金利と株価、為替との関係は?景気サイクルで通貨の動きを解説

金利・株価・為替はいずれも、経済情勢や要人発言、政治、その他のイベント、ファンダメンタルズなど様々な要因により変動します。更に金利・株価・為替はお互いに影響し合います。

これら3資産は常に一定の関係を維持するわけではありません。好景気で株価が上昇しても、他の条件次第で金利は上がったり、下がったりします。

金利が上昇すると、高い金利につられて国外から資金が流入し、その国の通貨は上昇する傾向があります。一方で通貨が下落することで、輸入インフレが懸念されて金利が上昇するというケースもあります。

「金利上昇と通貨高」や「金融緩和による金利低下と株高」というようなステレオタイプの関係ばかりではなく、その他の条件次第で色々な組み合わせが発生するのです。今回は金利と株価、為替との関係について事例を用いて解説していきます。

目次

  1. 景気サイクルと金利・株価・為替の関係
    1-1.景気上昇(回復)
    1-2.景気過熱気味(好況)→景気の山
    1-3.景気後退(後退)
    1-4.景気対策(不況)
  2. まとめ

1.景気サイクルと金利・株価・為替の関係

投資を行う上で景気サイクルは知っておきたい知識です。経済学の教科書にも載っているように景気サイクルは回復→好況→後退→不況の4つの局面が順番に繰り返し現れるとされています。4つの局面で株・金利・為替の動きを考えてみましょう。

まず、金利・株価・為替のそれぞれが上昇と下落する組み合わせは8通り(=2×2×2)あります。通貨は株と金利の関係を見て判断されることが多いため、ここでは金利と株価の組み合わせ4パターンをベースに、その時通貨の動きを事例を用いて解説してきます。

1-1.景気上昇(回復)

項目 詳細
株価 先行きの期待先行で上昇。
金利 設備投資、住宅投資などの資金需要が高まり、期待インフレ率の上昇と共に名目金利も上昇。
通貨 初期段階としては、株価上昇の局面においても実体経済がデフレから脱却できないと実際には金利が上昇せず、中央銀行も緩和政策を継続するためゴルディロックス相場と呼ばれるリスクオン相場が継続する。

この局面では、米ドル売りと低金利である円売りが基本で、その相対として景気回復期待により資源価格が上昇することから資源国通貨が選好されやすくなります。また相場に材料がなくなれば高金利の新興国も買われる傾向があります。その後、金利は徐々に上昇しますが、金利水準が過熱しつつも、資金調達ニーズの高まりは続き、企業業績向上への期待が高まります。

投資対象への関心は債券から株式に移り、投資マネーは債券市場から株式市場へ移動するので、金利上昇と株価上昇が同時に起こります。この局面では、まだ資源国などは先行されますが、徐々に米ドルの魅力が上昇し、米金利が上昇することで米ドル建ての債務が多い新興国にはマイナスの材料となるため、新興国の上昇力は衰えます。

1-2.景気過熱気味(好況)→景気の山

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株価 「買いが買いを呼ぶ」こともあり、実際の企業の実力以上に上昇するが、利上げが強く意識される段階から下がりだす。金利が上昇することにより、企業は借入れコストが上昇する為、設備投資を縮小させる。
また、個人消費でも住宅ローン金利が上昇することから、住宅購入を見送ることも考えられ、企業業績低迷への不安が高まり株価は下落する傾向がある。
金利 インフレ懸念が台頭し、中央銀行による利上げが行われる。もしくはほぼ利上げが織り込まれる。したがって利上げ方針に敏感に反応する短期金利が上昇し、長期金利は利上げ後の景気減速を織り込んで低下するため、金利のカーブは平坦化する。
通貨 初期段階はリスクオンで米ドルと円が売られ資源国と高金利が買われる。その後利上げ期待が強い国の通貨が選別されて買われる。

この局面では、インフレを抑制するために、自国通貨高に誘導したいという中銀の思惑から積極的にタカ派発言が出て、利上げ合戦が繰り広げられます。最後に実際に利上げが決定されると、株が下がり始めリスクオフの米ドル買い・円買い/資源・新興国売りが強まります。

ただし景気回復の兆しがないにもかかわらず、物価だけが上昇してしまう、政府・中銀が全く望んでいない悪いインフレであるスタグフレーションのケースでは、経済指標が悪いにも関わらず中銀は利上げをせざるを得なくなります。したがって、金利が上がってもその後の景気悪化も同時に織り込まれる形となり、通貨はあまり買われません。

1-3.景気後退(後退)

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株価 景気後退の気配を先取りして下落。
金利 消費者の購買行動が控えられ、資金需要が減り、利下げを織り込む形で低下。
通貨 最初はリスクオフの雰囲気が強く、世界の基軸通貨である安全資産米ドルと世界一の純資産国の円が選好されやすい。この時の売り通貨は、利下げの織り込みが大きい通貨や、資源国通貨、高金利通貨。

1-4.景気対策(不況)

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株価 景気対策により市場に資金供給が増えると期待先行で上昇。景気対策(刺激策)により「谷」を脱することができれば、景気回復期へ移行。
金利 利下げ、場合によっては非伝統的手法である資産買取策などにより金利を低位に維持しながら民間の資金需要を後押しする。仮に金利が上昇するはずの材料が出てきたとしても、中銀が緩和を止めると宣言するまでは、円金利の様に徹底的に低位に維持される。
中銀にスタンスの変更を迫る様な決定的な材料がいつ出てくるのかということを警戒しながら、金利の取引をしなければならない。市場予想を上回る消費者物価指数が観測され、中央銀行がインフレ見通しを変更し、早期利上げに方針転換するといったサプライズも起こりうる。
通貨 金利が低位安定するため金利には反応せず、株との相関が高まり、リスクオン時には米ドルと円が売られる傾向がある。もしくは、資産買取額が多く市場に最も流動性を供給している国の通貨が売られる(減価する)。

このパターンでは、米ドルと円以外は、株価・債券価格・通貨のいずれもが上昇する、いわゆる「トリプル高」となります。通貨安に誘導し過ぎると株価は上昇するものの、輸入物価の上昇につられてインフレ懸念が浮上し、結果として株価を下げてしまうという、細かなサイクルも存在しています。

2.まとめ

景気循環と各市場の動きは長期的に見ると、上記のような連動が見られます。しかし、各市場の反応の大きさやタイミングは異なり、他の要因によっても変わります。同じニュースに対しても投資家の事前織り込みの度合いや各市場の水準によって、反応の仕方が異なります。
ニュースや経済指標にも反応するものの、金融政策の方向性への期待を先取りする形で先行して動き出すケースが多く見られます。想定通りの結果となった際には、利食いのフローが出て相場は逆方向に動くことがあり、「Sell the fact」と呼びます。

市場参加者の「期待」を事前に察知する必要があり、実際に利上げが発表されてから追いかけると尻尾を掴まされることになりかねません。

株価の場合も同様です。経済指標が実際に改善する前に、金融政策が緩和的、もしくは政府が財政出動をしている段階で、改善期待を織り込む形で上昇します。徐々にインフレ懸念が台頭するようになると、今度は実際に金融政策がタカ派転する前に、利上げを織り込む中で株価も下落します。

本来金利は金融政策と直結しているため、基本的には金利が主役で株価や為替を考えます。しかし金融政策を考える中銀はその時の株価や通貨の水準などを総合的に判断した結果金融政策を決定するため、結局は金利・株価・為替のバランスが非常に大切です。

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Source: 仮想通貨の最新情報BTCN | ビットコインニュース
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