自社株買い、株価への影響や実施のタイミングは?主な動向も
自社株買いは、企業が自らの資金を使い株式市場から自社の株を買い戻すことです。上場企業の多くが自社株買いを実施しています。大型の自社株買いとしては、ソフトバンクGが2021年11月に上限1兆円の自社株買いを発表しました。
自社株買いの実施にあたっては、企業側にも思惑があります。今回は自社株買いの株価への影響、実施のタイミング等を解説します。
目次
- 自社株買いとは
- 自社株買いの目的
2-1.アナウンスメント効果
2-2.株主還元
2-3.敵対的買収を防ぐ - 自社株価買いは株価のプラス材料
3-1.EPS(一株当たり利益)の上昇
3-2.ROE(自己資本利益率)の上昇
3-3.PBR(純資産倍率)の低下 - 自社株買い実施のタイミング
4-1.株価水準が割安な時
4-2.CBの起債時 - 自社株買い状況と株価の反応
5-1.伊藤忠商事(8001)
5-2.ソフトバンク(9984)
5-3.UUUM(3990) - まとめ
1 自社株買いとは
自社株買いとは、企業が自らの資金を使い株式市場から自社の株式を買い戻すことをいいます。自社株買いが決まると、会社は取得し得る株式の総数、自己株式の買入総額、取得期間などを発表します。
2 自社株買いの目的
会社の自社株買いには、アナウンスメント効果や株主還元、敵対的買収を防ぐためなど、様々です。それぞれ見ていきましょう。
2-1 アナウンスメント効果
自社株買いの目的には、アナウンスメント効果が挙げられます。アナウンスメント効果とは、企業が自社株買いを実施することで、市場に自社の株価が割安だというメッセージを伝えることができるというものです。株式市場では自社株買いは好意的に受け止められ、株の買い材料となる傾向があります。
2-2 株主還元
自社株買いは株主還元の目的で実施されることもあります。自己株買いを実施したのち、株式を償却すると、発行済株数が減少し、それに伴い一株あたりの利益が上昇するからです。詳細は3の「株価への影響」で解説します。
2-3 敵対的買収を防ぐ
自社株買いは敵対的買収を防ぐために実施されることもあります。敵対的買収は、対象会社の過半数の株式を取得することが目的となります。自社株を購入すると、第三者が市場で購入できる株数が減少するため、敵対的買収を防ぐ効果があります。
3 自社株価買いは株価のプラス材料
自社株買いは株価のプラス材料となります。自社株買いがEPS(一株あたり利益)、ROE(自己資本利益率)、PBR(純資産倍率)などに与える影響をそれぞれ見ていきましょう。
3-1 EPS(一株当たり利益)の上昇
自社株買いはEPSの上昇につながるため、株価のプラス材料となります。
自社株買いした株式には議決権(株主総会に参加し決議に加わる権利)がなく、配当も支払われません。そのため、自社株買いが実施されると一株あたりの利益が増加します。
純利益が1億円、発行済株数100万株のA社は、EPSが100円(1億円÷100万株)です。自社株買いが50万株実施された場合、EPSは200円(1億円÷50万株)に上昇します。
株価を1,000円と仮定した場合の株価収益率(PER=株価÷EPS)は、自社株買い前が10倍(1,000円÷100円)、自社株買い実施後は5倍(1,000円÷200円)に低下します。PERの低下は株価にプラス材料です。
3-2 ROE(自己資本利益率)の上昇
自社株買いはROE(自己資本利益率)の上昇につながります。ROEは当期純利益÷自己資本×100で求められます。自社株買いが実施されると自己資本が減少するため、ROEが上昇します。ROEの上昇は企業の資本効率の改善につながり、株価には好材料です。
3-3 PBR(純資産倍率)の低下
自社株買いはPBR(純資産倍率)の低下につながり、株価にプラス材料となります。PBRは、株価を一株あたりの純資産で割って求めます。自社株買いに伴い一株あたりの純資産が上昇するため、PBRが低下します。
4 自社株買いのタイミング
自社株買いのタイミングは自己株式の取得理由により異なります。自社株買いの実施にあたっては、自己株式取得の理由が公表されます。理由には、株主還元、株価の低迷、CB(転換社債型新株予約権付社債)の発行による株価の混乱を避けるためなどがあります。
4-1 株価水準が割安な時
自社の株価が理論値よりも大きくディスカウントされて取引されていることを理由に自社株買いが実施されるケースもあります。
ソフトバンクGは、自社株式の理論価格をNAV(Net Asset Value)という方法で算出しています。市場の株価が理論価格を大きく下回っているという理由で、2021年11月に自社株買いを発表しました。
4-2 CBの起債時
CB(転換社債型新株予約権付社債)は、株式に転換する権利を持つ社債で、ある決められた価格(転換価格)の株式と交換できます。CBの発行は、将来の株式数増加につながるため、株式の売り材料になります。このCB起債に伴う株価下落を抑えるため、自社株買いが実施されることがあります。
5 自社株買い状況と株価の反応
直近の主な自社株買いの事例3つと、その際の株価の反応を取り上げます。
5-1 伊藤忠商事(8001)
伊藤忠商事は2022年1月19日に600億円を上限とする自社株買いを発表しました。理由は、株主還元と、機動的な資本政策の遂行を図るためです。取得期間は2022年1月20日~2022年3月31日、上限株数は2,000万株(自己株式を除く発行済株式数の約1.3%)です。
この報道を受け、翌日20日の株価(終値)は5.46%高と急伸しました。その後の株価も堅調に推移し、現時点(2022年1月31日)までは自社株買いが発表された1月19日の終値3,459円を下回っていません。
5-2 ソフトバンクG(9984)
ソフトバンクGは2021年11月8日に1兆円(上限株数2.5億株)、取得期間2021年11月9日~2022年11月8日の自社株買いを発表しました。理由は、自社が独自に算出している理論価格を株価が大きく下回っていたためです。
上限株数の自己株式を除く発行済み株数に占める割合が14.6%という大型の自社株買いの発表に翌日の株価は急伸。11月9日の終値は10.5%高と大幅に上昇しました。株価はその後も上昇したものの、世界同時株安の影響を受け、2022年1月末時点の株価は5,011円と、自社株買い発表時の6,161円を下回っています。
5-3 UUUM(3990)
UUUMは2022年1月14日に総額1億円(上限株数20万株)、期間2022年1月17日~2022年3月31日の自社株買いを発表しました。理由は、株主還元の充実と資本効率の向上です。
自社株の発行済株数の1%ですが、同日に発表された第2四半期の好決算を受け、翌日の株価はストップ高を付けました。その後も株価は堅調に推移し、2022年1月末時点まで、自社株買いが発表された14日の終値676円を下回っていません。
まとめ
自社株買いが実施されると、EPSが上昇するため株価上昇につながりやすいといえます。一方で自社株買いによる株価の上昇は、企業の成長力とは関係がないため自社株買いが終了すると株価が下落に転じるケースもあります。
自社株買いを材料に株式投資する場合には、銘柄を吟味するようにしましょう。
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Source: 仮想通貨の最新情報BTCN | ビットコインニュース
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