-1.融資に強い不動産会社を選ぶ
2-2.返済原資が豊富にある
2-3.物件価格が低い(融資総額が少ない)物件を検討する - まとめ
1 不動産投資ローンの融資が厳しい時の対策法
不動産投資ではローンを用いた不正が起きることもあり、監督省庁である金融庁がその都度対策を行っています。ローンを活用した不正を防ぐため、2019年に金融庁が発表した「投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果」では、融資のチェックを以前よりも厳格に行っていることが示唆されています。
融資審査が厳しく通過できない時には、まず自身の属性や物件の評価を確認し、基準に満たない部分についは改善していくことが大切です。不動産投資ローンの審査基準とその対策について見て行きましょう。
1-1 担保評価が高い物件を選ぶ
金融機関が不動産投資への融資を実行する際、対象不動産に抵当権を設定します。抵当権とは、返済が滞った時に差し押さえを行える権利のことで、不動産投資においては不動産がその対象となります。
金融機関が融資を実行する際、返済が滞った場合に差し押さえを実行してどの程度の資金を回収できるのか、という物件の担保評価を行います。個別の判断は金融機関が行いますが、高い担保評価を得るためには主に下記のようなポイントが重要となります。
- 築年数が浅い
- 土地値が高い
- 利回りが高い
- 交通アクセスが優れている
- 近隣に競合物件がない
- 賃貸需要がある好立地
- 入居者ニーズに合わせた仕様・設備
- 地域特性に合わせた間取り
これらの条件が複数揃っていると、空室リスクなどが軽減されることが想定され、賃貸用物件としての評価が高くなります。そのため審査基準をクリアする可能性があるのです。
1-2 融資前にできるだけ属性を高めておく
融資審査は、賃貸用物件として物件の事業性を評価する他に申込者の属性を審査し、返済能力があるかどうか判断します。
この属性とは、主に下記の項目を指します。
- 年収
- 年齢
- 勤務先
- 勤務年数
- 雇用形態
- 資産の状況
- 借入金の状況
例えば、「年収が多い」「勤続年数が長い」といったことはプラスに判断され、審査に通りやすくなります。
ただし、属性を高めるために勤務先や年収を変えることは、すぐには難しいものです。そこで属性を高める第一の方法として、借入金を少しでも減らしておくことを検討してみると良いでしょう。
借入金が多いと収入に対する返済比率が高いと見なされ、融資審査でマイナスポイントとなります。融資を申し込む数カ月前から、クレジットカードの利用を控えたり、不必要なものについては解約しておくといったことも検討しましょう。
1-3 融資審査の資料を適切に用意する
金融機関で融資審査をしてもらうには、融資対象となる物件や申込者に関する書類を提出することになります。新築物件や中古物件で異なりますが、下記の書類が代表的なものです。
- 事業計画書
- 物件概要書(販売図面)
- 物件の家賃表(レントロール)
- 物件の土地・建物の登記情報、公図、建築確認済証
- 物件の売買契約書・重要事項説明書
- 直近3年分源泉徴収票や確定申告書・決算書
- 運転免許証、健康保険証など本人確認書類
- 履歴書
- 借入金がある場合はその返済予定表
- 預金通帳などの金融資産の確認資料
- 納税証明書
これらの書類に漏れがないようにするほか、事業計画を綿密に立てて、事業内容と数字の根拠、実現性などを適切に盛り込むようにしましょう。
金融機関では、この事業計画に基づいて物件調査を行いますが、事業計画が適切であれば申込者に対する評価アップも期待できます。
1-4 共同担保を用意する
共同担保とは、1件の融資に対して複数の物件に抵当権を設定することです。不動産投資で言えば、購入するアパートやマンションの他に、所有する自宅などの不動産にも抵当権を設定することになります。
主に購入予定の物件について担保評価が足りない場合に行われますが、自己資金が少ないケースや融資審査をクリアする目的で共同担保を用意することもあります。
融資元の金融機関にすると、融資対象以外の不動産に抵当権が設定できるのであれば、ローンの返済が滞っても支払い能力があるという評価ができます。そのため審査をクリアする可能性があるのです。
ただし、共同担保を設定した場合、ローンの返済が滞るとその他の物件についても差し押さえの対象となります。また、単一の物件・属性では担保評価が足りていないことも意味し、想定以上にハイリスクな運用となるケースもあります。共同担保の設定を行う際は、投資金額が大きくなることにも留意し、慎重に判断を行いましょう。
1-5 複数の金融機関に申し込む
金融機関の審査基準はそれぞれで異なりますので、複数の金融機関に申し込むことで審査をクリアできる可能性があります。「A銀行では断られたが、B銀行ではパスした」というケースも少なくありません。
また金融機関といっても、銀行だけではなく、信用金庫や信用組合など目的も異なるさまざまな種類があります。そのため銀行以外にも、信用金庫や信用組合などに分けて申し込むのも一つの方法と言えるでしょう。それぞれの特徴は下記の表にまとめています。
区分 | 信用金庫 | 信用組合 | 銀行 |
---|---|---|---|
根拠法 | 信用金庫法 | 中小企業等協同組合法協同組合による金融事業に関する法律(協金法) | 銀行法 |
設立目的 | 国民大衆のために金融の円滑を図り、その貯蓄の増強に資する | 組合員の相互扶助を目的とし、組合員の経済的地位の向上を図る | 国民経済の健全な発展に資する |
組織 | 会員の出資による協同組織の非営利法人 | 組合員の出資による協同組織の非営利法人 | 株式会社組織の営利法人 |
業務範囲(預金・貸出金) | 預金は制限なし。 融資は原則として会員を対象とするが、制限つきで会員外貸出もできる(卒業生金融あり) |
預金は原則として組合員を対象とするが、総預金額の20%まで員外預金が認められる。 融資は原則として組合員を対象とするが、制限つきで組合員でないものに貸出ができる(卒業生金融なし) |
制限なし |
(※引用:一般社団法人全国信用金庫協会「信用金庫と銀行・信用組合との違い」)
このほか、日本政策金融公庫の創業融資制度を活用するなど、民間の金融機関ではなく政府系の金融機関で融資を得る方法もあります。
1-6 オーナーとしての実績を積み上げる
融資申込者の属性には資産状況も含まれており、どのような資産を保有しているのかも審査項目になります。この時に複数の物件を所有している、一棟マンションを長年経営しているといった不動産賃貸業としての実績があれば、評価が高くなる可能性があります。
そのため価格や規模が小さな物件で、不動産投資家としての実績を積み上げておく方法もあります。
金融機関の融資審査は、融資する資金の返済能力があるかどうかが判断材料の一つになります。そのため、小さな額でも融資を獲得して全額を返済していれば、返済能力が高いと判断される可能性があります。
2 不動産投資でフルローンを受けるためのコツ
フルローンとは、物件価格や初期費用などを含めた購入代金のすべてを融資してもらうことです。このフルローンは物件価格に対する融資比率が高いため、金融機関の融資審査はさらに厳しくなります。
これまで紹介してきたような条件をクリアすることに加えて、審査をパスするためのコツもありますので、ここで紹介します。
2-1 融資に強い不動産会社を選ぶ
金融機関は融資申込者の属性を判断しますが、その紹介者である不動産会社との信頼関係も重要なポイントとなります。例えば、それまで数多くの融資申込者を紹介してくれ、取り扱っている物件も収益性の高いものばかりであれば、過去の実績を考慮した融資審査を行ってくれることがあります。
特に金融機関と提携しており、あらかじめ低金利やフルローンが可能としている物件を販売しているケースもあります。こうした不動産会社を選ぶことで、フルローンを受けられる可能性があるのです。
2-2 返済原資が豊富にある
資産というのは不動産や現金ばかりではありません。株券や国債、社債などの有価証券や、暗号資産などもあります。保有している不動産も含めすぐに現金にはしたくないが、万が一の時に返済に回すことができる資産を持っていれば、金融機関もフルローンでの融資に応じる可能性があるのです。
2-3 物件価格が低い(融資総額が少ない)物件を検討する
不動産投資で運用する物件の価格が低いと、金融機関が融資する融資総額が少なくなり、貸付のリスクが低下します。そのため、価格が低い物件を選択することでフルローンを受けられる可能性が高まります。
例えば、不動産投資会社が提供するワンルームマンションでは、フルローンが活用しやすいものがあります。
ワンルームマンションは地価の高い好立地なエリアであっても物件規模が小さいことから比較的に安い価格で販売されています。特に新築ワンルームマンションは長期の融資年数を設定することも可能なため、返済スケジュールにも余裕を持たせることが可能です。価格が低く融資年数が長期になることから、年間の返済比率が低く、フルローンを組める可能性が高い物件となっています。
フルローンを検討するのであれば、このような物件評価が高く、小規模なワンルームマンションなども選択肢に入れてみるのも良いでしょう。ただし、ワンルームマンションは好立地なエリアにあることから、物件価格に対して設定家賃が低く、高利回りが狙いにくいという点に注意が必要です。
【関連記事】ワンルームマンション投資のメリット・デメリットは?リスクや注意点も
フルローンを活用する際の注意点
これまでフルローンを受けるためのコツを紹介してきましたが、フルローンを活用する場合は返済比率が高くなるため注意点もあります。下記にまとめましたので、確認しておきましょう。
- 月額の返済金額が増える
- 追加融資が難しいことがある
- 月々のキャッシュフローが悪化する
- 借り換えが難しい可能性がある
- 返済残高が多くなり、金利上昇リスクによるダメージが大きい
- 売却してもローンを完済できない場合がある
これらの注意点も把握した上で、フルローンの活用を検討してみましょう。
まとめ
アパートやマンションなどの賃貸用物件は高額で、自己資金を補うには金融機関からの融資が必要になります。そのため融資が得られない場合は、審査にパスできるように対策を立てる必要があります。今回は、その対策法として6つ紹介しました。
金融機関の融資審査では、物件と投資家の両方の審査を行います。自身の属性評価が低い場合には、物件の担保性を高めることで、フルローンを受けられる可能性もあります。融資審査が厳しく通過できない時には、どの部分に問題があるのかを確認し、それぞれの対策を取っていきましょう。
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