ソーシャルレンディングの確定申告の手順・注意点は?かかる税金や必要書類も
ソーシャルレンディングの分配金は、所得税法上の取扱いは雑所得となります。普段は源泉徴収のみで確定申告をしたことが無い方でも、給与以外の所得が20万円以上になる場合、確定申告が必要です。
ソーシャルレンディングを個人でおこなっている場合、確定申告手続きはどのようにすればよいのか、お悩みの方も多いのではないでしょうか?
本記事では、ソーシャルレンディングにかかる税金について、確定申告の手順や注意点、必要書類について詳しく解説していきます。
※記事内の税制内容は2022年1月時点の情報となります。最新の情報については、国税庁などのサイトをご確認のうえ、税理士などの専門家へのご相談もご検討ください。
目次
- ソーシャルレンディングにかかる税金
1-1.ソーシャルレンディングの仕組み
1-2.ソーシャルレンディングの分配金にかかる税金
1-3.確定申告の必要性 - ソーシャルレンディングの確定申告の手順
2-1.必要書類・環境を整える
2-2.雑所得などの所得計算をおこなう
2-3.所得税の確定申告書を作成・提出する
2-4.所得税・住民税を納税する - ソーシャルレンディングの確定申告の注意点
- まとめ
1.ソーシャルレンディングにかかる税金
ソーシャルレンディングは、匿名組合契約によって個人投資家が投資した資金に対する分配金を受け取る仕組みになっています。匿名組合契約の分配金には、所得税・住民税が課されますが、所得税法上は、雑所得として取り扱われ、総合課税となります。
以下で、詳しくみていきましょう。
1-1.ソーシャルレンディングの仕組み
ソーシャルレンディングでは、ソーシャルレンディングの事業者が、投資家に出資を募って匿名組合契約形式のファンドを組成し、そのファンドから資金調達を必要としている企業に資金を貸付けます。その返済金から、投資家に定期的な分配をおこなうという仕組みです。
インターネットで小口の個人投資家と資金調達を必要としている企業とをマッチングする、クラウドファンディングの一つです。
1-2.ソーシャルレンディングの分配金にかかる税金
ソーシャルレンディングは、投資家は、匿名組合契約によってファンドに参加して、分配金を受け取ります。所得税の法令では、匿名組合契約に基づいて出資をする者が、営業者から受ける利益の分配は雑所得になるとされています。(※参照:国税庁「〔組合の所得計算〕」)
したがって、通常の個人投資家がソーシャルレンディングによって受け取る分配金は、雑所得として所得税の総合課税対象となり、住民税も課されます。ただし、出資の払戻しとして支払いを受ける部分は利益の分配には該当せず、課税対象とはなりません。
1-3.確定申告の必要性
ソーシャルレンディングによって得た分配金がある場合、原則として確定申告が必要となります。ただし、給与収入が2,000万円以下で、ソーシャルレンディングの分配金を含めた給与以外の所得(収入から経費を差し引いた金額)の合計額が20万円以下の場合は、例外的に確定申告は不要です。 (※参照:国税庁「確定申告が必要な方」)
なお、分配金の支払いを受けた時に20.42%の源泉所得税等が源泉徴収されていますが、確定申告では、他の所得を合計したすべての所得に応じた累進税率によって税額が再計算され、精算されます。
2.ソーシャルレンディングの確定申告の手順
確定申告は次のような手順でおこないます。
- 必要書類・環境を整える
- 雑所得などの所得計算をおこなう
- 所得税の確定申告書を作成・提出する
- 所得税・住民税を納付する
以下で詳しくみていきましょう。
2-1.必要書類・環境を整える
まず、確定申告に必要な書類を整えます。給与所得以外の所得が、ソーシャルレンディングの分配金のみである場合、基本的には確定申告書(A様式)を提出することになります。
給与所得以外に事業所得や不動産所得などの所得がある場合、確定申告書(B様式)を提出することになります。自分で申告をおこなう場合は、税務署でこれら所定の様式を揃えておくとよいでしょう。
環境については、確定申告の手続きの一部を自分でおこなう場合にパソコン、ネット環境などの準備が必要になります。
ソーシャルレンディングにかかる収入や必要経費に関する書類の収集
ソーシャルレンディングの分配金については、ソーシャルレンディング事業者が、投資家に支払った一年間の分配金をまとめた、支払調書を発行している場合はその支払調書を利用します。
支払調書がない場合は、年間取引報告書を用意しましょう。支払総額と支払日、支払内容の他、源泉徴収税額が分かる資料が必要になります。ソーシャルレンディングに係る必要経費がある場合、その領収書なども準備しておきましょう。
他の所得や所得税の控除に関する書類の収集
所得税の確定申告書を作成するために、給与所得の源泉徴収票などソーシャルレンディングの分配金以外の収入明細が必要です。
また、所得控除に関する書類として、医療費の領収書や寄附金の領収書などが必要になります。なお、社会保険料や生命保険料、地震保険料も控除対象になりますが、サラリーマンであれば年末調整で調整済なので、源泉徴収票を用意すれば充分です。
2-2.雑所得などの所得計算をおこなう
ソーシャルレンディングの分配金がある場合、資料を下に雑所得の計算をおこないましょう。雑所得の金額は、次の算式によって算出できます。
雑所得=総収入金額-必要経費
必要経費として控除できるのは、ソーシャルレンディングに直接要した費用になります。ソーシャルレンディング事業者の手数料などが挙げられます。(※参照:国税庁「雑所得」)
令和4年分以降の所得税確定申告では、ソーシャルレンディングの分配金が、営利を目的とした継続的なものである場合、前前年分の収入金額が300万円を超えるときは、帳簿を保存する必要があります。
また、事業所得や不動産所得など他の所得があり決算をおこなう必要がある場合、雑所得の計算とともに、事前に決算を済ませておきましょう。
2-3.所得税の確定申告書を作成・提出する
雑所得や、その他の所得がある場合、それらの計算が終了したら、所得税の確定申告書を作成します。
確定申告書は、雑所得の金額や給与所得の金額を集計し、社会保険料控除、医療費控除などの各種控除の金額を控除して、所得税のかかる所得を算定し、実際の所得税額の計算をおこなう書類です。
一般株式等に係る譲渡所得がある場合の申告では、株式等に係る譲渡所得の金額の計算明細書の作成も必要になります。
これらの申告書類は、通常は、国税庁の確定申告書等作成コーナーや市販の税務ソフトに情報を入力して作成することがほとんどで、作成の際には所得税の知識が必要になります。
すべての書類を作成したら、管轄の税務署に提出します。提出方法は、直接持参するか、郵送、あるいは電子申告であればインターネットで送信することによって提出します。所得税の確定申告書等の提出期間は、翌年2月16日から3月15日までとなります。
2-4.所得税・住民税を納税する
書類の提出と納税は別々におこないます。所得税は、納税の期限が3月15日になっており、確定申告書等の提出期限と同じです。現金で支払う場合は、納付書を用いて金融機関等で納めます。口座振替の手続きをすれば、口座振替も可能です。そのほか、クレジットカード納付やコンビニ納付などもできます。
住民税は、確定申告の情報を下に、それぞれの市区町村が税額を計算し、6月以降に納付書を送ってきます。
サラリーマンであれば、勤務先企業に納付書を送ってもらい、12回に分割して給与所得から天引きして企業に納めてもらう「特別徴収」になっていると思われますが、住所に納付書を送ってもらい、自分で納める(普通徴収)ことも可能です。普通徴収であれば、通常は4回の分割払いになります。
3.ソーシャルレンディングの確定申告の注意点
給与所得者の場合、確定申告が不要であるケースもありますが、ソーシャルレンディングの分配金による利益が20万円以上あれば、確定申告が必要であることを念頭に置いておきましょう。
分配金の実際の支払額は、源泉徴収税額が差し引かれた後の金額になっているため、確定申告の際には、差引前の総額を把握するようにしましょう。
また、ソーシャルレンディングの分配金は、所得税法上、雑所得として取り扱われます。雑所得は総合課税となり、他の総合課税の所得と合算されますが、雑所得の赤字は他の所得と損益通算できないので注意しましょう。
まとめ
個人がソーシャルレンディングの分配金を得た場合、原則として所得税・住民税がかかり、確定申告が必要となります。
実際の支払額は、源泉徴収税額が控除された後の金額であり、確定申告では、支払総額と源泉徴収税額を把握する必要があることもおさえておきましょう。
ソーシャルレンディングの制度は、まだ税法の整備が追い付いていない側面もあります。確定申告をする際は、国税庁のホームページを確認したり、専門家に依頼したりすることも検討してみましょう。
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