2022年5月のRBA、FRB、BOE政策決定会合は?FOMC前後や利上げ見通しをファンドマネージャーが解説
2022年5月現在、ウクライナ情勢が膠着状態となっているなか、相場を動かすメインテーマが中銀の金融政策の行方となっています。市場はある程度の利上げは既に織り込んでいるものの、多くの国でこれまでの物価見通しを上方修正すると同時に、金融政策が後手に回らないように政策金利を引き上げています。
今回は、RBA、FRB、BOEの金融政策決定会合について詳しく解説していきます。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- RBA政策決定会合
1-1.前回(4月)の内容
1-2.直近の経済状況
1-3.今回(5月)の予想
1-4.発表後の反応予想 - FRB政策決定会合
2-1.前回(4月)の内容
2-2.直近の経済状況
2-3.今回(5月)の予想
2-4.発表後の反応予想 - BOE政策決定会合
3-1.前回(4月)の内容
3-2.直近の経済状況
3-3.今回(5月)の予想
3-4.発表後の反応予想
1.RBA政策決定会合
1-1.前回(4月)の内容
政策金利は予想通り0.1%に据え置きました。声明文からはこれまで維持してきた「忍耐強く対応する用意がある」というフォワードガイダンスが削除されました。
関連:ブルームバーグ「豪中銀、「忍耐強い」が声明から消える-タカ派シグナルの可能性」
エネルギー価格およびその他商品価格の上昇は、今後数四半期にわたって豪インフレ率をさらに上昇させました。1~3月期の基調インフレは3%を超えると予想し、今後数か月の間で物価と賃金変化の両方に対する必要な追加の証拠が得られそうとの見方を示しました。
これらを受けて4月27日のCPI、その後5月18日の賃金上昇率などの指標を確認した上で、6月頃の利上げ開始が既定路線となりました。
1-2.直近の経済状況
3月雇用統計は+1.79万人と予想の+3万人から若干下回りました。一方で失業率は4.0%と過去最低水準、労働参加率は66.4%と過去最高水準となりました。RBAの利上げ方針を後退させるような内容ではありませんでした。
注目された第1QのCPIは、RBAが注目しているトリム平均CPIは前期比+1.4%とRBAインフレターゲット開始以来最大の伸び率を記録しました。前年比でも2009年以来の+3.7%とRBAのターゲット上限の3%を明確に超えてきました。
1-3.今回(4月)の予想
CPI発表前までは賃金コスト指数の発表を5/18に控えていることから、今回は据え置き予想がメインでした。しかし強いCPIを受け市場は0.15%の利上げを100%織り込んだ状態となりました。
1回の利上げ幅を0.25%と考えるなら利上げを60%程度織り込まれた状態とも言えます。また、次回6月会合時点では、0.5%利上げを80%程度織り込んでいるため、今後の政策金利の終着点に注目が集まっています。
RBAの想定を超える強いCPIと最近の主要中銀の利上げの流れ(BOC0.5%利上げ、RBNZ0.5%利上げ、スウェーデン中銀0.25%のサプライズ利上げ)を見ると、今回RBAも最後に利下げした0.15%分は引き上げてくるのではないかと予想します。
1-4.発表後の反応予想
FRBの急激なタカ派転期待に加え中国発のリスクオフを材料にAUDは相当売られてきています。従って今回仮に据え置きとなっても、今後の利上げの道筋が変わらないのであれば、下値は限定的となり0.7000を割れる可能性は少ないと予想します。
ただ予想通り0.15%の利上げとなっても、翌日にFOMCを控えていることからそこまで大きく動けないでしょう。動くとしたら、今回一気に0.25%引き上げるポジティブサプライズになった時のみで、その場合はFOMC前に0.7300は回復すると予想します。
2.FRB政策決定会合
2-1.前回(3月)の内容
予想通り0.25%の利上げとインフレ重視のタカ派姿勢が鮮明になりました。2022年中は3月分含め会合毎7回の利上げが見込まれ、ターミナルレート(最終到達金利)は2023年中に2.75%となっています。
関連:ブルームバーグ「FOMC、0.25ポイント利上げ-年内の連続追加利上げも示唆」
ただ、サプライズとなったのはlonger run(長期均衡)金利を2.5%から2.4%に引き下げて景気への配慮を見せた点です。政策金利が2023年にターミナルレートを超えて2.75%と引き締めの領域に入る中でも経済見通しは2.2%で2024年も2%と底堅くなる予想であり、状況次第では再びlonger run金利が引き上げられる可能性はあります。
議事録ではバランスシート圧縮(QT)の上限は米債600億ドル/MBS350億ドルとされました。仮に米債を上限のペースで圧縮した場合、年間7200億ドルになります。
償還額が2022年は1兆ドル以上、2023年も8000億ドル以上あるため、あくまでも米債償還による自然減の範囲内にとどまることになります。
2-2.直近の経済指標
3月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数(NFP)は+43.1万人と高水準となり、失業率は3.6%まで低下するなど力強い労働市場が堅持されています。インフレが強まる中で所得の伸びが気掛かりな点です。平均時給の伸びは前年比で+5.6%と強い伸びを示しました。インフレの伸びには及ばないものの、FRBからすれば、成長よりもインフレ抑制に注力するのに十分な数字でしょう。
3月CPIの総合は市場予想を上回る前年比+8.5%と40年ぶりの高水準となりました。コアについては前年比+6.5%と予想を下回り前月とほぼ同水準にとどまりました。
しかしガソリン・食料品のインフレは深刻です。特にガソリンは前月比18.3%上昇しています。雇用が強く賃金上昇を伴っており、引き続き需要は強いにも関わらず供給制約でモノがない状態が続いています。
コアが落ち着いた要因は中古車価格が▲3.8%なったことでほぼ説明できます。中古車以外の項目では落ち着きが見られていないため、物価がピークを付けたとは考えにくいでしょう。
3月の小売売上高は前月の上方修正分を含めると全体としては堅調な結果となりました。ただ、中身を見るとガソリン価格高騰の影響が強く出ており必ずしも良質なプラスというわけではありません。
2-3.今回(5月)の予想
今回は0.5%の利上げ、次回6月も0.5%の利上げ、その後年末時点で2.5~2.75%が市場に織り込まれています。
今回アナウンスした、6月に前回議事録で議論されたペースでQT開始ということも織り込み済みです。
中国発のリスクオフの影響から株が調整気味であり、利上げ効果を織り込んでいるとも考えられる状態となっています。今回は、市場織り込み以上のタカ派サプライズを演出し、市場の過熱を冷ます必要はない状態でしょう。
6月会合でDOTSチャートの発表があります。タカ派見通しを織り込ませる下地を徐々に作っていき、4月からベース効果が剥落し落ち着いた数字になっていく可能性があるCPIを見てから詳細を決定していくというスケジュール感だとすると、今回パウエル議長からは0.75%利上げの可能性を強調することはないと予想します。
2-4.発表後の反応予想
FRBのタカ派期待はかなり織り込まれた状態です。ハトになる可能性は低いものの、今回0.75%引き上げや、次回以降で0.75%の利上げの可能性を強調すれば金利の最終到達点の目線が上がり、もう一段のUSD買いとなる可能性があります。
3.BOE政策決定会合
3-1.前回(3月)の内容
9名中8名の賛成で0.25%の利上げが決定されました。2月会合時に5-4で0.25%の利上げが決定された際は4名が0.5%の利上げを主張してたものの、3月会合で反対した1名は据え置きを主張するハト派サプライズとなりました。
関連:ブルームバーグ「英中銀、政策金利を0.75%に上げ-インフレは4~6月に約8%へ」
インフレは4月に8%まで上昇する見通しです。同時に物価上昇が家計の実質所得の減少に繋がり、中期的な成長見通しのダウンサイドリスクになっているという指摘が見られています。ウクライナ問題も含め不確実性が高まる中、あらゆる選択肢を準備しておくといった慎重なスタンスに変化しているようです。
3-2.直近の経済状況
3月失業率はパンデミック前の水準である3.8%まで低下しました。2021年12月~2022年2月の賃金(ボーナスを除く)は前年比4.0%と上昇しました。しかし、求人件数と雇用者数の伸びは鈍化傾向であり、堅調だった労働市場に陰りが見え始めています。
3月CPIは燃料の高騰により住居費・交通費が上昇した結果、総合が前年比+7%、コアも前年比+5.7%と予想を大きく上振れました。4月は増税の影響でエネルギー価格が50%上昇することが見込まれています。
生活費高騰が懸念されている中、ベイリー総裁は成長リスクとインフレリスクのバランスをとる必要があると発言しています。BOEは利上げに若干慎重なスタンスも見せ始めています。次回5月BOE会合では利上げは実施されるものの、その後はしばらく金利を据え置くという予想も出てきております。
関連:ロイター「英中銀、インフレ対応と景気後退回避で難しいかじ取り=総裁」
消費者信頼感指数は2008年のリーマンショック以来の水準に低下しており、3月小売りは2カ月連続で下振れし前月比▲1.4%、2月分も下方修正となりました。BOEの懸念する消費活動の停滞の兆候が表れてきているなか、リセッションの可能性を示唆する内容との受け止めも増えてきています。
IMFが発表した最新の世界経済見通しにおける2023年の英国は、G7内では突出して低い予想となっています。
3-3.今回(4月)の予想
0.5%の利上げの可能性が高いものの、0.25%の可能性も十分にあるでしょう。据え置きに票を入れる委員も出てくる可能性があります。前回以上にハト派な利上げとなる可能性が高く、仮に今回は利上げを実施したとしても、将来的な利上げの休止が示唆される可能性があります。
3-4.発表後の反応予想
0.25%引き上げて、今後の利上げ休止を宣言、今回据え置きといったのハト派サプライズがあった場合、もう一段のGBP売りとなり1.2000を目指す展開を想定してします。
現在のように通貨安が一方的に進行してしまい、輸入物価がインフレを引き上げてしまうことが懸念点です。BOEがハト派姿勢を見せてGBPが売られ過ぎるのはBOEとしては好ましくないため、通貨安防衛のために0.50%の利上げを実施して、タカ派姿勢を維持するのであれば、一気に1.3000を回復する展開も予想できます。
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